面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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これでようやくグレモリー眷属に関する話は終わりです。

ここから先、彼ら、彼女らの出番は殆ど無いでしょう。

出す理由が無いし、同時に意味も無いからです。

あの面々はレギュラーから一気にモブにまで降格します。

原作主人公とヒロインに至っては明確な描写すらなくなるでしょうね。

何処かで適当に末路を書くかもしれませんが。








面倒くさいので、選択肢を与える

 八音の放った『音』によって変わり果てた姿となり、冥界へと強制送還されたリアスを目の前で見ていた朱乃、祐斗、小猫の眷属三人。

 当面の目的を果たした八皇と根呂ではあったが、まだ三人がグレモリーの眷属悪魔である以上、ここで大人しく逃がすという事はしない。

 

「さて…残るはお前らだけだが……」

「私達も…リアスと同じようにするのですか……」

 

 怯えたような、それでいてまだ諦め切れないような、そんな複雑な感情を滲ませながら朱乃は二人の男を見上げる。

 自分の実力では絶対に勝てない事はよく分っている。

 だからと言って、このままリアスと同じ様な目に遭うのだけは絶対に御免だった。

 

「まぁ待て。確かに我々は『リアス・グレモリーと、その眷属を地上から排除する事』を依頼されているが、別にそれはお前達を皆殺しにすると言う事と同義ではない」

「なんですって…!?」

 

 リアスをあんな目に遭わせておきながら、今更何を言うつもりなのか。

 思わずそう声を荒げたかったが、目の前の二人からはもう殺気を全く感じなくなっていて、それが彼らの言葉が偽りではない事を示していた。

 

「ここで貴様たちに与えられる選択肢は二つ。一つは『体内にある悪魔の駒を排除して人間に戻り、眷属悪魔だった頃の記憶を全て消した上で地上で今まで通りの生活を続ける』か……」

「『変わり果てた愚かな主に付き添う形で冥界に戻り、永遠に地上へ戻れないまま一生を過ごすか』のどちらかだ」

 

 二者択一と言えば聞こえはいいが、選ぶ余地なんて有ってないようなものだ。

 だがしかし、どちらを選んでも自分達が殺される未来だけは無いように見えるのは何故だろうか。

 

「ど…どうして僕たちを生かすんですか…」

「殺す理由が無いからだ。いかに貴様等が雑魚とはいえ、それに費やす労力は出来る限り削っていきたいのでな」

「ぐっ……」

 

 祐斗の疑問に根呂が表情を変えずに淡々と答える。

 確かに、自分達がまだ未熟であることは求めるが、そこまで言われる程なのか。

 そんな疑問も、彼らの威容と実力を目の前で見せつけられた今となっては、一瞬で胸の奥に消えていく。

 

「あ…あの…一つだけいいですか…」

「なんですか?」

 

 体を震わせながら、小猫が挙手をしてから質問をすると、八皇が入ってきた直後のような穏やかな笑顔を見せながら応える。

 彼の本性を知った今となっては、その笑顔が却って怖いのだが。

 

「この建物の一階に…その…半吸血鬼の男の子がいた筈なんですけど…その子は……」

「あぁ…情報にあった『ギャスパー・ヴラディ』という子の事ですか。何故か女の子の格好をしているという……」

「そ…そうです。あの子も、私達と同じように…?」

「いえ。彼に関してはもう事は済んでいます」

「……え?」

 

 ここにはいない、もう一人の眷属であるギャスパーに付いて尋ねようと思っていた小猫だったが、事は済んでいると聞かされて思わず目を見開く。

 済んでいるとはどういう事なのだろうか?

 まさか、もう彼はこの世には……。

 

「最初にお粗末な封印を解いてから会ってみると、酷く怯えた様子だったのでな。私の愛犬にして使役している犬神である『パトラッシュ』を宛がってみると急に大人しくなり、それから八皇君が優しい感じで今と同じことを彼に問いかけたのだ」

「ギャーくんはなんて…?」

「二つ返事で眷属悪魔を辞めて、悪魔だった事の記憶を抹消した上で今まで通りの生活を選んだ」

 

 ギャスパーがもう既に悪魔ではなくなっている。

 その言葉に、三人全員が驚きを隠せない。

 確かにギャスパーは怖がりではあるが、まさかそんなにも簡単に受け入れるとは思わなかったのだ。

 

「どうやら、彼は殆ど状況に流される形で眷属になったようなのでしてね。眷属悪魔で無くなっても彼の中に半分だけ吸血鬼の血が流れているのは事実。とはいえ、今までよりは遥かに命の危険は下がる。それを彼もどこかで理解していたのでしょうね。こちらがそれらを説明するよりも先に返事をしていました」

