面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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今回からやっとリアス達の本格登場…なのですが、リアスだけに限って言えば、今回限りになるかもしれません。

だって、これから先の話に登場させる意味が全く無いですから。







面倒くさいので、取り敢えず参上する

 駒王学園旧校舎。

 敷地内の外れにあるこの建物、今では一階が物置に、二階は『オカルト研究部』の部室となっている。

 このオカルト研究部こそがリアス・グレモリーとその眷属達の仮初めの姿であり、ソーナ率いる生徒会と対を成す駒王学園の悪魔たちの巣窟なのだ。

 

「なんだか今日は妙に校内が騒がしかったような気がしますわ」

 

 副部長であり、同時に『女王』でもある三年の『姫島朱乃』が窓の向こうを眺めながらポツリと呟く。

 彼女は堕天使と人間とのハーフでもあるのだが、過去の事も相まって本人はその事を否定したがっている。

 

「この学校が賑やかなのは今に始まった事じゃないでしょ? 朱乃は気にし過ぎよ」

 

 そう言って全く気にする素振りすら見せないのが、サーゼクスの妹であり眷属たちの『王』、そしてオカルト研究部の部長でもある『リアス・グレモリー』。

 ソーナの『友人』を自称しているが、そう思っているのは今ではリアスの方だけ。

 肝心のソーナの方は完全に加奈の方にお熱になっていた。

 

「そう言えば、昼休みの時間に校門辺りに人が集まっていたような気が……」

「午後になってから、クラスの女子達が妙に嬉しそうにしてました。何かあったんでしょうか…」

 

 能天気な部長に対して自分達が感じた学園の異変を伝えているのが、『騎士』の木場祐斗と『戦車』の塔城小猫の二人。

 この二人もまた朱乃に負けず劣らずの脛に傷ありの面々だったりする。

 

「大丈夫よ。何かあればソーナの方から何か知らせてくる筈だから」

「リアス……」

 

 完全に生徒会頼みになっている。

 だが、彼女は知らない。既にソーナはリアスを見限っている事を。

 例え何があっても、絶対にリアスにだけは知らせたりはしないだろう。

 

「ところで、イッセーはまだ来ないの?」

「確かに遅いわね。もしかして、また先生に呼び出されているのかしら?」

「かもしれませんね」

「自業自得」

 

 眷属たちはうっすらとではあるが一誠達の噂は聞いていたので、今回もまたやらかしたのかと勘ぐっている。しかし、リアスはそんな噂なんて微塵も気にしていないので、仮に聞いたとしてもすぐに忘れてしまう。

 人間達の噂なんて、彼女にとっては本気でどうでもいい事だから。

 

「今夜辺りから悪魔としての仕事をして貰おうと思っていたのに……」

 

 朱乃が淹れた紅茶を飲みながらそう呟いていると、いきなり彼女の携帯に着信が入ってきた。

 誰かと思って急いで電話に出てみると、その相手は自分の兄であるサーゼクスだった。

 

『リ…リアス! まだ無事なのかッ!?』

「お兄様? いきなり電話なんてどうしたの? そっちから掛けてくるなんて珍しいじゃない」

『そんな事はどうもでいい! それよりも無事なんだなっ!?』

「無事も何も…意味が分からないわよ? お兄様…大丈夫?」

 

 突如として焦燥した様子で兄が電話を掛けてくれば、誰だって同じような反応をするだろう。

 何も事情を知らないリアスからしたら、本気で意味が分からないのだから。

 

『いいかい。落ち着いてよく聞いてくれ。今すぐに急いで冥界に帰って来てくれ。可能であれば眷属の子達も一緒に』

「はぁっ!? どうして休みの時期でもないのに冥界に帰らないといけないのよ?」

『詳しい事情はこっちに帰って来てからゆっくりと説明する! 今は兎に角…』

 

 受話器の向こうでサーゼクスが更に焦る。

 それもその筈。彼にはまだ誰がリアス達の元に来るのか分らないのだから。

 リアスの事を見縊って、適当な人間や妖怪などが派遣されて来たのならば好都合。

 一番最悪のパターンは『魔王の妹』という肩書に反応し最強クラスの存在がやって来ることだ。

 

 嘗て、とある軍人がこのような言葉を残している。

『よくないと思う予想ほど、よく当たるものだ』と。

 それは、現実となって目の前に突き付けられた。

 

「事情の説明などは不要だ。愚かなる『元魔王』風情が」

「その通り。何をどうしようとも、結末は変わらないのだから」

 

