魔法少女リリカルなのは 〜凡人奮闘記〜   作:冬の目

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第8話 「収集④」

~side -- ~

 

 

 

 

 

「…………ひどい……!」

 

 

 

海鳴市の中でも特に大きなビル、その屋上に一人の少女と一匹のフェレットが街を見下ろしていた。レイジングハートによって生み出されたバリアジャケットを着ている少女は、街の光景を見るや否やそう呟いた。

 

街の至る所に木の幹が絡みつき、街のあらゆる機能を停止させていた。その木の幹の中心に、今なのはとユーノが立っているビル、そのビルと互角に争えるほどの大きな木が一本、当たり前のように鎮座していた。

 

 

「多分、人間が発動させたんだ……」

 

「え?」

 

 

ユーノは木を見て、冷静に状態を分析する。確かに、今までにここまで大きな変化を遂げたジュエルシードは無かった。

 

 

「強い思いを持った人が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するんだ……!」

 

「強い思い……」

 

 

なのはが記憶をたどる。今日一日、何があったかを。サッカーの試合、翠屋でのひと時。

そして、その時微かに感じた、自分の父、士郎が率いるチームのゴールキーパーへの違和感。

気のせいだと思い込み、見逃してしまっていたことをなのはは気づいた。

 

 

(やっぱり、あの時の子が持ってたんだ……!!)

 

 

そして後悔する。何故あの時ちゃんと確かめておかなかったのかと。事件は未然に防げたはずなのにと、なのはは一人、自分の責任を感じる。

 

 

「なのは……」

 

 

一人と一匹の間に、沈黙が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは ~凡人奮闘記~

    第8話 「収集④」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはたちがビルの上から街を見下ろしている、その同時刻、癖毛の目立つ黒髪の少年、木山コウキもまた、街の状況を見て途方に暮れていた。

 

 

「お、おいおい……」

 

 

彼が進まんとする道の先には、彼の身体よりはるかに大きな木の幹が隙間無く道を塞いでいた。

彼が目指すは木の中心点。しかしこれでは進めない。

 

 

「さて……、どうすっかな……」

 

 

しばしコウキは考査する。

登って行くか。それは出来ない。まずコウキ自身より大きいのだ。

道を変えるか。おそらくどこから行っても中心に着くまでには確実に一本はこんな幹があるだろう。よって却下。

ではどうするか。

 

 

「とりあえず、一発殴ってみる?」

 

 

そしてありえない答えをコウキは導き出す。何故そうなるのか。

 

 

「はあああああああッ!!」

 

 

大きな声を上げながら、幹に向かって走り出す。助走の勢いそのままに、右腕を思いっきり後ろに引く。

そして、幹のすぐ前にたどり着くと同時。

 

 

「おりゃっ!!」

 

 

後ろに引いていた右腕を、全力で幹に叩きつけた。

ビクともしないかと思われた、その時。

 

 

「うわッ!?」

 

 

派手な音を立てて、幹に大きなヒビが入った。飛び散った破片に、コウキは思わず目を閉じる。

殴った場所は、見事に幹が抉れていた。

 

 

「……アレ? なんかいけたぞ? 腕も痛くない……」

 

 

普通は骨折してもおかしくない勢いで殴ったにもかかわらず、コウキの右腕には痛みさえも無かった。

 

 

「見た目よりも柔らかいのか……? ……ハッ!! まさか、俺の右腕って……」

 

 

急に目を輝かせ、自分自身の腕を見つめるコウキ。

 

 

「魔法が効かない腕……!! つまり、『その幻想をぶち壊す!!』腕ということか……ッ!!」

 

 

よく分からない言葉を叫びながら、右腕を掲げるコウキ。傍から見ればただの変態だった。

 

 

「フッ……、フハハハハァァーーーッ!!」

 

 

コウキは雄たけびをあげて、自己満足の世界へと旅立ってしまった。抉れただけで、貫通していない木の幹と隣り合わせになりながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……ユーノ君、こういう時、どうすればいい?」

 

「……え?」

 

「ユーノ君!!」

 

 

