面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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グレモリーに対する最後にして、地味に一番辛い罰…かも?

一思いにしないのがとんこつラーメン流。

私のアンチはギャラクシアン・エクスプロージョンではなく、スカーレット・ニードルなのです。







面倒くさいので、最後まで面倒を見させる

 これまたいきなりの登場の相良尺八朗ことベリアル。

 普通ならば昼休みに校長が生徒会室を訪れるなんて有り得ないかもしれないが、彼ほどに気さくな人物ならばこれぐらいは当然なのだ。

 

「校長室からも見えていました。どうやら、例の三人組とグレモリー一派に関する事は無事に終わったようですね」

「無事…かどうかは分かりませんが、これといった被害は出ていませんね」

 

 一誠達もかなり暴れてはいたが、最終的には応援として駆けつけてきた大勢の警官による数の暴力によって取り押さえられ、手錠を掛けられてからパトカーに放り込まれた時には流石に意気消沈して大人しくしていた。

 彼らを乗せたパトカーが去りゆく時にも、女子達は最後まで三人に対する恨み言を叫んでいたが。

 

「あの三人に関しては、後は丑嶋くんと警察に任せておきましょう。彼らならば『適切な処置』をしてくれるでしょうしね」

 

 ベリアルは、その話術によって日本のみならず、世界中に非常に多くの個人的な繋がりが存在している。

 それは勿論、警察関係者も含まれており、彼はこの世で数少ない政治家でもなければ大会社の社長でもないにも拘らず、個人で警視総監などと太いパイプで繋がっている人物だ。

 魔力の類なんて使わずとも、天使たちでさえ懐柔してみせたその話術にかかれば、欲塗れの人間なんて簡単に味方に付けられた。

 今回の事も、彼が警察上層部に対して頼み、そのついでに三人のこれまでにしてきたことも全て暴露してやった。

 警察としては、駒王町の住民たちに対する絶大な信頼を得られるし、同時に世間からも多大な評価を得られる。

 正義感云々など関係なく、最初から断る理由が無いのだ。

 因みに、ベリアルからの紹介で実は丑嶋と警察内部も結託していたりする。

 この両者が揃った時点で、変態三人組に勝ち目は微塵も無かった。

 

「お久し振りです、ベリアルさん。いや、ここでは相良校長と呼ぶべきでしょうか」

「別にベリアルで構いませんよ。ここには部外者はいないのですから」

 

 ソファから立ち上がり、挨拶をしながら握手を交わす八皇と根呂。

 彼らもまた、ベリアルとは昔からの馴染みだったりする。

 

「パトラッシュもお久し振りです。元気そうですね」

「御蔭さんで。加奈はんはどうでっか?」

「元気にしていますよ。久し振りに君の事をもふりたいと言っていました」

「ははは…わしも、加奈はんのブラッシングはめっちゃ気持ちがええから好きでっせ」

 

 ベリアルと根呂が知り合いならば、当然のように義娘である加奈とも知り合いなわけで。

 根呂が加奈と会う時はいつも、パトラッシュの極上の毛並みを堪能しつつ、日向ぼっこをしつつのブラッシングを楽しんでいる。

 

「わ…私も加奈さんからもふられたい……」

「か…会長?」

 

 どうして、そこで犬相手に対抗心を燃やす?

 いつもの彼女からは考えられない、頭の悪い発言に思わず匙は呆れ顔になってしまう。

 

「では、例の問題児集団について聞きましょうか?」

「承知した。まずは……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「成る程…冥界に強制送還ですか」

 

 根呂と八音から報告を聞き、ベリアルは何度も頷く。

 いつの間にか彼もまたソファーに座っていて、目の前には淹れたてのお茶が置かれていた。

 

「とはいえ、普通に送り返したわけではないですけどね」

「奴はこちらの話をまともに聞こうとしなかったばかりか、抵抗の意志まで示した。故に、我ら…というか正確には八皇くんがリアス・グレモリーに対し『罰』を与えた」

「『罰』…ですか」

 

 言葉の端々から、ベリアルはその慧眼によって彼らがリアスに向けて何をしたのかを『見た』。

 ルシファーが来る前は、このベリアルこそが大罪の魔王達を総ていたのだ。

 この程度の芸当は目を瞑っていても出来る。

 

「随分と『面白い』事をしましたね。長寿であることを逆に利用するとは。八皇くん、腕を上げましたね」

「ありがとうございます」

 

