命の従花を咲かす少年達   作:班・損

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鉄血編
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 マスドライバーを用いて鉄華団を乗せたランチを射出。そのまま火星の低軌道ステーションまで昇り、強襲装甲艦イサリビと合流する。そういう手筈だった。

 

 しかし案の定と言うべきか、ギャラルホルンのモビルスーツ部隊が低軌道ステーション近辺で待ち伏せをしていた。となれば、内部からリークした下手人がいるのは明らかである。同様に、その人物がオルクス商会との仲介役であったトド・ミルコネンである事も。

 

 「大人って本当に勝手なんだから」

 

 『仕方ないよ』

 

 グレイズのコックピット内にて。通信機越しから三日月の抑揚のない声が聞こえてくる。相変わらず無感情というか、今から切った張ったの殺し合いをするというのに図太い奴だ。

 

 『動かせるのそれ?』

 

 「一応ある程度なら。慣熟って言うにはまだ不安は残るけどな」

 

 『そっか。なら大丈夫だね』

 

 「いやいや、だから慣熟してないって―――」

 

 『ジョシュアなら大丈夫、いつもそうだったから』

 

 あ、はい。ものすごく重い信頼ですね。いや、可能な限り頑張るけどさ。

 

 『ミカ、ジョシュア!! 出れるかっ!?』

 

 オルガの声だ。どうやらもう奴さんはすぐそこまで、何ならエイハブ•ウェーブの反応的にもうランチに取り付いているのが分かる。初の無重力下におけるモビルスーツ戦。不安はあるがやるしかない。

 

 「一応確認しとくぞ、今回の作戦目標はオルガ達がイサリビに乗り込んでから戦線を無事離脱する事だ。だから今回は無理に敵を倒さなくてもいい、時間稼ぎに注力するぞ」

 

 『分かった。じゃあジョシュア、スモーク焚いて』

 

 「ん? ああ」

 

 言われた通り発煙弾発射機を作動させる。すると貨物エリアの視界が一気に悪くなるが、それと同時に三日月がハッチを開いた。

 

 『一つ』

 

 三日月のバルバトスが300mm滑腔砲を放つ。

 

 そう、300mmである。グレイズが携行しているライフルが120mmで、前世における戦車の最大口径が140mmと言えば、そのデカさと凄まじさが伝わるだろうか。

 

 ましてや、そんな馬鹿げた火力を至近距離で受けたものなら。如何に優れた耐衝撃性を有するナノラミネートアーマーと言えど、容易に貫いてしまうだろう。

 

 「こりゃミンチよりひでぇな」

 

 三日月が撃墜したグレイズを回収しながら呟く。砲弾は完全にコックピットを貫通しているが、フレームとエイハブ・リアクターが無事だ。売り物にはなるだろう。

 

 『前に出るよ』

 

 「了解、カバーする」

 

 バルバトスがスラスターを吹かす。そして殺人的な加速で敵機に突撃していった。グレイズとは圧倒的にパワーが違うのが分かる。300年前のオーパーツが最新の兵器よりも高性能、中々に不思議な話である。

 

 「敵は4、いや5機か。分断してる内に各個撃破したいが」

 

 『このリアクターの反応はっ!? クランク二尉の機体だなぁっ!!!』

 

 バルバトスを無視して真直ぐこちらに突撃してくる敵グレイズが一機。三日月の負担を少しでも減らすために、せめてあと一機は引き付けたいところだが―――

 

 『クランク二尉は、お前たちを殺す気などなかったっ!!』

 

 オープン回線を垂れ流しながら敵のグレイズがアックスを振りかぶる。どうも殺意が振り切れてようで、軌道の読み易い一撃だった。故に雪之丞さんが用意してくれた小型シールドで防ぎ、そのままローキックでバランスを崩させる。

 

 『っく!!』

 

 クランク二尉とはこの鹵獲したグレイズ本来のパイロットの筈だ。そして男の口ぶりから察するに、やはり彼は人格者だったのだろう。同情するが、一応ここは戦場なんでな。

 

 「潰れろ」

 

 こちらのアックスを敵グレイズの頭部に叩きつける。殺すよりも無力化。動きの悪くなった敵機のマニュピレータを潰して得物を奪い取り、そのままもう一度蹴り飛ばした。

 

