面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
正直、法律系の話をしてくださるのは本当に助かります。
これからの作品作りに向けて非常にいい勉強になりましたから。
校門付近にて運動部の皆によって拘束され、そこにやってきたソーナに見下されている一誠達。
自分達の覗きの一部始終が全てカメラに抑えられていた上にネットにも晒され、更には警察まで駆けつけている始末。
どう考えても『詰み』な状況にも関わらず、一誠は何処かで楽観視をしていた。
死ぬような目に遭ってもどうにかなったのだから、きっと今回もどうにかなる…と。
そう…自分の主であるリアスがきっと助けてくれると。
だがしかし、それは余りにも甘い考えであることを彼は知らない。
「もしかしてとは思いますが…リアスがどうにかしてくれると思っていませんか?」
「そ…それは……」
心の中で考えていた事を簡単に看破されて目を逸らす。
一誠が『オカルト研究会』に入部している事は周知の事実だし、それに関して色々と言われたこともある。
絶体絶命の今において、リアスこそがたった一つの希望だった…が、現実はそう甘くはないし、同時にリアスはそこまで優秀ではない。
これだけは現状において絶対に覆しようが無い事実だった。
「残念ですが、この場にリアスが来ることはまず有り得ないでしょうね」
「な…なんでっ!? つーか、どうして会長にそんな事が言えるんだよッ!?」
「言えますよ。こう見えてもリアスとはそれなりに付き合いが長いんです。なので、彼女の生活パターンなんかも自然と把握してしまっているんですよ」
正確には、把握しておかないと何を仕出かすか分からないから心配で仕方がない…が正しい。
「この時間帯ならば、恐らくは姫島さんと一緒に部室にて呑気に紅茶でも飲んでいると思いますよ? ここから一番遠い場所にある旧校舎にある部室でね」
「で…でも、部長ならきっと……」
「来ると本気で思ってるんですか? 私が目の前で堂々と署名活動をしても疑いすらしなかったのに?」
「え?」
以前、廊下のど真ん中で署名活動をしていていたのは、実はソーナなりの牽制でもあった。
自分達の活動している姿を見てどう反応するかを見ていたのだが、あろうことかリアス達は警戒するどころか気にも留めなかった。
「そもそも、この町に『不審者』が入り込んでいる事にすら気が付かなかった彼女が、今こうして拘束されている兵藤君の状況に気が付いて駆けつけてくれると? まさか本気で信じているんですか? まず有り得ませんね。それどころか、彼女は兵藤君がどんな人物なのかという事すらきちんと把握していないでしょうね」
仮に把握していても、リアスならば素知らぬ顔でスルーする可能性が高いだろうが。
ソーナはそこまで言い掛けたが、ここは敢えて飲み込んだという。
「こ…これから俺達はどうなるんスか……」
「勿論、即刻退学の後に逮捕に決まっています。1~2回程度ならばいざ知らず、年単位で犯行を繰り返している時点で情状酌量の余地も慈悲もありません。勿論、それによって立派な前科が付く事になりますから、余程の事が無い限りは就職や進学なんてことは絶望的と思っていた方が良いでしょう。勿論、その程度で終わる訳は有りませんが……」
「「「あ…あぁ……」」」
いつものように強気に反論しても一瞬で論破されるのは確実。
ここに来てようやく三人は理解した。
これは本当の絶体絶命なのだと。
だが、逮捕されてする程度で全てが終わると思っていたら大間違いだ。
「それだけじゃありません。あなた達三人が仕出かしたことは、ひいては親御さんにも多大なご迷惑を掛けているのですよ」
「お…親父たちにっ!?」
「なんでだよっ!?」
「連帯責任って奴だよ」
「「「え?」」」
ここで全く見知らぬ男の声が場に響く。
一誠達だけでなく、ソーナを含む生徒会の者達以外の者達もキョロキョロと辺りを見渡した。
すると、校門から黒いパーカーに癖のある短髪にリムレスの眼鏡を付けた顎鬚を生やしている『いかにも』な男が悠々と歩いてきた。
「君が話に聞いてた生徒会長ちゃんか?」
「はい。よくぞいらっしゃってくださいました。丑嶋社長」
常人とは思えないような雰囲気を醸し出しているその男に、全員が完全に黙りこくっている。
そんな中、丑嶋と呼ばれた彼は横に控えていた警察官たちに軽く会釈をした後に一誠達の顔を覗き込むようにして座り込んだ。
「…で、こいつらが例の変態野郎どもか?」
「はい」
「ふーん…成る程ねぇ……」
レンズの奥から値踏みするかのような目で三人の顔を観察し、ポケットに手を入れながら立ち上がった。
「ダメだなこりゃ。職業柄、今までに色んな人間を見てきたが…こいつらはダメだ。蒼那ちゃん、この馬鹿どもは何をどうやっても更生なんてしない。顔は焦燥しているが、それは今の状況に焦っているだけであって、自分達がしたことに対しては微塵も反省なんてしてねぇよ」
「な…なんなんだよアンタはっ!? 職業柄って、一体何をしてる奴なんだよッ!?」
「ちょ…バカ!」
「何言ってんだよッ!?」
流石の松田と元浜も、彼が何者なのかをすぐに理解したが、一誠だけは自分が転生悪魔で普通の人間よりも強いという謎の自信によって強気に出ていた。
幾ら、体が悪魔になっていても、その精神はまだまだ子供であり人間であることを彼は理解していない。
「なんだ。俺の事が知りたいのか? 俺は『人並み以下でありながらも人並みの生活をしているクズの人生に終止符を打つ職業』をしているお兄さんだ。よく覚えとけ、クズ」
靴の爪先で一誠の顎を上げるようにして説明をする丑嶋。
本人的には何気ない一言なのだが、その言葉を向けられている者達からすれば恐怖しか感じない。
「この方は駒王町にて金融会社『カウカウファイナンス』を経営していらっしゃる若社長の『
「き…金融会社の社長…?」
「なんで、そんな人が駒王学園にいるんだよ…?」
「部外者は立ち入り禁止なんじゃ……」
「残念だが、今回の俺はれっきとした『お客さん』なんだわ。ここの校長とは昔から何かと世話になっててな。その縁もあって特別に許可を貰ってるんだよ」
ここで思わず煙草を取ろうと手を伸ばしてしまうが、流石に高校の敷地内にてそれは拙いと思ったのか、即座に判断して手を引っ込めた。
完全完璧に『裏』の人間ではあるが、だからこそ社会人としての常識は弁えていた。
「んで、さっき言ってた連帯責任の話だがよ……お前らがやったのは所謂『迷惑防止条例違反』ってのに抵触するんだわ」
「迷惑防止条例違反…?」
「そ。公共の場にて人の隠している部分を覗いた場合、一年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられるんだわ。んで、この『公共の場』ってのは学校なんかも含まれるわけ。お分かり?」
「ひゃ…百万……」
そんな大金、払える筈がない。
だからと言って捕まるのはもっと嫌だ。
どうすればいい? どうすれば、この場を切り抜けられる?
