面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
更に、今回から始まる聖剣編も3~4話ぐらいで終わらせる予定です。
頭の中ではもう展開が決まっているので、さっさと進ませます。
勿論、そこから先の展開も同様です。
駒王学園に平穏が取り戻されてから数日。
校内には女子達の歓喜の声が響き渡り、同時に嫌な記憶は一刻も早く抹消したいという思いが強くなっているのか、徐々に一誠達の事を話す者達が減っていった。
冥界へと強制的に送り返されたリアスは、次の日には退学扱いとなっていた。
この謎の退学に一部の男子達は残念がっていたが、女子達はそこまでも無かった様子。
どうやら、普段から『お姉さま』ともてはやされていたのはあくまで周りに合わせるためのポーズに過ぎず、実際には調子に乗っている彼女に対する鬱憤が溜まっていたようだ。
なので、リアスがいなくなったことで『清々する』と言った意見は多く散見されたが、その事を心から惜しむ女子は一人も存在しなかった。
小猫は約束通りに根呂に連れられる形で生き別れとなった姉に会う為に京都へと行くことになり、名目上は『転校』という事になった。
祐斗と朱乃は引き続き在学し続けているが、その様子は今までとは全く違う。
まず、祐斗はこれまでのように余裕のある表情は見せず、ストイックに剣道に打ち込んでいる様子が確認された。
それを見て男子達は彼を少しだけ見直し、女子達からは『これもこれでまたカッコいい』と再評価された。
逆に、朱乃はかなり大人しくなり、これまでのように優雅で余裕のある顔は見せなくなった。
それでも、その美貌とスタイルは相変わらずなので、男子達からは注目されているようだが。
そして、ギャスパー。
彼は当初、故郷に戻す方向で話が進んでいたが、その後に彼の過去を調べた結果、色んな事が判明したので急遽として取り止め、その後に彼もまた密かに転校扱いとされてからベリアルの伝手で、とある場所にある『紅魔館』と呼ばれる屋敷にて預かられる事になった。
今では、そこの主である吸血鬼の少女と、その妹に色んな意味で弄られる毎日を送っているとかなんとか。
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駒王朝の町外れ。
そこに、黒い外套を纏った怪しい二人組が立っていた。
「ここが駒王町か」
「懐かしいわね…。元気にしているかしら…イッセーくん…」
どう見ての常人の雰囲気ではない者達ではあったが、平日の昼間という事もあってか目撃者はおらず、到着早々に警察の世話になる事だけは辛うじて避けられた。
当然、そんな二人組がやって来れば、もう町には存在しない『何もしない自称管理者』とは違い、一発で気が付く者達が大勢いる訳で。
駒王学園の校長室で仕事をしている彼もまた、そんな者達の一人だった。
「この僅かに感じる気配は…もしや?」
つい先日、校長兼理事長となった『相良尺八朗』こと『ベリアル』は少しだけ仕事をする手を止め、窓の外を見上げてから眉間に皺を寄せる。
それとほぼ同時に、机の上に置いてある彼のスマホに着信が来た。
「このタイミングで掛けてくるのは…矢張り『ミカエル』ですか」
溜息を吐きつつも電話に出るベリアル。
人心を見抜き、悪魔たちの中でも最も話術に長けた彼にはもうミカエルが話そうとしている事をなんとなくではあるが予想していた。
「はい、ベリアルです。ミカエル、こんな時間に何の用ですか? 私も暇ではありませんし、それは貴方も同じでしょう?」
丁度いいし、小休止でもするかと考えて、背凭れに体を預けながら息を吐き、傍に置いてあったコーヒーを一口。
「で、どうかしたんですか? はい…はい。なんともまぁ…それはまたご愁傷さまで。え? 教会がそんな事を言って? けど、そちらはそんな風には考えていないのでしょう? そもそも、彼がそんなヘマをするなんて絶対に有り得ませんし、それ以前に『今の彼』がそんな事をする理由が無い。あぁ~…成る程。読めました。だから、敢えてココに差し向けたんですね? 納得です。論より証拠。百聞は一見に如かず。ゴチャゴチャと水掛け論をする暇があるなら、実際に見た方が早い」
もう話の本筋が読めたのか、ベリアルは笑みを浮かべながら何度も頷く。
そうしている間に、カップに入っていたコーヒーは空になっていた。