「「「………」」」

 

 既に先手は打たれていた。

 後は自分達がどうするかだけ。

 これは文字通り、人生の分かれ目だ。

 だが、その前にどうしても尋ねておきたい事があった。

 

「ど…どうやって私達の中にある『悪魔の駒』を摘出するのですか…? 確かアレは、一度入り込めは二度と取り出すことは不可能の筈……」

「それは悪魔たちが勝手にそう思っているだけだ。悪魔の駒という禁忌の道具が生み出されてからこっち、ずっと各勢力はアレを取り出す方法を研究、模索し続けている。その成果の一つが我等の手元にある」

 

 根呂が説明をすると、それに合わせて八皇が懐の中から『ある物』を取り出した。

 それは紫に怪しく輝く歪な形状をした、黄金の装飾が施された一本の短刀。

 禍々しい魔力を漂わせているソレは、存在そのものが怪しさ全開だった。

 

「これは『コルキスの魔女』こと『メディア』が所有していたとされる宝具。その名も『破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)』」

「ルール…ブレイカー…?」

「正確には、それを研究し量産したレプリカだがな。量産型でも、その効果はオリジナルと大差はない」

 

 ルール・ブレイカー・レプリカを器用に回しながら、八皇が説明を続ける。

 仮にも表向きは教職をしているだけあって、説明は得意中の得意だった。

 

「これの効果は単純明快で、これに刺された対象はあらゆる契約を無効化される…というものです」

「契約の無効化…?」

「その通り。勿論、この『契約』には『悪魔の駒』も含まれています。つまり、これを使えば安全確実に悪魔の駒を摘出して人間に戻る事が可能になるんです」

「故に、このルール・ブレイカー・レプリカは悪魔以外の全ての勢力に配られ、次々と本人の意思とは無関係に悪魔にされた者達が元の種族に戻って自分の生活を満喫している」

 

 悪魔とは良くも悪くも閉鎖的な種族だ。

 冥界なんていう陰気な場所を主な生活場所にしている時点で推して知るべしだが。

 そのせいか、こと情報戦に置いては全ての勢力の中でも最も劣っている部分でもあった。

 魔王だったアジュカがルール・ブレイカー・レプリカの事を全く知らなかったのがよい証拠だ。

 

「なので、悪魔の駒の摘出に関しては全く問題はありません」

「それじゃあ、記憶を消すというのは…」

「『音』の力を使えば簡単です。その気になれば記憶の改変も可能ですよ。例えば、眷属悪魔だった間の記憶を消して、そこに別の記憶…学園で何気ない学生生活をしていたという記憶を埋め込む…とかね」

 

 記憶の消去や改変などは魔力を使えば朱乃などでも十分に可能ではある。

 だが、それを『音』でするなんてのは彼女達からすれば前代未聞だった。

 それだけ『音』の汎用性が絶大であるということなのだが。

 

「…で、どうします? 一応言っておくと、悪魔のまま冥界に戻るというのは余りオススメは出来ませんけど」

「それは…どうして?」

「地上と冥界を結ぶ境界の全てに『特殊な結界』が張られ、『グレモリーに属する全ての存在』の通過を完全拒絶するからだ」

「特殊な…結界?」

「正確には『結界』なんて立派な物じゃありません。日本の神々の『グレモリーの悪魔を完全否定する』という強大な意志の力が結界の形となって地上全体を覆い尽くすのです。無論、それには多勢力間の神々も協力しているらしいですが」

 

 グレモリーだけを拒絶する結界。

 リアスが与えた影響は、本人達が想像している以上に大きかった。

 

「特に…木場祐斗くん…でしたっけ? 君の場合は非常に都合が悪いのでは?」

「僕の都合…ですか?」

「えぇ。冥界に閉じ込められたが最後、もう二度と地上に戻って『復讐』が出来なくなってしまいますよ?」

「!!!」

 

 自分がずっとひた隠しにしてきた過去。

 それすらも彼等は握っているのか。

 『復讐』を引き合いに出されれば、祐斗にはもう何も言えなくなる。

 

「君の過去を知りつつも、その『本来の目的』に一切手を貸さずに傍観だけで済ませていた相手に義理なんて感じる必要はないと思いますけど?」

「だけど…僕は部長に命を……」

「救われた…ですか? では、もう復讐は全て諦めると? 仲間達の無念を晴らすよりも、今や悪魔を滅ぼす元凶と成り果てている主への義理を果たす方が優先順位が高いと?」

「僕は…僕は……!」

 

 復讐を諦める事なんて絶対に出来ない。

 彼はその為だけに仲間達の屍を踏み越え、今の今まで生き恥を晒し続けたのだから。

 それに、彼らの言っている事も尤もだ。

 リアスは今まで一度だって自分の復讐の手伝いをしてくれたか?

