面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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今回はアンチ要素が少ないかもです。

加奈のこれからの生活についてですからね。







面倒くさいので、これからの事を話し合う

 朝になり、私は体を伸ばしながら立ち上がり、窓を開けてから布団を畳んだ。

 うん。今日もとてもいい天気だ。太陽さんさんだね。

 

「アブデルは……まだ寝てるか」

 

 静かな寝息を立てながら、アブデルは未だに爆睡中。

 容姿は間違いなく美男子なのに、畳の上で大の字になって寝ている姿を見ていると、こいつが熾天使であることを忘れかけてしまう。

 だって、実際にこいつは見た目イケメンの中身オッサンだし。

 寧ろ、紳士度ならウチの義父さんの方が圧倒的に上だと思う。

 

「今のうちにぱっぱと着替えますかね」

 

 別にアブデルに着替えを覗かれても恥ずかしくなんてないし、こいつも今更、私の下着姿や裸で欲情なんてしない。

 私とアブデルの関係は、もうそんな事なんてとっくに通り過ぎてるから。

 服は……適当でいいよね。

 

 パジャマを脱いでからクローゼットを開き、パッと目に付いたものをさっさと着ていくことにした。

 胸の部分にグフカスタムが描かれている水色のTシャツと、タータンチェックのミニスカート。

 黒いジャケットを羽織ってから、同じく真っ黒なニーソックスを装着。

 これで準備は完了でござる。

 

「ア~ブ~デ~ル~。もう朝ですよ~。早く起きろ~。ウェイクア~ップ」

「うぅぅ……?」

 

 足でゲシゲシと蹴りながら揺さぶると、アブデルは窓から差し込んだ朝日を眩しそうに腕で遮りながら目を覚ました。

 

「……ピンクの縞々か」

「起きて早々に人のパンツを覗くな。このエロ天使が」

「朝からとてもいい物を見た…お蔭で一気に覚醒したぞ。感謝する」

「へいへい。どうでもいいから、まずは顔でも洗ってきたら?」

「そうさせて貰おう」

 

 しっかりとした足取りで流しの所まで行って、水でジャバジャバと顔を洗っていた。

 昨日、あれだけ泥酔してたのにも拘らず二日酔いになっていないだなんて、流石は熾天使というべきなのかな?

 

「う…頭が……」

 

 気のせいでした。やっぱり熾天使でも二日酔いにはなるっぽい。

 

「おのれ……受肉をしたせいでこのような部分まで人間と同様になるとは…」

 

 あ…そういう理由があったのね。

 ってことは、天使の肉体のままだったら二日酔いにはならないって事?

 

「そういえば、こんな朝早くから着替えているなんて珍しいな。どこかに出かけるのか?」

「まぁね。アブデルも無関係じゃないから、話しておかないとね」

 

 つーわけで、説明タイム。

 かくかくしかじか。かくかくうまうま。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「そうか…あのベリアルが話をな。守護天使として、俺も行かねばなるまい」

「さっきからそう言ってるじゃん」

 

 顔を洗ってスッキリしたアブデルは、完全に平常モードになった。

 要は、無駄にナルシストで論破大好きマンになったという事。

 

「場所はどこだ?」

「いつもの喫茶店。あそこなら込み入った話をしても大丈夫だし、ドライグが声を出しても問題無いしね」

『あの喫茶店が無ければ、俺は間違いなく息苦しい生活を強いられていただろうな……』

 

 ドライグ、本日初の発言来ました。

 そういや、今の状態のドライグに睡眠とかの概念ってあるのかな?

 

「約束の時間は9時ごろって言ってたから……」

『今はまだ8時半前。まだ少しだけ時間があるな。どうする?』

「部屋で時間までボーっとしてるのもアレだし、もう行こうか」

「加奈よ。朝食はどうする気だ?」

「向こうで食べればいいじゃない。あの喫茶店にもちゃんと朝食セットあるし」

「そうだったのか。ならばいい。腹が減っては戦は出来んしな」

 

 戦って…お前は何をする気じゃい。

 これから行く場所は喫茶店で、やる事は普通に話し合いだよ?

 まぁ…朝起きたばっかりでお腹が空いてるぞってアピールをしたいだけかもだけどさ。

 

 私もなんだかお腹空いてきたし、早く行こうかしらね?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 喫茶店に到着すると、店の奥にあるテーブル席に見た事のある顔が。

 というか、あれは完全にウチの義父さんですね。はい。

 なんか優雅にコーヒー&トーストセットを食べとりますがな。

 

「おぉ…加奈にアブデルくん。もう来たのかね? もう少しゆっくりして来てもよかったのに」

「私もアブデルもお腹が空いちゃっててさ。早めに出て朝ご飯を食べようって話になったんだよ」

「そうだったのか。ならば、ここは私が奢ってあげよう」

「え? いいよ別に。それぐらいは自分で払うって」

「いいから。私に払わせてくれ。久し振りに会ったんだ。偶には父親らしいことをさせておくれ」

「むぅ……」

 

 それを言うのは反則じゃないですこと?

