隣には美しい柔肌を露にするアーサー。
俺自身も裸であり、明らかにコトに及んだとされる血や、乱れたシーツが見てとれる。
ここがどこかと言われれば恐らく王の寝室であろうことは想像に難くなく、何かの罠を疑うにしては状況証拠は揃っており記憶が無いだけに冷や汗が流れてくる。
……やばいな、王の秘密を暴いただけに留まらずコトに及ぶとか頭が悪いにも程がある。
ちらりと隣を見れば露になった艶かしい肢体に、見えてはいけないところまで見えてしまっているのは凄く興奮する。
だが、流石に寝込みを襲うほどに倫理観は崩壊していないつもりではある、王相手に寝込みを襲うなどと馬鹿の妄想に過ぎない。
言い訳も色々考えたが取り敢えず何がどうなろうと面倒くさい事態になるだろうと思い至り、諦めてアーサーに覆い被さるように腕を回し、二度寝に移行することにした。
問題を先送りにしただけであるが別に考えなしという訳ではない、拙速なことが良いとは限らないこともある。
アーサーを眠りから起こせば考える間もなく癇癪を起こされるか、蹴りだされるであろう。
だが、自分から目覚め、俺と全裸で寝ている、どころか明らかにコトに及んでいることに混乱するであろうが、俺が寝ていることで考える時間が生まれるであろう。
つまりそれが大事なのである。
人の怒りは八秒あれば通りすぎ、冷静になると言われている。
冷静になったアーサーは色々と考え、きっと答えを出すであろう。
ならばその冷静な答えを俺は粛々と受け止めれば良い。
「ふぁー後は野となれ山となれだのう」
俺はアーサーの肌に触れあうように二度寝をした。
キメ細やかな肌は、触るだけで気持ちの良いものであったとここに伝えよう。
★
目が覚めると頭が痛いことにアルトリアは気づいた。
恐らく飲み過ぎなのであろうが、竜の因子を持つ自分は相当なザルあると自覚ししており、ちょっとやそっとじゃ前後不覚になどなりはしない筈だと思っていた。
(アレクがよもやあれ程に酒豪とは……)
だが、兵役と実務を兼任し、よく働き、国を、自分だけの手では不可能であったことを為し遂げてくれているアレクは自分に追随できる程の酒豪であった。
(まったく……記憶が無い辺り、私としたことが意地を張りすぎたみたいですね……しかし、楽しかった)
普段感情を見せないようにしているアルトリアは、あそこまでムキに、そしてあそこまで感情を露にして語り合える、所謂友を持っていなかったので大変楽しい席であったと思う。
まさかこれ程王である自分に気を遣わず、掴み合い、罵りあえるとは思っていなかったのだ。
それに、為政者としての視点での会話も、お互い反りのあわぬこともあったが、共感できることも多い、大変有意義であった。
アルトリアはまるで同じ立場の友を得たと思うほどに、彼を気に入っていた。
酒の席とは言え、アレキサンドロスを愛称でアレクと呼ぶほどに。
(しかし頭が痛い…………二日酔いとは初めてですが、こうも辛いものでしたか……よく円卓の騎士達はこのようになることを知っていて飲み明かせます……………ね…………)
そうしてアルトリアは二日酔いの痛みに耐えながらも、そろそろ起きあがり、仕事をしようと体を動かそうとして…………妙に体が重いことに気づいた。
動かないのではない、だが、重い、しかも体の一部に何かが乗っかっているような重さだ。
恐らく腕のようなものだ。
アルトリアはその時点で溢れんばかりの冷や汗が噴出した。
良く良く気づけば自分は裸であり、妙に股の方が痛い。
ずきずきとした。
妙に後にひく痛み。
アルトリアは未だ目を開けていない。
開けば何かが終わると確信していた。
されど開かねば事は進まないといったジレンマに苛まれるものの、彼女は意を決して恐る恐る瞳を開く。
まず第一に飛び込んできたのは太く浅黒い腕、そしてよくよく気づけばその者と肌を密着させ、まるで夫婦のように寝ている今の自分。
顔を上にあげれば、そこには美男子と偉丈夫染みた顔つきの丁度中間地点とも言える美形があった。
アレクだ。
アルトリアは酷く動揺した。
何故この者がここで裸で夫婦のように寝ているのか理解できない。
自分も裸であり、しかも自分の寝室だ。
自分が嫌がった気配は部屋に無く、更には状況が出来上がり過ぎている。
恐らくだが
(ままままままま待ってください…………も、もしやこれは私が酔って無理矢理やったのですか!?)
そう勘違いしてもアルトリアはおかしくなかった。
王の寝室という安全圏であり、国のために尽くしてくれているアレクは忠義ものである思っていた。
そもそも交合するにしても、自分は男と喧伝しているだ。
ありえる筈がない。
そう思うアルトリアには致命的なまでに見逃しがあった。
円卓の騎士には自分が女だということはバレておらず、アレクが自分を女としてみている筈がないという思い込みがあった。
だが起こっている、つまりは自分が酒に酔い、性別をバラし、アレクに無理矢理命令したのであろうと勘違いした。
(これは……醜態です……アレクにも申し訳ないことを……)
「権力を使い、無理に命じた」という結論に到るほどにアルトリアはアレクを信用していた。
それは常人ならば倒れるほどの仕事をこなし、更には前線にて矛を振るう無双の働き、身を粉にして国に尽くす姿は、アルトリアに不貞や疑念を挟み込むことすらしなかった。
アレクサンドロスが吸血鬼であることは公言していないのでただの吸血鬼の暇潰しだとは思い至らなかった。
しだとは思い至らなかった。
宮廷魔術師であるマーリンは、アレクが吸血鬼であるとは見抜いているが、善性の塊であり、国をどうこうするようには見えなかったため、口を閉じているほどだ。
アルトリアに見抜ける筈がなかった。
「わ」
アレクが寝苦しかったのか、アルトリアを胸に抱き込むように引き寄せた。
その腕は優しく、愛おし気にすら感じられた。
アルトリアは思わぬ女らしい声に、頬を染め、幸せそうに寝ているアレクの姿を見て、思わず笑みが溢れる。
(なんというか、幸せそうに眠るのですね、貴方は)
自分が無理矢理やったにしては嫌がるような感じではない。
むしろ愛おしげに抱き寄せるその姿は、自分を女として見てくれているのだとアルトリアは直感的に気づいた。
そして何故だか胸が軽く弾んだことにも気づいた。
(そうですね、私も、アレクにならば、素を晒すのも悪くはない)
アルトリアは更に自分を押し付けるようにアレクへと身を寄せる。
今はまだ深くは考えないように、この時間を楽しむかのように、アルトリアはもう一度眠る。
その表情はどこか幸せそうであった。
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目が覚めればまだアーサーまだ寝てるんだけど寝すぎじゃない?