ReⅢ闘神都市   作:eeeeeeeei

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本戦7日目

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【本戦7日目】

 

第一試合

 レオパルド・マーラーvs瑞原葉月

第二試合

 ボーダー・ガロアvsタイガー・ジョー

 

──

 

「おはよー羽純」

「おはよっ」

 

 昨日のせいか、羽純の声が少し上擦ったように聞こえた。

 昨日は色々とあった。

 羽純の拡張付与の話。と、なぜか突然のキス…

 

 でも、俺は変わらない。

 今までも、これからも。きっと。

 

「…なにか、付いてる?」

「いや、何も。朝ごはん食べたら、探索行ってくるな」

 

 サクラ貝があれば拡張付与ができ、回数に制限はあれど魔法を扱う事ができる。魔法無しで勝つ気ではいたが、羽純の言う通り、負けられないのだからあるに越した事はない。

 それに、拡張付与にトラウマのある羽純に、そんなことは無いと思わせたいとも思った。

 

「う…うん。あのね。今日も探索が終わったら、工房に来てくれる?」

「もちろん。迎えに行くよ」

 

 相変わらず、いつもより緊張したような羽純。

 

「羽純、帰ったら悩み聞くよ。今日サクラ貝が見つからなくても、忍者には必ず勝つから。なんとしてでも」

「う、うん。待ってるね」

 

 そうして羽純と別れ、ダンジョンへと向かった。

 

 

────

 

 

 今日も今日とて認証を終えて、新しいダンジョン『のーてんフラワー』へと入る。

 

 名前を見た時から思ったが、案の定のーてんフラワーがそこら中にいた。明日は試合なのに、経験になるような敵はいないかと諦めていると…

 

「これは……」

 

 『召喚ドア』と呼ばれる物が目の前にあり、門番ハニーもそこに居た。召喚ドアは異世界の人間を召喚することができるドア。このドアを開けると異世界から召喚された人間と闘い、勝利すればその者は異世界へと帰れるそう。

 未知の強敵との戦闘。

 験担ぎじゃないが開けようか考えていると…

 

『はにほーーー!強者との戦いを望むのであればドアを開けるが良い!!』

 

 門番ハニーもそう言うし、やるか。

 意を決して、俺は扉を開けた。

 

 

────

 

 

 私、変だ…

 ナクトはなにも変わってないのに、変わりたくないのに、私が変わってしまっている。

 

 付与の仕事をこなしつつ、工房で仕事をこなしていると勢いよく扉が開いた。

 

「あなたがナクトのパートナー!?」

「……え?ナクト…?ナクトッ!?」

 

 ドカドカと入り込んでくるピンク色の髪をした少女に担ぎこまれたのは、グッタリとして動かないナクトと…

 

「落ち着いて羽純。ナクトは、大丈夫だから…気を失っているだけ」

「レメディア…」

 

 マントとフードで顔を隠したレメディアが、工房に入りフードを外してそう言った。

 

 

────

 

 

【ナクトが羽純の工房に担ぎ込まれる前】

 

 

 開いたドアから溢れる光──

 

 さぁ、鬼が出るか蛇が出るか…

 ドアから溢れ出た光が集まり人型に固まった。

 背丈は、俺と同じくらいか?どことなく、自分に似ている気がする。だが、異様に伸びている長い髪は似ても似つかない。

 

『………』

「ん?」

『………』

「言葉を知らないのか?異世界の強者さん。手合わせ願いたいんだけど?」

 

 ずっとダンマリだが…

 コイツ…この肌がヒリつく空気感は、ハンパじゃない。

 ボーダーさんよりも、確実に強い…と言うか、ハッキリ言ってかなりヤバい。だが、力試しなんかで、こんなところで死ぬ訳には、行かない…!

 

──すぅー…

 

 息を限界まで吸い、剣に手をやり一直線にその男へと向かう。

 

「だぁぁぁっ!!」

 

 渾身の一撃を、片手で構えた剣に簡単に止められる。

 メタルハニーですら斬りつけるこの剣を…片手だと?

 圧倒的な程の力の高まりを感じる…コイツ、洒落にならないッ!