 『ま、待て!! 貴様ぁっ!!』

 

 「待つかバカたれ」

 

 これで三日月の後を追える。数も減らせたし、ついでに近接戦のやり方も分かった。相手が冷静では無かったとはいえ、初陣にしては上等な戦果だろう。

 

 先行していた三日月の下に向かうと、バルバトスがグレイズ4機を相手に大立ち回りしていた。ただ中距離で互いが互いの様子を伺っているようで、まだ本格的な戦闘には移ってはいない。

 

 『遅かったね、ジョシュア』

 

 「悪い。だが一機は無力化した」

 

 『流石だ』

 

 めっちゃ肯定してくれるやん。でもね、俺は現在進行形で1対4で渡り合っている君の方が値千金だと思うんだ。

 

 『それじゃあジョシュア。援護よろしく』

 

 そう言って300mm滑腔砲をこちらに放り投げた後、三日月は大型メイス片手に敵部隊に突っ込んでいった。毎度のことながら三日月の戦い方は獣染みている。

 

 「カバーする方の苦労も知らないでさっ!」

 

 散開してバルバトスを包囲しようとする敵グレイズに向けて、滑腔砲を()ちかます。

 

 出来るだけ三日月が戦いやすい環境を整えるには、敵機にバルバトスの背後を取らせないようにする必要がある。だから俺のすべきことと言えば効果的な牽制射撃なのだが―――

 

 「俺いるか、これ」

 

 牽制射を繰り返しながら呟く。というのも、三日月が次から次へと敵モビルスーツを撃墜していくのだ。

 

 しかもどうやら最初に墜としたのが隊長の機体だったようで、明らかに統制が乱れているのが分かる。そうして気づけば三日月は3機目、4機目とグレイズを撃墜して、あっさり戦闘は終了してしまった。

 

 「……お前強すぎない?」

 

 『ジョシュアのカバーのお陰だ。うん、やりやすかった』

 

 謙遜が過ぎると嫌味だぞ、マジで。最後の方とか俺何もしてなかったし。いや楽できたのだから文句はないし、寧ろ助かったから良いのだが。

 

 「もうちょい俺も頑張らないとな」

 

 今回はこちらから先制したというのも相まって快勝することが出来た。しかし整備性の悪いバルバトスを常に前線で戦わせるというのは、長期的な視野で見ればあまり歓迎できる事でもない。

 

 なんせ火星から地球まで最短でも2週間もの時間を要するのだ。資源も限られている。いつまでもこんな戦い方をしていたら、いずれガタが来るのは明白だ。

 

 「とりま撃破したグレイズは鹵獲しよう。俺はイサリビの方に向かうから、三日月は―――」

 

 『コーラルめ、我々を出し抜こうとしてこの様か。全く、全滅しているではないか』

 

 「新手か」

 

 青いグレイズ。エイハブ・ウェーブの波形解析結果によると、機体名はシュヴァルベ・グレイズと言うらしい。どうやら指揮官用の高性能機なようだが単機である。

 

 「三日月」

 

 『うん、さっさと仕留めよう』

 

 状況的には2対1である。ギャラルホルンの士官よ、卑怯とは言うまいな。悪いが仕事なんでな、死んでもらう。

 

 『なっ!! 戦い方すら知らないのか、この無作法な奴らめ!!』

 

 何をいまさら。大体作法がどうとか、中世の古臭い決闘じゃないんだからさ。

 

 「そういう傲慢が己を殺すんだ」

 

 『き、貴様ぁっ!!!』

 

 敵の機体は高い機動力を活かしたランスユニットによる突撃を得意としているようだった。しかしいくら素早くともその”突き”という単調な動きは、モビルスーツの操縦に未だ慣れていない俺でも十分に見切る事が可能である。まして阿頼耶識システムでバルバトスと直接接続している三日月ならば、言うまでもないだろう。

 

 故に俺のグレイズが敵シュヴァルベの拘束に成功するのも、時間の問題だった。ランスを受け流す拍子に雪之丞さん特製のシールドを失ったりもしたが、安い代償である。その代わりに敵は右足をバルバトスに潰された訳だし。

 

 『っく、貴様っ!』

 

