面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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狙い撃ちます。それだけです。








面倒くさいので、取り敢えず狙撃する

 理事長からの『お願い』を渋々聞き入れた私は、部屋着を脱いでから専用のISスーツ(デザインは学園支給の物と一緒で、色だけがダークグレーに変わっている)に着替えながら、さっきの会話を思い出していた。

 

「今思ったんだけどさ、あのジジイ…私にあんな事を頼んできたって事は、こっちの素性を全部知っているって事だよね?」

『十中八九そうでしょうね。でなければ、軍曹殿にあのような事は依頼しないでしょう』

「だよなー…なんか急に腹立ってきた」

 

 お着替え完了。

 まさか、在学中にこれを着るとは思わなかった。

 使わなければ、それに越した事は無かったから。

 けど、今回は特別。『三年間の自由』という名の報酬を得る為に、致し方なく着替えたのだ。

 

『軍曹殿。作戦はどうしますか? 貴女の性格上、アリーナに突撃する…なんてことはしないでしょうが……』

「よく分かってるじゃん。それでこそ私の相棒」

『恐れ入ります。では、どうするので?』

「まぁ…方法は一つしかないよねぇ……」

『矢張り、そうなりますか』

 

 今からやる事は非常に単純。

 どこか高い場所からアリーナで暴れている無人機目掛けて狙撃をする。

 ただ、それだけ。簡単でしょ?

 

「アル。アリーナまで見渡せて尚且つ、学園内で一番高い建築物って何かな?」

『その条件に該当する場所は幾つかありますが、私は三年生校舎の屋上を推奨します』

「理由は?」

『高さは勿論、あの場所は最も目標となる第一アリーナに近いからです。あそこからならば問題無く狙撃が可能かと』

「りょーかい。それじゃ、すぐにそこへと向かおうか。面倒くさい事はとっとと終わらせるに限る。それに、向こうさんが私よりも早くに撃破して、例の約束がおじゃんになるのは御免だ」

『最短ルートは、学生寮の屋上から屋根伝いに飛んで行くルートです』

「よし。それで行こう」

 

 少しだけ深呼吸をしてから、私は本日初めての外出をするのであった。

 私一人だから、ISスーツで外を歩いても恥ずかしくないしね。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 予定ポイントである三年生校舎の屋上に到着すると、目を凝らして周囲を見渡す。

 確かに、ここからならギリギリアリーナが見下ろせる。

 普通の学校の校舎なら無理だろうけど、IS学園は色んな場所に無駄に金を使ってるから、この校舎も普通よりもずっと高く設計されている。

 バカと金持ちは高い所が好きってか?

 

「準備しますか。アル、機体展開」

『了解。専用機『M9 ガーンズバック』展開開始します』

 

 アルの声と共に、私の周囲に青白い粒子が舞い散る。

 その時に普段は隠れている前髪が捲れて、その奥に隠されている『義眼』が外に晒された。

 これこそが、私の専用機の待機形態。

 そして、アルの本体でもある。

 

 現在のアルの正体。それはガーンズバックに搭載されたコアユニット兼、会話型支援AI。

 うちの糞親がこの機体を製造するに当たって、アルを機体に移植したのだ。

 なんで待機形態が義眼なのかは秘密。

 

(この感覚も久し振りだな……)

 

 私の体に次々と頑強な装甲が纏われていく。

 ガーンズバックは俗に言う『全身装甲(フル・スキン)』と呼ばれるタイプのISで、各関節部はシーリング処理が施されている。

 

 時間にして一秒未満。

 文字通り、あっという間に展開は完了した。

 

『久し振りのISはいかがですか?』

「最悪。もう二度と使う事は無いって信じてたのに」

『仕方ありません。軍曹殿が決めた事なのですから』

「そうなんだけどさぁ……はぁ……」

 

 ほんと…溜息しか出ない。

 顔面も装甲で覆われてるから逃げ場ないんだけど。

 

「…狙撃砲スタンバイ」

了解(ラジャ)。狙撃砲、展開します』

 

 拡張領域に収納されている折り畳み式の狙撃砲が展開されて、私の手に握られる。

 まさか、自ら進んでコレを使う日が来るとは夢にも思わなかった。

 

「嫌だねぇ……よりにもよって、私が一番苦手な狙撃で目標を狙い撃たないといけないとか。幾ら、私のガーンズバックが完全オールラウンダー機として設計されているからって……」

『そこらのスナイパーが裸足で逃げ出すレベルの実力を保持している軍曹殿が言っても皮肉にしか聞こえませんが』

「うっちゃい」

 

 狙撃砲の銃身を伸ばしてから、バイポッドを出してから固定する。

 膝立ちの状態になってからスコープを覗き込むと、逃げ惑う生徒達と、ステージにて奮戦(?)している織斑一夏と凰鈴音の二人に加え、全身が真っ黒な無人機さんが暴れ回っていた。

 

「…何やってんだよ…ったく。あの程度の奴なんて秒で倒せるだろうに。何をそんなにモタモタしてる訳? マジでふざけんなよ。ちゃんと真面目にやれよな。そんなんだから、私みたいな奴に仕事が回ってくるんだろうがよ……」

『軍曹殿。愚痴を言っている場合ではありません』

「はいはい」

『ハイは一回』

「ハーイ」

 

 お前は私のオカンか。

 

「ちっ…。相手が鈍間なお蔭で命中させること自体は楽勝だけど、アリーナの上空に展開されてるシールドバリアーが邪魔だな……仕方がない。アル」

『はい』

「『妖精の目』を使うよ」

『了解。第三世代兵装『妖精の目』を起動します』

 

 ガーンズバックのカメラアイが光り、私の視界が変化する。

 すると見える見える。シールドバリアーの『綻び』が。

 

「これなら、なんとかなりそう」

 

 目標との距離。重力による弾道の下降。気温。気圧。湿度。風向きと風速。

 更には相手の動きや邪魔者二人の動きも計算に入れてから、アルと協力して頭をフル回転させる。

 

「……………………」

 

 全ての神経を指先と目に集中させる。

 この瞬間だけ、私は人間ではなく一丁の狙撃銃と化す。

 

(今だ!!)