 鍔迫り合いの剣を力任せに無理やり弾き距離を取ると、相手の抜かれていた剣はいつの間にか納刀されていた。

 そして地面スレスレまでに頭を下ろし、限界まで腰を捻った状態。右手は剣の柄を軽く握っている。

 あの体勢から放たれる剣は、居合。

 

「くっ!!」

 

 咄嗟に剣を地面に突き立て盾とした瞬間、強烈な衝撃。

 

「が、はぁっ…」

 

 剣の上からでも身体の芯に響く。一撃が、重すぎる。

 いつ抜いたのかすらわからなかった。

 あの重さは、速さから繰り出される物。

 俺も剣速には自信があったが、桁が違う。

 またも納刀しているが、次は悠然と佇んでいた。

 

「オオオォォォォ!!」

 

 剣を地面から抜き放ち、片手で振るわれる一撃を躱し、その身体へと何度も斬りかかるが、急に頭に衝撃を受け、吹き飛び地面を転げ回る。

 回転がおさまり、ようやく気付いた。左側頭部に裏拳を喰らっていたようだ。俺が斬りつける度にフラフラと踊るように回っていたのは、俺の死角から拳を叩き込むため。何度も斬りつけたはずだが、効いている様子はまるで無い。

 

 コイツ…マジで、強い…

 

 背中に悪寒を感じバク転の要領で跳ね起きると、さっきまで転がっていた地面は大きく裂けていた。

 

「あっぶね!まともに喰らったら死ぬな」

 

 なぜか相手は攻撃の手を止め、佇んでいた。

 

『……自分は死なないと、思っているか?』

 

 初めて喋った。が、なんだコイツ?剣を再度構えながら答える。

 

「死ぬときは、死ぬだろ」

『……いや、死なないんだよ。お前だけが、のうのうと生き残る。そのアホ面を晒して』

「……は?」

 

 俺は死なない?生き残る?何言ってんだ?というか、アホ面だと?お前も似たよーな顔してんだろが。

 少しイラついてきた。

 

「ナクト…!!」

「あんた!油断してんじゃ無いわよっ!!」

 

 突如聞こえたレメディアの声と、聞いた事のある声に一瞬気を取られてしまうが、再度ヤツの方へと振り向く。

 

 ──瞬間、死を覚悟した。

 

 それと同時に、ヤツの振るう一撃が、構えていたはずの剣をすり抜けるように、肩から腰にかけて、俺を大きく切り裂いた。

 

『………弱すぎる』

 

 ヤツを象っていた光は霧散し、ドアの中へと消えていく。

 それを眺め、生温い温度を全身に感じながら俺は意識を失った。

 

 

────

 

 

「……ト……ナクト」

 

 

──ぱちっ

 

「羽純……それに、レメディア…?」

 

 大きく袈裟斬りにされたナクトを見たときはゾッとしたが、起き上が。名前を呼ばれた今、生きていて良かったと心から思った。

 本当に良かった……あなたまで失ったら、私は…

 

「なんで?あれ、俺…」

 

 記憶の混濁。気を失うほどの、生死の境を彷徨うほどの一撃を受けたのだ。当然と言えば当然か。

 

「ナクト…ナクトぉ…無事で良かったよぉ…」

「ごめん…心配かけて。でももう大丈夫」

 

 泣きじゃくる羽純をやさしく撫でるナクトが私を見つめ、口を開いた。

 

「レメディア、あの場にいたんだ…かっこ悪いところ見られたな」

「召喚ドアを、開けたのね…あれは、何が出てくるかわからない、危険なドア。なぜ…?」

「いや、験担ぎじゃないけど、異世界の猛者を倒せば羽純を安心させれるかと思ったんだけど…完璧に負けたよ……アイツは強すぎた。最後なんて剣をすり抜けて斬撃を喰らっちゃったし…レメディアが、ここまで運んでくれたの?」

 

 確かにそうだ。チラリとしか見ていないが、あのすり抜けたような一撃、初見では私でもおそらく捌き切れず深傷を負っただろう…

 ナクトは、なんでこんなにも強さに執着をするのか、気になったが、聞けない。人と関わることが少なかったからか、なんと言えばいいか、わからない。

 だから、ひとまず質問に答えることしかできなかった。

 

「そう、だけど…私だけじゃない」

「そうだよナクト…桃花さんとレメディアが、ナクトを連れてきてくれたの。手当てをしてくれたのは、ポロロムさん。ヒーリング3を使える人なんて滅多にいないけど、ナクトに助けられたからお礼だって」

「桃花って誰だ…?それに、ポロロムさんが…」

「ピンク色の髪をした可愛い子だったよ。ダンジョンでたまたま出会ったって言ってたけど…」

「あぁ…あいつかな…」

 

