転移者、ガラルの地にて 作:ジガルデ
「いやあ、まさかウールー達があんな風に逃げるなんて予想外だったよ。」
アイビーの目の前に立つのは筋骨隆々な男。
ダイマックスボールを片手で投げる筋肉マンことヤローだ。
「この付近の野生のポケモンが異常な動きをしていたのにも関係しているのかな?」
「わかりませんが、可能性はありますね。」
ターフジムのジムチャレンジの内容、それはウールーをうまく誘導し道を阻む牧草をどかしながら奥まで進むというもの。
しかし、溢れ出るカプのプレッシャーに充てられたウールー達はアイビーが一歩も動くことなく牧草の全てを吹き飛ばしながら逃げ出したのだ。
「つまり、それだけ君のポケモンが鍛えられてる証なんだろうね。今から君との戦いが楽しみだよ。」
『バトルを楽しむ』がモットーの男であり、実力が伴っていない者が相手だとしても、容赦なく叩き潰すようなことができない優しい性格のため、一番最初のジムリーダーの地位に落ち着いているがその実力は折り紙付である。
実際ガラルスタートーナメントではレベル70を超えるポケモンを5体も繰り出してくるし、なんなら一番最初のジムリーダーのなかでは最も高いレベル群のポケモンが襲いかかってくる。
ただシステム上、ダイマックスの使い方のチュートリアル感が否めない戦いにしかならず、御三家のヒバニーを選ばなくても、ココガラさえきちんと育成していれば全抜きが可能な範囲である。
「それでは始めようか。君の物語の1ページを!」
そういい、ヤローが投げたボールから飛び出したのはヒメンカだ。
対するアイビーは当初の予定通りボスゴドラが入ったフレンドボールに手を持っていく。
しかし、アイビーの思惑とは違い、飛び出したのは別のポケモンだった。
「カプゥーフフ!!」
その身を黒で染めたアローラの守り神。
かつて、使用率1位にまで上り詰め、フェローチェですらスカーフを持つ環境となる原因の一つとなった破壊神とも言えるポケモン。
かなり奇抜な形のメガネをかけたカプ・テテフが君臨していた。
カプ・テテフはアイビーの方を振り返ると無邪気に手をぶんぶんと振り回している。
そのアイビーはというと、苦笑いを浮かべながら手を振り返している。
「そのポケモンは…。」
ヤローは呟く。
その特徴的な見た目のポケモンは、ガラル以外のとある地方に生息しており、その地方の守り神として祀られる4匹のポケモンの一角である。
そもそも見る機会など決してないポケモンではあるが、一ジムリーダーとしてヤローはそのポケモンのことを知識として記憶していた。
だからこそだろう、その記憶にある4匹とは全く違う色をしているそのポケモンに疑問が浮かぶ。
「その様子だとご存知のようですね。この子はカプ・テテフ。“色違い“のカプ・テテフです。」
アイビーの方を見て、無邪気に笑うカプ・テテフはくるんと回るとサイコフィールドを展開する。
自分の親であるアイビーにただただ褒めて欲しいという、その思いが感情がその姿、仕草から溢れ出ている。
「色違い…?。」
通常ではない色のポケモン、色違いポケモンの存在はたびたび発見報告があり、とても珍しい存在である。
だが、いまヤローの目の前にいるのは守り神として遥か昔から人々の信仰の対象であった存在の、色違いなのだ。
それは、アイビーがアローラの守り神であるカプ・テテフ以外のカプ・テテフを持っているということに他ならない。
本来なら1匹しか存在しないのならいま目の前にいるカプ・テテフの色が通常色として知られている筈なのだから。
「………。いや、何も聞かないでおこう。さぁアイビーくん、ちょっと戸惑ってしまったけどバトルを始めようか!」
何かを言おうとしたヤローはその言葉を飲み込み、バトルを開始するよう審判に合図を送る。
『只今より、チャレンジャー、アイビーとターフジムジムリーダー、ヤローのバトルを開始します。』
ヤローの合図を受けた審判がアナウンスを行い、試合開始のアラートを鳴らす。
その瞬間だった。
まさに電光石火。
瞬きをする暇すらなくヤローのヒメンカはダウンしていた。
「テテテテ〜。」
その光景を作り出した本人は、無邪気に歌いながらゆらゆらと揺れていた。
カプ・テテフ
無邪気な性格(ひかえめミント仕様)
イタズラ好き
技構成
サイコキネシス
???
???
???
持ち物
こだわりメガネ
CS252H4振り