面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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他の事をやっていたら、すっかり疎かになっていました。

本当にすみませんでした。






面倒くさいので、引き摺り下ろす

 冥界 グレモリー領にあるグレモリー家の書斎。

 そこは四大魔王の筆頭でありグレモリー家の当主である『サーゼクス・ルシファー』の仕事場でもあった。

 そこで今、彼は両膝を付いた状態でとある人物を見上げている。

 顔は口分けたまま驚きを隠しきれず、その体は恐怖で震えていた。

 普段の彼を知っている者ならば、信じられないような光景だった。

 

「ま…まさか…生きていらっしゃったのですか……」

「当然じゃない。いつ、どこで私が死んだって言ったのかしら?」

 

 彼が畏怖を感じながら見上げている相手…それは、嘗ての戦争にて死んだと思っていた原初の魔王…ルシファーだった。

 彼女は怒り心頭と言った感じで腕を組みながらサーゼクスの机に腰かけながら彼の事を見下ろしていた。

 

「そもそも、私は最初から死んでなんていなかったのよ。なのに、お前達が勝手に早とちりして私を死んだことにした」

「そ…それは…聖書の神との一騎打ちにて凄まじい魔力の奔流を感じ、その後に姿が見えなくなったのでてっきり相打ちになったのかと思い……」

「死んだと思ったって? ふざけんじゃないわよ」

 

 自分の槍を顕現させ、怒りを表すかのようにダンッ! と床に突き刺す。

 

「確かに、あの時の戦いで重傷を負ったのは事実よ。でも、私はちゃんと生きてたのよ。冥界から姿を消したのは、その傷を癒す為に地上に潜んでいたから」

「ち…地上にっ!? では…同時期に姿を暗ました他の6人の魔王の方々も……」

「私を追って地上について来ていたのよ。あの時は緊急事態だったから何か言う暇が無かったのは事実だけど…それでも普通、死んだことにする? 本当に私達の事を案じているのなら『どこかで必ず生きている筈』ぐらいは考えるもんじゃないの?」

「あ…あの時は…戦争で疲弊していた冥界の復興を最優先にしていたので……」

「私よりも他の事を優先した…ね。それ自体は悪くは無いわ。それ自体はね」

 

 足を組み直し、首をコキコキと鳴らしてギンッ! と睨み付ける。

 サーゼクスの防御力がグンと下がったに違いない。

 

「でも、そこからどうしてアンタらが魔王になる話になるの?」

「…当時、冥界の民たちは新たな統治者を求めていました。少しでも彼らを安心させる為に我々は……」

「魔王になった? それならせめて『魔王代理』ぐらいにしておけばいいじゃない。なのに、あんた達ってばガッツリと魔王になってるじゃない。それと、私が何も知らないとでも思ってるの?」

「な…何をですか?」

「アンタが魔王になった理由。全部知ってるのよ?」

「うぐっ…!」

 

 まるで、全てを見透かされているかのような視線。

 ルシファーの威容は全く変わっていない。

 否、あの頃よりもさらに強くなっているような気さえする。

 

「惚れた女と結婚する為に魔王になるしかなかった…か。ねぇ…アンタにとって魔王って立場と私の名前って、そんなにも軽いものだったの? 私って、そんなにも軽んじられてたのかしら? だから勝手に死んだことにして魔王の座を奪い取ったの?」

「違います! 私は決してそのような事は…!」

「アンタにどんな考えがあろうとも、こっちからしたらクーデターでも起こされたような気分なのよ。傷が癒えてから密かに冥界へと帰って来てみれば、いつの間にか若造が勝手に魔王になってて、しかも自分の名を名乗っていた…それを見た時の私の気持ち…アンタに分かる?」

「これよりも前にもう既に一度、冥界にお戻りになられていた…っ!? そ…それに気が付かずに私は……」

 