「承知しました。私の方からも話をしておきましょう。最も、私が実際に動くことは少なくなると思いますが。こういうのは、大人の私達が下手に介入するよりは、同年代の子供達に任せた方が良い結果を生みやすい。幸いなことに、こちらには私の愛娘や頼りになるシトリー家のご息女がいます。あの子達に任せておけば大丈夫でしょう。私達はサポートに回っていれば、それでいい。そちらも、そのつもりなのでしょう? はは…やっぱりね。お互い、考えている事は同じという訳ですか。昔から我々の考えている事は似ていますね。えぇ…そうですね。また今度、休み日にでも一緒に飲みに行きましょう。その時は勿論、『彼』やアザゼル、アブデル君なども誘って」
天使と悪魔という、基本的には不倶戴天の敵同士であるにも関わらず、その口調はまるで嘗ての同級生と話しているかのように穏やかだ。
もう彼らの中に過去の遺恨は存在しないという事なのだろう。
「え? アブデル君ですか? 元気にやっていますよ。心配は無用です。ちゃんと熾天使としての節度は守っていますよ。えぇ…えぇ。分かりました。彼にはちゃんと貴方が心配していたと伝えておきましょう。はい…それではこれで」
通話が終了し、スマホを机の上に置きながらまたもや溜息。
たが、さっきまでとは違ってその顔は何かを期待しているかのようにも見えた。
「もしかしたら、駒王学園がまた一段と賑やかになるかもしれないな。まぁ…どんな形であれ、加奈に友が増えてくれることに越したことはない。あの子には…あの子にだけは絶対に幸せになって欲しい。これは、私だけでなく、ルシファーを始めとする『大罪の七大魔王』全員の願いだ…」
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「やっほー」
「お邪魔しますわ」
気の抜ける声と気品に溢れる声と一緒に、放課後の生徒会室へと入ってきたのは、久し振りの連続登場の加奈と、そんな彼女に連れ添っている金髪縦ロールの少女。
彼女の名は『レイヴェル・フェニックス』。
フェニックス家の末娘であり、ライザーの妹でもある。
少し前までは『レーティングゲームの練習と見学』という名目でライザーの元で『僧侶』の眷属をしていたが、その後に彼女の母親が持っている使用していない僧侶の駒と交換し、今では実質的にフリーとなっている。
なので、このような形で地上の学校に通う事も可能なのだ。
当然だが、こちらに来る際にはちゃんとビザやパスポートなどは申請している。
「頑張ってるかね、諸君~」
「加奈さんにレイヴェルさん。ようこそ、いらっしゃいました」
忙しそうにしているイメージが強い生徒会室ではあるが、ここ最近は特にこれといった事件も起きていないので、割と穏やかな時間が流れている。
それもこれも全て、学園内の問題児が全ていなくなったお蔭であり、リアスや一誠達がいた頃は胃に穴が開きそうなレベルで皆が忙しくしてた。
そのせいで放課後遅くまで残っていた…なんてことも一度や二度では済まない。
「レイヴェルさん。新しい学校生活はいかがですか?」
「とても充実してますわ。なんたって、愛しの加奈さんと一緒の学び舎で過ごせるんですもの。これ以上の幸せなんてありませんわ」
「そうですか。それは良かったです」
ソーナとレイヴェル。
二人揃ってニッコリ笑顔を浮かべてはいるが、その間には激しい火花が散っていた。
その原因である加奈には、全く見えていないが。
「にしても、まさか八皇先生が生徒会の顧問になるなんてね。聞かされた時は普通に驚いたよ」
「これから先、彼女達をサポートするには、顧問になるのが一番確実だと思いましてね」
あの騒動の後、八皇は宣言通りに駒王学園に教師として赴任し、そのルックスと穏やかな性格、教師としての優秀さが相まってすぐに学園の人気者の一人に。
それからベリアルの提案で生徒会の顧問となってソーナたちを支え続けている。
「匙もお世話になっていますからね。本当に柊先生には感謝しかありません」
「うぅぅ……」
椅子に座って真っ白に燃え尽きている匙。
それだけで、八皇の補習授業がどれだけ凄いのかを物語っている。
「そうそう。実は皆に差し入れを持ってきたんだよね。良かったらどう?」
「加奈さんからの差し入れっ!?」
加奈が手に持っている袋を掲げると、ソーナの表情が劇画調になり、生徒会メンバーの動きが止まって袋に視線が注目する。
「ち…因みに、その中身は…?」
「さっき料理部の部室を借りて作って来た『アップルパイ』だよ。勿論、出来たてほやほや」
「私もお手伝いしましたのよ!」
何故か加奈よりも自慢げに胸を張るレイヴェル。
二重の意味でソーナに喧嘩を売っていた。
