面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
それによって、次の原作イベントを一足飛びにスキップさせる腹積もりです。
ここまで言えば、勘のいい読者さんはもうお気付きかと思います。
大丈夫。別に私は勘のいい読者さんは嫌いじゃないですよ?
キメラになんてしませんとも……多分。
ある日の夕方。
私は『昔からの友人』に呼び出される形で、行きつけのお好み焼き屋『南斗鳳凰軒』に来ている。
ここの店長とも知り合いで、よくサービスして貰ったりしてる。
なんでか、この店で働いてるバイトさんって全員揃ってモヒカンで強面なんだけど、中身は割といい奴らなので問題無い。
「ぬはははははははははっ! お客様は皆、下郎!!」
どう考えても、めっちゃ失礼な事を言っているおでこにポッチみたいのがあるマッチョイケメンが、この店の店長の『サウザー』。
絵に描いたような暴君だけど、実際に話してみると単なる面白い男に過ぎないことが分かる。
格闘技の腕は超一流らしいけど。
因みに、こんな店を経営している癖に好物はカレーらしい。意味不明。
「よく、あんな接客で繁盛してるな…この店」
「いや…寧ろ、あれが面白くてリピーターが多いらしいよ?」
「今の世の中…何がウケるか本当に分からんな……」
そんな風にしみじみとしながら、目の前にある豚玉のお好み焼きを食べているホスト風の金髪イケメンは、割と皆も知っているであろう『ライザー・フェニックス』その人だ。
原作では本当のチャラ男だったが、この世界線では全く違う。
地上に密かに存在しているフェニックス家が設立した会社に、身分と名前を全て隠した状態で下っ端から頑張り続け、今では独立をして自分で会社を立ち上げて立派に経営をしているという、正真正銘の努力家でありビジネスマンでもあるのだ。
それは偏に『兄たちにも負けないような立派な男になる為』という思いがあったからだ。
基本的に三大勢力に属している連中は毛嫌いしている私だけど、ソーナと彼、彼の妹さんや眷属の皆は数少ない例外で、私にとっても大切な親友になっている。
どこでどんな風に知り合ったかは…今はまだ内緒にしておこう。
「暑苦しい事この上ないが、久し振りにお好み焼きを食えるのであれば多少は我慢もしようではないか」
「相変わらず、この熾天使サマは超上から目線だな……」
「だって、偉いもん」
「もんって……」
私の隣でもんじゃ焼きを食っているアブデルに呆れるライザー。
天使と悪魔という、本来ならば敵対する者同士の二人なのだが、どこか波長が合うのか不思議と仲がいい。
実際、この二人が並ぶと絵になるしな~。
「そういや、ここってドリンクにシェイクがあるんだよ」
「何でシェイク? そーゆーのって普通はハンバーガーショップ的な店で売ってるもんじゃないのか?」
「サウザーが好きだかららしいよ。当の本人は上手に飲めなくて苦労してるみたいだけど」
「アホなのか…?」
アホってよりはピュアなんだよ、きっと。
「あ…そういえば、ここに来る前に変な奴に絡まれたんだよ」
「変な奴って?」
「男の堕天使だ。町に入った瞬間から気配を感知はしていたんだが、まさか本当に遭遇するとは思わなかったから、少しだけ驚いちまった」
「あ~…」
アイツか~……。
確か名前は……忘れた。ドー…なんとかって感じじゃなかったっけ?
「ライザー、その堕天使はどうしたんだ?」
「こっちの顔を見た途端に血相を変えて襲い掛かって来たから、思わず反撃して消し炭にしてしまった。拙かったか…?」
「いや……多分、大丈夫だと思うよ?」
アイツって、原作でも大した活躍とかしてなかった筈だし。
殆どモブキャラに等しい存在じゃなかったっけ?
「しかし、リアスの奴は何をやってるんだ? 仮にも、この町はあいつが管理をしている場所なんだろう? 他勢力の奴が堂々と入り込んでいるのに、動こうともしないのはどうなんだ?」
「相手が雑魚以下の下級堕天使だから、いつ動いても問題無しとか思ってるんじゃないの? 今頃はご自慢の部室で優雅に眷属の連中とティータイムを洒落込んでるよ」
「はぁ……自分の力を過信し過ぎだろう……」
ありゃありゃ。ライザーが頭を抱えて溜息を吐いてしまった。
彼にとってもリアス・グレモリーの話は決して他人事じゃないからなぁ~。
そこら辺はまぁ…言わなくても分かるよね?
そう…彼はあの無能姫さんの婚約者……だったんだ。過去形。これ重要ね?
