転移者、ガラルの地にて   作:ジガルデ

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第10話

 

 

 

カプシリーズの色違いは皆、殻のような外側が黒く染まっている。

髪の毛のような体毛部分は元の色のままだが、大部分が黒くなっているため一目で色違いであるとわかるのが特徴だ。

それはさっきまでアイビーのカプ・テテフも同様だった。

そう、さっきまで…は。

 

「あれ?。」

 

その変化に気づいたのはアイビーだけだった。

 

「なんで真っ黒なんだ?。」

 

先に述べた通り、カプシリーズは体毛部分は元の色である。

しかし、ダイマックスしたカプ・テテフはその体毛部分も真っ黒に染まっていたのだ。

それ以外にも目が真っ赤に染まっていたり、その体が少し刺々しくなっていたり、バドレックス以外のポケモンがダイマックスした時に上空に発生するピンクのような色の雲の色も黒くなっていたりなど、細かな違いはあるが、特にアイビーの目に写ったのはその色の違いだった。

 

 

「テテテテー」

 

その巨大な体で歌うカプ・テテフは目の前に対峙するキョダイマックスしたアップリューを標的に定める。

 

ダイマックスカプ・テテフからミストパワーが溢れ出す。

対するキョダイアップリューもグラスパワーを纏い始める。

 

おかしな点はここからだった。

本来のダイフェアリーは桃色に近い色のパワーで攻撃する技であるはずなのに、ダイホロウよりも暗い、常闇のような黒い力がアップリューに遅いかかったのだ。

 

特防に努力値を振っていれば効果抜群であるカプ・テテフのダイフェアリーですら確定で耐える程度には耐久があるアップリューだったが、その黒い闇のダイフェアリーは一撃でキョダイアップリューを地に沈めたのだ。

 

「な、なんだ…?今は。」

 

その理解不能な現象にアイビーもついていけていない。

ヤローもせめて一撃だけでも与えられるだろうとキョダイサンゲキを命令していただけに言葉を失っていた。

 

「カプーー!!!」

 

 

その時だった。

既にバトルを終えたはずのカプ・テテフが次の標的としてヤローを見据え、その力を放とうととその身に闇の力を溜め始めたのだ。

 

「や、やめろ!テテフ!!」

 

本来のダイフェアリーよりも強化された力を、いくら人外染みたフィジカルをしているヤローとはいえまともに喰らえば命の保証はない。

焦るアイビーは全力でカプ・テテフをボールに収めようと試みるが、ボールが一切反応しない。

 

「くそ!何がどうなってるんだ!!」

 

比較対象は自分しかいないが、人懐っこく無邪気なあのカプ・テテフが突如としてヤローに牙を向けた理由がわからないアイビーは自分を盾にする様にカプ・テテフとヤローの間に体を滑り込ませる。

その姿を見たカプ・テテフは荒れ狂う闇の力の奔流を無理矢理上空へと向け、解き放つと、ジムの天井の一部を完全に消滅させた。

幸いにも強力すぎる力だったためか、その部分がこの世から消え去ったように消失したため破片などは存在せず、試合を見にきていた人たちにあの技による被害はなかった。

 

するとカプ・テテフはダイマックス時に瀕死になった時と同じように爆発のようなエフェクトと共に小さくなっていき、倒れたのだ。

 

「テテフ!?」

 

倒れるカプ・テテフを見たアイビーはその場から急いでカプ・テテフの元へと駆け寄る。

カプ・テテフの様子を確認すると目を回して倒れており、瀕死状態であることが見て取れた。

 

 

 

 

『ジムリーダー、ヤローのアップリュー及び、チャレンジャー、アイビーのカプ・テテフ戦闘不能!。ジムリーダー、ヤローの手持ちに戦えるポケモンがいなくなったため、勝者はチャレンジャー、アイビーとなります。』

 

 

 

 

アイビーがカプ・テテフをボールに収めた後、呆然としていたスタジアムにアナウンスが流れる。

それはアイビーの勝利を告げるアナウンスだった。

 

 

 

「おめでとう。君のポケモンは、とても強かったよ。」

 

カプ・テテフが入ったゴージャスボールを両手で握りしめて小さく震えていたアイビーにヤローはそう声をかける。

 

「ヤロー…さん。」

 

「君のカプ・テテフ、凄かったね。凄く凄く強かった。思わずガラルスタートーナメント用に育成していたアップリューを持ち出してしまったくらいだったからね。」

 

と、にこやかに微笑みながら座り込んでいるアイビーに手を差し出すヤロー。

 

「は、はい。」

 

その手を取って立ち上がると、ヤローは握った手をそのまま上へと挙げていく。

 

「多少のアクシデントはあったけど、今年のターフジムのジムチャレンジ最初の突破者である、アイビーくんに拍手を!!」

 

その拍手は、このガラルに起こる喜劇悲劇その全ての幕開けを告げるものだった。

 

 

 





謎のキョダイマックス

ガラル粒子やらなんやらでガラル地方限定で行使可能なダイマックスや、バドレックスの信仰による力とは違い、アイビーのそれはアイビーの体から溢れ出す謎の常闇のような力を使い発生する。
それを行うと対象のポケモンは黒く染まり、どこか荒々しくフォルムがチェンジし、敵と見做した存在を排除するためにその持ち得る力を謎の力で更に強化して排除しようとする。
何をもって敵と見做すかはそのポケモン次第であるため、トレーナーに制御は不可能となり、ボールに収めるこもすらできない。

通常のダイマックスは3ターン経過により強制解除となるが、あまりにも強過ぎる力のためか、2ターンで強制解除と同時に戦闘不能となる。

ゲームでいうなら元の技をダイマックス技に強化した後にこだわり鉢巻、こだわりメガネの威力上昇倍率を上乗せさせるキョダイ技になる。
当然、いのちのたま、達人の帯、はりきり、力尽くと言った補正もそこに入ってくる。

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