面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
ついでに、今日が私の仕事終わりでした。
なので、絶対に今日を最終回を書く日にしようと思っていました。
「まさか…こんな事になるとはね……」
『言葉とは裏腹に嬉しそうですが?』
「うっちゃい」
4月。桜の花びらが舞う季節。
私は『私立 藍越学園高等学校』の校門前に制服を着て立っている。
勿論、立っているのは私一人だけじゃない。
「意外となんとかなるもんだな」
「でしょ? 流石私よね」
「自分で言っていては世話無いな」
「いいじゃないか。実際、スコールさんのアイデアが無ければ、こうして皆一緒にいられなかったんだ」
「ですよね。これが私の高校デビューなんだ……」
「日本の学校…どんな所なのか楽しみです」
ビジネス用の赤いスーツを着たスコールさんに、同じく白いスーツを着たオータムさん。
それから、私と同じ制服を着ているマドカ、ロラン、乱ちゃんにヴィシュヌの四人。
皆揃って、藍越学園へと入ることが出来たのだ。
意外な事は、スコールさんとオータムさんが教員免許を持っていた事。
しかも、裏で何かをしたって訳じゃなくて、ちゃんと手順を踏んでから取得している。
オータムさんは微妙だけど、スコールさんはスーツ姿が凄く様になっている。
「なんか余計な事を言わなかったか?」
「気のせいじゃないですか?」
あ…危なかった……。
オータムさんは『サトリの法』でも身に付けているのだろうか…。
「しっかし、まさか想像以上に留学手続きが早く済んだんだな」
「そうね。正直、一ヶ月以上は掛かると思ってたんだけど、まさか一週間で戻ってくるとは思わなかったわ」
二人が話している通り、国外組の三人は祖国にて留学の手続きをする為の一時帰国をしていた。
その間、私達は空港付近のホテルに滞在して、いつまでも三人の事を待つつもりでいた。
皆を信じて待つ事もまた、私にとっては大切な事だと思ったから。
けど、いざ蓋を開ければ、三人はすぐに戻ってきてくれた。
私の覚悟を返してくれ。
「実は、私が日本に留学するかもしれないと予想して、向こうで既に手続きの殆どを済ませていたんだ。後は私自身がしなければいけない事ばかりでね。こっちも戻ってから驚かさせたよ」
マジか……少し前まではISに毒された腑抜け集団と思っていたけど、毒気が抜けてから有能集団に早変わりしたのか?
「オランダもなんですか? こっちもですよ~。政府だけじゃなくて、ウチの親も一緒に手続きを事前にしてたんですよ。あの時ばかりは、親の偉大さを身を持って実感したな~」
…普通の親って、そんな感じなんだな。
ちょっとだけ乱ちゃんが羨ましいかも。
「どこの国も似たようなものなんですね。それとも、これが普通なんでしょうか?」
かもしれないね。
寧ろ、今までの世界が異常だったんだよ。
「しかも、いつの間にか日本で住む部屋まで確保してくれていたなんて。スコールさんってマジで何者?」
「皆のお姉さんよ」
「いや、答えになってねぇし」
乱ちゃんが言ってたけど、私達はスコールさんが資金面を、アルが情報面を駆使して密かに手に入れていた小さめのアパートに住む事になっている。
普通ならば家賃などが掛かる所だが、スコールさんが『購入』したものなので、基本的に必要なのは水道代や電気代と言ったお金だけ。
しかも、元候補生の皆は今までに貰っていた潤沢な貯金があるので、暫くは全く問題が無い。
私? 勿論、大丈夫だよ。
こんな事も有ろうかとってね。ちゃんと貯金はしてたんだよ。
今のスコールさんの総資金ってどれぐらいあるんだろ…マジで気になるわ。
「あれから一年が経過してるから、私とロラン、ヴィシュヌが二年生で、乱ちゃんとマドカが一年生なんだよね」
『ちゃんと、軍曹殿たちと乱たちはそれぞれに同じクラスとなっています』
「うーん…律儀」
またアルがどこかで操作してないよね?