 八皇にとっても、ベリアルは師匠のような存在だ。

 彼からはこれまでに色んな事を教わった。

 その恩を返す為に、今では八皇が加奈に色々と教えていたりする。

 

「眷属たちは、意外と冷静な判断が出来る者達だったな。我らが話すと、思っている以上に呆気なく元主を見捨てた」

「それが普通なのです。忠誠を誓うに値する相手ならば、見捨てた時点で殺されても仕方ありませんが、今回の場合は逆に付き従おうとした方が万死に値する。愚かな王に付き従う者に慈悲など必要ありませんからね」

 

 優しげな口調でとんでもない事を暴露するベリアル。

 彼の最も恐ろしい所は、全く表情を変えない状態で感情を表すところだ。

 敵に回して、これ以上に恐ろしい相手もそうはいないだろう。

 

「記憶を消した上で、この『ルール・ブレイカー・レプリカ』にて悪魔の駒を摘出し、今は部室にて気を失っています」

「そうすると思っていました」

「それで、今は転生悪魔でなくなった彼らのこれからの生活基盤をどうするかを話し合おうとしていたところなのですが……」

「成る程。それに関しては問題ありません。こんな事もあろうかと、こちらの方で先手を打っておきましたから」

 

 根呂とソーナが付け加えると、ベリアルは懐からスマホを取り出してから指差す。

 『先手を打つ』とは一体何をしたのだろうか?

 誰もが疑問符を浮かべている中、彼は何食わぬ顔でどこかに電話をし始めた。

 

「あ~…もしもし? マモンですか?」

「マ…マモンっ!? 大罪の魔王の一角であり、『強欲』を司るマモン様っ!?」

 

 ここで、またもやソーナが驚くほどのビッグネームの登場。

 今回、自分はどれだけの原初の魔王達の名前を聞けばいいのだろうか。

 

『もしもし~? ベリアル~? どうしたのかしら?』

「いえね。私が頼んでおいたことはどうなったかと思いまして」

『あぁ~…あれね。大丈夫よ。こちらでバッチリしておいたから』

 

 バッチリしておいたとは?

 話が全く見えず、全員が小首を傾げる。

 

「マモン。実は今、この場に今回の功労者の皆が一堂に会しているのです。どうか、彼らにもちゃんと説明をしてくれると助かるのですが…」

『あら、そうなの? 分かったわ。それじゃあ、一から教えてあげるわね』

 

 一体何が始まるのか。

 ソーナはドキドキしながら、ベリアルがスピーカーモードにしてテーブルの上に置いたスマホを見つめる。

 

『私がしたのは簡単よ。グレモリーの銀行口座の流れを『固定化』したの』

「固定化…? それは一体……」

『この声は、柊家の八皇ちゃんね。そうよね。それだけじゃ分かりにくいわよね。大丈夫。ちゃんと分かり易く解説するから。コホン』

 

 ワザとらしく咳払いをしてから、受話器越しにマモンの解説が始まる。

 

『まず、リアス・グレモリーの眷属たちの殆どが脛に傷を持つ子達ばかりなのは知ってるわよね?』

「は…はい。現在、彼ら、彼女らはそれぞれに一人暮らしをしています」

 

 ここで反射的に一番事情を知っているソーナが答える。

 姿が見えないとはいえ、相手は冥界では知らぬ者がいない程に有名で強大な存在。

 ソーナはガッチガチに緊張していた。

 

『その子達に対し、グレモリー家は裏から資金援助を行っていた。仮にも『慈愛』を謳っているグレモリーらしいとは思うけど。実際には地上にある銀行に密かに作っているグレモリー専用の口座から自動的にお金が眷属の子達の口座に移動するようになっているの。因みに、その口座は冥界にある口座と連動していて、地上にお金が移動する際に単価も変化するようになってるみたい。まぁ…それぐらいなら私でも簡単に出来るんだけどね』

 

 確かに、グレモリー家は冥界でも有数な名家。

 魔王を輩出したという事もあり、その地位は絶対とも言えた…今までは。

 

(向こうは、そんな事になっていたんですね…。本当に…あの家は甘やかす事しかしない…!)