しばらく沈黙が続いた後、強い意志を持った瞳で、なのははユーノに尋ねる。まるで、自分が解決しなければならないとでも言っているかのような瞳で。

 

 

「あ……、うん。多分、元となる部分があるはずだから、それを探さないと……。でも、これだけ広がっちゃうと、どこをどう探せばいいか……」

 

 

ユーノが街を見て眉を細める。木の幹は街のほぼ半分にまで行き渡っており、やみくもに探していては埒が明かない。

 

 

「……元を見つければいいんだね?」

 

「え?」

 

 

しかし、なのはは特に問題も無いかのように反応する。持っているレイジングハートを持ち直し、そして語りかける。

 

 

「レイジングハート」

 

(Area search.)

 

 

なのはの周りに、桃色の魔方陣が展開する。

 

 

「リリカル・マジカル、探して! 災厄の根元を!!」

 

(All right.)

 

 

なのはが叫ぶと同時、幾本もの閃光がレイジングハートから迸り、街のあらゆる場所へと飛んでいった。

レイジングハートの機能なのか、なのはは動かずして巨大な木のありとあらゆる場所を調べていく。

 

そして、幹と幹が絡まっている場所、その間に、光に包まれ、気を失いながらもジュエルシードを握って離さない少年と、その横に寄り添って眠っている少女が居た。

 

 

「……見つけた!」

 

「ほ、ホント!?」

 

 

場所はほぼ木の中心点、なのは達からかなり離れていた。

 

 

「待ってて! すぐ封印するから!!」

 

「え!? 無理だよこんな遠くからじゃ! もっと近づかないと……」

 

 

ユーノが言うのも無理はない。

これまで、ジュエルシードを封印するときは距離を出来るだけ詰めてから封印していた。それが基本であるし、何より難易度が跳ね上がる『遠距離魔法』はユーノでさえ使えない。

しかし。

 

 

「出来るよね? レイジングハート……」

 

 

なのはは止めようとしない。レイジングハートに語りかけ、待つ。

 

 

(Shooting mode. Set up.)

 

 

そして、なのはの要求にレイジングハートが答える。なのはが持つ杖が再構築され、丸く形取られていた杖の先端は、まるで遠距離魔法に特化したかのような、先の尖った形状へと変化した。杖の中心から、三枚の翼が生えている。

 

名を『Shooting mode』。

レイジングハートの第二形態である。

 

 

「捕まえて!」

 

 

なのはが叫ぶと同時、一本の光線が木の一点へと伸びる。そしてその桃色の光線が木に直撃し、少年が握っているジュエルシードを露わにする。

 

 

「リリカル・マジカル、ジュエルシード、シリアル『10』! 封印!!」

 

「この距離から……!?」

 

(Sealing.)

 

 

再び桃色の光線がジュエルシードを捕らえ、そして今度は封印した。封印されたからか、街中に広がっていた木の幹は消滅していき、街にはその痕跡だけが残った。

 

なのはは街の光景を眺める。その表情には、暗さが映っていた。

 

 

「街の人達に、迷惑かけちゃったね……」

 

「そんな! なのはは十分ちゃんとやってくれてるよ!!」

 

「……でも」

 

 

この事件が、なのはに一つの曇りを植えつけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………はあ」

 

 

そして、壊れたビルにもたれかかり、ため息を吐く少年が一人。

 

 

「また、なのはに頼っちまったな……」

 

 

コウキは苦笑する。まるで、自分で自分自身を嘲笑するかのように。まるで、情けないと言わんばかりに。

 

結局、コウキが何かをすることはなかった。今回もなのはの独壇場であり、木の中心にさえ、コウキが辿り着くことはなかった。

 

 

「……このままじゃいけない……」

 

 

苦笑を止め、立ち上がる。既に夕暮れとなり、ボロボロである街並みを見つめる。その瞳には、小さいながらも、はっきりとした『意志』が見て取れた。

 

 

 

 

 

 

 

~side -- 了~

 

 

 




またしても空気な主人公ww

どうも、冬の目です。
コウキが活躍する日はいつになるのやら……

感想などを頂き、一人テンションが上がってましたw ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
では、また次回!
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