面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
長崎県を堪能した私は、ハウステンボスで出会ったロランと一緒に行動するようになった。
最初は『えー』と思ってたが、意外と楽しんでいる自分がいた。
アルとも普通に仲良くなってたのに驚いた。
で、今回の私達がどこにいるのかというと……。
「まさか、あれから更に南下するとは思わなかったよ」
「少しずつ暑くはなってきてるし、ここなら今の季節でも十分に楽しめるしね」
沖縄県の宮古島にある『与那覇前浜』です。
長崎空港から飛行機に乗って、そのまま那覇空港で降りました。
時期的には少し早いけど、それはそれで構わないのだ。
寧ろ、今の季節だからいい事もあるし。
「本当なら数ヵ月後とかに来るべきなんだろうけど、そうすると確実に観光客でごった返すからね。そうなると、楽しめるものも楽しめない。折角の絶景も台無しだよ」
「ふむ…一理あるな。確かに、この美しい水平線と純白の砂浜を独占できるのはいい気分だしね」
『それに、この浜には各種設備も完備しています。伊達に沖縄で一番人気のビーチではないという事ですね』
因みに、ここの事をお勧めしてくれたのは、なんとアル。
数ある沖縄のビーチの中でどれにしようか二人で話し合っていたら、いきなりアルが割り込んできてココを勧めてきた。
私としては、アルの読みが外れた試しは無いのですぐに信用して、そのお勧めに従う事にした。
ロランもまた、私がいいのなら…と言って納得してくれた。
実際、アルに従って大正解だった。
「白くサラサラな砂浜に…透き通ったコバルトブルーの海…そして……」
「ん?」
「私の隣には女神の如き美しさを誇る少女がいる……感無量だよ」
「……………」
一緒に行動するようになってから、一日に一回は必ず私に対して何らかの口説き文句を言ってくる。
それをすぐ傍で囁かれるコッチの身にもなってくれよな……。
(にしても…ロランめ。私服を着ている時には気が付かなかったけど、めっちゃスタイル良いじゃないのさ……)
そういえば、まだ私達が何をしているのかを言ってなかった。
浜辺に置いてあったデッキチェアを借りて、そこにパラソルを立ててから水着姿になって傍にジュースを置いてから寝そべっている。
ロランは黒いホルターネックビキニを着て、私は真っ赤な三角ビキニを着ている。
私も決してスタイルが悪い方じゃないとは思うんだけど、それでもロランには負けてしまう。
流石は代表候補生というべきか…いや、別に関係ないか。
『海と言えば、IS学園の方もそろそろ臨海学校の時期ですね』
「え? もうそんな時期だっけ?」
あー…普通に旅行が楽しくて完全に忘れてたわー…。
「臨海学校? あそこはそんな事もしているのかい?」
「無駄に金だけはあるからねー。なんせ、学生寮の一部屋一部屋にまで金を掛けるぐらいだ。臨海学校なんてポーンと行かせるんじゃない?」
ほんと、考えれば考えるほどふざけている。
別に息抜きをすることを悪いとは言わない。
けれど、余りにも警戒心が無さすぎる。
臨海学校に行くなら行くで、ちゃんと海上警備隊を初めとするプロの方々に連絡をして浜辺の警備をするとかして貰うのが普通なんじゃないの?
分かってるのかな? IS学園は決して普通の学校じゃないんだよ?
「あら。随分と楽しそうにしてるわね」
「「え?」」
いきなり話しかけられて思わず呆けた声を出してしまった。
私の左隣に空いていたデッキチェアに、サングラスを掛けた謎の金髪美女が腰かけていた。
当然、そのスタイルは私達以上で、真っ白なビキニと相まって色んな意味でインパクト絶大だった。
「お隣…いいかしら?」
「お好きにどうぞ…というか、もう座ってるじゃないですか」
このパターン…香川県の時と一緒じゃない?
どうして私の隣に座りたがるのは、皆揃って美女ばかりなのだろうか。
私に対するあてつけか?
「ところで、何について話していたの?」
「「IS学園の臨海学校について」」
別に隠す必要も無いので素直に教える事に。
なんとなく、この美女の正体も分かったし。
「IS学園って…二人はあそこの関係者なの?」
「転入予定だったが止めた者さ」
「絶賛サボリ中の生徒でーす」
「……どこからツッコめばいいのかしら」
どこからでもどうぞ?