 

 同じように魔王を輩出したシトリー家の眷属事情はというと、家からの資金援助なんて全く無く、眷属たちはバイトなどをして金を稼いでいる。

 駒王学園は基本的にバイトを禁止にしていないので、それは普通に可能だった。

 リアスに変わって実質的に町の管理をしている上に、生徒会長としてもいそがしいということもあり、ソーナだけは例外的に実家からの仕送りを受けているが、それだって過剰な金額ではない。

 ちゃんとやりくりさえすれば、十分に一ヶ月ぐらいは生活していられるぐらいの額だ。

 

『…で、本題はここから。さっきルシファーからも連絡を受けたんだけど、サーゼクスって子を筆頭に、四大魔王は魔王職を辞任するらしいわ』

「よ…四大魔王全員が辞めるっ!? ということは、まさかお姉さまも…」

『その声は、もしかして現魔王の御家族かしら?』

「えぇ。彼女はセラフォルー・レヴィアタンの妹さんですよ」

『あの子の…。それなら大丈夫よ。グレモリーとは違って、確かに彼女も魔王は引退したけど、本当にそれだけだから。外交官としてはまだまだ働いて貰うつもりらしいわ』

「そ…そうなんですね……」

 

 そう言われて、ソーナは自分の姉の今までの事を思い出す。

 確かに、魔王であることにそこまで積極的ではないように感じていた。

 寧ろ、外交官として働いている時の方が輝いているようにさえ思える。

 

『これからは、レヴィアタンの補佐をしながら頑張っていくらしいわ。だから、心配しなくてもいいわ』

「レ…レヴィアタン様…嫉妬を司る魔王の補佐を……」

 

 それならば安心…だけど、これまたとてつもないビッグネームのご登場。

 しかも、今度は自分も密接に関係しているおまけ付き。

 別の意味で胃が痛くなり始めるソーナだった。

 

『話を戻すけど、リアス・グレモリー眷属が完全壊滅したと知ったら、当然だけど口座の流れを止めようとする筈よね?』

「でしょうね。眷属で無くなったら完全に赤の他人。それに金を与える道理はありませんから」

『その通り。だから、その前に私がその流れを固定化させて、金の流れを止められなくしたって訳。こういうと凄い事のように思えるけど、実際には現状維持をさせ続けてるだけ。ついでに、こっちから色々と操作して元眷属の子達の生活費だけじゃなく、家賃や光熱費、水道代や通信費など初めとした生活に必要な経費諸々全てを自動的にグレモリーの口座から引き落とされるようにしておいたわ』

「これはまた……」

 

 ちゃんと与えられた仕事には抜かりが無い。

 こちらが望んでいる以上に成果を見事に出してくれた。

 ベリアルは感心したように、腕組みをしながら何度も頷いている。

 

『グレモリーの総資産は確かに莫大よ? でも、決して無限にある訳じゃない。どんなお金だっていつか無くなってしまう。どうも、グレモリー家は金に対してそこまで頓着していないみたいで、想像以上に簡単に口座の操作が出来たわ。だからこそ気が付かない。今はまだ大丈夫だったとしても、真綿で首を絞められるように徐々に追い詰められていく。『貧困』という名の絶対に逃げられない運命から』

 

 人間に戻った元眷属たちが死ぬまで大凡8~90年ぐらい。

 長寿な悪魔からしたら僅かな時間かも知れないが、金はそうじゃない。

 その間にかなりの額が無くなっていくだろう。

 特に、小猫は猫又であるが故に悪魔級に長寿かもしれないし、朱乃だって堕天使と人間のハーフだから常人よりも長生きかも知れない。

 ギャスパーに至っては吸血鬼と人間のハーフだ。

 弱点にさえ気を付けていれば、悪魔以上に長生きすることも可能になる。

 それは即ち、それだけグレモリーの持つ資産という名の力が吸われていく時間が増えるという事。

 

『グレモリー家の子達が、自分達の置かれた現状に気が付くのは…一体いつ頃になるのかしらね…?』

 

 全く見えない所で、グレモリーは完全に詰んだ。

 哀れにも、それを知らないのは当人たちだけ。

 自分達を見捨てた者達から自覚も無いままに金を吸われていたと知った時、どんな事を思うのだろうか。

 

「いやはや…本当にお見事です。矢張り、金銭関係に関してマモンの右に出る悪魔はいませんね。借金地獄を乗り越えた後に、金融会社を立ち上げて大成功をしただけはある」

『うふふ…時間だけはたっぷりあったから。ベリアルちゃんのアドバイス通りに頑張ったお蔭よ。それに……』

「それに?」

『…加奈ちゃんがあんなに頑張ってるのに、大人の私が頑張らない訳にはいかないものね……』

 

