アレキサンドロス三世という英雄をご存じであろうか。
日本ではアレキサンダー大王だったりイスカンダルだったりが知名度的には有名であろうがそのアレキサンドロスである。
日本でもそれなりの知名度を誇る大英雄であり、世界を征服しかけたほどのイカれ、勇者という言葉がこれほどに似合う男もそうはいないだろう。
ただ、そんな男に俺はなった。
うん、そうなんだ。
タイムスリップなんだ。
頭がおかしくなりそうだったよ。
体が子供になるわ、だというのに大人だった頃と比べて明らかに強靭な肉体であり、美少年、正直正気を疑ったね。
ついに妄想力が天元突破しちゃったのか……と酷く狼狽したよ。
元の時代の同級生である遠野志貴君が見ないうちに、目に包帯巻いてる中二病全開の姿をしていたのを思い出したよ、俺、あんな風に俺はなっちまったのか……って自分自身を責めたね。
まあ全然違ったんだけど。
正気にかえってタイムスリップしたことに気づいたのだが、アレキサンドロスとは思わんよな……その事に気づいたのだって現代からみりゃ恐ろしく原始的な文明、そして王族であり、名前がアレキサンドロスだってんだから…………。
謎にタイムスリップしたことに無理矢理意味を見いだすなら大英雄イスカンダルになって世界征服しろって神様が言ってるんだなって思ってもしょうがねえよな。
だから俺はなりきった。
アレキサンドロス大王に精一杯なったんだ。
この時代では絶対に使われていない未知の数学だったり思想だったり経営方針、国家運営を全部ガン無視し、全てを内政官にぶん投げとにかく最速で内戦を片付け、東方遠征に乗り出した。
王というだけでカリスマ性があるのか、言うことは大体聞いてくれる部下に、未来知識での戦略に戦術、ゲリラ戦しまくって補給を徹底的に苛めたり(主に火使った)ハンニバルの戦術パクって包囲殲滅しまくったりともう脳筋もいいところであった。
下手に頭があるだけに敵さんにとってはもはやイナゴの軍勢が知恵を持って略奪しに来たようにか見えなかったであろう。
…………でも、仕方がないんだ。
東方遠征……楽しかったんだ……。
魔術なんてものが実際にあり、神の加護だとか精霊の加護だとかそんなゲームのような面白おかしなものがあった。
この時代の娯楽なんて現代に比べて鼻かむちり紙以下としか言い様がなく、戦争は采配を振るえば振るうほど敵をすりつぶせる快感があった。
金銀財宝や食い物を奪い自国や軍を潤す優越感はたまらない。
スリルと達成感が同時に味わえる戦争は、俺にとって娯楽以外の何者でもなく、当時俺について来ていた奴らにとっても勝ち戦を続ける娯楽は脳髄を痺れさせるほどに刺激的だったのだろう、彼らは狂信的に戦争を求めていた。
狂信的に戦争を求める軍勢は、世界征服を目的にしていた俺にとって都合の良いものであったし、何より彼等を興奮させたのは女が略奪しなくても勝手に寄ってきて、金銀財宝が勝手に懐に入ってくるという一種のステータスがあったことも間違いない。
俺は元の時代の倫理観、というより女は口説くものであるという刷り込みにより、自分に対して本気で惚れている女じゃないと抱けないという性癖が大暴れしていたせいで行く場所行く場所で口説いては王の略奪である! と凱旋したものである。
やっぱり指揮官、というか大王ってモテるね。
見目麗しい女を口説いては現代のテクで女を自分の物にしていったせいでヘタイロイの奴らにはおちんちん大王なんて不名誉な称号を与えられ、殴りあいに発展したものの、東方遠征は大成功を修めていた。
だが、遠征が過激すぎたのか、戦争でのダメージが肉体に蓄積し過ぎていたのか、俺は目の前に日本のみという史実のイスカンダルよりも圧倒的な前進制圧をなしえた辺りで、史実のイスカンダルよりも早く寿命を迎えようとしていた。
最期というには情けなく思うが、寿命が尽きかけていた俺は目が見えなくなり、四肢が腐りかけており、血交じりの嘔吐が止まらなく、遺言すら残せそうにないほどに満身創意となっていた。
…………ああ、なんと情けない、次代に何も残せず死んでしまうのか……と後悔が襲うも後の祭り、俺はそのまま息を引き取る、はずであった。
目が覚めれば暗いどこぞの洞窟、傍らには俺がどこぞの村で遠征に誘った女がいた。
名をブリュンスタッドといったか、とても退屈そうにしており、好んで人の血を飲んでいたイカれであったはずだ。
だが、滅法強く、怪力であり、ヘタイロイの戦士が全軍がかりですら勝てないほど強靭であり、何より美しい女だった。
元は男というか男の人格であったらしいのだが、この時代男も女も絡み合い絆を深める時代なので問題などない。
そもそも俺はTSが好きなので問題はない。
そういえばなんと言って彼女をついてこさせたか、確か退屈そうで、血が滅法好きでよく飲んでいたから、戦争すりゃ好きなだけ飲み放題で、退屈とは無縁な行軍であると言ったんだったか。
気まぐれと言えば気まぐれだったんだろう、彼女はどこか退屈紛れについてきて、そのうち俺の女の一人になっていた。
俺も彼女が今まで出会った誰よりも美しかったから、この世界に来てから一番と言っていいほどにやる気を漲らせて口説いたものだ。
笑えるくらい毎日声をかけ、プレゼントを持っていっては愛を囁き、彼女に尽くしたものだ。
そうしていればいつの間にやら好きあっていた。
そんな彼女が目を腫らして、嬉しそうに俺が生き返ったことを喜んでいた。
どうにも彼女は吸血鬼であったらしく、死の淵を彷徨っていた俺を死徒と呼ばれる吸血鬼にしたらしい。
