~side コウキ~
「つつ……」
何だ?
何が起きた?
なのはとフェイトの間で、目がおかしくなりそうな程の発光と爆風が起こった。
いつの間にか俺の横に移動していたなのは。手に持ったレイジングハートは、ひどく傷ついていた。
「なのは、大丈夫か?」
「う、うん……。コウキ君こそ大丈夫?」
「まあな……。一体、何が起きたんだ?」
「それが、突然ジュエルシードが光って……」
「ジュエルシードが?」
今まではジュエルシードが発動するときは、何かしら他の生物に影響して暴走してたんだけど。
ジュエルシード単体でもあんなに巨大な力を発するのか……。
「くっ……!」
地面で体制を立て直し、フェイトがジュエルシードの元へと向かう。
大きなダメージを負ったバルディッシュは、すでに待機状態に戻っていた。
バルディッシュなしでどうやって封印をするというのか。
「あんな状態のジュエルシードに近づくなんて!! 危険すぎる!」
「フェイト!!」
アルフがフェイトに向かって叫んでいるが、フェイトは止まる気はないらしい。
デバイス無しでの封印は、思いのほか危険が大きい。特にジュエルシードはかなり危険なものなので、何が起きるか分からないのだ。
「ちっ! あのバカは……ッ!!」
「コウキ!?」
俺もジュエルシードのもとへ向かう。
いくらなんでも、フェイトのジュエルシードに対する執着心は異常すぎる。
確か、ユーノによると、ジュエルシードには『願いを叶える力』があるらしい。
それほどまでに叶えたい願いがあるのか、それとも……。
「「ハァァァァァァァッ!!」」
フェイトとほぼ同時にジュエルシードを握る。
必然的にフェイトの手を握る形になった。
「えっ……?」
「何でもかんでも無茶しすぎだぜお前はよぉ……!!」
半ば強引にフェイトの手をジュエルシードから引き剥がす。
途端、ジュエルシードから激しい魔力の奔流を感じ、手に激痛が走る。
「ぐぅぅぅぅぅッ!?」
「コウキ!!」
「コウキ君!!」
大量の魔力の奔流により、手のあちこちが裂けて血が滲む。
何だコレ……、むちゃくちゃ痛ぇ……!!
意識が飛びそうだ……!!
「止まれ……ッ! 止まれええええェェェェ!!」
動かない指先を必死に動かし、ジュエルシードを握る力を強める。
……はずだったが。
「…………あれ?」
いつの間にか、ジュエルシードの暴走は止まっていた。
いや、暴走自体は止まっていないが、『魔力の奔流』が完全に止まっているのだ。
青白い光を発しながらも、ジュエルシードは俺の手の中に大人しく収まっている。
「止まった……? マジで?」
「コウキ君!! 大丈夫!?」
なのはがこちらに向かって駆けてくる。
俺はなのはを安心させるように、片手を短く挙げて応答する。
でも、俺の両手はあちこちに切り傷が付いていて、あらゆる動きをするごとに鈍い痛みがした。
「いてぇ……」
「コウキ君! 手が……」
「あん? 大丈夫だってこれぐらい。お前こそケガはないのかよ?」
「わ、私は大丈夫だよ! それよりコウキ君が!!」
「あーはいはい、分かった。分かったから泣きそうにならないでくれ」
俺の手を見て半泣きになっているなのはに苦笑しつつ、唖然としているフェイトに目を向ける。
隣には、複雑な表情をしたアルフが立っている。
「何のつもりだい? フェイトを助けたかったとでも言うのかい?」
「あ? ちげぇよ、俺はただジュエルシードを手に入れたかっただけだっつーの」
「でもコウキ、さっきジュエルシードに向かうフェイトを必死に止めようとしてたよね。フェイトが傷つくのが嫌だったからなんじゃ?」
「バッ! ユーノ! 適当なこと言うな!! そういうのはな、口に出して言う事じゃねーの!!」
そういうのは口に出さないほうがカッコイイってばっちゃが言ってた。
まあユーノのせいでモロバレだけど。
「えっと……、ありがとう……?」
「……どういたしまして。それよりフェイト、お前無茶しすぎだぜ」
「…………それは」
「それは?」
「アナタには関係ないことだから……」