いや…普通に嬉しいけどさ。
今度は不登校にはならずに、ちゃんと高校生活を楽しめそうな気がする。
「スコールさんとオータムさんって、担当教科は何になるんですか?」
「あたしは体育だ」
「「超違和感ない」」
「んだとこら」
乱ちゃんと言葉が被ってしまった。
それ程までに違和感が仕事してないんだもん。
ジャージ姿で竹刀を持って自転車を漕いで生徒達を後ろから怒鳴っている姿とか超似合ってるもん。簡単に想像出来るもん。
「スコールさんは?」
「数学よ」
「「「「「英語じゃないのっ!?」」」」」
「いや…生粋のアメリカ人だからって、英語ばかりを教える訳じゃないのよ?」
そ…そうだよね。つい、そのイメージが先行してしまった…。
いけない、いけない。
「…ところでよ、あれから篠ノ之束はどうしたんだろうな。全く音沙汰がないけどよ」
「アルは何か知ってる?」
『……篠ノ之束は今、己の罪と必死に向き合っています』
「ふぇ?」
それって…どゆこと?
『もう二度と、彼女が暴走する事は無いでしょう。ですので、軍曹殿たちが心配するような事は無いかと』
「…アルがそこまで言うのなら、きっと大丈夫でしょ。私はアルを信じるよ」
『ありがとうございます』
胸につっかえていた最後の棘が消えてスックリしてから、私は皆と一緒にこれから自分達が通う校舎を見上げた。
「ここから、私達の新しい生活が始まるんだね」
「色んな事があるだろうが、皆一緒なら大丈夫さ」
「今から、どんな事が待っているのか楽しみですね!」
「異文化で過ごす青春……いいですね」
「この私が学校に通う…か。悪くないな……」
桜の花弁が舞う。
まるで、これからの私達を祝福しているかのように。
「未来を託してくれた『あの子』達の分まで、今度は私達が子供達を見守ってあげましょう」
「あぁ……それが、あたし等があいつ等に出来る恩返しだ」
もう私は世界を恨まない。
だって、ISから解放された今の世界は、こんなにも眩しく輝いているのだから。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
【その後の面々】
【篠ノ之箒】
あれから完全にホームレス達のペット兼肉奴隷となっていて、もう二度と戻れない場所まで来てしまった。
その後、彼女がどうなったかは不明だが、とある目撃情報によると、大きくお腹の膨らんだ彼女が複数の男達に夜中の公園で犯されていたとの事。
【セシリア・オルコット】
ISの事実上の消滅により、同時に彼女の借金も消滅しているのだが、本人はその事に全く気が付かないまま、今日も社会の裏側でひっそりと生きている。
少し前に、とあるマフィアが開催した人身売買ショーに出品されていたという。
【凰鈴音】
24時間、1年365日。
過剰ともいえる政府の監視のついた生活によって心身共に衰弱していき、その苦痛から少しでも逃れる為に監視の目を欺く形で合法ハーブに手を出し、自ら破滅へと向かって行った。
勿論、それはすぐに発見され、強制的に施設へと収容された。
【シャルロット・デュノア】
生きる意味を見いだせなくなった彼女は、獄中にて密かに盗んで隠し持っていたタオルにて首つり自殺を図ろうとするが、看守によって発見されて一命を取り留める。
だが、無傷とはいかず、その時の後遺症で脳に大きなダメージを受けて植物人間となってしまう。
担当医によって回復不可と判断され、近日中に生命維持装置が外される事になっている。
【ラウラ・ボーデヴィッヒ】
度重なる人体実験の数々でボロボロになった彼女は、最後に『改造処置』を施され、ドイツ軍の『性処理用備品』として生まれ変わった。
もう彼女の意志は何処にも存在せず、今では男達のストレス発散用の玩具になっている。
【更識刀奈】
ロシアへと『帰国』した彼女を待ち受けていたのは『裏切り者』の烙印だった。
日本生まれなのに日本国籍じゃない。ロシア国籍なのにロシア生まれじゃない。
そんな歪な存在を受け入れるほど、世の中は甘くなかった。
現在は危険因子と判断されて、どこかに完全隔離されていて、いずれは政治家たちの『便利な道具』として扱われていくだろう。
【更識簪(楯無)】
当主を襲名した後、彼女もまた加奈たちと同様に藍越学園へと編入された。
以前とは打って変わって色んな物事に積極的になって、なんと自ら生徒会選挙へと出馬。
巧みな言葉と当主故のカリスマ、自信に満ちた行動によって見事に新たな生徒会長へとなった。
因みに、ふとした事が切っ掛けで加奈と知り合い、後に五人目のヒロインとなった。
【布仏本音】
簪に着いていく形で一緒に藍越学園へと編入。
従者としてではなく親友として彼女の事を献身的に支え続け、彼女が生徒会長になった時も、前と同じように生徒会書記になった。