 いや…それ以前に、自分の過去に同情や共感はしてくれても、結局はそこ止まりだったじゃないか。

 自分が何を目的として生きているのか。眷属悪魔になったのか。

 それを全て知っていたのに、逆にリアスはそれを忘れさせようとしていた。

 自分の存在意義を。生きている意味を否定したのだ。

 なのに、どうしてそんな相手の為に復讐を諦めないといけない?

 ふざけているにも程がある。

 仲間達の無念は、そんなに軽いものではない。

 

「…八皇さん。僕は眷属悪魔を辞めます。人間に戻した上で悪魔だった頃の記憶を消してください」

「祐斗くんっ!?」

 

 遂に、目の前で仲間が悪魔を辞める宣言をした。

 彼だけは大丈夫と心のどこかで思っていただけに、朱乃のショックは大きかった。

 

「僕は僕の復讐を止めるわけにはいかない。これだけは絶対に…!」

「…いいでしょう。では、そんな君に一つだけアドバイスを」

「なんですか?」

「この駒王町はある種の特異点です。三大勢力の重要人物達が揃っている事がその証になります。この町に居続ければ、もしかしたら向こうからやって来る可能性があるかもしれません。闇雲に探すよりは、ずっと効率がいいと思いますよ?」

「分かりました。これからも駒王学園に通いながら、僕は来たるべき時に備えて腕を磨き続けます」

 

 もう二度と迷わない。

 決意に満ちた顔をした祐斗の心を曲げる事は誰にも出来ないだろう。

 

「…塔城小猫…いや、白音というべきか。ここで冥界に行ってしまえば、もう二度と真実を知る機会は失われるぞ。そう…グレモリー共が意図的に隠蔽した貴様の生き別れた姉…黒歌に関する真実をな」

「く…黒歌姉さまの真実ッ!? というか、どうして根呂さんが姉さまの事を知ってるんですか…!?」

 

 まさかここで姉の名前が出てくるとは想像していなかった小猫は、普段の大人しさは完全に消えて、完全に動揺しながら根呂に尋ねた。

 

「先程の自己紹介の時に言った筈だぞ。私は化け猫専門の霊媒師であると。他の事ならばいざ知らず、猫妖怪の情報に関しては業界内で私以上の情報通はいないと断言出来る。各方面から逐一、新鮮な情報が自然と舞い込んでくるからな」

「じゃ…じゃあ…黒歌姉さまの居場所なんかも……」

「知っている。彼女ははぐれ悪魔認定されながら命からがら冥界から脱出し、その後に京妖怪たちによって保護されている。勿論、さっきのルール・ブレイカー・レプリカにて悪魔の駒を摘出されてな」

「姉さまが…京都にいる……」

「そうだ。冥界に戻されれば、もう二度と姉には会えないばかりか、グレモリー共がお前を末娘の眷属にする為に行った事も知る事が出来なくなる」

「部長たちが私に隠していた事……」

 

 また姉に会える。

 それだけでもう、小猫の答えは決まったも同然だった。

 直接会って色んな話をしたい。

 今まで何処で何をしていたのか。自分と別れてからどうしていたのか。

 話したい事は、それこそ山のようにある。

 それに比べれば、自分に嘘を言っていたかもしれないリアスに対する義理なんて皆無に等しかった。

 

「眷属悪魔を止めれば…また姉さまに会えますか?」

「会える。この根呂が保証しよう。お前が望むのであれば、私がお前を姉のいる京都まで連れて行ってもいい。京の妖怪たちとは個人的な繋がりがあるからな。私からお前の事情を説明をすれば、快く持て成してくれるだろう」

「…分かりました。それを聞かされれば、もう私が悪魔でいる理由はありません。私も眷属を止めます。全ての真実を知る為に」

「小猫ちゃんまで……」

 

 残ったのはもう朱乃一人だけ。

 だけど、自分には地上に対する未練などは無い…と思い込んでいるが、それは甘い考えだった。

 彼女にも他の二人と同じぐらいに譲れない事がある。

 それを言葉に表したことが無いだけだ。

 

「姫島朱乃さん。貴女はどうします?」

「私にはそれだけですか? また何か言うのかと思ってましたけど…」

「お望みならば言いましょうか? 例えば…冥界に行ってしまったら、もう二度と死んでしまったお母様の墓前にて手を合わせる事は出来ないでしょうね」

「お母様のお墓参りが出来なくなる…!?」

 

