魔法少女リリカルなのは 〜凡人奮闘記〜   作:冬の目

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第9話 「出会い①」

~side --~

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

静まり返る街。

夜明けの近い海鳴市、この街のビルの一角に、少女が一人。

金髪の長い髪で、手には杖のようなものが握られている。形こそ違えど、それはどこか『高町なのは』が持つ『レイジングハート』と同じような雰囲気を出していた。

そして、その少女から僅かに離れた場所に、大型の犬のような生物が一匹。橙のような、赤いような毛並みで美しい。

 

一人と一匹は静かに佇んでいた。

 

 

 

「……ロストロギアは、この付近にあるんだね?」

 

 

少女は一人で語る。誰かに話しかけるように。

 

 

「形態は『青い宝石』、一般呼称は『ジュエルシード』」

 

「…………」

 

「……そうだね。……すぐ手に入れるよ」

 

 

少女に付く犬のような生物が雄たけびを放つ。少女はただ、街を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは ~凡人奮闘記~

    第9話 「出会い①」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、やっぱり休日は家でゆっくりコーヒーを飲みながら格ゲーをするに限るな」

 

 

海鳴市の端にある一軒の住宅にて、一人格ゲーに没頭する少年が一人。この家に半一人暮らしをしている『木山コウキ』である。

 

彼の趣味はゲームである。暇があれば、こうしてゲームに勤しんでいる。彼曰く、コーヒーを飲みながらまったりとするのが好きらしい。

そのような事もあってか、彼はコーヒーの味にはやや厳しい。コーヒー好きとして、彼なりのコーヒーへのこだわりがあるようだ。

 

 

「ん? ……電話か」

 

 

そして、彼が今のところ認めているのが、なのはの家である『翠屋』で出してくれるコーヒーと、『月村すずか』が住む屋敷で出るコーヒーである。

 

 

「もしもし……って、なんだアリサか」

 

「なんだとは何よ! ……まあ、いいわ。今からなのはとすずかと三人でお茶しようかと思ってるんだけど、アンタも来る?」

 

「……お茶会ってことか? なんで俺がそんな女子力を高めるようなことをしなきゃならんのだ」

 

 

コウキがそれらを初めて口にした時、あまりの美味しさに絶句したとか。以来、それらはコウキの大好物となっている。

なので。

 

 

「興味がないから俺はパスで……」

 

「……ちなみに、すずかがアンタの為にコーヒーを出してくれるそうよ?」

 

「集合時間は昼の一時でいいな?」

 

「……え、ええ……(切り替え早っ)」

 

 

こうなるコウキを誰が責められるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、こんにちは! コウキ君!」

 

「おっす、すずか! ……って、アレ? アリサとなのはは?」

 

 

コウキがすずかの家に着いたのは、集合の五分前。この男、プライベートに関しては、時間にルーズではないようだ。

 

 

「アリサちゃん達はまだ来てないよー」

 

「まったく……、五分前行動が当たり前だと常々……」

 

「……コウキ君には言われたくないと思うよ……」

 

 

月村家と言えば、かなりの富豪一家というのは常識、と言われる程のお金持ちである。すずかの住む家の土地面積は、一般家庭の領域を遥かに超えている。庭で迷子になることも可能ではないだろうか。

 

ちなみに、月村家にはもう一つ、誰にも知られていない秘密がある。それはなのはも、アリサも、ましてやコウキでさえも知らない。

 

 

「待たせたわね」

 

「お待たせなのー」

 

「やっと来たか、集合時間を三分も過ぎているぞ?」

 

「毎日授業に遅刻してるでしょうが! アンタは!」

 

「ア、アリサちゃん、落ち着いて……」

 

 

コウキとすずかが他愛もない会話をしていると、程なくしてアリサとなのはが到着。なのはと一緒に来ているのは、なのはの兄である高町恭也(たかまちきょうや)だ。

 

何故、恭也も付いて来ているのかと言うと、半分はなのはの見送り、そしてもう半分は、彼の彼女である、月村忍(つきむらしのぶ)に会う為である。この二人、両家からも関係を認められており、他人が見れば思わず、

 

「爆発しろ」

 

と言いたくなる程仲が良い。

 

 

「ほう、君がコウキ君か」

 

「え? はい、そうですが……、あなたは確か、なのはのお兄さんの」

 

「ああ、恭也だ。よろしく」

 

「あ、こちらこそ」

 

 