一誠はずっと頭の中をグルグルとさせているが、全く良い考えが浮かばない。
気が付けば、無意識の内に誰かに助けを求めていた。
「まぁ…裁判沙汰になるのは確実だろうな。で、お前らが無罪放免になる確率は限りなくゼロに近い。なんたって証拠映像&音声がある上に現行犯で逮捕されてるんだからな。どんなに優秀な弁護士を雇っても、この状況は覆せねぇだろ。最も、お前らの家に優秀な弁護士を雇うような金があるとは思えねぇけど」
金貸しだからこそ、三人の風貌を見て家の経済状況なんかも軽く推察できた。
こいつらは『餌』だと。いい『撒き餌』になると。
「そうなると、まず間違いなくテメェらの両親は今やってる仕事を解雇されるだろうな。世の中は所詮、信用が第一だ。前科持ちの子供を持つ親なんて誰も信じようとは思わない。しかも、お前らが散々覗きをしてきた女の子たちの家族に慰謝料を払わなきゃいけなくなるだろうな」
「慰謝料って…幾ら……」
「さぁな。それは裁判次第だろ。でも仮に、一家庭につき慰謝料の額が100万だったとする。お前らはこの学校の女の子たちの殆どの着替えを覗いている訳だから、当然のようにそれだけ支払わなきゃいけない訳だ。10人に払うだけでも1000万。20人ならば2000万。じゃあ、この学園にいる女子の数は?」
「「「ひっ……!」」」
想像してしまった。この男が言う『慰謝料』の合計金額を。
同時にようやく理解した。どうして闇金融の社長がこんな場所にいるのかも。
「丑嶋社長。彼らは女子だけではなく女性教師の方々の着替えも覗いていた事があります」
「マジかよ。んじゃ、更に追加だな。もう確実に億を超えてるだろ」
ソーナからの追加情報にて、更なる罪状が明らかに。
それを聞き、周囲の生徒達の中にあったほんの僅かな同情心も完全に消滅した。
「お前らは未成年だけど最低でも1~2か月ぐらいは拘置所にぶち込まれるだろうな。起訴後も第一階の裁判の期間までは拘留されるだろうし。ま、退学確定のお前らには関係ないか」
彼にとって、こいつらの人生なんて本気でどうでもいい。
大切なのは『仕事』になるかどうかだ。
「勿論、お前らの両親も裁判には間違いなく呼ばれるし、その場で全てが明らかになるだろうよ。で、問題はここからだ」
一誠の髪を掴んで顔を無理矢理に上げさせて、その目を鋭く睨み付ける。
以前、堕天使達に殺されそうになった時とは次元が違う。
正真正銘の『裏側の人間』の放つ圧力に完全にビビっていた。
もしも昼休み前にトイレに行っていなかったら、間違いなく漏らしていた。
「お前らの家に、億越えの慰謝料を払うだけの金ってあんの?」
絶対にない。ある訳がない。
家も家財も全て差し押さえられても、全額を払うには全く足りないだろう。
「足りないなら…借りるしかないよなぁ…。勿論、お前らじゃなくて、お前らの親がな。子の責任は親の責任って言うもんな。もしもお前らが成人してたなら話は別だが、テメェらはまだまだ
もう終わり。完全に終了。
だがここで、丑嶋は徐に優しい口調になって三人に囁いた。
「おいおい…なに『人生終わり』みたいな顔になってんだ。別に死んだわけじゃねぇだろうが。それに……もしかしたらここの『理事長』がどうにかしてくれるかもしれねぇぞ?」
そう言うと、ポケットの中から自分のスマホを取り出し、それを指二本で掴んでブラブラさせる。
いきなり何を言いだすんだと周りはどよめくが、ソーナだけは丑嶋の真意を理解していた。
今回の事は何も、一誠達だけをどうにかするのが目的ではない。
これはベリアルと大罪の悪魔たちによって綿密に練られた『作戦』なのだ。
神器も持たない人間であるにも拘らず三大勢力と非常に密接な関係である丑嶋とベリアルだからこそ打てる一手。
自分達の都合しか考えない『理事長』なんてもういらない。
ベリアルが来てくれた今こそが最大の好機だった。
もう既に、こちら側の『
その相手の『王』の妹はそんな事態になっていると微塵も知らずに呑気しているが。
次回は舞台が一時的に冥界に移動します。
どうせ『お掃除』をするなら派手にしないとですよね。