 自分の傷口を撫でながらナクトは呟く。

 桃花…あの子も凄く動揺していた。

 あの子がいたから、あの子がナクトを背負い、私が魔物を倒しながらダンジョンを出ることができた。

 私だけであれば、もう少し時間がかかっていただろうから、本当に助かった。

 

「でも、なんでレメディアはあの場に?」

「私も、召喚ドアで、鍛錬をしていたから…」

「そっか。レメディアは、勝てるんだ…俺はまだ…」

「いえ、私が相手をした者であれば、ナクトでも勝利することは難しくないと思う…」

「……そっか」

 

 私の言葉は本心だったのだが、ナクトはたんなる慰めと受け取ったのか、小さく呟くと俯いてしまった。

 

 今までは思ったことなどなかったが、この時だけは自分の口下手が嫌になる。ようやく会えた、自分の事を味方だと、仲間だと言ってくれる大切な二人。その一人がこんなにも落ち込んでいるのに、私には、かける言葉が見つける事ができず、ただ黙って俯くことしかできなかった。

 

 

────

 

 

「ナクト、あのね、工房に、一緒に来て欲しいの…」

 

 あれからレメディアは俺の無事が確認できたからと言って帰って行った。レメディアには言えたけど、桃花とポロロムさん、どちらにもお礼を言わなくてはと思っていたら、羽純が工房へ来て欲しいとのこと。

 

「朝に言ってたやつか。いいよ。いこっか」

 

 体の調子は戻っているし、問題は無い。

 ポロロムさんのヒーリングが聞いているのか、この世界では癒しの魔法を使えるもの自体が少ないのに、レベル3を使えるなんて、シスターとして未熟とかなんとか言ってたけど、とんでもなく優秀じゃないか。

 

 が、昨日から様子が変な羽純。普段であればジッとしていろと言いそうなもんだけど……

 

「あのね、拡張付与の話なんだけどね、サクラ貝をくれるって人がいるの…」

「へぇー。太っ腹な人もいるもんだな」

「でもね、条件があるって言われて…」

 

 そう言うことか。

 俺の姿を見て、羽純を不安にさせて、すこしでも俺が強くなるようにと羽純は思っているんだ。条件ももしかしたら羽純に何か不都合が起きるようなことかもしれない。だから様子がおかしかったのか。

 内容によっては、断る事も視野に入れなきゃと思いつつも、あの台詞と、落胆の表情が浮かぶ。

 

「条件って?」

「その、ね…ナクトと、私が、キスすることなの…」

「…え?」

「もー、何度も言わせないで…」

「ごめん。でも、だから昨日…」

「うん…私は、初めてだったから…初めては、その、ちゃんとしたいなって……ナクトの気持ちも考えず、ごめんね」

「いや、俺は嬉しかったよ。羽純は、その、俺と、良いのか…?」

 

 昨日しておいて何を今更と思うが、羽純の反応は、思っていた物とは違っていた。

 

「うん。ナクトが、良いの」

「……え?」

「はやく工房に行こっ」

 

 羽純に手を引かれて宿を後にした。

 

 

────

 

 

「お姉様っ!お待ちしておりましたわ」

「フィオリちゃん…ごめんね、待たせて。待っててくれてありがとう」

「俺はナクト・ラグナード。君がフィオリちゃん?」

「はい。私はフィオリ・ミルフィオリですわ。お兄様っ♪」

 

 貴族のお嬢様にしか見えない身なりと、可愛らしい顔。それとは裏腹に、俺の頭では何かがひっかかりモヤモヤとしていた。

 

「どうか、されましたか?お兄様」

「いや、なんでも無いんだ。さっきこっぴどくやられてさ。少しクラッとしただけ」

「な、ナクト、大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫一瞬だから。それで、羽純のお願いを聞いてくれるんだっけ?」

「はいっ!お姉様とお兄様の、男女のキスと言うものを見せて頂ければ約束通りサクラ貝をお渡ししますわ」

「ね、ナクト…」

 

 羽純が顔を赤くしている。まぁ、昨日が初めてで、しかも今日はギャラリー付きなら仕方がない事か。

 

「ひとまず工房に入らないか?フィオリちゃんもいい?」

「もちろんですわ」

 

