転移者、ガラルの地にて   作:ジガルデ

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第5話

 

 

 

 

「おめでとう、君はジムチャレンジに挑戦する権利を勝ち取った。ボスゴドラとマルヤクデというタイプ相性というものはあれど、僕だって負けるつもりはなかった。他のジムトレーナーのみんなも認めていたよ。だから君は胸を張ってジムチャレンジに挑戦するといい。君にはあの無敗のチャンピオンであるダンデくんすら倒せる、そんな気がしてならないよ。」

 

カブとのバトルの翌日、呼び出されたアイビーはカブからジムチャレンジの推薦状を受け取った。

 

「そして、これも渡しておこう。これはダイマックスバンド。特定の場所でのみ使用が可能になる不思議な現象、ダイマックスを使うために必要なアイテムだ。先の戦いでは使わなかったのは君がこれを持っていなかったからだが、次はそうはいかないよ。君が僕のジムに挑戦しにくるときまでに今以上の力をつけて待っているからね。」

 

はい、と渡されたそれはゲーム序盤で手に入ったアイテム、ねがいぼしから作られるガラルの謎パワーをポケモンに注入する装置、ダイマックスバンドだ。

 

「ありがとうございます。ですが、私も負ける気はありません。当然やるからには制覇を狙っていますから。」

 

「うん、僕のジムは君にとって、ただの通過点でしかないだろう。いや、むしろそれくらいの気持ちでやってくれなければ、困るというものだ。」

 

カブは優しく微笑みながら答える。

 

「そうだ、最後に君の仲間達を見せてもらえないだろうか。君の相棒たちを一度見てみたいんだ。」

 

「それは………いえ。わかりました。ですが、今はまだ他の人に見られるのは避けたいので誰もいない場所でなら、お見せしましょう。」

 

初めは断ろうとしたアイビーだが、推薦状を書いてもらい、ダイマックスバンドまでくれたカブのお願いを断ることはできなかった。

どうせジムチャレンジに参加してジムリーダーたちと戦えば自分のポケモンたちは皆みんなの前に姿を見せるのだ。

少なくともボスゴドラ1匹だけで攻略しようにも、ジムの特徴上、キバナのジムでもう1匹を見せなければならないのだから。

 

「今の時間帯ならここは誰も使ってない。ここでもいいかい?。」

 

連れてこられたのは昨日カブと戦ったステージ。

ボスゴドラとマルヤクデの衝突の跡がステージのど真ん中に大きく口を開けていた。

 

「では、みんな出てこい。」

 

六種類のボールから次々と姿を現すアイビーのポケモンたち。

皆が皆、アイビーの姿を視認すると嬉しそうに駆け寄って行く。

アイビーの胸は私の場所だと飛びつくカプ・テテフ。

アイビーを抱き締めるように背後に立ち包み込むテッカグヤ。

やれやれといった様にその様子を眺めるランドロス。

久々の外を満喫するようにアイビーの近くを旋回するサンダー。

それらの様子を見て優雅に微笑むカプ・レヒレ。

それとは正反対に眠そうにアイビーの近くで横になるボスゴドラ。

 

その様子を見ていたカブは言葉を失った。

少なくとも知識として彼が持つポケモンたちは知ってはいた。

知ってはいたのだが、その知識にあるポケモンたちの姿と彼が持つポケモンは明らかに異なっていたのだから。

 

「アイビーくん…君は…いったい…。」

 

「カブさん、これが私の自慢のポケモンたちです。彼らに出会うまで物凄い数の出会いと別れを経験しました。でも、それらを乗り越えた先にいた彼らを私は心の底から愛しています。」

 

「………。」

 

カブは嬉しそうに笑うアイビーを見て言葉を失った。

アイビーの言う出会いと別れ、それが何を指すかはわからないが、おおよその予想はつく。

普通に過ごしていても色違いのポケモンなんて出会わない。

カブの人生でもあのボスゴドラが初めて見たのに関わらず、アイビーの手持ちの6匹はその全てが色違いなのだ。

きっと沢山のポケモンと遭遇し、色違いではないのは切り捨ててきたのだろう。

さらに言えばアイビーはポケモンを入れるボールにも拘りを持っている。

皆が皆別のボール、それも既製品のボールも有ればジョウト地方の職人が作る限定ボールに入っているものもある。

これらのことからアイビーの言う愛はカブが自分の手持ちのポケモンに抱く愛情とは違い、コレクションに近い愛情だ。

多くのトレーナーが幼い頃から触れ合ってきた自分にとって大事な特別なポケモンへの愛情とはかけ離れている。

そして、アイビーはそれに気付かない。

 

だが、これはプレイヤーとしてゲームを遊んでいる側の人間からしたらなんてことはないものだ。

ランクマッチに潜るようなプレイヤーは当然ポケモンの性格や個体値の厳選を行う。

ある一定の基準を超えてくるプレイヤーに至っては特殊アタッカーの攻撃の個体値を0のダメかもまで粘るくらいなのだから。

その上で、色違い厳選まで行う猛者もいる、それが魔境ランクマッチ最上位の世界だ。

とは言ってもミントを忘れていたり、道具を間違えていたり、タスキ持たせてるのに砂、霰の天候にしたりミスト、エレキフィールドにいるのにあくびを使ったりするうっかりミスをしたりしても尚勝負に勝つ修羅の世界だ。

そんな彼らからすれば色違いかつボール厳選だけで満足するアイビーは可愛いものだ。

プレイヤーたちからすれば、の話だが…。

 

「カブさん、ありがとうございました。次に会う時はチャレンジャーとして再びこのジムにやってきます。」

 

「……うん。それまでにどんな成長をしているのか、楽しみにしているよ。頑張ってね。」

 

「はい。ほんの少しの間でしたがお世話になりました。」

 

アイビーは深々と頭を下げてお礼を言った後、ポケモンたちをボールにしまってジムを後にした。

その姿をカブは黙って見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

 







ゲームとしてポケモンを見ている視点とポケモンの世界を現実として生きているものの視点の違い
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