面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
疲れもあるのですが、私自身のメンタルの問題などもありまして。
それはそれとして、実は私…少し前からソシャゲのsin七つの大罪X-TASYにハマっていまして。
それがどういう事なのか…分かりますよね?
つまりは、そーゆーことです。
翌週の月曜日。
体育館にて毎週好例である全校集会が行われている。
本来ならば、ここでは教師たちや生徒会からの連絡事項などが報告される場なのだが、極稀に違う事に使われたりもする。
例えば、新任の教師が赴任したりする時などだ。
『ここで突然ですが、皆さんに大事なお知らせがあります』
生徒会長であるソーナが壇上にて突然の知らせを話し出して、生徒達は少しではあるがざわつき始めた。
すぐに担任達から注意されて静かにはあるが、それでも動揺は広がっている。
『実は、本校の校長先生が体調不良により急遽入院、療養をする事になり、一時的にではありますが校長職を退かなくてはならなくなりました』
校長の入院。
普段から、そこまで校長とそこまで親しくしている訳ではない生徒達ではあるが、それでも学校のトップが倒れたというニュースはそれなりの衝撃がある。
『なので、校長先生が回復されるまでの間、代わりの先生が校長を務める事となりました。では、お願いします』
ソーナがお辞儀をしてから壇上を降りると、それと入れ替わりになるようにして一人のダンディな男が上がってくる。
そう、加奈の養父であり冥界屈指の実力者でもあるベリアルだ。
無論、ここではちゃんと偽名を使っているが。
ベリアルが壇上に立ちマイクの前まで行くと、それだけで再び生徒達は騒然となる。
『えー…皆さん、初めまして。私の名は『相良尺八朗』と申します。この度、この駒王学園の校長に就任する事になりました。と言っても、彼が戻って来るまでの間ではありますが』
物腰の柔らかそうな年上のお髭のおじ様に、一部の女子達はドキドキを隠せない。
ベリアルが長年に渡って培ってきた『中年男の色気』の破壊力はかなりのもののようだ。
『実は、君達が知っている校長である彼と私は古い友人でして。彼が倒れて入院したと聞いた時は真っ先に病室まで向かいました。それで彼は私にこう言ったのです』
まるで、生徒たち一人一人に訴えかけるかのような言葉に、いつの間にか全員が耳を傾けていた。
『どうか、自分の代わりに愛する学園と生徒達を守ってあげてくれないか。本来ならば、こんな事を頼むのは筋違いだと分っている。だがしかし、今頼れるのは君しかいないんだ…と』
それを聞いた時、生徒達は無意識のうちに涙を流していた。
病床に伏していても、自分達の校長は己の体よりも生徒や学園の事を考えてくれていた。
そんな素晴らしい人物と、どうして今までもっと話そうとしてこなかったのだろう。
『彼こそが真の聖職者。彼こそが全ての教職者の手本となるべき人物。そんな男の言葉を聞き、私に断るという選択肢は最初からありませんでした。友人として、一人の男として、私は彼が戻ってくるその日まで、彼の愛した学園と君達を守ると心に誓いました』
この人もまた凄い人物だ。
類は友を呼ぶというが、全く以てその通りだ。
素晴らしい人物には、素晴らしい友人が傍にいるのだと。
『今日から私が、この駒王学園の校長となりますが、だからと言って変に畏まる必要はありません。校舎内で出会ったら気軽に話しかけてくれて結構ですし、何でしたら昼休みなどに校長室に遊びに来てもいいですよ? 美味しい紅茶やお茶菓子で皆さんを持て成しましょう』
誰かが拍手をした。
それが切っ掛けとなって、あっという間に体育館内は拍手喝采の状態となる。
これぞベリアルの真骨頂。
魔力や魅力ではなく、言葉で人心を動かす。
これこそが、彼にとっての最大最強の武器なのだ。
『では皆さん。これからどうか、よろしくお願いします』
最後に、まるでお手本のような見事なお辞儀をしてからベリアルは壇上から降りた。
彼が去ってもまだ拍手は鳴り止まなかった。
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昼休みの校長室。
ベリアルは立った半日ですっかり学校と校長室に馴染んでしまい、今では全く違和感が無い。
そんな彼の前に、生徒会長であるソーナが立っていた。
「シトリー家のお嬢さんが生徒会長をしているとは伺っていましたが…いやはや。随分とご苦労をしているようですね」
「きょ…恐縮です……」
他の者達はいざ知らず、ソーナは冥界でも指折りの名家出身の悪魔。
ベリアルは彼女だけに己の正体を明かして、その上で彼女の力になると決めた。
「それにしても、まさか相良校長先生があの初代ルシファー様と肩を並べていたと言われている魔王の筆頭格であるベリアル様だったなんて……」
「そんなに恐縮する必要はありませんよ。そんな風に言われていたのは大昔の話ですから。今の私は駒王学園の校長であり、一人の父親でもあるのですから」
ここではベリアル得意の『言葉』は使っていない。
彼女とは建前など関係無しに話したいと思っているから。
「あの子…加奈から君の話は伺っています。どうやら、随分と仲良くしてくれているようですね。父として感謝しています。本当にありがとう」
「お…お顔を上げてください! 寧ろ、加奈さんに助けられているのは私の方というか……」
