面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結)   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、国内旅行する(うどん編)

 無人機騒動から少しだけ時間が経過し、時期的には恐らくフランスとドイツから例の二人がやって来る頃。

 これで原作第一期ヒロインが全員集合するのだが、私には微塵も関係が無い。

 あの騒動によって私は理事長直々に『在学さえしていれば、あとは好きにしててもいいよ』と言われたので、その権限をフルに利用して私は平日だというにも拘らず堂々と国内旅行に洒落込んでいた。

 

「ん~……本場讃岐のうどんは格別だねぇ……」

 

 あ。なんかあっさりと自分の居場所を吐いちゃった。

 そうなんです。現在、私がいる場所は香川県の讃岐市にある、とあるうどん屋さん。

 なんで私がここにいるのか、理由は物凄くシンプル。

 テレビ番組でうどん屋特集をしているのを見て、急に本場讃岐のうどんが猛烈に食べたくなったから。

 年頃の女の子としては、自分の食欲には素直に従いたい。

 後に体重計に乗って愕然とするまでがワンセットだ。

 

「しかも、たった百円で替え玉が可能って…普通に最高じゃない?」

『サイドメニューも非常に充実していますからね。おにぎりに唐揚げ、各種天ぷらに加えてかき揚げまであります。かなりリーズナブルな値段で。ここまでして採算が合うという事は、年間に相当な売り上げが出ている証拠ですね』

「だろうね。だって、今も店内は超満員だよ? 私が食べてるきつねうどんだけでも超絶絶品なのに、他のメニューもめっちゃ美味しそうだもん。そりゃ、私みたいに遠くから来る客も山ほどいるわ」

 

 モチモチの麺にジューシーなお揚げ……シンプルでスタンダードな組み合わせだけど、だからこそ気に入った。

 一緒に持ってきた、このかつおのおにぎりも唐揚げもベリーデリシャス。

 

『ところで軍曹殿』

「どったの?」

『今日、学園に転入してくる二人なのですが……』

「うん。それがどうかした?」

 

 あぁ~…このスープも最高……。

 本気でバケツ一杯飲みたいわ……。

 

『フランスから来る『シャルル・デュノア』…戸籍上は男となっていますが、私にはどう見ても女にしか見えません』

「そりゃそうでしょ。だって、あの子は正真正銘の女の子だもん。つーか、顔なんて何処で見たのさ」

『学園のサーバーに潜り込みました』

「幾らアルの侵入技術が超一流だからつっても、そこまで堂々とやるかね……」

『軍曹殿に影響されたのかもしれません』

「変な事を言わないでよ」

 

 まるで私が悪いみたいじゃない。失礼しちゃうわ。

 

「『デュノア』って名字から分かると思うけど、あの子はあの『デュノア社』の社長の『アルベール・デュノア』の愛人の娘らしいよ」

『成る程。道理でデュノア家の家系図に『シャルル』という名が記載されていない筈です。同じ顔の『シャルロット』ならば普通にあったのですが…もしや、彼女の正体は……』

「そ。その『シャルロット・デュノア』だよ。例の彼の専用機のデータや遺伝子情報なんかを会社に持ち帰る為に、男装をして学園にやって来てるんだよ。謂わば『スパイ』だね」

『…こんなお粗末な変装で…ですか? 正気の沙汰とは思えませんが』

「それだけ追い詰められてるって証拠じゃね? デュノア社の事情…知ってるでしょ?」

『あぁ…成る程。そういう事ですか』

「納得した?」

『はい。常日頃からネット内の情報には目を通しておくものですね』

 

 アルは、その性質上、世界中の様々なサーバーにアクセスし放題だから、ある意味では私以上に情報通だ。

 だからこそ、こんな時の会話で無駄な説明を省くことが出来る。

 

『では、もう一人の方はなんなのでしょうか? ドイツ軍の特殊部隊の隊長ということですが……』

「どうやら、あのブリュンヒルデの教え子みたいよ? ほら、あの女って第二回モンドグロッソを最後に現役を引退して、ドイツに渡って教官をやってたじゃん? その時に……」

『そう言えばそうでしたね。余り価値のない情報だったので、軍曹殿が言ってくれなければ、そのまま無駄な情報としてデリートしていたところでした』

「いや…別に消してもいいよ? 私だってウルトラ興味ない話だし」

 

 覚えていたって一円の得にもならないからね。

 

「彼女、ブリュンヒルデに対して心酔してるみたいで、本来の目的はあいつをドイツに連れ戻す事なんだってさ」

『……バカですか?』

「馬鹿なんだよ、実際」

 

 この場にいないからって言ってやるなよ。流石に可哀想だからさ。

 

「私達が会って話す機会なんて未来永劫無いから本気でどーでもいいんだけどねー」

 

 それよりも替え玉、替え玉。

 あと、追加で鮭のおにぎりとかき揚げも持って来よう。

 

 あ…あっちの客が食ってる、ぶっかけうどんも美味しそうだなぁ……じゅるり。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 私が二回目の替え玉を食べていると、いきなり隣の席に誰かが座って来た。