 「大人しく投降しろ。元よりこちらは命まで奪うつもりはない」

 

 『黙れ!! 何が投降だ、この火星人どもがっ!!』

 

 「そうかい」

 

 プライドを取って死ぬ。そういうのもあるのか。気持ちは分かるが、俺には絶対にできない選択だ。

 

 『やるよ』

 

 バルバトスがメイスを振りかぶる。そしてそのまま身動きの取れないシュヴァルベに振り落さんとした時―――

 

 『離れろガエリオ』

 

 バルバトスの背部スラスターに弾丸が直撃した。ナノラミネートアーマーによって致命傷こそ免れたが、明らかに損傷が激しくなっている。

 

 そしてその隙を突く形で、シュヴァルベが俺の拘束を解こうとした。グレイズよりも出力の高いシュヴァルベに力負けする。それが反射的に分かり、敢えてこちらから羽交い絞めを解いた。

 

 そしてスラスターを吹かして即座に離脱を図ろうとするシュヴァルベの頭部を、アックスで破壊した。

 

 「まだまだ!!」

 

 新手はバルバトスが相手をしている。ならば俺は目の前のコイツを無力化してから援護すべきだ。

 

 そして至近距離でシュヴァルベの背後を取っているため、こちらの方が有利である。故に今度はランスユニットと接続している右腕、特にフレームが見え隠れする関節を叩き割った。

 

 『この俺がこうも簡単に!!』

 

 「それを傲慢だと言うんだ」

 

 右腕部および右脚部を失ったものの身軽になったシュヴァルベが再度離脱を図る。だがその動きには焦りが感じられた。となれば、やはり単純と言わざるを得ない。

 

 どうにも教科書通りの動きと言うか。いや、俺自身はモビルスーツの教本なんぞ読んだことはないのだが、実戦を経験したことのない木っ端の海賊なら相手取ったことがある。そしてこのシュヴァルベのパイロットは操縦のテクニックこそかなり洗練されているが、不測の事態に対する対応がそうした実戦経験の浅い兵士に通じるものがあった。

 

 「だから読み易い」

 

 距離を置こうとする敵の足を掴み、こちらに引き寄せる。そして態勢を崩したシュヴァルベの外部スラスターにアックスによる一撃を食らわせた。姿勢的にあまり力が入らなかったが、それでも片側のスラスターを損傷するのには十分な威力だった。

 

 『どこまでもしつこい!!』

 

 「宇宙ネズミの面目躍如ってな」

 

 振り返り際に左腕のクロー射出してきた。距離が距離だけに回避運動は間に合わず、こちらのアックスが弾かれてしまう。とはいえ俺には先ほど強奪した予備のアックスがある。

 

 「墜ちろ!」

 

 斧を腰から抜き放つようにして、シュヴァルベのコックピットを抉らんとする。俺の操作が遅かったのか、それとも敵パイロットが火事場の馬鹿力を発揮したのか。兎も角、アックスは左腕で防がれた。

 

 『ガエリオ、その機体ではもう無理だ』

 

 『分かっている!! 回収してくれよ!!』

 

 眼前のボロボロになったモビルスーツがハッチを開いたと思ったら、コックピットが射出された。それを新手のシュヴァルベが確保し、バルバトスの攻撃を回避しながら退却していった。

 

 「……こりゃあ、大金星かな」

 

 『だね』

 

 気づいたら夥しい量の汗がコックピット内で漂っていた。それだけ集中していたという証左なのだろうが、流石に疲れた。

 

 「イサリビの方も上手くいったようだな」

 

 『うん』

 

 「一先ず、状態の良い奴は持っていこう。これだけリアクターがあれば、良い金になる」

 

 『分かった』

 

 疲労も凄いが、それはそれとして出来る事はやろう。鉄華団はとにかく資金が必要なのだから。特に何も伝手がない状態から"大きな後ろ盾"を得るには、少しでも多くの土産はあった方が良い。

 

 




・戦利品
大破したグレイズ×3(時間の関係で全機は回収できなかった)
大破したシュヴァルベ・グレイズ×1
各種武装×そこそこ

書いてたらなぜか主人公が強くなり過ぎた。これはご都合主義タグ追加ですね。
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