悩みがあればいつでも相談に乗ってくれて、愚痴だって嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
傍にいれば心が温かくなるような感覚になって、ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
本人は友人を自称しているが、完全にその感情は友人のソレを越えている。
「君のような友人がいてくれれば、あの子も安心でしょう。これで私も、自分の仕事に集中できる」
「そう言えば、朝の集会で以前の校長と友人だと仰っていましたが…あれはどこまでは本当なのですか?」
「彼と友人なのは本当ですよ。ですが、そこから先は嘘でした」
「元校長が復帰するまで…というのがですか?」
「えぇ。彼から相談を受けていたのは本当なのですが、その内容が全く違います。どうやら、彼は問題児たちの起こす事件と、それを全く解決する様子の無い無能な理事長に板挟み状態となりストレスで胃がやられてしまったようで…」
「それで入院…ですか」
「その通り。表向きは仮の校長となっていますが、彼はもうここには戻ってくる気は無いようです。なので、機を伺って彼が辞職したことを述べ、その後に正式な校長となる予定です。ここに戻って来ても、彼には何一ついい事は無いでしょうし。これ以上、ストレスで衰弱していく友人を見るのは忍びない…」
「私もそれがいいと思います。前校長は本当によく頑張ってくれました。よく生徒会の事も気に掛けてくれてましたし…」
ある意味、校長と最も話していたのは生徒会のメンバーだった。
主に例の三人の起こす事件についての話し合いで…だが。
「大丈夫。これからは私が生徒会をサポートしましょう。君達の抱えている問題や悩みについては予め加奈から聞いています。それをなんとかする手段についても」
「私としても、加奈さんの言っていた事には全面的に賛成なのですが…いかんせん準備が……」
「そこは私に任せてください。まず、防犯カメラなどは私のポケットマネーから出しましょう。警察には個人的にパイプを持っているので、それを伝手にして頼めば問題は無いでしょう」
「では、私は被害者の女子達から証言を集める事にします」
「それがいいでしょう。あと、ネット上に顔出しをする件ですが…そちらもなんとかなるでしょう」
「お知り合いに専門家でもおられるのですか?」
「はい。こういうことはベルフェゴールにでも頼むが一番です」
「ベ…ベルフェゴール様ですかっ!? あの第四の罪、怠惰の魔王であるっ!?」
「そうです。彼女、大罪の魔王達の中でも一番のオタク気質ですから。部屋の中には漫画やらパソコンやらが大量にあって、その手の事にも非常に詳しいのです。他の魔王達の例に漏れず面白い事が好きですから、話せばノリノリでやってくれるかと」
「な…なんだかスケールが大きくなってきた……」
まさか、学園の規律を正す為に自身の姉を含む現魔王よりも遥かに格上の存在の手を借りる事になろうとは思わなかった。
今更ながら、あの変態三人組にはほんの少しだけ同情した。本当に少しだけ。
「そういうことなので、これから一緒に頑張っていきましょう。よろしく頼みますよ?」
「こ…こちらこそ、よろしくお願いします! ベリアル様…じゃなくて、校長先生!」
とんでもない超大物が校長に就任し、今までとは別の意味でストレスが溜まりそうな予感のするソーナなのであった。
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一方その頃、加奈はというと……。
「あ~…アブデル。そこ、もうちょい右」
「こっちか?」
「そうそう」
ベリアルが手に入れた新居にて掃除やら荷物の運び入れなどを頑張っていた。
今はアブデルが壁時計を取り付けている最中だ。
「にしても、まさかこんな家に住む事になるとはね」
「もうこれは家というよりは屋敷だな。そこらの一般住宅の軽く二倍のデカさはあるぞ?」
加奈たちがいるのは、三階建てな上に車庫や庭まで完備している豪華な邸宅。
どう考えても金持ちが住む屋敷です。ありがとうございました。
「つーか、もう車庫には私の知らない車が停めてあったし…。一体どこで買ったのやら。あれ、完全に外車だったよ?」
「それよりも、俺としては不動産屋の男の方が面白かったぞ? ベリアルお得意の言葉での誘導に見事に引っかかって、最後には泣いてたしな」
「そりゃ…半額以下に割引されれば泣くでしょ……」
商売ごとになると、ベリアルは大阪のおばちゃん並の力を発揮してみせる。
強引さと細かさを見事に使い分け、この屋敷を勝ち取っていた。
「おい加奈。この段ボールはどこに置けばいい?」
「あ、それはそこの隅にでも置いといて。それと、後で二階の窓を拭きに行くから手伝ってくれる?」
「それぐらいならばお安い御用だ。任せておけ」
段ボールを床に置きながらサムズアップするのはヴァーリ。
彼もまた加奈によって呼び出されて掃除&荷物整理を手伝わされていた。
本人はとても嬉しそうにしているが。
「ヴァーリの奴…完全に加奈の言いなりになってるな。厄介な女に惚れおって」
「なんか言った?」
「いや、なんでもない」
ぼそりと呟いた一言が僅かに聞こえていたようで、咄嗟に誤魔化した。
守護天使として加奈の幸せを望みはするが、その相手がまさかの白龍皇。
仮にも赤龍帝を宿す者としてそれはいかがなものか?
