ReⅢ闘神都市   作:eeeeeeeei

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本戦9日目

──────

 

 

【本戦9日目】

 

第一試合

 白井カタナvsマダラガ・クリケット

第二試合

 ハリケーン・斎藤vsレメディア・カラー

 

──

 

 

「おはよう、ナクト」

「あぁ。おはよ」

「今日も応援に行こーよ」

「そうだな。昨日来てもらったし、激励するか」

 

 レメディアの試合は第二試合だったな。

 

 いつものように、マビル迷宮に向かう前に羽純を工房まで送る。

 カテナイ亭を出てマルデさんと軽く話し、トコトンさんに癒されて工房に向かう途中、突然トランペットの音が鳴り響いた。

 

──パラッパラッパー

 

「え?なに、なんの音?」

 

 通りにある民家の屋根の上に、かなり目立つ身なりの男が立っていた。

 

「やぁ。ナクトくん」

 

 シュピっと片手を綺麗に上げて挨拶をするイケメン忍者、幻一郎さんがトランペットを片手にそこに居た。

 

「こんちは。幻一郎さん」

「こんにちは」

 

 昨日の戦闘の傷は、もう癒えているようだ。

 今は屋根から飛び降りてきて羽純と挨拶をしている。

 昨日の戦闘での事をいくつか話したところで幻一郎さんは話を変えた。

 

「ところで、昨日から桃花を見ないんだが知らないかな?宿にも戻ってこなくてね…」

「え…?桃花さんに、何かあったんじゃあ…?」

「俺とは昨日のうちに別れてるんで、夜には戻ってるはずですけど……あの、もしかして免除金持ってなかったんすか?」

「免除金……?はっはっはっは!!」

 

 一瞬の静寂の後に、高笑いが通りに響く。

 あー、この間はそういうことか。と思った通りの事を無駄にキリッとした顔で告げた。

 

「忘れていた」

「あの、今からでも免除金を払えば桃花さんを無償労働からは解放できますよ?」

「金は無い!」

 

 羽純に対して、なんとも力強く、ハッキリと言い放つがセリフがセリフなので全然かっこよく無い。

 結局、桃花のことはなんとかすると言い残し去っていった。

 

「桃花さん…大丈夫かな…?」

「あぁ。立派な忍者になるんだって息巻いてたから、きっと大丈夫。命の恩人でもあるし、闘神になったら今度はこっちが助けてやらないとな」

「うんっ!そーだね」

「ん。じゃあ、行ってくるな。また迎えにくるよ」

「ナクト、気をつけてね」

 

 一昨日のダンジョンは結局認証シールを取っていなかったのでまた取りに行くしかないのでサクッと終わらせてまた羽純を迎えに行くか。

 

 

────

 

 

「やぁやぁ、また会ったねっ」

「ん?今度は…ちゃんとナミール?」

 

 この間のぽやぽやした子ではなく、初めて会った時のナミールのようだ。

 じろじろと値踏みをするように見ていたからか、ナミールは胸元を抑えてこちらを見てきた。

 

「な、なになに…怖いんだけど…」

「あぁ、ごめん。この間会った時は人が変わったようだったから。と言うか、今思えば別人だったみたいだな」

「うんん!この間のことだよね!?会ったよ!だんごの里のことだよね!?」

 

 ナミールは慌てたように手をバタバタとさせながら答える。

 とはいえ、違うと思うのだが。

 

「……合ってるけど。あれ本当に、ナミールだったのか?」

「そ、そうだよ。フォームチェンジっていう魔法で、マジックフォームの時の僕だよ」

 

 闘神ダイジェストで言っていたやつか。

 ナミールは一回戦は剣士として相手を降し、二回戦では魔法で相手を圧倒したと。

 それがフォームチェンジ?にしては…完全に別人としか思えない。

 

「ふーん。フォームチェンジすると体幹とかも変わるの?」

「え?体幹…?」

「うん。俺はそう言うの見りゃわかるの。立ち姿や動きの所作も全然違うからさ。双子とかなら納得だったけど」

「ギクッ……そんなわけないよーどっちも僕だよー。フォームチェンジするとそれはもう色々変わるから」

「ふーん」

 

 納得はいかないが、まぁ別にいいか。

 

 

────

 

 

 意外と鋭いな……

 まさか一発で見分ける人がいるなんて。

 全然違うなんて言われたのは初めてだ。

 

「そうなのっ!とにかく、ナクトも二回戦、突破したんだもんね、次は、僕とだよ!」

「そうだな。どっちのナミールが相手でも負けないけど」

「どっちも僕だってばっ!!」

 

 どっちのって…

 でも、ナクトも鋭い剣捌きと付与魔法で闘ったって聞いたし、強敵だな。

 

「ま、そうゆうことにしとくよ」

「もー。わかんないナクトだな〜」

 