コウキは何故かこの恭也から少し濁った感情を感じた。そう、まるで「なのはに手を出したら潰す」とでも言っているかのような。

人知れず、コウキは身震いをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~side -- 了~

 

 

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~side コウキ~

 

 

 

 

 

 

 

「この味ッ! この匂いッ! これこそが俺の求めた幻想ッ!!」

 

「大げさだなあ……、コウキ君は」

 

「いやすずかよ、このコーヒーは本当に美味いぞ?」

 

 

四人集まったので、屋敷の一角でお茶会ならぬ、『コーヒーを堪能する会』を一人で行う。ちなみに、アリサ、すずか、そしてなのははコーヒーではなく紅茶を飲んでいる。

コーヒー派の俺としては、この美味しさを分かってほしいところだが……、まあ強要はしない。

それにしても、相変わらずこのコーヒーは美味いなあ。

 

なのはと一緒に来た恭也さんは、すずかの姉である忍さんとキャッキャウフフしに別の部屋に行ってしまった。リア充爆発しろ。

 

 

「今日は、誘ってくれてありがとうね」

 

「ううん、こっちこそ、来てくれてありがとう」

 

 

席に着き、一息置いてなのはがすずかに話しかける。すずかもそれに笑顔で答えた。

 

……ふむ、これ、ただのお茶会じゃあないな……? まあ、最近のアリサとすずかを見ていれば、大方なのはと話、つまりは相談に乗ってあげようとしてるんだろうけど。

 

 

「……今日は元気そうね?」

 

「えっ……?」

 

「なのはちゃん、最近元気なかったから……」

 

 

そうそう簡単に話せるようなことじゃないよな。『魔法について悩んでる』なんて俺が言ったら、多分アリサにグーパンされるわ。

 

 

「アリサちゃんと話してたんだ。何か悩み事があるなら、話してくれないかなって……」

 

「……アリサちゃん、すずかちゃん……」

 

「イイハナシダナー」

 

「アンタは黙ってなさい」

 

「……サーセン」

 

 

ちょっとボケたらアリサに怒られた。割とガチで。

なんだよ、せっかくこのシリアスな空気を壊してやろうと思ったのに。

え? 感動のシーン? 気づかなかったわ。

 

 

「キューッ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 

俺が一人うなだれていると、突然、ユーノの叫び声が聞こえた。何事かと振り向けば、そこには猫に追い掛け回されているユーノの姿が。

なんだ、楽しそうじゃないか、とりあえずユーノ乙。

 

 

「おいユーノ、遊ぶのもいいけど、今のこのいい空気を壊すなよ」

 

「今日のアンタが言うなスレはここですか」

 

(……っていうか遊んでない!! 助けて!)

 

 

ユーノはしばらく部屋中を走り回り、そして部屋の出入り口へと向かった。広い場所に逃げるつもりか。

その時、絶妙なタイミングで俺がおかわりしたコーヒーとお菓子を持ってきたメイドのファリンさんがやってきた。

 

 

「おまたせ……って、うわあ!?」

 

 

ファリンさんはユーノたちにバランスを崩される。フラフラと移動し、身体が左右に……って!?

ちょ、おま、俺のコーヒーが!

 

 

「う~ん……」

 

「ファリン! 危な「うわあああああああああああああああああああああああああッッ!!」ちょ、コウキ君、って速ッ!?」

 

 

 

 

 

その時、世界が止まった。

 

いや、止まってなどいない。一人の男が常識の壁を越えただけなのだ。

高速の男がそこには居た。

俺は光になった。相対性理論を身体が理解した。

 

 

「なんか始まったわよ」

 

「コウキ君が壊れた……」

 

 

今の俺にとって、一秒は八秒だった。

彼女を助けるのに、一秒も必要は無かった。そう、『高速の世界』へと足を踏み入れたのだ。

 

 

「それどこの小早川さんよ」

 

「……ハッ!? 俺は一体……?」

 

「ほ、本当にコウキ君のコーヒーへの愛情はすごいんだね……」

 

「ん? なんの話だ? すずかよ」

 

「ううん……、なんでもない……」

 

「うーん…………」

 

 

ちょっと五秒間くらいの間の記憶が無いが、まあそれはいい。ファリンさんが目を回してしまっているので、俺は近くにファリンさんを寝かせ、そっとコーヒーを手にとった。

 

ユーノには後でキツく言っておこうと思う。

 

 

 




前回の展開からのまさかの日常編。

どうも、冬の目です。
今回はなのはが割と空気でしたね……

では、また次回!
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