嘗てとは違って今回は本音も張り切って仕事をしているらしい。
そんな彼女もまた、加奈と知り合ってから六人目のヒロインとなった。
【布仏虚】
以前、IS学園の学園祭の時に知り合った『五反田弾』とひょんなことから再会。
それが切っ掛けになって二人の仲は徐々に近づいていき、今では完全に彼氏彼女の仲になっている。
今は大学生の虚だが、弾が大学に進学し、卒業してからお互いの両親に挨拶に行き、正式に婚約を申し出ることにしているとか。
近い将来、二人で五反田食堂を切り盛りしている光景が見れるかもしれない。
【クロエ・クロニクル】
束の導きにより現在の篠ノ之家実家へと向かった彼女。
最初こそは驚かれたものの、クロエが持っていた束の直筆の手紙を読んでからは、すぐに篠ノ之夫婦に受け入れられた。
クロエの目の方も本人の必死のリハビリと治療の甲斐あって、数年後には見事に回復。
それを切っ掛けにしてクロエは正式に篠ノ之家の養子となって、名前を『篠ノ之クロエ』と改め、家系図上は束の妹となった。
ちゃんと学校にも通い、人並みの幸せな毎日を味わっている。
【山田真耶】
現在も教育実習生として頑張っているのだが、なんと今いる学校が藍越学園で、すぐに加奈と再会する事になった。
IS学園での事について心からの謝罪と、無人機事件の時の礼を言って、加奈とはちゃんと和解することが出来た。
ヒロインになるかはまだ不明。時間の問題とだけ言っておく。
よく仕事終わりにスコールとオータムによって飲みに連れて行かれるのだが、そこで実は二人すらも完全に圧倒する程の大酒飲みであったことが発覚した。
酔った時の彼女には神ですら勝てない。色んな意味で。
そして……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
都内 某刑務所内
「あれがそうなの…?」
「らしいよ。なんでも、ある日突然に自首してきたんだってさ」
「信じられないわね……」
とある雑居房の片隅で、長かった髪を短く切り揃えて、静かに本を読んでいる囚人服を着た束がいた。
白騎士と協力して全てのISを停止させた後、彼女は自らの足で警察へと赴いて自首した。
世界規模のお尋ね者の出現に警察署は騒然となったが、本人は極めて冷静で、その後に行われた取り調べにもちゃんと協力した。
裁判では、ハキハキとした口調で自らのしでかしたことを全て認め、その場にいた全ての人々に対して頭を下げて謝罪をした。
そんな彼女の態度に情状酌量、更生の余地が大いにありと認められ、本人の想像以上の減刑が言い渡された。
そんな束の判決は『懲役10年』だった。
終身刑確実と思っていた束は、刑を言い渡された時に目を大きく見開いて驚いていたという。
そして、涙を流しながら裁判官に向かって再び頭を下げて『ありがとうございました』と礼を言った。
その後、刑務所に収監された束だが、非常に真面目な態度で生活をし、あっという間に模範囚となった。
現在は所長が束の仮釈放の申請をしているらしく、すぐに結果は出ると思われる。
(自分の罪をちゃんと償って、生まれ変わってから色んな人に謝りに行こう! お父さん、お母さん。箒ちゃんは……見つけた時に考えよう。ちーちゃんやいっくんにも謝らないとね…。そして…加奈ちゃんにも……)
今の自分が本当にすべきことを見つけた束にもう迷いは無い。
きっと、彼女の未来も明るいものとなるだろう。
「貴様等は何者だ!! 一夏をどこへ連れて行くつもりだ!!」
荒らされた部屋の中で、千冬は必死に叫ぶ。
突如として、黒ずくめの男達が家にやって来て、千冬は謎の注射器を打ち込まれて体が麻痺したかのように動けなくなり、次の瞬間には一夏が捕らわれていた。
一夏は全く抵抗するそぶりを見せず、成すがままにされていた。
というのも、彼はIS学園での出来事で完全に心神喪失状態になっていて、学園閉鎖で家に帰って来てからこっち、家から全く出ようとしなくなった。
大切な幼馴染達、クラスメイト、守ると決めた少女に、初恋かもしれない先輩。
その全てが一夏の元から消えてなくなった。
絶対に守ると決めたのに、守りたかったのに。
そんな彼にトドメを刺したのが、全てのISの一斉停止事件。
当然、彼の専用機である『白式』も動かなくなり、彼は前と同じ一般人へと戻った。
だが、その感性だけは元には戻らない。
遂には専用機にすら見捨てられたと思い込み、一夏の顔から笑顔が消え、生きる気力を完全に失った。
今更、何をされてもどうでもいいのだ。
「どこへ? んなの決まってるだろうが。『
「生まれ故郷…だと…! まさか…お前達はっ!?」
最悪に嫌な予感がした。