 ナクトは顔もタイプだし、年も近いし、話やすいし、何より良い人だ。でも、僕だって負けられない。

 

「いいじゃん、認めてんだか────」

 

 あれ?ナクトどうしたんだろう?突然私の後ろを眺めてる。

 

「我が愛しの君!!!」

「愛しの君?」

 

 あぁ。この声は…最悪だ。しかもナクトといる時に……

 従者を従えた40代手前くらいのケバケバしくナルシスト全開のおじさんが従者を従えて現れた。

 カツサンド伯爵……親が勝手に決めた、婚約者。

 いやらしく、ねちっこい、キザで、無駄にプライドの高い性格最悪な婚約者。

 

「あぁ、愛しの君の高貴な香りに、下品な香りが混じっているな」

「はい、伯爵様。田舎者が近くにおりますので」

 

 またしょーもないこと言ってるし。

 こうゆうところが嫌いなんだよね……早く逃げないと。

 

「あん?確かに俺は田舎の村出身だが、そこまで言われる筋合いはないけど?」

「ええい!口を開くな田舎者!空気が汚染される」

 

 あ。ナクト、ちょっとイラついてる…?

 

「生まれた場所や家柄しか自慢できない奴に言われる筋合いはない。誇れるものは自分で見つけろよ。良い歳してんだから」

 

 うわー。結構言うな。

 僕にとっても少し耳が痛いけど、生まれや家柄を自慢した事はないし、する気もない。ましてやそこでしか、貴族という点でしか自分を語れない伯爵は、やっぱり嫌い。

 

「田舎者風情が……黙れ黙れ!!」

「さぞ高貴なお方であれば田舎者も入れるダンジョンなんか来ずに、パパとママの建てた家にいろよ」

 

 うーん、いい感じに言い合ってるな。

 ナクトには悪いけど今のうちに、逃げちゃおうっと。

 

 

────

 

 

 なんなんだこのおっさんは。

 別に田舎出身な事は認めるが、そこまで言われる筋合いはないし、なによりこのドギツイ香水の匂いで鼻が曲がりそうなのはこっちだ。

 

「……ふん。これ以上田舎者と会話をしたなどと噂がたてば、我が伯爵家の名誉が汚れる」

「テメーの作り上げた名誉はそこに一つでもあるのか?」

「伯爵様、田舎者とのお戯れはもうそのくらいに…ハムサンド嬢は既に別の場所へ…」

「なに!?あまりにも田舎臭くて愛しの君の香りが薄れたことに気付かないとは……行くぞ!!」

 

 ようやく行ったか。

 

 別に俺個人であればどうでもいいが、村ごと悪く言われるのは、羽純や親まで馬鹿にされたようで腹が立ってしまった。

 ナミールも、上手いこと逃げたみたいだし。

 愛しの君ってのと、二人の身なりからすると貴族の政治がらみかな。

 

 とはいえ俺には関係のない事だと言い聞かして、今回は召喚ドアには目もくれずダンジョンの最奥へと向かった。

 

 

──

 

 

 無事に認証シールを取り、今回も羽純と二人でコロシアムの選手受付の入口前で待っていたのだが、なにやら騒がしい、男の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「オイッ!なんでこんなところにバケモンがいるんだよ!」

「………」 

「なんとか言えよ!お前らのせいで……俺はカキタロスに賭けてたんだぞ!!」

 

 民族衣装のような特徴的な服をきた少女がガラの悪い男に囲まれている。

 

「ナクト……あれ」

「ん、助けるか」

 

 羽純がいる時は自分から絡みに行くような事はしたくはないが、流石に気持ちのいい光景ではない。

 

「おい。賭けの負けを他人に当たるな。そんな子供に、恥ずかしくないのか?」

「なんだお前?虫使いの一族は滅ぼされてんだぞ?コッチは生き残りの害虫を駆除してやってんだよ」

「………」

 

 当の女の子はなにも思っていないのか、無表情でボーッと立っている。

 

「じゃあ、俺も害虫を駆除するかな」

 

 剣を抜くまでもなく。殴り飛ばして蹴散らした。そのまま文句を垂れながら逃げていく男たちと入れ替わりに、羽純が女の子のそばへと向かう。

 

「あの、大丈夫だった?」

「………平気」

「本当に?どこか怪我とかしてない?」

「……殺されるよ?」

「え?」

 

 穏やかじゃないな。この雰囲気もそうだが、異様だ。

 俺の頭に引っかかるこの子に対する感情も……桃花と初めて会った時と重なる。

 闘神都市に来て以来、デジャヴのような事が多い。

 俺がおかしいのか、この街がおかしいのかはわからないが。

 

「それは、君が俺たちを殺すのか?」

「違う、マダラガ…」

「マダラガ……じゃあ君の名前はなんていうの?」

「アザミ………ばいばい」

「あっ、待っ──」

  

 なおも引き止めようとする羽純を止める。

 