「というか、こんな所でのんびりていてもいいの?」
「別にいいですよ。学園公認ですし。お寿司」
「私もさ、マドモワゼル。生憎と、時間なら沢山余ってるんだよ」
「不思議な子達ね……」
不思議とな。初めて言われたわ。
「んで、さっきの話の続きなんだけど……」
「臨海学校の事かい?」
「そ。別に臨海学校だけに限った話じゃないんだけど、IS学園は一年間にかなりの頻度で色んなイベントを開催している。その中の大半はISを使った試合をするイベントばかりだ。時には外から客を呼んだり、凄い時は他の国から来賓が来たりもする。そうすれば必然的に莫大な金が掛かる筈なのに、惜しげも無くそれをやっている…一体どこにそれだけの資金源があるんだと思う?」
「それはあれじゃないのか? スポンサーが金を出しているんじゃ?」
「スポンサーね…ある意味じゃ正解かもね」
「あら? その言い方だと、まるで貴女は正解を知ってるみたいな感じだけど?」
「知ってますよ。知り合いが調べてくれたんで」
その『知り合い』ってのは、さっきから空気を呼んで黙っているアルの事だけど。
「正解を言う前にロランに一つだけ質問」
「なにかな? 加奈の為ならば何でも答えようじゃないか」
「あ…ありがと。んじゃ、ロランはIS学園に『学園上層部』ってのがあるのを知ってる?」
「上層部? いや…知らないな。というか、どうして仮にも学校法人であるIS学園に『上層部』なんてものが存在しているんだ?」
「その理由は前にも話したでしょ? IS学園が普通の学校じゃないから」
「そうだったな……」
「となると、その上層部も普通じゃない事になる。なんでも、その『上層部』とやらの権限は学園理事長よりも上らしいよ」
「学園内でトップの筈の存在の理事長に命令できる存在という事か…」
「学園上層部の正体…知っているの?」
「もち。他の観光客はこっちに気が付いてないし、喧騒に紛れて私達の話なんて聞こえないだろうから普通に言うけど……」
その前にジュースで喉を潤そう。
うん。やっぱりメロンソーダは最強だね。
「学園上層部の正体はIS委員会だよ」
「なっ…! 委員会があの学園の実質的な支配者だというのか…っ!?」
「では、あそこに通っている教師たちは委員会の傀儡に等しいという事…?」
「それを自覚しているのはほんの一部だろうけど。例えば、どこぞの世界一有名な元日本代表な女教師とか」
「織斑千冬ね……」
あらら。私が敢えてぼかした表現をしたのに、美女さんがズバッと言っちゃったよ。
「後は、生徒会長をしている暗部なロシア代表さんとかも知ってるだろうね」
「教師だけではなく、生徒会すらも手駒にしているとは…どこまで根を張っているんだ……」
「どこまでも…だろうね。それに関連して、実はもう一つ最低な情報がありまして」
「最低な情報? あんまり聞きたくないような……」
「まぁまぁ。ここまで聞いたんですから、大人しく聞いていってくださいよ。お姉さん」
「そ…そうね。ここまで来たらもう一蓮托生よね」
おふ……お姉さんって言ったら素直になった。
それと、どこで一蓮托生なんて言葉を覚えたんだよ。
「IS委員会の幹部連中…その内の数人は女性権利団体の人間で構成されてるらしい」
「女性権利団体…あの聞いているだけで反吐が出そうになる連中か……」
「予想はしてたけど…やっぱり委員会も既に権利団体によって支配されていたのね……」
おや。そんな発言をしてもいいのかな?
自分の正体についてヒントを出しているようなものだよ?
「と言うことは、IS学園の潤沢な資金源はIS委員会…正確には内部に寄生虫の如く潜り込んでいる女性権利団体の連中からもたらされていると……」
「そうなる。だから、学園内には権利団体の幹部の子供も普通に在籍してるしね。しかも、本人達はそれを全く隠そうとせず、親の事を堂々と言って好き放題してるみたいよ?」
「腐ってるわね…本当に……」
この世の中、腐ってない場所の方が少ないでしょ。
今、目の前に広がっている海のように綺麗な心を持った人間は、もうこの世のどこにもいないのかもしれないね……。
「だからこそ、私は早々にあの学園と、他の生徒達の全てを見限ったんだよ。無自覚のままに最低な連中の操り人形になるなんて死んでも御免だし」
「同感だ。改めてIS学園に行かなくて正解だと思ったよ。フッ…矢張り、加奈こそが私にとっての導きの女神だったのかしれないな」
「いや…導きの女神て……」
ロランのその言葉は一体どこから出てくるんだ?
そういや、オランダでは歌劇をしてるとか言ってたっけ…。
それってアレかな? オランダ版の宝塚みたいなもん?
「あそこに在籍している生徒の殆どが、IS学園にいる本当の意味を理解してないだろうな」
「本当の意味?」
「…もし仮にISが主軸の戦争とかが勃発したら、まず真っ先に委員会の連中…というか女性権利団体の手によって学園の生徒達が徴兵されるだろうね。というか、本当は有事の際に備えて生徒達を育てていた感じさえある。なんせ、他の学生よりも遥かにISの事を勉強してるんだから、権利団体の連中にとっては即戦力と同じと思ってるんだろうさ」
「「…………」」
自分で話してても気分が悪くなってくる。
どうしてこんなくだらない事を話してたんだっけ?