婚約自体は親同士が決めた事で、ここまでは原作と一緒だったんだけど、ここから先が全く違う展開になっている。
まず、無能姫は原作通りに婚約を嫌がってるけど、今回はライザーも一緒の気持ちだった。
彼は眷属の女の子たちを一番大切にしているし、それと同じぐらいに自分の血脈と『魔王の妹』という肩書を持って調子に乗っているリアス・グレモリーを好きではない。
本人は『リアス個人』として見られたがっていたけど、第三者から見たらどう考えても調子に乗ってるのが分かる。
彼女のその『無自覚の矛盾』をライザーは嫌っているのだ。
「確か、もう婚約自体は破棄してるんだっけ?」
「まぁな。リアスの方は何も知らないようだが」
「何故だ?」
「グレイフィア殿の話によると、意地を張って実家とはあまり連絡を取りたがっていないようなんだ」
「ソイツはバカか? 一体どこに意地を張る要素がある?」
「自分一人でもやっていけると家族に示したいんだろうさ。それが更に心配させるって事も理解せずにな。全く…図体だけデカくなっても、中身はまだガキのまんまなんだよ。だから、俺はあいつとの婚約は嫌だったんだ」
「ライザーじゃなくても、まともな神経をしてる男なら、誰もが即座に断ると思うよ」
どれだけ美人でスタイルが良くても、我儘放題の女なんて願い下げだろう。
「あの堕天使共…このまま放置してもいいのか? 俺達にとっては取るに足らない雑魚であっても、一般人にはそうもいかないだろう? 一部、例外はいるようだがな……」
チラっとライザーが店内を見渡すと、そこではYの字になって店のど真ん中で大爆笑をしているサウザーがいた。
あ、また何処からかやって来たターバンのガキに太腿をナイフで刺されて絆創膏を貼ってる。
もう完全に、この店の日常的な光景になってるよね…あれ。
「あの男ならば、下級は愚か、上級堕天使とかでも普通に薙ぎ倒しそうな気がする……」
「アレに倒されたら、死んでも死にきれんな……」
多少、頭が可愛そうなだけで、割といい奴ではあるんだけどね。
「まぁ…堕天使達に関しては放置しておけばいいよ。ライザーも知ってるとは思うけど、私は基本的に厄介ごとには関わりたくはないし、例え相手がどれだけ弱くても、無駄な戦いは絶対にしない主義なの。向こうから私に喧嘩を売ってきた場合は話は別だけど」
万が一にでもそんな事が有ったら、この世に生まれてきたことを心から後悔させながら、存分に苦しませてからぶち殺すよ。
勿論、死んで魂だけの状態になっても、無限に苦しみ続けるように細工をしてね。
「ところで、どうして私達を呼び出したのか、その本題をそろそろ話してくれないかな?」
「おっと…そうだったな。忘れかけるところだった」
豚玉を食べ終えたライザーは、新しいお好み焼きを作りながら私達を呼んだ本当の理由を話し始めた。
「加奈は、ユーベルーナの事は知っているよな?」
「確か、ライザーの眷属の『女王』さんだっけ?」
「そうだ。でだ…その…今度、ユーベルーナに告白をしようと思ってるんだ……」
「「ほほぅ?」」
私とアブデルの目が怪しく光る。
アブデル的にはユーベルーナは全く持って好みじゃないが、それとは関係なく天使らしく恋バナの類の話が好きだった。本当に聞くだけで終わるけど。
「だが、いざ告白をしようと決意した途端、なんて言えばいいのか分からなくなってしまったんだ! あいつとは俺がまだ若輩だった頃から、ずっと支え続けてくれた仲…こんな風に緊張するなんてことは今までに一度も無かったのに……」
完全にライザーが思春期の男子高校生的な事になってますね。
これはこれで珍しいから面白い……!
「頼む! 自分でも情けないとは自覚している! だが、マジでなんて言って結婚を申し込めばいいのか分からなくなってしまったんだ! 何でもいいからアドバイスが欲しい!」
あのライザーが頭を下げてる…またもや珍しい光景を目にしたな。
こいつからしたら、文字通り一世一代の大勝負だしな。無理も無いか。
(けど…コレ系の事で私にアドバイス出来ることって何にも無いからな~)
これまでにも恋愛ゲームを何本もクリアしたことはあるけど、その知識じゃ絶対に参考にならないし……。
そもそも、恋愛経験ZEROな私に結婚を申し込む際のアドバイスとかおかしくない?
「…ライザーよ。そのユーベルーナとかいう女とは一番長い付き合いだとか言っていたな?」
「あ…あぁ…そうだが……」
「成る程な。お前が言葉に詰まる理由が分かったぞ」
「ほ…本当かッ!?」
流石は熾天使。現代に染まり切っても、その本分だけは忘れないってか?