「あぁ。ばいばい。またな」

「…ばいばい。気をつけてね、アザミちゃん」

 

 チラリと振り向いただけで、そのままアザミは去っていった。

 

「ナクト、なんで止めたの?」

「あの子は、マダラガのパートナーかもしれないし、少なくとも関係者だろ。あの子なりに俺たちを気遣ってくれたんだと思う」

「…殺さるよって、話してただけでって、ことかな…」

「たぶん、な。だから、羽純も一人の時は首突っ込むなよ。俺がなんとかするから」

「うん…わかった」

 

 マダラガと、アザミか……

 どちらも俺は夢に見た顔。

 ここに来てからもう何度目かもわからないモヤモヤを抱えたまま、コロシアムの前へと戻った。

 

────

 

 

 結局、あの一件の間にレメディアは既にコロシアムに入っていたようで、会う事はできなかった。

 

 でも、そのままナクトとコロシアムの待っていると、大きな歓声が何度か聞こえてきて、最後に大きな歓声が聞こえるとナクトが呟く。

 

「勝ったな」

「…うん!」

 

 たぶんとか、おそらくじゃない。確信してるナクト。もちろん私もだけど。

 レメディアが出てくるのを待っていると、記者さんやらがカメラやマイクなどを持って集まってきた。

 

「……」

 

 ナクトは、無言でいるけど記者の一人が気づいたようで話しかけてきた。ナクトは私の手を掴むと、コロシアムの前から離れていく。

 その手の温度にドキドキしてしまった。

 

「これじゃゆっくり話せない。また明日、レメディアの宿に行こっか」

「う、うん」

 

 あんなにリポーターさんたちがいたら、レメディアも絶対すぐに帰っちゃうもんね。

 ナクトと二人、カテナイ亭に帰る前に、思いついた事を言ってみる。

 

「ナクト、明日レメディアにサンドイッチ作って行こうか?」

「いいかも。じゃあ、買い物して帰ろっか」

 

 今度こそ宿に戻り、夕食も終えて闘神ダイジェストを見ると……

 

「うそっ!レメディアが、顔に怪我…?」

「……かすり傷だって言うけど、なぁ羽純」

「うん、明日はお見舞いに行こ」

「おぉ、じゃあ朝行くか」

 

 そして、ナクトとおやすみの挨拶をしてベッドに入る。

 

 顔に怪我なんて…傷、残らないような小さな怪我だといいけど…

 

 

────

 

 

「こ、来ないでください……」

 

 羽純の衣服は乱れ、成長途中の乳房を隠すように両手は胸の前で固く組まれており、その頬には涙が流れていた。

 

「羽純に触るな!!」

「おじさんは羽純ちゃんと楽しくお遊びしてるだけなんだが……邪魔立てするなら容赦はせんぞ小僧?」

 

 下卑た笑いを浮かべる赤毛のモヒカン男。

 その巨体と、流石は闘神と言うだけあってか放たれる闘気はかなりのもの。だが、今の空気に似合わない、下半身から露出されているモノは既に臨戦態勢となっており、余計に俺をイラつかせる。

 自分の頭に血が上っているのがわかる。身体を巡る血液は沸騰しそうなほどに熱い。

 

「関係ない!お前は俺が…」

「ナクト…いいよ。このままじゃナクトが…」

 

 震える羽純は、この状況に置かれながらも、自分よりも俺を案じていた。

 頭に上った血も熱さも、急速に下がっていくのがわかる。

 羽純は、俺じゃあ羽純を守る事ができないとわかっている。

 本当にそう思われているかはわからないが、自分自身でそう決めつけている。グチャグチャな思考のまま、ガムシャラに剣を抜く。

 

「──────」

 

 突如現れたナニカ。モヤモヤと霧に覆われたように、影しか見えないが、どうやらこのナニカに助けられた事は理解した。

 怯えたように震える大男は冷や汗を垂らしながら引きつった笑みを浮かべ工房から去っていく。

 

 そして、安心した顔の羽純。

 その顔を見て、思う。

 

 俺は、なんて弱いんだ。

 己の無力さに、自分自身を殺したくなる。

 何故俺はこんなにも弱い?何故俺は……

 

 

 そして、世界が上下真っ二つに裂けていく。

 出てきた光景は、暗い室内の天井。

 

──また、夢。

 

 やけにリアルな夢。

 今だからこそ思う。

 羽純は今と同じ服装で、背景は今借りているものと同じ工房。

 でも、この街に来る前から変わらない夢の内容。

 何故俺は、この工房を知っていたのか。何故、成長した羽純を服装までも完璧に再現し、夢で見ていたのか。

 

 それはわからない。

 わからないが、悪夢が現実にならないように、まだ日も昇らない闇夜の中で黙々と鍛錬を始めた。

 




【試合結果】
×白井カタナvsマダラガ・クリケット○
×ハリケーン・斎藤vsレメディア・カラー○
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