 三人で工房に入り、事の経緯を聞くと親戚のおじさまとやらの依頼でココを訪ねて、羽純と俺を気に入り、羽純が欲しがっているサクラ貝を持っていて、キスが見たいお年頃と……

 めちゃくちゃな話だが本当だとか。

 

「羽純が良いなら、俺は嬉しいけど…」

「ナクト、私は、その良いんだよ?」

「キスして頂けるんですの?」

「うん…約束ね。フィオリちゃん」

「……今回だけな。あと、他人がいつも簡単に、思い通りに行くとは思わない方がいい」

「……っ!」

 

 目を瞑り、顔を少し上げる羽純。

 肩を抱き寄せ、そっと唇を触れさせた。

 

 柔らかい唇。触れるほどに近いため、鼻腔からいい香りが入ってくる。羽純の匂い、体温が俺へと伝わってきていた。

 

「……羽純…」

「……うん」

 

 唇を離し、羽純からそっと離れてフィオリの方に身体を向けた。

 

「あの…すみません…お兄様のおっしゃる通りです…でも、凄く素敵なものを見せて頂きました。約束通り、こちらのサクラ貝をお渡しいたしますね」

「フィオリちゃん、ありがとう」

「いや、いいんだ」

 

 フィオリから羽純へと手渡されたソレは、俺が見てきた物とは違った物だった。

 

「これは、珍しいサクラ貝の中でも更に珍しい白サクラ貝ですわ。その中でも大ぶりのものをお持ちしましたの」

「こ、こんな高価なもの…」

「いいんです。約束ですし、私も、お兄様に言われて反省いたしました。どうぞお受け取りください」

 

 ペコリと頭を下げるフィオリ。

 これは他のお客さんの装飾に使うと羽純は言っていたようで、できたら見せて欲しいと言うフィオリへは適当に誤魔化しつつ、フィオリは工房を後にしようとして…

 

「あの…またお話をしに伺っても宜しいですか…?」

「うん。もちろんだよ」

 

 羽純がそう言うと、フィオリは笑顔で去っていった。

 

 

────

 

 

「ともかく、これで拡張付与ができるね…」

「うん。そーだな。ありがとう。あと、心配かけてごめんな」

「うんん。ナクトが毎日頑張ってるのは知ってるよ。不安になったわけじゃない…って言えば嘘になるけど、ナクトには、無事でいて欲しいから…」

「…レメディアにもらった剣を羽純に強くして貰う。それを俺が使うんだ。三人で闘ってるようなもんだしな、それに、災いが起きる、だっけ?今日既に死にかけたから、明日からは逆に幸運になる。羽純の力は災いなんか呼ばないって俺が証明するよ」

「…ナクト、ありがとう……じゃあ、するね」

 

 白サクラ貝を剣の上に置き、そっと手を添える。

 重なり合った二つが光り、後には剣だけが残っていた。

 

「…できたよ」

「これで、スロットが増えたんだ?」

「うん。白サクラ貝は、すごいね」

 

 普通のサクラ貝では壊れたスロットが出来る事もあるそうだが、白サクラ貝ではそれはできず、しかも倍のスロットが増えたらしい。

 

「ありがとう。今日は色々あって疲れたよな。明日、試合前に付与をお願いできるかな?」

「うん。夕飯はアリサさんと伊集院さんのところに行こっか?」

「おー。じゃあ、行くか」

 

 羽純と工房を出て酒場、埴輪浪漫にむかう。

 

 スロットを増やせると言うことは、無限に付与できる。

 つまり、どこまででも強くなれる。それに、上限は無い。

 が、それはあくまで剣の話。

 

 俺自身が強くならなきゃ……

 今日の負けと、彼奴の言葉が胸に刺さる。俺はまだまだ、弱い。

 

 それと、羽純の言葉も脳裏に張り付いて離れないが、羽純が言う気がないのなら聞かない。

 

 結局今日は夕食を食べて闘神ダイジェストを見て、その日は眠りについた。

 

 

────

 

 

 ダメだ。

 気付いてしまった。

 やっぱり私、ナクトの事が……

 

 この気持ちは、この大会が終わったら、

 ナクトが優勝したら、伝えよう。

 

 だから、まずは明日。

 どうか、ナクトに不吉なことが起こりませんように…

 

 




【試合結果】
○レオパルド・マーラーvs瑞原葉月×
○(不戦勝)ボーダー・ガロアvsタイガー・ジョー×(大会外で私闘に及んだため失格)
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