「今の貴様は、恋愛漫画やゲームなどでよくある展開になっているのだ」
「よくある展開…だと?」
「そうだ。幼い頃からよく遊んでいた仲のいい近所の女の子…俗に言う『幼馴染の女の子』。幼稚園児や小学生の頃は全く気にしてなんかいなかったのに、中学生や高校生になった途端に異性として意識し始め、やがては本気で恋心を抱いてしまう。だが、最も身近いたが故になんて告白をすればいいのかが分からない。今のお前はまさにそれだ!」
「そ…そうだったのか…!」
えっと……つまりはどーゆーことだってばよ?
私にはさっぱり分からなかったんですが?
ドライグ、分かった?
(いや…俺にもサッパリだ。というか、今回初めての台詞がこれなのか…?)
大丈夫だって。次回は前みたいに普通に会話に混ざれるよ……多分。
「今のお前にとって、その幼馴染こそがユーベルーナに該当するのだ。近すぎるが故に言うべき言葉が分らない。見つからない。心配するな。その感情は、世に生きる男ならば誰もが一度は必ず経験する事だ。決して恥じなどではない」
「アブデル……」
なんか、私を差し置いて男の友情パートに入りましたよ~。
今の内に、私に自分の分の追加のお好み焼きを焼いておくか。
今度は広島風にしますかね。
大阪風と広島風、加奈ちゃんはどっちも大好物です。
「ライザーよ、お前がするべき事はたった一つだ。たった一つのシンプルな答えだ」
「それは一体……!?」
「貴様の思いの丈をストレートに叩きつけろ! 変に着飾ろうとするな! お前のことだ。もう既に指輪も購入してあるのだろう?」
「勿論だ。店員と何度も話し合って決めたやつを買ってある」
準備良いな~。
この見た目と中身のギャップに、彼の眷属連中も惹かれたのかもしれないね。
え? 私? 友人としては好感持てるけど、異性としては見れないかな~。
恋愛感情ってものが、まだよく分かってないし。
それ以前に、自分が誰かに恋をするって光景が全く想像出来ない。
「ならば、それを見せつけつつ言ってやれ。『お前が好き』だと。『結婚しよう』と! その言葉さえあれば十分なのだ! 他には何もいらん!」
「そうだったのか…! 流石は熾天使…説得力が桁違いだ!」
あ…そろそろ話は終わる感じ?
さっきからずっと疎外感があって場違い感が半端じゃなかったんだよね~。
「帰ったら、早速やってやる! 善は急げだからな!」
「その通りだ! はっはっはっ!」
いやさ…マジで仲良いよな…この二人。
しかも、話ながらもちゃんとお好み焼きを焼いて、食べてるんだから普通に凄い。
「ねぇ…リアス・グレモリーに婚約破棄の話はしに行くの?」
「行かなきゃダメだろうな。ユーベルーナとの結婚が確実になってから行けばいいだろう。半ば強引な形とはいえ、管理している町で現在進行形でトラブルが発生しているんだ。それをあいつがどうにかするまでは待っていた方が良いだろうしな」
「そうだろうな。いつになるかは不明だが」
「同感」
下手したら、原作よりも長引くかもしれないな。
兵藤一誠の雑魚具合に拍車が掛かってるし。
その原因の一端は私にもあるんだけど。
(兵藤一誠と言えば、ソーナが例のバカ三人組に対する粛清の準備を着々と進めてるって聞いてるけど……どこまでする気なんだろう?)
焚き付けたのは私だけど、なんか想像以上の事をしそうで怖い。
あの手のタイプって、一度でも暴走したら手が付けられなくなるしな~。
なんて言ってる間に、いつの間にかサウザーが私が予め注文しておいたやつを運んできてくれた。
「ふはははははははははは! 加奈よ! 貴様が注文していた品を、この聖帝が直々に持って来てやったぞ! 感謝して咽び泣くがいい」
「はいはい。ありがとね、サウザー店長」
「ははははははははははははははは! てなわけで、はいドーン!」
「「ぬわぁっ!?」」
サウザーが勢いよく鉄板の上に置いたのは、少し形が変なピラミッドみたいな超大盛りのお好み焼き。
凄い勢いでさっきからジュージューいってます。
「世紀末覇者焼き! またの名を『聖帝十字量』!! ふざけた時代を提供する熱と量を誇る、我が店の名物だ!!」
「デ…デカい…!」
「色んな意味で狂ってるな……」
だろうね。けど、だからこそ注文した!!
「そのボリュームに、思わず下郎どもは明日を見失い、微笑みを忘れた顔になるという! さぁ…気合を入れて食すがいい!! はははははははははははっ!!」
「「「…………」」」
その後、私達は力を合わせて聖帝十字量を破壊した。
面白半分で注文してみたは良いけど、普通に後悔したわ…。
向こう半年はお好み焼きは食いたくないな…。
ライザーがかなり早い段階で登場。
しかも、レーティングゲームをしないフラグを立てました。
なので、原作アニメ第一期後半のエピソードは何も無いまま速攻で終了します。