 またもや加奈の名前が出てくる。

 もしかしたら、大罪の七大魔王は全員、加奈の過去を知っているのかもしれない。

 

(加奈さんは…私が想像していた以上に凄い人物なのかもしれない……)

 

 あのベリアルを養父に持ち、原初の魔王達の庇護下にある人間の少女。

 一昔前までならば、絶対に有り得ないような事だった。

 

「ありがとうございます。また何か用事があれば、こちらから連絡をしますので」

『了解よ。それじゃあ、加奈ちゃんやルシファーによろしくね』

「はい。ちゃんと伝えておきましょう」

 

 マモンとの通話が切れ、ソーナとその眷属たちが一気に息を吐いて力を抜く。

 声だけとはいえ、原初の魔王としての威厳だけは本物だったから。

 

「き…緊張した……」

「大丈夫ですよ。強欲を司るなんて言われてますけど、マモンは七大魔王の中で一番温厚ですから」

「そ…そうなんですか…?」

 

 だとしても、相手が自分達なんかが安易に話しかけていいような存在ではないのは事実。

 どれだけ優しくても、緊張するなという方が無理なのだ。

 

「と…取り敢えず、マモン様のお蔭で彼らの生活面に関しては大丈夫…と見ていいのでしょうか…」

「そうですね。まさに一石二鳥。見事な手腕です」

 

 これで本当の意味で、今のところの懸念すべき問題は全て片付いた。

 まだまだやるべき事は多いが、少なくとも学園内で問題児によるストレスだけ大幅に緩和されそうだ。

 

「そういえば、これからお二人はどうなされるので?」

「先程も言ったが、私は塔城小猫を京都に連れて行く」

「あぁ…例の彼女の件についてですね。分かりました。それで、八皇君はこのまま駒王学園に教職員として配属される…でしたね」

「はい。元々高校教師をしていましたし、政府からも念の為にと言われていましたので」

「……はい?」

 

 ここで目が点になるのは生徒会一同。

 ベリアルと根呂、八皇が今後の事に付いて話しているが、八皇の爆弾発言にて全員が面白い顔になった。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? ひ…柊さんが先生として赴任するっ!? 初耳なのですがッ!?」

「騒動が収まってから教えようと思っていましたからね。結果オーライではありますが」

 

 まさか、日本勢力から派遣されてきた人物が教師となるとは。

 八皇自身はかなりの常識人っぽいので問題は無さそうだが。

 

「ご心配なく。いざとなったら僕も戦力の一つに数えてくれて結構ですよ。教師として、学校という子供達の生活する世界を護るのは立派な義務ですからね」

 

 いや…問題無い処の話ではない。

 この柊八皇という人物…相当に頼りになりそうな予感がする。

 

「それはそれとして、そこの君…確か、匙元士郎くん…でしたね?」

「は…はい! な…なんスか?」

「聞いたところによると、君は数学が苦手とか。この間の小テストでも点数が芳しく無かったようですね?」

「ギ…ギクッ!? ど…どうしてそれを…! 母ちゃんにも内緒にしていたのに……」

「教師として、生徒の事を知っておくのは当然ですから」

 

 普通の教師が言えば頼もしいのかもしれないが、八皇が言うと別の意味に聞こえてくる。

 一体どこで、匙の成績の事を知ったのやら。

 

「大丈夫。ボクの担当教科もまた数学。ちゃんと君の成績向上に協力しますとも」

「えぇぇっ!?」

 

 余計な事を。

 思わずそう思ってソーナの方を見ると、彼女は彼女で厳しい目をしていた。

 

「匙…? あれだけ生徒会の活動にばかり現を抜かさず、勉学もするようにと言っておいたのに……」

「そ…それは~…その~…なんと言いますか~…」

「八皇さん…いえ、柊先生。匙の事をよろしくお願いします」

「はい。任されました。それでは、帰ってから早速、匙君専用にプリントを作成しなくては……」

「勘弁してくれぇ~っ!」

 

 学園に平和は戻ったが、だからと言って成績を落としていい事にはならない。

 匙の補習生活は始まったばかりだ。

 

 

 

 




これで取り敢えずはリアス&イッセーのアンチ話は終了です。

二人の末路に関しては、また別に書きたいと思います。

まずは、そろそろ本気で主人公を再登場させないと…。

次回こそは本当に出番を戻します。




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