 

 一瞬のチャンスを狙って、トリガーを引く。

 発射の瞬間に全身に衝撃が走るが、ISのお蔭で緩和される。

 銃弾は計算通りに進み、障害となるシールドバリアーをも打ち砕き、ターゲットである無人機の右肩関節部に命中。そのまま砕けて隻腕にすることに成功する。

 

「次弾装填」

『了解』

 

 次に狙うのは左肩の関節部。

 先程の攻撃でリズムが乱されたのか、無人機の動きが明らかに鈍くなった。

 素早く計算をし、再びトリガーを引く。

 

『命中確認』

「よし」

 

 左肩も破壊され、完全な案山子状態に。

 例の二人は何が何だか分からない感じで棒立ちになっているが、それはそれで構わない。

 私の邪魔さえしなければ、それで十分だ。

 

 再度、弾を装填した後に狙いを引き絞る。

 最後に狙うのは胴体部。コアが搭載されているであろう場所だ。

 

(……狙い撃つ!)

 

 ラスト一発が発射され、それは攻撃能力を失った無人機のど真ん中に命中し、同時に確かな手応えを感じた。

 確実にコアを撃ち貫いたな。

 

『目標、撃破。コアを破壊されたことで完全に機能が停止したようです。自爆装置の類も無いようです』

「そう……」

 

 スコープから目を離してから、ようやく一息つく。

 だから狙撃って嫌なんだよ。神経をめっちゃ集中させなきゃいけないから。

 私が集中するのはガチャの時だけで十分だっつーの。

 

「……疲れた。部屋に戻って、今度こそ寝る」

『それが宜しいでしょう。お疲れ様でした』

 

 もうヤダ…マジでIS学園って嫌いだわ……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 それは、本当に一瞬の出来事。

 クラス対抗戦の第一試合。

 一夏と鈴の試合にいきなり乱入してきた謎のIS。

 それによりアリーナ全体がパニックに陥り、二人もまた時間を稼ぐために戦っていた…のだが、その戦いは何処からか放たれた三発の銃弾にて突如として終焉を迎えた。

 

「な…何よ今の……!」

「銃撃…なのか? でも、どこから……」

 

 右肩が破壊されたかと思ったら、次の瞬間には左肩が破壊。

 最後は胴体に留めの一撃を受けて、コアが完全に破壊。

 バラバラのスクラップになりながら、無人機は機能を停止した。

 最後の特攻染みた事もせずに、まるで嬲り殺しにされるかのように無慈悲に倒された。

 

「終わった…の…?」

「みたい…だな……」

 

 余りにも唐突な終わり。

 一夏と鈴は二人揃って、その場に座り込んでしまった。

 

 そして、謎の攻撃に混乱していたのは管制室にいた教師たちも同様だった。

 

「な…なんだ今の攻撃はッ!? まさか…狙撃かっ!? 山田先生!」

「は…はい! 弾道から狙撃コースを計算して……出ました!」

「どこからだっ!?」

「あ…IS学園の三年生の校舎の屋上から…です。でも、もうそこには誰もいません……」

「目標を撃破したから撤退したのか…? でも、一体誰が……」

 

 流石に生徒達ほどに混乱はしていないが、それでも謎が多い事件に不気味さを感じずにはいられなかった。

 

「お…織斑先生! 轡木理事長から通信が入っています!」

「あの人から? 繋いでくれ」

「はい!」

 

 真耶がコンソールを操作して通信を繋ぐ。

 状況が状況なので映像は無く音声だけだが、通信機からは彼女達が良く知っている声が聞こえてきた。

 

『あー…織斑先生。山田先生。まずはお疲れ様でした』

「いえ…結局、我々は何も出来ませんでした…」

『そう御謙遜なさらず。で、疲れているところに申し訳ないのですが、後でお二人で理事長室まで来てくれませんか?』

「理事長室…?」

『はい。とても大事な話があるのです。先程の謎の狙撃に関して』

「く…轡木さんは、あれが誰の仕業なのか知っているのですかッ!?」

『はい。それらを説明する為にも、お二人には来てほしいのです。頼みましたよ』

 

 それだけを言い残してから、通信が一方的に切れる。

 

「一体…なんなんでしょうか……」

「分からん…。だが、行かねばならんだろうな…。山田先生、後の事は他の先生に任せて、我々は言われた通りに理事長室に行こう」

「分かりました」

 

 因みに、箒は放送室に行く途中で、セシリアもまたステージに向かう途中でアリーナの廊下を何も知らずに走っていた。

 彼女達が事件が終わった事を知るのは、外の光景を見てからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、繋ぎ。
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