 それだけは絶対に避けたい事だった。

 幼い頃の事件が原因で父とは疎遠になっている朱乃にとって、亡き母の墓に通う事が唯一の安らぎの時間なのだ。

 

「最悪の場合、それだけでは済まされんかもしれんがな」

「…どういう意味ですか?」

 

 根呂の不穏な言葉に反応し、思わず聞き返す。

 それが朱乃の心を決定づけるとも知らずに。

 

「好き放題やり過ぎたリアス・グレモリーは今や日本の神々や妖怪たちにとっては怨敵とも言える存在だ。その眷属…しかもナンバー2である『女王』の母が眠る墓があると分れば、奴らはグレモリーに対する報復の一環として、お前の母の眠る墓を荒らし、破壊するやもしれん」

「お…お母さんのお墓を…荒らす…っ!?」

「リアス・グレモリーはそれだけの事をやってしまったのだ。完全無自覚のままでな。お前が悪魔の駒を埋め込まれたグレモリーの悪魔である以上、その危険性は常にあると言ってもいいだろう」

 

 大好きな母の墓が荒らされる。

 それだけは絶対に許容できない。

 墓荒らしをしようとしている者も許せないが、ここで朱乃は考える。

 そうなる可能性を生み出した元凶は一体誰であるかを。

 

「貴女のお父上であるバラキエルさんでも、彼らを押さえるのは難しいでしょうね。非は完全にグレモリー側にあるのですから。本当は一族全員だけでなく関係者全員が皆殺しにされていても不思議ではないレベルの失態だったのに、それを『強制送還』程度で済ませてくれているのですから。今回の彼らは相当に慈悲深い」

「我等は強制はしない。故に好きに選ぶといい。亡き母と仲違い中の父と仲直りできる可能性か。それとも、お前の大切な物全てが蹂躙される理由を作った女か」

「私は……」

 

 言い方は卑怯ではあるが、二人の言っている事は何一つとして間違っていない。

 朱乃自身、話を聞きながらリアスが全面的に悪いと思っていたからだ。

 これまでにも色んな事があったが、今回ばかりは同情の余地も擁護の余地も無い。

 これでもしリアスの味方でもしたら、それこそ愚か者の仲間入りだ。

 

(…ここら辺が潮時なのかもしれないわね)

 

 静かに目を閉じてから数秒。

 ゆっくりと瞼を開けた朱乃はハッキリと言った。

 

「…私の『悪魔の駒』も取り出してください」

「いいのだな?」

「えぇ…この辺が縁の切り時なのかもしれません。それなりにいい夢は見させてもらいましたわ」

 

 朱乃に限って言えば八皇と根呂の口車に乗せられるような形ではあったが、最終的には全員がリアスの元から去る決意をした。

 これにより『リアス・グレモリーの眷属』はいなくなることになる。

 因みに、兵藤一誠の場合は余りにも弱すぎて日本勢力は眼中にすら入っていないので最初からターゲットにされていない。

 彼は彼で法の下で裁かれる事が決定しているので問題は無いだろう。

 

「それでは、これより君達三人の中から『悪魔の駒』を摘出し、同時に悪魔だった頃の記憶を消しましょう。それと、最後に言っておきますが、悪魔の記憶を消すという事は即ち、リアス・グレモリーに関する記憶も全て消えるという事になります。それでもいいですね」

「「「構いません」」」

 

 最後の確認に対しても三人は力強く頷き、それに合わせて根呂がルール・ブレイカー・レプリカを構え、八皇が両手を合わせる。

 

「それでは…いきます」

「傷跡に関しては心配するな。実際にはかすり傷程度だからな。ちゃんと手当さえすればすぐに治る」

 

 瞬間、根呂は三人の体に魔の刃を突き立て、部室内に『音』が鳴り響く。

 朱乃達の脳内からリアスと悪魔だった頃の記憶が消去されゆく中、その体から真っ赤に染まったそれぞれの悪魔の駒が現れ、床に落ちた。

 それを残らず拾い上げた根呂は、そのまま粉々に握り潰し、ポケットから浄化の塩が入っている容器を取り出し、中身を破壊された駒へとふりかけ、更に別のポケットから聖水の入った小瓶を取り出し、それを掛けてから徹底的に無効化することで全ての作業を終えた。

 

 こうして、駒王学園から『グレモリー眷属』は文字通り一人残らず消えてなくなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




殺しはしません。かといって傷つけたりもしません。

ただ『元に戻した』だけです。

多少の脅しっぽい台詞は入りましたけどね。
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