 自分達的には良かれと思ってやった事だが、相手からすればこれは完全にクーデターに等しい。

 もっと色んな可能性を考慮し、彼女達を捜索していれば。

 そんな事を考えてももう遅い。全ては後の祭りなのだ。

 

「…私は余り回りくどい言い方は好きじゃないの。だから、ストレートに言わせて貰うわ。サーゼクス…アンタは魔王に相応しくない」

「なん…ですって…!?」

 

 いきなりの事を何を言われたのかよく分からなかった。

 最も尊敬をしていた相手に『相応しくない』と言われた。

 混乱の余り、いつもならば決して見せない呆けた姿を見せてしまう。

 

「アンタは基本的に同胞を…悪魔を疑わない。疑わないからこそ、耳を傾けもしないし関心も持たない。だからこそ、馬鹿どもに付け入る隙を与えてしまう」

「ば…バカ共…?」

「そうよ。しかも、『悪魔の駒』なんて最低のアイテムを生み出してしまうなんて…怒りを通り越して呆れたわよ」

「あ…あれは! 種として衰退している悪魔を救うために……」

「それが間違いだってのよ! 種として衰退? 別にいいじゃない。この世に存在する全ての物はいずれ滅びる運命にあるのよ? それが今度は悪魔の番になった。それだけの事じゃない」

「あ…貴女はそれでも魔王なのかッ!? 悪魔を少しでも存続させたいとは思わないのかっ!?」

「思わないわけないでしょうが! でもね、あんた達のやり方は致命的に間違ってるのよ! そんな簡単な事も分かんない訳っ!? 不自然なやり方で悪魔を増やしたって、そんなのがいつまでも長続きするはずがないでしょっ!! ほんっとうにアンタってバカなのね!!」

 

 遂に怒りを爆発させたルシファーは、服のポケットから徐にある機械を取り出し、それをサーゼクスに見せつけた。

 

「そもそも…悪魔の駒は結果として逆に悪魔を滅ぼす麻薬でしかないのよ。あれのせいで現在、悪魔たちはあらゆる存在からヘイトを集めまくっているってのに…気が付いてないの?」

「我々が…忌み嫌われている…?」

 

 そんな筈がない。確かに、遠い昔は人間達や他の種族とも争っていたが、あの戦争以降は大人しくし、少しずつではあるが友好な関係を築いている筈だ。

 サーゼクスはそう信じ込んでいた。この瞬間までは。

 

「私が持ってるコレ…なんだか分かる? これね…ボイスレコーダーっていうのよ。声を録音する為の機械ね。では、これには何が収録されているでしょうか?」

 

 物凄く嫌な予感がする。

 そんなサーゼクスの気持ちを知ってか知らずか、ルシファーは無表情のままボイスレコーダーのスイッチを押した。

 

『はぁっ!? 堕天使を眷属悪魔にして何が悪いッ!? どうせ、下級の雑魚だ! どこでくたばっても誰にも知られない程の存在を私が有効活用してやってるんだ! 寧ろ、有り難く思って貰いたいな! 薄汚い烏風情が、誇り高き貴族悪魔である私の下僕となれるのだからな! といっても、やるのは私達の性欲処理だがな! はははははっ!』

 

 この声は知っている。グレモリー家と懇意にしている貴族悪魔の声だ。

 信じられない事実に、サーゼクスは声すらも出せずにいた。

 それを見つつ、レコーダーを操作して次の声を出すことにした。

 

『あぁ…あの時の事ですね。よく覚えていますとも。偶然にも地上に来ていた天使を鹵獲し、拷問と強姦の末に心と体の両方を屈服させてから眷属悪魔にした日の事は。あれは最高に面白かった。普段から我ら悪魔を毛嫌いしている天使を奴隷のように扱えるのですから。その天使はどうなったかですって? 勿論、今でも立派な肉便器として働いていますよ?』

 

 これもまたサーゼクスがよく知っている悪魔の声だ。

 少なくとも、こんな事を言うような相手ではなかったと記憶している。

 