けど、それだけは有り得ないと頭の中で否定した。
「さっきの注射も、お前達専用に開発された代物でな。変に抵抗されないように筋力を大幅に低下させる薬なんだよ。今のお前は小学生のガキと同じぐらいの力しか出せなくなっている」
心臓の鼓動が早くなる。
『自分達』に特化した薬を作れる存在なんて、少なくとも千冬は一つしか知らない。
「まさか、お前らがいなくなってから壊滅したと本気で思ってたのか?」
「いや…そんな事は……」
「そんな訳がないだろう。あの程度で躓くほど、我等は軟ではない」
「違う…絶対に違う……」
「それとも、ISが停止したことで『計画』も止まったと思い込んでいたのか? だとしたら、お前は相当に御目出度い頭をしているな」
目の焦点が合わない。
脳裏に、決して思い出したくない記憶が蘇ってくる。
「そもそも、ISと我等の『計画』は根本的に全く関係ないだろう」
「寧ろ、ISが無くなったからこそ、こうして動いたんだぞ?」
「な…に…?」
「お前達を守る物はもう何も無いって事だよ。『被験体001』」
「!!!」
体が震える。冷や汗が止まらない。
理性でどうにか出来るものじゃない。
これは本能から来る恐怖だ。
「一夏! しっかりしろ! このままでは、お前は……」
「もう…どうでもいい……」
「一夏…?」
まるで荷物のように担がれている一夏は全身をダランとさせていて、身動き一つしようとしない。
「俺には誰も守れない…。白式にも見捨てられて……。何も守れない俺に価値なんてない…。守らなきゃいけないのに……守らなきゃいけないのに……」
「い…一夏……っ!?」
壊れてしまった。
素人目に見ても、そう判断出来るほどに一夏の精神は崩壊していた。
『誰かを守る』
それこそが彼の存在意義であり、彼の心を支えているものだった。
けれど、それは所詮は幻だった。
どれだけ力があっても、それだけでは何も守れない。
ISさえあれば皆を守れると心から信じていた一夏の心を破壊するには十分過ぎる威力だった。
「なんだ。こいつ、とっくの昔に壊れてたのか」
「それはそれで都合がいい。移送するのに無駄が省けるからな」
「よし。そいつも連れて行け」
「はっ」
両腕から持ち上げられ、千冬の体が僅かに宙に浮く。
いつもの彼女ならば簡単に振り解けるのに、今の弱った体では完全に無力だった。
「わ…私も連れて行くのか……」
「当然だ。お前も貴重な『被験体』だからな」
「お前には新しく出来た、お前達の『妹たち』や『弟たち』の世話をして貰わないといけないからな」
「妹…弟だと…! まさか…あれからもずっと……」
「計画は進んでいたさ。当たり前だろう?」
どれだけ足掻いても、過去からは逃げられない。
いつの世も、本当に恐るべき存在は『己の過去』からやって来るものなのだ。
「異種交配実験をするのもいいかもな。普通の人間ならば不可能でも、お前ならば可能だ、なんせ、そのように設計されているからな」
「まずは妥当に犬からだな。その後は……」
「やめろ……やめて……」
恐怖に耐えきれずに泣きだす千冬。
だが、そんな涙に絆されるような連中ではない。
「よし。とっとと連れて行くぞ。時間は有限なんだ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! やめてっ! やめてよぉぉぉぉぉっ! もう戻りたくないっ! 戻りたくないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 何でもするから許してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「お? 何でもするって言ったな? んじゃ、俺達の肉便器決定な」
「やることが増えてよかったな」
「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇっ! うわあぁあぁあぁぁぁぁぁんっ! 束ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「うるせぇよ。ご近所迷惑だろうが。静かにしやがれ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
それから、織斑姉弟の姿を見た者は誰もいない。
その後に、二人の戸籍、家、その他の全ての痕跡が無くなった。
これで、この物語は一先ず終了です。
何か気紛れで番外編とかを書くかもしれませんが、今後は…というか来年は、今月に更新できなかった作品を主に書いていくと思います。
みなさん、ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました。