面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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クラス対抗戦だけど、彼女はいつも通りに過ごします。

けど、ちょっとだけ意外な展開が……?















面倒くさいので、取り敢えず口車に乗る

 今日はクラス対抗戦の開催日。

 一年で一番最初のイベントという事も有り、今日は授業の類は一切無く、朝からずっと学園はクラス対抗戦一色に染まっている。

 つまり、今日ならば別に休みの届けを出さなくても大丈夫な日でもあるのだ。

 なんて素晴らしいのだろう。まるでパラダイス。

 

『宣言通り、本当に見にも行かないのですね』

「最初からそう言ってるじゃん。何度も言わせないでよね」

 

 私はというと、いつものように学生寮の自室にて引き篭もっている。

 生徒や教師の殆どはクラス対抗戦の為に各アリーナへと行っているので、現在は警備員や用務員のおっちゃん達を除けば、学生寮も校舎も無人に等しくなっている。

 つまり、私の邪魔をする人間は一人もいないという事なのだ。

 

「皆があくせく試合をしている時に、自分はのんびりと一人でソシャゲ三昧……控えめに言っても最高だね」

『そう言えば、軍曹殿は昔からずっと学校のイベントの類は全て休んでいましたね』

「だって、面倒くさいんだもん。何が悲しくて、休みの日に学校に来なくちゃいけないのさ。頭おかしいんじゃないの?」

 

 体育祭に文化祭。遠足や修学旅行。社会科見学とかもあったけど、私は全部休んだ。当然だよね。行く理由が無いもん。

 

「なんか周回ばっかで飽きてきたな~…」

『ならば……』

「よし。魅惑の二度寝をしよう」

『どうして、そこで対抗戦を見に行こうという発想にならないのでしょうか…』

 

 なるわけないだろうが。

 そんな可能性、欠片も頭によぎらなかったわ。

 

(そういや、クラス対抗戦には『無人機(ゴーレム)』が乱入してくるんだっけ。私には関係ないか。どうせ、織斑一夏が主人公補正で倒すんでしょ? あーなんて素晴らしい我等が主人公様。ほっといても勝手に事件を解決してくれるから助かるわー。それだけは感謝してやるよ)

 

 スマホばっかり見続けていたせいか、目が疲れてきた。

 いい具合に疲れも溜まってきたから、本格的に二度寝と洒落込みますか。

 

「アールー。カーテン閉じてー」

『了解しました』

 

 私が触ってもいないのに、カーテンが勝手に閉じていく。

 この部屋に住むようになった時から、アルは部屋中に設置された機器を操作できるようにアクセスしてある。

 つまり、私の声一つで明かりもテレビも簡単につけられる仕組みなのですよ。

 それなのに全く太らないんだから、私ってば神に愛されてるー。

 

「それじゃあ…おやすみ~…」

 

 私がシーツを頭から被って睡眠モードに入ろうとした瞬間、いきなりスマホに誰かから着信が入ってきた。

 

「…………」

 

 無視無視。私に掛けてくる相手なんて、あのクソッタレな両親以外に思いつかない。

 その時点でシカト確定だ。

 

『…出ないのですか?』

「出ない」

 

 …まだ鳴ってる。いい加減に五月蠅いぞ……。

 

『おや? これは……』

「どったの?」

『軍曹殿。試しに着信元を辿ってみたら、IS学園の理事長室になっています。恐らくは理事長が掛けてきているのでは?』

「はぁ? 理事長?」

 

 なんでまた、そんなお偉いさんが私に掛けてきてるさ。

 つーか、なんでこっちの番号を知ってるのよ?

 

『取り敢えず、出た方が宜しいのでは? 恐らく、軍曹殿が出るまではずっと鳴り続けるかと……』

「仕方がない……」

 

 腹立たしく思いながらも渋々、私は着信に出る事に。

 私の安眠を妨げた罪は重いぞ~。

 

「…もしもし?」

『…相良加奈さん…ですか?』

「そうですけど。そう言うそちらさんは理事長先生ですか?」

『御存知でしたか……』

 

 白々しい。自分の正体がバレる事なんて最初から承知していたくせに。

 

「ところで、どうして私の番号を知ってたんですかね?」

『…余り知らない方が良いと思います』

 

 あー…政府の連中か。

 いざって時、私を都合のいい切り札として使う為に理事長にその手の情報をリークしやがったな。

 よし、近い内に必ず殺そう。はい、確定。

 

「で、その理事長さんが私なんかに何の御用で?」

『時間も無いので手短に話します。現在、クラス対抗戦が開催されていた第一アリーナに謎の機体が乱入し暴れ回っています』

「それで?」

『貴女にコレの排除をお願いしたいのです』

「絶対に嫌です。はい、話終わり。失礼しましたー」

 

 予想通りの事を言われたので、私は容赦なくバッサリと切り捨てて着信を切ろうとする。

 すると、向こうも相当に慌てたのか、受話器の向こうで大声で叫びだす。

 

『ま…待ってください! あそこには君のクラスメイトや先生達もいるのですよっ!?』

「だから? あいつらがどうなろうと、私には全く関係ないですよね?」

『心配じゃないのですか…?』

「全然。つーか、ブリュンヒルデがいるなら、彼女に任せれば全部解決でしょ。よかったよかったー」

『織斑先生は現場指揮官なので動けないのです……』

「『動けない』じゃなくて『動かない』の間違いじゃ? あのブラコン女の事だから、どうせ『私の愛する一夏なら、あの程度の敵ぐらい簡単に倒すに決まっている』とか思ってるんでしょ。ほんと、馬鹿だよねー」

『……聞いた以上に厄介みたいですね』

「はい?」

 

 一応、聞こえてない風を装ったけど、実際にはちゃんと聞こえてるからな。

 厄介な性格で悪かったな。

 

『…死人が出るかもしれないのですよ?』

「人間、生きていればいつかは必ず死ぬんだし、その程度の事でピーピー言われてもねー。それに、そうなったら一番困るのはソッチでしょ? 増々、私には関係ないじゃないですか」

『同じ学園に通っている仲間が危機に晒されているのに、何にも感じないのですか?』

「仲間? それって誰の事を言ってます? 生憎と生まれた瞬間から仲間なんて一度もいた試しは無いんですけど」

『……………』

 

 あら。遂には黙っちゃった。

 

『…どうしたら動いてくれますか?』

「どうしても動きません。だって、理由が無いし」

『理由があれば動いてくれるのですか…?』

「そうなりますね。無理でしょうけど」

 

 はぁ…本当に下らない。

 顔も知らない、名前も知らない人間が何人死のうがマジでどうでもいいじゃん。

 そんなにどうにかしたいのなら、こんな小娘なんかに頼らずに、まずは自分が動けって話ですよ。

 

『…君は善意では動かないのですね』

「善意じゃお腹は膨れませんし。こんな言葉は知ってます? 『善人は早死にする。悪党はジジイになる』」

『それは……』

「今はそういう世の中なんですよ。ISが関わる場所で人が死ぬなんて日常茶飯事でしょうに。ここに来ている生徒達も、その程度の覚悟ぐらいは出来ているんじゃ?」

『出来ている訳が無いでしょう!!』

「わっ」

 

 いきなり大声を出さないでよー。めっちゃ耳がキーンってなったわ。

 

『…一体どうすれば…君は動いてくれるのですか……』

 

 いや…マジでしつこいぞ。こうしている間に主人公君が原作通りにズバーンってやっつけてるんじゃないの?

 だとしたら、完全に私ってば空回りするよね?

 

『…報酬』

「ふえ?」

『もしも、君が謎の敵をなんとかしてくれたら、理事長権限で報酬を差し上げます…』

「いや、金ならもう間に合ってるんで。こっちが何も言わなくても、うちの糞親が勝手に送ってくるし」

『いえ…金銭ではありません』

「じゃあ、何を?」

『…卒業資格…なんてどうでしょうか?』

「……詳しく聞かせてください」

 

 おい…このジジイ。ちょっち聞き捨てならない言葉を抜かしやがったぞ。

 

『君は座学以外の授業には一切出ていないと聞いています。まぁ…既に実技関係の単位は全て取っているので問題は無いのでしょうが……』

 

 なんで知っている…とは聞かない方が良いんだろうな。

 多分、あのブラコンが報告したんだろう。

 戦う以外に能が無い脳筋女かと思っていたけど、意外とやるもんだ。

 

『それで、今回の成功報酬として、卒業までに必要な全ての単位を特例として全て取得したことにします。勿論、出席日数の方も免除しましょう。IS学園に所属さえしてくれれば、今後一切の授業に出席しなくても、三年後には自動的に卒業できます。登校するか、しないかは完全に君の自由意思に委ねます。勿論、この事は後でちゃんと織斑先生たちにも言っておきますので……』

 

 …食えないジジイだ。悪くない条件どころじゃない。

 こっちにとっては最高の条件だ。

 これからはもう、アルに頼んで学校のサーバーに直接、私が休む旨を伝える必要が無くなる。

 

「……分かりました。その条件で手を打ちましょう」

『ほ…本当ですかっ!? ありがとうございます…!』

「その代り、ちゃんと約束は守って貰いますからね。この会話も一言一句録音してるから、後で言い逃れなんてしようとは思わないように」

『承知しています。それで生徒達の命が救えるのなら、安いものです』

「さいですか」

『では…よろしくお願いします』

 

 あ…向こうから勝手に切りやがった。ったく……。

 

『軍曹殿。私も聞いていましたが、本当に良かったのですか?』

「正直、なんか乗せられたな~とは思ってる。けど、あの報酬はめっちゃ魅力的だった。それに、いい教訓にもなったしね」

『教訓…ですか?』

「うん。ぶっちゃけ、私の考えが甘かったわ。寮の中で引き篭もってれば、後はどうにかなると思ってた私がバカだった。やっぱり、もっと外に出ないとダメだよね」

『おぉ~! 軍曹殿が遂に…遂に…!』

「授業自体は今まで通りにサボるとして、今回みたいなイベントの時には……」

『イベントの時には?』

「旅行に行く」

『そうそう旅行に……え?』

「ここに残ってるから、今回みたいにいいように利用されるんだよ。だったらいっそのこと、遠くに離れていれば頼りようが無いじゃん?」

『ぐ…軍曹殿……』

 

 え? ちょ…何よ。なんでそんな呆れてるの?

 私的には超絶ナイスアイデアなつもりなんですけど?

 

「という訳だから、今回の仕事が終わったら早速、観光系のサイト巡りを始めるよ~。ご当地限定の美味しいものを食べたり、面白い物を見まくるぞ~」

 

 なんか少しやる気が出てきた。

 これが俗に言う『報酬効果』ってやつか。

 

「それじゃ、お仕事を頑張りますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ほんのちょっぴりだけ介入。

けど、顔出しはしない。

皆の前に登場もしない。
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