 帽子と眼鏡を掛けているのでよく分からないが、どうやら大人の女性っぽい。

 

「お隣…いいですか?」

「いいですよ」

 

 女性が頼んでいるのはたぬきうどんで、揚げ玉が一杯入っている。

 ふむ……三杯目は揚げ玉ボンバーも悪くないな。

 

「千客万来大繁盛してますからね。仕方ないですよね」

「そうですね」

 

 取り敢えず、当たり障りのない会話をしてから自分の食事に戻る。

 向こうも食べ始めたようで、ちゅるちゅると麺を啜る音が聞こえてきた。

 

「…………」

「なんですか?」

「いえ…随分とお若いな~って思いまして」

「現役の高校生ですからね。因みに今日はサボリです」

「い…いいんですか?」

「いいんですよ。学校公認ですから」

「そ…そうなんですか……」

 

 初対面の女性にドン引きされてしまった。

 けど、私は事実を言っただけだ。何も悪くない。

 

「……今の世界ってどう思いますか?」

「唐突ですね」

「ちょっと聞いてみたくって…で、どうですか?」

「どこかの誰かさんがISなんて代物を作り出したせいで、着実に破滅へと向かってると思います。端的に言えば、もうこの世界は終わりです」

「そうですか……なんとかして救いは無いのでしょうか?」

「無いですね」

「断言しますね」

「断言出来ますから。ISという、人類を堕落させて破滅を誘発する兵器が世間に浸透し過ぎている時点で人類と世界が救われる可能性は0%です」

 

 この手の話は、ついこの前もしなかったっけ?

 そういや、アルはさっきから空気を読んで黙ってくれているな。ナイス判断だ。

 

「非常に非現実的なやり方ならば、辛うじて世界は救われるかもしれませんけどね」

「それは?」

「誰かがタイムマシンを作ってから、ISの開発者が生まれる前にその両親を殺害、もしくは誕生した瞬間に縊り殺す。もうそれぐらいしかないでしょうね。といっても、結局は世界が分岐して新しい並行世界が誕生するだけで、根本的な解決には全くなって無いんですけど」

「……………」

 

 はぁ…何を話してんだろ…私ってば。

 気分転換に来てる筈なのに、結局は小難しい事を考えてる。

 …もう一杯食べるか?

 

「この世界はもう……どんなに足掻いても戻れない場所まで来てるんですね…」

「そうですね。けど、最も愚かしいのは、人類の殆どがその事に全く気が付いていない事。世界中の人間の大半は、何も分からないままに滅びていくでしょうね」

「そう……」

 

 話しながら食べてたら、あっという間にドンブリが空になってしまった。

 しゃーない。また替え玉しに行きますか。

 替え玉を取りに席を立つついでに、隣のお姉さんに忠告をしておこう。

 

「そうだ。これだけは言っておきたいんですけど」

「なんですか?」

「……盗み聞き(ピーピング)も大概にしておかないと、いずれ後悔する事になるよ。天災兎さん」

「……っ!? 気が付いてたの…?」

「最初からね。余りにも堂々と来るもんだから、逆に偽物かそっくりさんのどっちかと本気で疑ってしまったけど」

「私だと知ってて、あんな話をしたの?」

「うん。だって、紛れもない自分の本心だったし」

 

 嘘偽りを言う理由が無いしね。

 

「…最後に一つだけ聞かせてくれるかな」

「なに?」

「相良加奈ちゃん……君はこの世界が好き?」

「超大嫌い。正直、生まれてこなけりゃよかったって思ってる。こんな世界に私を生んだ挙句、『こんな体』にしたクソ親を私は未来永劫許さないし、それはこんな世界にした連中も一緒。けど、私には何も出来ないし、するつもりもない。だって無意味だから。だからせめて、この憎悪だけは絶対に忘れないようにしてるの。それが私なりの抵抗だから」

「…………ごめんね」

「それは何に対して?」

「………………」

 

 黙ってしまった。

 もう話す事は無いって事か。私も同じだから別にいいけど。

 さ、替え玉を取りに行こっと。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 席に戻ってきた時、彼女はいなくなっていた。

 テーブルに私の分の金を置いて。

 

『軍曹殿…先程の女性はまさか……』

「うん。その、まさかだよ。こんな場所で会うとは思ってなかったけど」

 

 再び一人になった席に座り、私はうどんを食べる。

 美味しいは美味しいけど、なんだか急に味気なく感じてしまった。

 

『軍曹殿に会いに来たのでしょうか?』

「有り得るかもね。あいつの行動原理をまともに理解しようとするのは不可能だから」

『どうやって軍曹殿の居場所を…なんて、考えるだけ野暮なのでしょうね』

「だろうね。知ったら知ったで後悔しそうだ」

 

 それにしても心臓に悪かった。

 原作キャラでは最も会いたくない人物の一人だったし、まともな会話が成立するなんて夢にも思ってなかった。

 もしかしたら、彼女に関しては偏見の目で見ていたのかもしれない。

 これは少しだけ反省だな。

 

「…今度は何処に行こうかなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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