そして死徒になるのに年月も相当経っていたらしく、彼女はいつか俺が意識を取り戻す日を心待にしていてくれていたらしい。
なんというか困った笑みとはこういう時にでるのであろう。
彼女の想いが嬉しく、人として死ねなかったことが寂しく、そして案の定ディアドコイ戦争中であるという彼女の言葉であった。
もう苦笑いである。
歴史の修正力というのか、結局俺はイスカンダルという枠を抜け出すほどの力は持っていなかったのであろう。
今さら戻ったところで混乱させるだけであり、克服できるらしいが未だ日光の下をまともに歩けない体であった俺は悠久の時を夜に紛れて生きることとなった。
二度目の人生が三度目になっただけなので今さら文句という文句はないものの、なんだか積み上げたものが壊れていく様は寂しものであった。
だが、ブリュンスタッドは気にしていないと言えば嘘になるのであろう、なんやかんやで楽しんでいた彼女だ。
どこか寂し気ではあったものの、俺が生き返って意識を取り戻した方が嬉しかったのか、四六時中俺について回っては愛し合った。
百年ほどその状態が続いた頃。
彼女は唐突に女好きのお前が一人の女にかまけているなぞ可笑しいと何目線なのか突然ぶちかますと、他の女を抱いてこいと俺の尻を蹴飛ばしては他の女を抱かせ、その後興奮した状態で俺にしなだれかかるというただの寝取られ好きになっていたのは永い年月が彼女を性倒錯者にしたのであろう、例え吸血鬼でもエロは無限大なんだなと納得してしまった。
そんなこんな性倒錯気味な毎日が続き、太陽を克服し、吸血鬼の弱点である流水さえも克服するような年月がたったころ、彼女はそろそろ一旦お互い好き勝手に生きようと言い始めた。
なんでも、倦怠期が怖いらしい。
お前もう何百年一緒にいるんだよと内心思ったものの、彼女は本気らしく、仕方ないと思いつつ俺も適当に大陸をふらついていればたまに会っては愛し合い、ふらついていればどこぞで出会い、愛し合う。
まあお互い相性が凄まじく良かったのであろう何時であっても飽きることなくお互いの体を貪りあったものだ。
だがいつの間にかキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグとかいう魔法使いにブリュンスタッドは滅ぼされていた。
聞けば街一つグールと死体の溢れる死都にしていたらしく、ブチキレた人間サイドが滅ぼしたらしい。
第一印象あいつ殺せるとかマジで!?
といった感情と、まあそらキレるよねって諦め、あとはまあある意味妻のようであった恋人との別れの寂しさであった。
お互いにいつでも会えるし、いつでも愛し合っているという慢心はあったのであろう、この唐突な別れは当然であったのかもしれない。
怒りは不思議となく、人間やるな……という不死から目線での感動と、お互いに別れることがあるならこういう別れになるであろうという確信があったからだ。
正直死ぬのは俺だと思っていただけに驚きが隠せなくはあるが。
そうして、また年月がたった。
何分暇だ。
ある意味不老不死である。
やれることなぞやり尽くしたし、吸血鬼になったことで起こる吸血鬼衝動は思った程にない。
軽く一週間に一人、山賊だったり悪人だったりの血を吸い尽くせばいいだけであり、思ったより不便しない。
この時代人殺しも隠蔽しやすく、燃費もいいので大した苦痛はない。
適当にふらふらしながら、どこにで行った。
どこぞの王に仕えたり、どこぞの国で商売したり、どこぞの国で綺麗な女を口説いたりと好き放題やった。
気づけば時は5世紀に入り、俺はブリテンにて円卓の騎士をつとめることになった。
暇だったのだ。
やることないし、戦争か女を抱くくらいしか娯楽がない。
なら暇だし戦争すっか、とブリテンで騎士になることにしたのだ。
アーサー王に武勇を見せることで気に入って貰い、商売や実務、戦術戦略など戦争の経験を活かしてケイやアグラヴェインなどにも取り入り、仕事こなしつつ戦争をした。
基本的に暇だし体力が有り余っているどころか過労死などとは縁遠い体であるので戦争と実務を延々とやり続ける24時間働けますかを地でいく仕事振りを発揮していると、アーサー王に流石に怒られた。
曰く働きすぎだと。
同じく死ぬほど働いているアーサー王に「アーサー王が死ぬほど働いているんだから配下も死ぬほど働くべきでしょ」と反論してやることにした。
アーサー王は苦虫を噛み潰したような顔をするとこれかしっかりと休息とるようにすると不承不承ながら宣言したせいで俺の暇潰しが強制中断させられることとなった。
せっかくの暇潰しが……と嘆いていると、何故かアグラヴェインとケイにえらく感謝され、酒を奢って貰ったが、はて俺、なんかしちゃいました?
そう言えば今さらだが、アーサー王って公的には男だし、私事でも男ということで通しているらしいが、あれって女だよな?
尻とかみりゃ分かるが、尻の骨格が明らかに女だよな。
見た目は美男子で通せるが俺が一体何人の女を抱いてきたと思ってやがる。
俺の股間センサーは騙せないぜ?
汝は女、ケツありきってな。
いやしかし美少女だね、ブリュンスタッドとため張れる女がいるとは思わなかったわ、久々にあんな女抱きたいものだ。
こう、俺の手練手管で女であること思い知らせたいわ(紀元前脳)
女はおちんちんには勝てないってことを思い知らせたい(エロ同人脳)
なんかこう、合法的に抱ける手段はないものか。