そんな意図なんて全く知らない加奈が、テーブルの上に袋を置いてから、その中に入っている箱をゆっくりと開くと…中から甘酸っぱい香りが部屋いっぱいに溢れ出る。
時間が時間なので小腹が空いていた皆の鼻孔を刺激し、涎が止まらなくなった。
「これは見事なアップルパイ…加奈さん。暫く見ない間にまた一段と腕を上げましたね」
「へへ…それ程でも…あるかにゃ?」
照れながらも謙遜はしない。
実際、本当に美味しそうなのだから誰も何も言わない。
「つ…椿姫! 急いで紅茶を!」
「分かりました、会長」
副会長の椿姫が全員分の紅茶を用意している間、加奈はプラスチックのナイフでアップルパイを人数分に小分けにして、予め持って来ていた紙皿に盛っていく。
生徒会メンバーはソーナの眷属で構成されているのでそこそこ人数が多いが、加奈はそれを見越して割と大きめのパイを作っていて、全員にちゃんと行き渡っても満足できる大きさにはなっている。
「相良先輩…マジでスゲーっす…! つーか、アップルパイって作れるんスね…。俺、店で売ってるのしか食った事無かったッス」
「材料さえあれば誰でも作れるよ? それに、アレンジすればミートパイとかピーチパイ、ブルーベリーパイとかも作れるし、かなり汎用性が高いんだよね」
話している間に全員に紅茶が行き渡り、いただきますの声と一緒に皆がパイを食べていく。
口に入れた瞬間、八皇以外の全員の顔が満面の笑みに変わる。
「お…美味しい…♡」
「リンゴも程よく歯ごたえが残っていて…」
「皮がパリッパリ…」
「非の打ち所がない美味しさ…♡」
「もうお店で出せるレベル…というか、お店超えてるかも…」
皆の満足そうな顔を見ながら、加奈もまた一口。
うんうんと頷きながら、味に満足していた。
「良い感じ。これならお義父さんやアブデルに出しても大丈夫そうだね」
「でしょうね。味も完璧です。もう私が教える事は無いかもしれません」
「いやいや。まだまだ八皇先生から教えて欲しい事は山ほどあるよ?」
荒事が嫌いな加奈ではあるが、かといって向上心が無いわけではない。
寧ろ、好きな分野ならば誰よりも夢中になって勉強したがる。
料理もその一つだったりする。
「加奈さんが作ってくれたアップルパイ……感無量です…♡」
「そう? そこまで喜んでくれると、こっちも頑張った甲斐があったってもんだ」
「美味しいのは当たり前ですわ。何故ならば、私と加奈さんの初めての共同作業で作ったアップルパイなのですから!」
共同作業の部分を無駄に強調するレイヴェルであったが、そんな事が気にならなくなる程に夢中で食べるソーナ。
彼女がここまでお菓子を食べるのに夢中なっている姿を見せるのは初めてだった。
「ところでさ、少し前に誰かが駒王町に侵入してきたのって気が付いてる?」
「やっぱり、加奈さんもお気付きでしたか…」
「まぁね。少しでもソーナの負担を減らせればと思って、あれから毎日に渡って使い魔の『フェアリー』ちゃんに町中を見回りさせてるから。それでいち早く気づけたって感じ。というか、口にパイが付いてるから」
「あ…ありがとうございます」
何気ない仕草でソーナの口周りをティッシュで拭く加奈。
拭いて貰ったソーナの方が何故かドヤ顔をして、それを見たレイヴェルが密かに悔しそうにする。
そして、八皇は温かい目で少女達のやり取りを観察していた。
(青春ですね~…)
青春の一言で済めばいいのだが。
「お…おほん。私も、駒王町の土地神の方々から色々と情報を貰っていまして、念話にて教えて貰いました」
「土地神が気が付いたって事は、お義父さんやお義母さん達も気が付いてるね。八皇先生はどう?」
「勿論、気が付いてましたよ。流石に町全体ではありませんが、駒王町の要所要所に感知型の結界を張っておきましたから」
「いつの間に……」
「この町に初めて訪れた時にです」
伊達に日本神話からエージェントとして派遣されるわけではない。
どんな時も注意深くしているのが彼なのだ。
(この時期にって事は、多分は『あの子達』だろうなぁ~…。けど、この世界で『あの事件』は絶対に起きようがないし…。だとしたら、どういう理由でこの町にやって来たんだろう?)
またぞろ面倒くさい予感がしながらも『なんとかなるか』と気楽に構えていた加奈であった。
余談ではあるが、家に帰ってから作ったアップルパイは皆に非常に好評で、あの無表情なベルゼバブに満面の笑みをさせていた。
書きながら思いました。
これは4話ぐらいで終わるな…と。
本当は3話ぐらいで終わらせたかったんですけどね。
後ついでに、祐斗君も今回の話でNOT救済になるかもしれません。