本人達がそれでいいのならば、アブデルは何も口出しをするつもりはないが。
『流石はベリアルというべきか。よもや、口だけでここまでの屋敷を手に入れてみせるとは』
「それが、あの人の特技だからね~」
『特技で済ませられるものなのか…?』
ドライグからしても、ベリアルのやっている事はもう殆ど誘導尋問に近かった。
最終的には不動産屋に同情すらしてしまったほどに。
「これは、今日一日かかりそうだな」
「仕方ないよ。こんなにも広いんだもん。だからこそ『助っ人』も呼んだんだし」
「助っ人…か。まさか、奴が来るとは本気で思わなかったぞ……」
アブデルがジト目で廊下の向こうを見ていると、ドアが開いて箒と塵取りを持った一人の美女が出てきた。
金髪で白いゴシック風のドレスを身に纏っているが、その上に同じエプロンと頭には三角巾を身に着けている。
控えめに言っても、かなりミスマッチだ。
「加奈~、こっちの部屋は終わったわよ~」
「ありがと~お養母さ~ん」
『お養母さん』と呼ばれた美女は嬉しそうにやって来て加奈の頭を撫でる。
「にしても、暫く見ない内に立派になったわよね~。流石はこの私の娘」
「お前ってそんなキャラだったか…? ルシファーよ」
そう。この金髪美女こそが『七つの大罪の魔王』の頂点に君臨する『傲慢』の魔王であり、同時に嘗ては冥界を統べていた初代ルシファーと呼ばれている存在でもある。
「なによ。私が大切な娘を可愛がって何が悪いってのよ、アブデル」
「いや…そうじゃなくてだな。余りの変わりように驚いているというか…」
アブデルとルシファーは色んな意味で因縁ある仲ではあるが、その真ん中に加奈がいる事で以前の険悪さが見事に中和されている。
「表向きとはいえ、お前は死んだことになっている。実際には、馬鹿な悪魔どもが勝手にお前が死んだと勘違いをしているだけなのだが」
「全く…失礼しちゃうわよね。勝手に私の事を殺すなッつーの。幾ら聖書の神とタイマンしたからと言って、この私がそう簡単に死んで溜まりますかッつーの。お蔭で、したくも無い隠居をする羽目になったし」
「けど、相当に重傷だったんでしょ? 義父さんから聞いたよ?」
「ベリアル…余計な事を」
ルシファー、母としてのメンツが少しだけ潰れる。
「しかも、嘗ては犬猿の仲だったお前とベリアルが形式上だけとはいえ夫婦になっているとは。加奈を通じて知った時は顎が外れるかと思ったぞ」
「熾天使であるアンタの顎を外せるなんて最高ね。別に、ベリアルの事が好きになったって訳じゃないわよ。ただ……」
「「ただ?」」
「加奈の『あんな姿』を見ちゃったら…イヤだなんて言えないでしょ……」
それは、ベリアルやルシファー、アブデルだけが知っている秘密。
誰にも言えない。言う事が出来ない禁忌。
加奈自身も、その事は誰よりも理解している。
「それはそれとして、今日は平日でしょ? 学校はいいの?」
「大丈夫、大丈夫。学校にはコレを行かせてあるから」
そういうと、加奈は徐にポケットの中から一枚の人型の紙を取り出す。
少しだけ念を込めてから軽く呪文を唱えてから投げると、ポンという音と共に紙は加奈と全く同じ姿形となった。
「そっか…加奈ってば陰陽術も得意だったっけ」
「そゆこと。これなら出席日数を稼ぎつつ、こっちも出来るって事。んじゃ、チミはそっちの掃除をお願いね~」
変化した紙の加奈は無表情で親指を立ててから、バケツと雑巾を持って別の部屋に入って行った。
「少し戦力も増えたし、この勢いで一気に終わらせちゃおー」
「それはいいけど、その前に一つだけいいかしら」
「なに?」
いきなりルシファーは、自分の前に加奈とヴァーリを並べて、真剣な顔で一言。
「二人とも…ちゃんと避妊はするのよ? 恥ずかしかったら、後で私が買ってきてあげるから」
「いや…別に私達そんな関係じゃないって言うか…普通にまだ処女だし」
「俺も立派な童貞だ」
「胸を張って言う事か…?」
いつもならばボケに回る筈のアブデルがツッコみに回っている。
初めてアブデルは加奈の苦労を理解したのだった。
ルシファーママ参上。
ついでに、ベリアルについてもある事を考えています。