……はぁ。色々厄介だなフェイトは。悩んでることは絶対他人に隠そうとする。
まあ、『フェイト達』は俺達のことを敵と思ってるからかもしれないけど。
そういうところは、なんとなく『なのは』に似てる気がする。
「……コウキだ」
「え?」
「『木山 コウキ』。俺の名前だよ。この前は言えなかったからな」
「あ……」
「これからよろしく頼むわ、フェイト」
「あ、はい……」
……これだけ接触しておいて、今更自己紹介ってのも、なんか違和感があるな。
「じゃ、まあこれは俺のジュエルシードってことで」
「え? そ、そんな「引くよ、フェイト」アルフ!?」
「フェイトを助けてもらったからね。今回ばかりは引かせてもらうよ」
「そうかい」
「じゃ」
ムスッとしながら、アルフはフェイトを連れてビルとビルを跳躍していく。
ものの数秒で、二人の姿は見えなくなった。
「……そういえばコウキ君」
しばらく静かだったなのはが急に話しかけてきた。
「……なんだ?」
「さっき、フェイトちゃんと手、つないでたよね?」
なのはの言葉に、ジュエルシードからフェイトを引き剥がした時のことを思い出す。
……アレは手をつなぐって言うのか? どっちか言えば手を握った、の方がしっくりくる。
まあ、どっちもあまり変わらないけど。
「……そういえばそうかも。で、それがどうかした?」
「……別に」
「……なのは? なんか怒ってる?」
「怒ってないもん!!」
どう見ても怒ってます。本当にありがとうございました。
「むぅ……」
~side コウキ 了~
魔法少女リリカルなのは ~凡人奮闘記~
第16話 「エクスプロージョン」
~side --~
ジュエルシードの暴走からしばらくして。
ここ、高町家の一室にて、机を見つめる一人と一匹。視線の先には傷を負ったレンジングハートが静かに置かれていた。
「ユーノ君、レイジングハートは大丈夫なの?」
「……自己修復機能をフル稼働させてるから、多分大丈夫だと思う」
「……そっか」
(そんなに心配すんなよなのは。ユーノが言ってるんだから大丈夫だろうさ)
一人、念話で会話に入っているのは、もちろんコウキである。コウキが今居る場所は自宅であり、声色からして、既に若干眠そうだ。
(それより、なのは自身は大丈夫かよ? さっきの爆発、ヤバかっただろ?)
「うん、レイジングハートが守ってくれたから……」
(………………)
自室で一人、「地雷踏んだ……」と天井を仰ぐコウキ。その姿は傍から見ればただの変人である。
「ごめんね、レイジングハート……」
机にあるレイジングハートがなのはに答えるように、弱弱しく輝いた。
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一方、とあるビルの一室には、金髪の少女フェイトと、橙色の髪をしたアルフが静かに佇んでいた。
「あの人のおかげで、ケガせずに済んだね。もし傷だらけで帰ったら、きっと心配させちゃうから」
「……心配するかぁ? あの人が……?」
「『母さん』はちょっと不器用なだけだよ。私は分かってる」
少し嬉しそうに話すフェイト。しかし、アルフはそれを心配そうに見つめている。
そこには、『母さん』に対する二人の認識の違いが読み取れた。
「報告だけなら、アタシが行ってこれればいいんだけど……」
「母さん、アルフの言う事あんまり聞いてくれないもんね」
俯くアルフの頭に、フェイトが手を添える。
「アルフは、こんなに優しくていい子なのに」
アルフの頭を撫でながら、愛おしそうに呟くフェイト。その言葉に、アルフは少し気が晴れた気がした。
「ま、まあ、明日は大丈夫さ! この短期間で、シュエルシードを『3つ』も手に入れたんだから! 叱られることなんてまずないもんね!!」
「うん、そうだね」
空元気なアルフの隣で、淡い期待を膨らませるフェイトに、どこか寂しさを覚えた。
~side -- 了~
どうも、冬の目です。
更新が遅れてますが、なんとかがんばってますw
色々趣味作っちゃってますから……、やる事が多いw
ただでさえリアルも忙しいのに……
では、また次回。