でも、もう話し出したら止まらないんだよね。
「学園にいる代表候補生や国家代表も国には戻して貰えないだろう。なんせ、この世界で一番の覇権を持っているのが女性権利団体だ。あいつ等はバカ丸出しの屁理屈を言って少しでも多くの専用機持ちを手元に置きたがるだろうし」
「つくづく…私の選択は間違いではなかったと実感するよ…。何かが間違っていたら、私は愛すべき祖国に銃を向けていた可能性があったのか……」
「だろうね。私もロランには(恋に)盲目的になって碌に人の話も聞かないバカな連中と同じ目には遭って欲しくはないし……」
「え…? 加奈…今…なんて……?」
「し…しまっ…!」
ヤバ…! ついうっかり本心を話してしまった…!
相良加奈、一生の不覚…!
「やっぱり、私と加奈は運命の赤い糸で結ばれているんだね! あぁ…胸糞悪い話を聞かされて落ち込みかけたが、最後の最後にいい言葉を聞けた! もしや、この沖縄の青い海が加奈の心を開放的にしたのかな?」
「ち…違うから! そんな意味で言ったんじゃないから!」
(軍曹殿。今回ばかりは貴女の負けですよ)
(うっちゃ~い!)
「あらあら。本当に仲良し…というかラブラブなのね」
「はい!」
「ちっが~う!!」
うぐぐ…! 完全に話が逸れてしまった…!
どうして私がこんな目に……。
「けど…貴女の話を聞いてて、お姉さんも決意が固まったわ」
「決意?」
「うん。実はね、私の所属している会社…ってよりは企業なんだけど、其処の上層部もまた最近になって女性権利団体の横槍が入るようになったのよ」
「マジですか……」
アイツ等はホントにどこまでも……。
「最初は自分が成り上がってから上層部の連中を一掃すればいいと思ってたけど、そうしている間にも組織は腐っていく一方。挙句の果ては権利団体お抱えの私兵みたいのまで来る始末。同僚と一緒に色々と話して、どうしようかとずっと考えていたんだけど……」
「心が決まったと?」
「えぇ。お姉さん…お仕事や~めた!」
「「えぇぇ~…」」
あっけらかんと言い放ったお姉さんに、流石の私達もお口あんぐり。
それでいいのか大人の女性。
「もうこれ以上、ストレスの溜まる職場は御免だわ。どうせ辞めるなら、皆と一緒に盛大な置き土産でも残してこようかしら」
な…何をする気だよ…この人は……。
「さて…と。こうしちゃいられないわ! 早速、色んな所に連絡しないと! あなた達とお話しできて、とても有意義な時間を過ごせたわ。ありがとう」
「「ど…どういたしまして」」
私が一方的に話してただけだけどね……。
「そうだ。まだ私の名前を教えてなかったわね。私の名前は『スコール・ミューゼル』。お姉ちゃん。お姉さま。お姉さん。好きに呼んでくれていいわ」
「さ…さいですか……」
やっぱし、この人ってあのスコールだったのか。
これまた、とんでもない大物と出くわしたもんだ。
「私は相良加奈っていいます」
「ローランツィーネ・ローランディフィルネィです。ロランとお呼びください」
「加奈ちゃんにロランちゃん…ね。二人に会えてよかったわ。また機会があったら会いましょう。それじゃ、ゆっくり楽しんでいってね」
眩しい笑顔を見せて手を振りながら、謎の美女ことスコールは去っていった。
今更ながらに緊張しちゃったよ……。
『軍曹殿。あのスコールという女性は……』
「分かってる。でも、もう関係ないじゃん。あの人は私達の目の前で『辞める』って言った。あの手の人ほど、自分の言葉にだけは嘘はつかないもんさ」
『軍曹殿がそう仰るならば』
「おや? 二人はスコールさんが誰なのか知っているのかな?」
「まぁ…ね」
『ある界隈では非常に有名な人物ですから。それも、もう余り意味を成さないでしょうが』
「そうだったのか……あれ程の美女ならば私の耳にも入りそうなものだが……」
ロランは別に知らなくてもいいんだよ。
けど、代表候補生だからって、なんでもかんでも教えられてる訳じゃないんだな。
よくよく考えれば、あの原作ヒロインズの候補生達も割と無知だったりしたもんな。
ま、あいつらとロランを比べるとかは絶対に有り得ないけど。
「ねぇ…ロラン」
「なんだい?」
「今、思い出したんだけど…日焼け止めを塗るの忘れてた。…塗ってくれるかな?」
「喜んで!!」
『軍曹殿が遂にデレましたね。ロラン、軍曹殿をどうかよろしくお願いします』
「任せておきたまえ、アル! 必ず私が加奈を幸せにすると約束しよう!」
「二人とも、うっちゃい……。それと、アルは私の親かっつーの……」
それよりも、早く日焼け止めを塗ってよね…もう……。