「こいつらの事はよ~く知ってるわよね? なんたって、アンタと会っていろんな話をしている連中ですもの。だけど、これがこいつらの本性よ。あんたが青二才なのをいい事に、裏では好き放題やってる。アンタが自分達に疑いを掛けたりしないのを承知の上で」

「あ…あぁぁ…!」

「言っとくけど、これだけじゃないわよ。似たような事件は山ほどあるんだから。アンタが知らないだけで」

 

 ボイスレコーダーのスイッチを切り、ポケットの中に戻す。

 これで僅かでも溜飲が下がった…とはいかないようで、まだまだルシファーは怒っていた。

 

「被害に遭っているのは天使や堕天使だけじゃない。人間にだって多数の被害が出ているし、他の神話体系もまた同様。勿論、それらが悪魔の仕業だって事は既に知られているわ。だから、悪魔たちは周囲全体から怒りと憎しみの目で見られている。ごく一部を除いて…だけど」

 

 悪魔たちの中にも、必死に頑張って信頼を得ようとしている者達がいる。

 ライザーなどがその典型とも言える。

 彼は悪魔としてではなく、ライザー個人として人間だけでなく、他の勢力にも多大な信頼を獲得していた。

 

「悪魔の駒は…ちゃんと話し合いの末に互いの了承を得てから……」

「そんな事をしているのは、アンタを含めたごく少数だけよ。そのほかの連中は、悪魔の駒をまるで玩具のように扱って好き放題してる。だからこそ『はぐれ悪魔』なんてのが沢山生まれて、証拠を隠滅する為にアンタとかに依頼をするんでしょ」

「私は…騙されていたのか…?」

「騙されてたんじゃない。知ろうとしてなかったのよ。だってアンタさ…最初から悪魔を疑うって選択肢自体を持ってないじゃない。だから見向きもしなかった。視界にすら入れようとしなかった。だって、同族たちがこんな非道な事をするなんて想像もしていなかったから。理想ばかりを追い駆けて、現実を全く知ろうとしていなかったから」

 

 口では色々と言っていても、実際にはサーゼクス達の事を見下している悪魔たちは意外と多い。

 中には下剋上を狙い、自分達こそが次の魔王になろうと考える者もいる始末だ。

 それを伝えると、サーゼクスは苦虫を噛んだような顔で俯いた。

 

「どうしてそんな考えを持ってる奴がいると思う? 簡単よ。血筋云々を完全に無視して魔王になってしまったからよ」

「古いしきたりにばかり捉われていては…新しい時代を生み出せないと思ったからです……」

「その考えは立派よ。それには私も同意する。だからと言って、それは決して問答無用で魔王の血縁者たちを最果てに追い遣っていい理由にはならないけどね」

「か…彼らは血の気が多すぎた! それではまた同じ過ちを繰り返してしまう!」

「それをどうにかしてこその魔王でしょうが! 力で無理矢理に追い出すなんて、やってる事はまんま一緒じゃない! 話し合いの席すら設けないだなんて論外中の論外よ!! 同じ過ちどころか、更なる災厄を生み出してるじゃないの! アンタらのやった事は何もかもが逆効果なのよ!!」

「では…どうすればよかったのですか…! 教えてください!!」

「んなの決まってるじゃない。つーか、さっきも言ったわよね? アンタは魔王に相応しくないって。最初から魔王になんてなるべきじゃなかったのよ。私達の事を信じて代理として就任し、もっと周りを疑う事を知るべきだった。馬鹿正直にニコニコしながらハイハイ言ってるだけじゃ王は務まらないのよ…ボウヤ」

 

 腰かけていた机から立ち上がり、腕を組んだまま殺気を滲ませながら睨み付ける。

 室内には絶対零度に近い空気が流れている。

 

「サーゼクス…確かにあんたは戦士としては非常に優れていたわ。それは認めてあげる。だけど、それだけ。どこまでいっても所詮は戦士止まり。アンタには…統治者としての才能は微塵も無い。三流以下よ」