 何も言えなくなるじゃないのさ…。

 

『お前の負けだな相棒。ここは大人しく奢られるがいい』

「ドライグの言う通りだぞ加奈。金を節約できるに越したことはないではないか」

「どうして、龍であるドライグが人情味のある事を言って、熾天使であるアブデルが意地汚い発言をするのさ……」

 

 あんたら、完全に立場が逆転してませんか?

 それでいいのか、天下の二天龍と熾天使さんよ。

 

「今の声は…それがドライグくんかい?」

『矢張り、昨夜の時点で俺の存在に気が付いていたか』

「大切な義娘の体の中から、いつの間にか強烈なまでの龍の気配『燐気』を感じれば、嫌でも気が付きますとも」

『一応、かなり抑え込んであるのだがな…。流石と言わざるを得んか…』

 

 見た目ナイスミドルなオジさまでも、中身は正真正銘の大悪魔だしね。

 そう簡単に誤魔化せはしないか。

 

「色々と話したい事はあるが、まずは座りなさい。話は食事をしながらでも構わないだろう」

「さんせ~。もう本気でお腹空きまくりで……ってもうアブデルは座ってるし」

「さて…何にするかな……」

 

 少し目を離した隙に席に座ってメニュー表を開いてるし。

 抜け目なさすぎでしょ、この熾天使。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 その後、私はコンソメスープ&フレンチトーストセットを頼み、アブデルはコーヒー&トーストセットを注文した。

 常連故のおまけでデザートにプリンが付いてきたのは普通に嬉しかった。

 

「喫茶店で朝食なんて初めてだから、なんか新鮮な気分だったね~」

「いつもは部屋で食べてるからな」

「そういえば、加奈は料理が上手だったね。また一段と腕を上げたのかい?」

「どうかな~? 私は単純に、自分が美味しい料理を食べたいから頑張ってるだけだし」

『案外、その純粋な欲求こそが最も重要なのかもしれんぞ?』

 

 う~む…そうなんだろうか?

 別にプロの料理人とか目指してる訳じゃないから、全く分らんでござ候。

 

「食事も終えたし、本題に入ろうか」

「ほーい」

「うむ」

 

 急に場の空気が重く…はならないけど、ちょっとだけ背筋が伸びた。

 分かる人には分かる、独特の緊張感ってやつだね。

 

「…とは言ったが、その前に加奈に尋ねたい事がある」

「なに?」

「…一体いつ、加奈は赤龍帝になったんだい?」

「あ~…やっぱ気になるよね~。うん、別に義父さんに隠す必要はないし、全部話すよ。ドライグもいいでしょ?」

『構わん。そもそも、この男に隠し事なんて不可能だしな』

「分かってるぅ~。んじゃ、説明入りマ~ス。ダイジェストで」

 

 それから私は、分かり易くも可能な限り事細かに説明をした。

 ドライグと私が出会った切っ掛け。

 どうして、そんな事になったのか。その原因を。

 そして、ドライグの今の姿も見せておくことに。

 

「…成る程な。私が昨夜排除した下級堕天使達が全ての切っ掛けになっていたのか…」

「簡単に言っちゃえば、そゆこと。そういや、連中の所に金髪で清楚な感じの女の子がいなかった?」

「あぁ…確かにいたね、そんな子が」

「その子…どうした?」

 

 私は単純に気になったから話題に出したんだけど、金髪清楚な女の子って言葉にアブデルがめっちゃ激しく反応してた。

 言っとくけど、干渉は絶対にしないからね?

 

「彼女ならば、私の魔術で一先ずは気絶させた後に、この町から遠く離れた場所にある街に転移してから、そこにある知り合いの孤児院に預けたよ。悪魔がいるこの町にいる事は、彼女にとっていい事ではないだろうからね」

「そっか……」

 

 アーシアにとっては、その方が一番いいのかもしれないね。

 悪魔なんて、関わらない方が一番なんだし。

 

「少しだけ彼女の記憶を覗かせて貰ったが…なんとも不憫な少女だったよ。この事は必ずや天使たちと冥界側に抗議しなくてはなるまい」

「我が同胞達に関しては俺に任せろ。大方の事情は想像出来る。いい加減、あの堅物どもに教えこまなければならないと思っていた頃だ。いかなる事情があっても、やっていい事と悪い事があるのだという事をな」

 

 美少女が絡むと、本当にマジになるよね~。

 まだアーシアの名前も容姿も知らないくせにさ。

 

「念の為に認識阻害の魔具を持たせてあるから、これから先の人生で悪魔たちや天使たちに付け狙われる心配は無いだろう。これまでの分、彼女には幸せになる権利がある」

 

 …もしかして、私とアーシアの『境遇』を重ねてる?

 義父さんは、それ系の話にはとことん弱いからね。

 

 けど、これでグレモリー眷属には僧侶の枠が一つ減ったって事になるのか?

