命の従花を咲かす少年達   作:班・損

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 クランクなるギャラルホルンの兵士と三日月を代表としたCGSの間で行われたMSの決闘は、こちらの勝利で終わった。

 

 搭乗して間もないのに、正規兵が操るモビルスーツ相手に勝利する。この驚くべき事実は、阿頼耶識システムによってのみ齎されたものではないだろう。恐らく三日月のセンスがずば抜けている、そう見るべきだ。

 

 「しかしどうもギャラルホルンも一枚岩じゃなさそうだな」

 

 「どういう意味だ、それは」

 

 もともとは社長室だった部屋は、参番組改め『鉄華団』の会議室と化していた。無論、団長はオルガである。

 

 そして彼は俺を重役として扱ってくれるようで、先ほども鉄華団の指針と具体的な仕事を詰め終えたところだ。因みにその場には鉄華団唯一のストッパーことビスケットもいたのだが、少し前に桜さん(ビスケットの祖母)とこの農場に三日月たちと共に向かったので今はいない。

 

 「最初のギャラルホルンの総攻撃、アレはクーデリア嬢を狙ったものだった。じゃあなんで奴らは二度目に決闘なんてカビ臭い手段を選んだんだ?」

 

 「……ギャラルホルンの戦力に余裕がなかったからってのは、考えづらいか」

 

 「俺もそう思う」

 

 オルガの回答を肯定する。

 

 ギャラルホルンは300年続く治安維持組織だ。いくら本部(地球)から遠い火星支部であっても、その規模は伊達ではない。となれば、CGSぐらいの民間警備会社を轢き殺すなど容易いことだ。

 

 ……いや現実はそうならなかったが、まぁ一般論として正しい認識だろう。

 

 「実際バルバトスの通信記録を聞いてみたが、ありゃあ私情だった」

 

 「私情だと?」

 

 「ああ、大人の争いで子供が犠牲になる必要はないんだとさ」

 

 16歳の少女の身柄を要求した上での発言だったのでかなり説得力に欠けるが、その一方で彼の気持ちも分からなくもない。上官と現実に板挟みされて、苦悩した末の結論があの決闘だったのだろう。

 

 「だがそれはそれとして、ギャラルホルンはクーデリア嬢が欲しかった。二日連続で戦力を、それもモビルスーツを差し向ける程度には」

 

 「まさかギャラルホルンが焦ってるってのか」

 

 「だと思うぜ」

 

 決闘はクランクという男の独断と見てまず間違いないだろう。だがそれと同時に、彼の上官からクーデリア拘束の任務を言い渡されたのも事実だと考えられる。そして更には―――

 

 「クーデリア嬢のスポンサーはノブリス・ゴルドン、圏外圏でも有数の武器商人ときた。ほら、一気にキナ臭くなってきたな?」

 

 「……成程な。ジョシュアの言いたい事が分かってきたぞ」

 

 もし仮に革命の徒たるクーデリアが、死ぬか或いは行方不明にでもなったとしたら。独立の機運が高まる火星の低所得者たちは混乱の末、独立運動を強引に推し進めるかもしれない。無論、その手段の中には戦争も視野に入るだろう。

 

 つまる所、クーデリアが死んで一番得するのがノブリス・ゴルドンという訳だ。何ならこの男はギャラルホルンとの繋がりもあると考えられる。何が高貴(ノブレス)首領(ドン)だ、これでは唯のグルではないか。

 

 「もっとも仮説の域を出ないけどな。ただ最悪の事態を想定して動くとするならば、だ」

 

 「ああ、大きな後ろ盾が欲しいところだな。そうすりゃあ、案内役の問題も解決できる」

 

 「案内役の問題?」

 

 今度は俺が聞き返すと、オルガはあからさまな渋面を作った。

 

 「トドの奴が仲介したオルクス商会ってのが地球への案内役なんだが……」

 

 「あーそれはまた面倒くさい話だな」

 

 モビルスーツや艦船の動力炉に『エイハブ・リアクター』という半永久的にエネルギーを生成する装置が用いられている。で、このリアクターから発せられる粒子は重力場および磁気嵐を発生させるため、大抵のライフラインは制限されてしまうのだ。

 

 そしてそんな代物を動力に使用しているため、宇宙では通信もままならない。なんとも致命的な話である。だからこそ、星間移動をする際はどうしてもその手のプロ、”案内人”が必要になる訳だ。

 

 だが案内人を紹介したのがトド・ミルコネンとなれば、どこまで信用していいかもわからない。というか普通に信用ならない。だってアイツ元壱番組だし、何なら仕草も発言も一々胡散臭い。

 

 「とはいえ、今の俺たちにはそれ以外の伝手がねぇ」

 

 「だよなぁ」

 

 「だが安心してくれ。そこら辺は一応俺にも考えがある。任せろ」

 

 「おう」

 