「三流…以下……」

 

 完全に言いたい事は言い終えた…訳ではない。

 ここまではまだ序章。本題はここからだ。

 

「近い内、アンタには…あんた達には魔王を辞めて貰うから」

「達…? では、他の三人にも…!」

「勿論、辞めて貰う。まぁ…アンタよりは流石にマシだけど、それでもやっぱり全員揃って統治者としての才能は無い。だから、私達が出戻って冥界を再び統治させて貰うから。因みにこれ、元老院のジジイ共も了承済みだから」

「あの方々も…!?」

「そ。さっきと全く同じ話をしたら、二つ返事でOKしてくれたわ。私の登場に萎縮してたってのもあるかもだけど」

 

 容姿だけで見れば、ルシファーは見目麗しく若々しい美女ではあるが、それでも原初から存在している強大な魔王であるのだ。

 正体を知っている者ならば、その姿を見た瞬間に萎縮して当然だった。

 

「安心しなさい。別に冥界を追放するとか、そんな事はしないから。魔王を辞めて、今まで通りにグレモリー家の当主をして、領内の管理だけをしていればいいわ」

「領地の管理をする…?」

「そうよ。何にも変わんないでしょ? これまでだって、あんまりここから動くことは無かったんだし」

「…………」

 

 仕事が忙しかった…なんてのは言い訳にはならない。

 寧ろ、忙しいのは自分が未熟である何よりの証拠でもあったからだ。

 

「一度失った信用はそう簡単に…じゃなくて、二度と取り戻せない。それがどん底まで下がった信用ならば尚更ね。アンタ達が計画していた三大勢力間の和平…あれはもう絶対に不可能と思った方がいいわね。どれだけ言い訳をしようと、悪魔たちが天使と堕天使達に被害を齎した事実は覆せないから。その代り…別の勢力間での和平はするつもりっぽいけど」

「別の勢力とは一体…?」

「そんなの…人間達と各神話勢に決まってるじゃない」

「に…人間達ですってッ!?」

「これもまた知らない事だから教えてあげるけど…人間達はとっくに三大勢力の事を認知しているのよ。そりゃ、あんだけ世界中ではぐれ悪魔が大暴れしてたら嫌でも知られるでしょうけどね」

「で…ですが、それに関してはちゃんと隠蔽処理をして……」

「隠蔽って? まさか、目撃者である人間の記憶を改竄することが隠蔽なんて言うつもりじゃないでしょうね?」

「…………」

 

 何も言い返せない。今までずっとそうしていて、それが最善であると思っていたから。

 

「それは隠蔽じゃなくて洗脳っていうのよ。どれだけ慈愛を語っていても、所詮はアンタも悪魔だったって事ね。自分の性根すら測れない時点で統治者失格って分かんないの?」

 

 もうサーゼクスの精神はボロボロだった。

 普通、ここまで好き放題に言われれば怒りにあまりに襲い掛かっても不思議ではないが、サーゼクスは知っていた。誰よりもよく知っていた。

 どれだけ自分が本気を出しても、目の前の彼女にはかすり傷一つすらつけられない程に実力が離れている事を。

 少しでも逆らえば、殺されるのは自分だと本能で理解している。

 だからこそ、サーゼクスは大人しくしている事しか出来ないのだ。

 

「この分だと、アンタが理事長をやってるっていう学校の校長がベリアルに変わったって事にも気が付いてないんでしょうね」

「ベ…ベリアル様が駒王学園の校長っ!? それは一体どういう事ですかッ!?」

「そのまんまの意味よ。つーか、それこそが本題なのよね。かなり話が逸れちゃったわ」

 

 ここから本当の話が始まる。

 ルシファーの顔が怒りから愉悦に変化し、口がそっと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだまだサーゼクス追い込み作業は続くんじゃよ。

それが終われば、一誠達の終焉になります。



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