 部室のドアをバンッ! っと勢いよく開け放ちながら室内に入ってきたのは、黒いコートに身を包み、目深にシルクハットを被った痩せすぎな中年男性と、同じように黒いコートを身に付けてはいるが、眼鏡を掛けて穏やかな笑みを浮かべている青年。

 リアス達に全く気配を悟らせないまま部室に入ってきた二人に、全員が硬直してしまう。

 謎の人物という事もあるが、彼らから放たれる圧倒的なプレッシャーの前に身動きを取りたくても取れないのだ。

 

『遅かったか…!』

 

 受話器越しで姿は見えないが、それでもこの声はよく知っている。

 サーゼクスが知る中でも、間違いなく最強格とも言える男達だ。

 少なくとも、まだ未熟なリアス達では絶対に勝つ事は出来ない。

 

『皇帝『根呂』に…音使いの『柊八皇(ヤツミ)』君か…!』

「その通り。お久し振りですね…サーゼクス・ルシファー。いや、今はもうルシファーではないのでしたね。申し訳ありません」

 

 八皇と呼ばれた青年が、リアスの持つ携帯の受話器に向かって無感情に言い放つ。

 それを聞き、リアスは我が耳を疑いながら動揺した。

 

「何を言ってるのよ……お兄様が魔王じゃない…ですって? そんなワケないじゃない! 戯言は止めなさい! そもそも、あなた達は一体どこの誰よッ!? ここは学園の敷地内よ! 部外者は出ていきなさい!!」

「ギャーギャーと騒がしいぞ。礼儀知らずの悪魔の小娘め」

「なんですってっ!?」

「我々がここにいるという事は、それは即ち、ちゃんと学園側から許可を貰ってから、ここにいるという事に決まっているだろうが。貴様のような無礼者と一緒にするな。不愉快極まりないわ」

「んなっ…!?」

 

 根呂の容赦のない正論にリアスは絶句する。

 一体どこの誰が、こんな連中に入る許可を与えたのか。

 どうしてここにいるのか。

 何もかもが分らないことだらけだった。

 リアスが分らないのだから、眷属の者達も当然のように全く状況が分からずにいる。

 

「まずは自己紹介から。僕は『柊八皇』。八つの皇と書いて『ヤツミ』と呼びます。はぐれ悪魔や怨霊、悪しき妖怪退治などを生業としている『音使い』と呼ばれる事をしています。これっきりの関係になると思いますから、無理して覚えなくてもいいですよ」

 

 一見すると優しげな感じの好青年の八皇だが、この中でも唯一、武道系の部活をしている祐斗にだけはハッキリと分かった。

 この人物は化物だ。仮に、これから先の一生を修行に費やしたとしても、絶対に勝つ事は出来ないだろうと確信できた。

 

「本来ならば無礼千万な小娘などに自己紹介など反吐が出るが、私は貴様とは違って礼儀正しいのでな。教えてやる」

「あはは…相変わらずだなぁ……」

 

 コホンと咳払いをしてから、中年男性は自己紹介を始めた。

 

「我が名は『根呂』。本来は化け猫専門の霊媒師をしているが、今回は別の仕事で駒王学園に来ている」

「化け猫専門…!」

 

 そう聞いて真っ先に反応したのが小猫だった。

 何故なら、彼女は元は猫又と呼ばれる妖怪だったからだ。

 警戒心を露わにするのも当然である。

 

『君達二人の依頼主は…矢張り……』

「えぇ。日本神話の神々たちです。もっと詳しく言えば、この駒王町の土地神ですけど」

「然るべき手続きも挨拶もせず、我が物顔で他者の土地でふんぞり返る愚かな小娘に神々は怒り心頭だ」

「日本神話の神々ですって…? そんな矮小な連中が、この私に何の用なのよっ! そもそも、お兄様が魔王じゃないってどういう事っ!? ちゃんと説明しなさい!!」

 

 リアスの叫びに、二人は思わず顔を見合わせてから溜息を吐く。

 ヤレヤレと言った感じで首を振りつつ、八皇が仕方なく説明をすることに。

 

「一つ一つ説明してあげましょう。これでも表向きは高校教師をしていますからね。子供達にものを教えるのは得意です」

 

 比較的物腰の柔らかい八皇から説明を受けられるのは少しだけ安心した。

 もしもこれが根呂だった場合、内心ビクビクしながら聞かなければいけないからだ。

 

「まず、君の眷属である兵藤一誠くんですが…彼はついさっき、警察に逮捕されました」

「た…逮捕ですってっ!? どうしてっ!? なんでイッセーがっ!?」

「なんでって…女子更衣室を頻繁に覗いていれば、そりゃ捕まるでしょう? 今までは、どこぞの無能な元理事長サンが学園の評判を保つ為に力技で揉み消していたようですが」

『うぐ…!』

 

 しれっと自分の事まで言われてしまい、受話器の向こうで胸を押さえるサーゼクス。

 

「覗き程度で私の可愛い下僕が逮捕ですってっ!? ふざけないで頂戴!! そんなの、すぐに取り消させるわ!!」

「出来るわけないでしょう。目撃者は大勢いる上に現行犯逮捕。証拠映像や音声も全て揃っている上に、それらはネットにも拡散されている。更に言えば、密かに兵藤くんを初めとした三人組を退学させる署名も多く集まっているようですし。何をどうしても逆効果にしかなりませんよ」

「そんなの、すぐに目撃者達の記憶を消せば……」

「させると思いますか?」

 

 レンズの奥から氷のような目で睨み付ける八皇。

 少しでもおかしな行動をすれば、その瞬間に殺されるだろう。

 

「彼らの逮捕は当然の事です。少なくとも、ここにいる四人以外の全校生徒がぞれを望んでいる以上、何をどう叫んでも無意味です」

「待って…私達以外って事は、もしかしてソーナも……」

「生徒会長である以上、学園生活に邪魔な存在を排除するのは当たり前では?」

「邪魔…ですって…!」

 

 本当は思い切り言い返したい。けど出来ない。

 幾ら身の程知らずのリアスでも、本能で理解してしまったからだ。

 おかしな言動をしたら、すぐに自分は消されると。

 

「次はサーゼクスさんに付いてですが…。まず、彼はこれまでの数多くのツケを払う責任として、魔王を辞任し、ある方にお渡しするようです。疑うようであれば、本人に直接聞けばいいでしょう。詳しく教えてくれますよ」

「ツケって何よ…。お兄様が魔王を辞めるなんて嘘よ!! 私は信じないわ!!」

『リアス……』

 

 そう言ってくれるのは素直に嬉しい。だが、事実は事実なので何も言えない。

 

「そもそも、お兄様の他に誰が魔王になるって言うの!」

「初代ルシファーに決まっているでしょう?」

「はぁ? アナタ何を言ってるの? 初代ルシファーは昔の戦争で死んでるのよ?」

「…だ、そうですよ?」

『リアス…彼の言っている事は本当だ。僕は魔王として何も出来ずに、数多くの犯罪を見過ごしていた。その結果、悪魔という種族は滅亡の危機に瀕している。それを実は生きていたルシファー様に指摘されてね…魔王を辞めることになったのさ…』

「そ…そんな……」

 

 兄から説明を受けても俄かには信じられない。

 正確には、頭が理解を拒んでいた。

 

『しかも、辞めるのは僕だけじゃない。他の三人も一緒に魔王を辞任するんだ。他の皆は自分の意志で辞めるけどね……』

「嘘…嘘よ……」

 

 呆然としながら力無く首を振るリアス。

 だが、これは全く本題ではない。

 本題はここからなのだ。

 

『しかし…よく知っているね。君達が話しているのは、ついさっきの事の筈だが……』

「我等の情報収集能力を侮らないで貰おうか」

「こう見えても、僕達には色んな所に情報源があったりするんですよ。サーゼクスさんには分かると思いますけど?」

『そうか…成る程……』

 

 恐らく、彼らに対して情報を流しているのはベリアルだ。

 昔から色んな国や勢力と個人で非常に太いパイプを持っている彼のことだから、今回のリアスの事にも確実に一枚噛んでいるだろう。

 

「さて…ここからが本題です」

「まだあるの…?」

「当然でしょう。今から話す事は全て、貴女が無知であり、同時に周囲の者達が貴女を必要以上に甘やかして育てた結果故に起きた出来事です。心して聞きなさい」

 

 八皇と根呂の雰囲気が急変し、一気に部室内の空気が重苦しくなる。

 気を張っていなければ、一瞬で気を失ってもおかしくない程に。

 もし仮に、この場に一誠がいたら、泡を吹いて小便を漏らして白目を剥いていた事だろう。

 

 今日この日…リアス・グレモリーは全てを失う。

 

 

 

 

  

 

 

 

 




今回登場した二人が誰なのか分かった人は本当のマニアです。

どっちも物凄いマイナーなキャラですから。

最初は姿の見えない八百万の神々の意志が部室内の家具などに宿って工芸してくるっていう展開を考えていたのですが、途中でリアスに対する説明役&送還役を誰かにして貰う方がいいんじゃないかと思い至り、ふと頭を過った『あの二人』に任せました。



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