 非常に貴重なヒーラーが無くなる事は痛いだろうね~。

 私にはどうでもいい事だけど。

 

「ところで話は変わるが……」

「どったの?」

 

 私が追加注文したホットココアを飲んでいると、急に義父さんが体を乗り出してきた。

 

「ドライグくん。君から見て私の娘はどんな感じかな? 赤龍帝としてその…」

『フッ…ベリアルよ。貴様の心配は杞憂だ。安心しろ。相棒は間違いなく、歴代で最強の赤龍帝になる。というか、現時点で既に歴代を越えている』

「おぉ…そうか…。少し複雑ではあるが、加奈ならば大丈夫だろう。アブデルくんも一緒にいる事だしな」

「その通りだ。加奈の事は俺に任せておけ。守護天使としての使命は全力でやってやる」

 

 守護天使としての使命…ねぇ~。

 私ってアブデルの何かして貰った事ってあったっけ?

 寧ろ、私の方がアブデルに尽くしてない?

 

「んで、話ってのはこの町に侵入していた堕天使達の事なわけ?」

「いや違うよ。思わず話が逸れてしまったね…今度こそ本当に本題だ」

 

 ドキドキワクワク。

 アブデルも関係ある話とはなんなんでしょうか?

 

「実は…暫くの間、私は日本に滞在していようと思うんだ」

「……マジで? 仕事は?」

「これからも発生するかもしれないが、その時は転移して行くことにするよ。今までは外交的な意味で、敢えて飛行機を使って国境を越えなければいけなかったのだが、もうその必要も無くなったのでね。それに……」

「「それに?」」

「もうそろそろ、娘との生活が恋しくなってしまった」

「反応に困るような事を言わないでくれるかな……」

 

 朝っぱらから普通に照れちゃうんですけど…。

 

「それに、この駒王町には図らずも二天龍が揃ってしまった。これから先、この町は様々な意味での特異点となる可能性が高い。その時にいち早く対応できるように、ここにいた方が良いと判断したんだ」

 

 むむむ…流石は私の義父さん…ニュータイプ並に鋭い…。

 その予想はある意味では大当たりだよ…。

 

「けど、滞在するって言っても、どこを拠点にするのさ? まさか、ホテルに泊まり続けるって訳じゃないだろうし…」

「その点は心配無用だよ。実は、ネットで既に駒王町の不動産をいくつかピックアップしていてね、いい場所が見つかりそうなんだ」

「うぉ…マジか…」

「ベリアルめ…相変わらず手が早いな」

 

 だね。抜け目が無さすぎだよ。どこまで先を読んでるの?

 

「そこで相談なんだが……加奈。私と一緒に住まないか?」

「え? いいの? そりゃ…義父さんと一緒に暮らせるのは純粋に嬉しいけどさ……。あ、だからアブデルも関係あるって言ってたのか…」

「その通り。加奈と一緒に暮らすのであれば、守護天使であるアブデル君も一緒という事になるが……」

 

 ここで義父さんはコーヒーを飲んでいたアブデルにチラッと視線を送る。

 すると、彼は迷うことなく頷いた。

 

「無論、俺も一緒に住むぞ。天使と悪魔という不倶戴天の敵同士ではあるが、今はそんな事は関係あるまい。貴様は一人の父として、俺は守護者として加奈を共に守ればいいだけの話だからな」

「いやはや…これだからアブデル君は話が早くて助かる。実はこの後、不動産屋と会って購入候補の家を何軒か見て回る予定になっているのだが、一緒に来ないかい?」

「いいね。なんか面白そう」

「偶には悪くあるまい」

 

 けど、そうなると私も引っ越しですか~。

 ちょっとだけ名残惜しいけど、それ以上に暮らせることが嬉しいし。

 

「ついでに言うと、実は町に滞在中は普段の仕事とは別の仕事をカモフラージュとしてやる予定なのだよ」

「別の仕事? なにそれ?」

「今はまだ秘密…と言いたいが、明日になれば絶対に分かる事だから言っても大丈夫か。加奈にも大きく関係ある事だしね」

「私にも関係ある副業…?」

 

 なんだろう? 全く想像出来ないや。

 もう少し熟考しれば分かるかもだけど、今は本気で理解不能状態。

 

「それに関しては、店を出てから歩きながら話そうか。いい時間だしね」

 

 そう言われてスマホを見てみると、確かに私達が入店してから結構な時間が経過していた。

 むぅ…話に夢中になり過ぎて、時間の感覚を忘れていた。

 

「さぁ…行こうか」

 

 そうして、私達は義父さんの奢りでお店を出る事に。

 …いつの日か、ちゃんとした親孝行をしてあげたいな……。

 

 その後、私達は義父さんの口から知らされる。

 とんでもない『副業』の事を。

 あぁ…確かに、私にも大きく関係のある仕事だわ…。

 

 

 

 




次回はベリアル義父さんの副業が明らかに?

分かる人には分かるかもですが。
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