 やはりここぞという場面で輝くのがオルガ・イツカという男である。最悪、上手くいかなかったとしても三日月のバルバトスと鹵獲したグレイズがある。何とかなる、というか何とかしよう。

 

 

 

 ★

 

 

 

 モビルワーカーがずらりと並ぶ格納庫付近にて。メカニック担当の子らがギャラルホルンから鹵獲したモビルスーツ、グレイズの補修作業をせっせと行っていた。

 

 そしてそんな彼らに指示を飛ばす大柄の男がいる。彼の名前を雪之丞と言い、モビルワーカー専門の整備士だ。また皆からはおやっさんと慕われている様に、旧CGSの大人組の中では珍しくまともな人格者である。

 

 「お疲れ様です、雪之丞さん。グレイズの方はどうですか?」

 

 「どうも何も、使えるパーツを交換してるだけだ。旧い規格のバルバトスの整備に比べれば、まだやり様はあるさ」

 

 義足をガシャリと鳴らしながら応じる雪之丞さん。モビルスーツの整備は専門ではないというのに、それでもしっかり形に出来るあたり凄い。

 

 因みに鹵獲したグレイズの数は二機、そのうち即時動かせそうなのは一機のみ。もう片方はコックピット回りが完全に壊れているらしく、手の施しようがないとの事だ。

 

 「確認に来たって事は、お前がこれに乗るのか?」

 

 「そうですね。俺は昭弘の方が適任だと思うけど、今あいつ艦船受け取りに行ってるからさ」

 

 これは可能性の話になるが、宇宙に出た直後でギャラルホルンと戦闘になる恐れがある。もしそのような事態に陥ったときは三日月のバルバトスだけでは心もとない。だから今使えそうなグレイズも登用し、その搭乗者に俺が指名されたという次第である。

 

 「整備士からすれば、機械を乱暴に扱う昭弘よりもお前さんの方が助かるがな」

 

 「それ本人の前で言わないで下さいよ」

 

 「わーってるよ」

 

 昭弘だって悪気がある訳ではないのだ。ちょっと頭に血が上ると無茶をするだけで。うん、余計性質が悪い気がする。とはいえ、単純な戦闘のセンスで言えば俺より昭弘の方が勝るのも事実だ。

 

 「しかし武装がな」

 

 「武装?」

 

 「鹵獲した武器にライフルとアックスがあるんだが、ライフルの方は弾があまり残って無くてな。一応、倉庫に滑腔砲もあるにはあるんだが、ありゃあバルバトス用に調整されてるしなぁ」

 

 「成程、つまり十分な射撃は期待できないって認識で良いですかね」

 

 「ああ」

 

 雪之丞さんが頷く。しかし問題にするほど致命的ではない様な気もする。と言うのも―――

 

 「モビルワーカーと違って、モビルスーツの戦闘は基本的に白兵戦が主体だから、斧だけでもある程度はカバーできると思います。個人的にはシールドとかあると助かりますが」

 

 「確かに作れんこともないな。だが時間もないしナノラミネートもそんなに塗布出来ねぇから、あんま期待すんなよ?」

 

 「それで構いません。まずはコイツを動かせなきゃ始まりませんし」

 

 「だな」

 

 現場の無茶ぶりも可能な限り聞いてくれるメカニック。正直、CGSで働いてたにしては、あまりにも優秀過ぎる気がする。

 

 前社長、マルバの最大の功績はオルガや雪之丞さんを始めとした優れた人材を引き抜いた事だな。あ、それとバルバトスのエイハブ・リアクターで施設の電力を賄ってたのも地味に賢い。これで人格も優れてたら言う事なかったんだが。

 

 「あ、それともう一つ問題がある」

 

 「なんでしょう」

 

 「こいつには阿頼耶識がない」

 

 「マジ?」

 

 いや、良く考えたら分かる事だ。阿頼耶識システムは人体に機械を埋め込む危険なインターフェースである。手術の成功確率は約四割程度で、しかも子供でなければ手術は受けられない。

 

 こんな非人道的なシステムを正規の軍人が登用する筈もないのだ。となればモビルスーツの操縦は全て手動となる訳で―――

 

 「え、試運転したい」

 

 「……なるたけ急ぐよ」

 

 




・ジョシュア・キサラギ
 本作の主人公。転生者であるため他の団員よりも広い視野とそれなりの教養を持ち、精神的にも余裕がある(なお必要とあらば修正もする模様)。
 ガンダム主人公の宿命で機械弄りにも心得がある他、MWおよびMSの操縦技術も優れている。しかし三日月や昭弘の様な生粋のエースと比べると、自身の生存に重きを置いているため実力的にはやや劣る。ただし彼らと違って指揮能力に優れており、現場全体の指揮をしなければならないオルガにとっては大変助かる存在となっている。要するに強キャラ。
 因みに名前の由来はACから。具体的に言うと、白栗の初代リンクスと黄色い変態企業。



オリキャラの設定を書くの恥ずかしいけど楽しい。
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