ReⅢ闘神都市   作:eeeeeeeei

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本戦12日目

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【本戦12日目】

 

 ぶるま大使vsレメディア・カラー

 

──

 

 

 待っていたつもりだけど、いつのまにか眠っていたみたい。

 とはいえ、足りてない睡眠が故にベッドという最高のゆりかごに後ろ髪を引かれるもなんとか身を起こし、顔を洗いに部屋を出る。

 自分の部屋の、隣の部屋は廊下に繋がっているため、必ずこの部屋を通る事になるのだが、綺麗に揃えられたままの布団が部屋の主人が帰ってきていないことを物語っていた。

 

 寝ぼけた頭は瞬時に覚醒し、昨日ナクトを怒らせてしまったんだと言う後悔と、考えがまとまらない自分への苛立ちが再燃するも、それを振り払うために足早に部屋を出た。

 

 教養の水場で顔を洗い、部屋に戻ったところで、なにやら人の気配がする。

 

「あ……」

 

 そこにいたのは、魔物の返り血であろう、紫や緑や赤色で所々斑らに染まったナクトが装備を外しているところだった。

 

「ただいま。ついレベル上げに熱が入ってさ」

 

 もう、いつものナクトじゃないみたいに見える。落ち着いた雰囲気ではいるが、どこか暗く、怖い。何かに取り憑かれているかのように、瞳の奥には煌々と黒く輝くモノが見えた気がした。

 そんなナクトが心配になり、昨日のことを話そうと思ったのだが、タイミングが悪く、どうやら来客のようだ。コンコンコンと、少し強めの、せっかちなノックの音が静寂を破った。

 

「入るわよー。って何それ汚い!そんな格好で布団に入るなんてことしないでよ!罰金取るわよ!?」

「入りませんよ」

 

 マルデさんにナクトは怒られているが、まるで気にしていないし、そんな怒っているマルデさんの手にあるのは、場違いなくらいに大きな花束。

 

「マルデさん、それは…?」

「あぁこれ?羽純ちゃんに、あの闘神ボルト様からお届け物だって。よかったわねー。あっ。ナクトくんも、私にプレゼントがある時は、物はいいから現金で頂戴ね」

「そんな時があればそうしますよ」

「まるで無いみたいな言い方ねー」

 

 マルデさんはナクトに一通り絡み終えると部屋を後にし、汚れたナクトと、花束を抱えた私だけが残っている。

 

「ボルトさんから……」

 

 思わずその名を呟いてしまい、後悔した。

 だが、予想に反してナクトはなんの反応も示さない。汚れた上着を袋に詰めて、今は剣を磨いている。

 

「カード、ついてるぞ」

 

 スッと指差した先には、確かに外側にカードが貼り付けてある。私からは見えない位置だったようだ。そのカードを手に取る。

 

『暖かいもてなしを有難う。

 出会いを祝して。

      ボルト・アーレン』

 

 ナクトの目は良い。カードの存在に気づいたと言う事は、この内容も見えていただろう。

 

「別に、こんな事で好きなったり、しないんだからね」

 

 ナクトは剣を鞘に戻して立て掛けると、着替えとタオルを手に取った。どうやらお風呂に向かうようだ。

 

「そうか」

 

 最後に、私を見る事なくそう言って、部屋を出ていった

 邪魔が入ってしまった。昨日から、ナクトとの会話が上手くいかない……

 でも、お花に罪はないので花瓶をマルデさんに借りて、部屋に飾っていると、ドアの開く音。どうやらナクトは戻ってきたみたい。

 

「レメディアの試合、行くならコロシアムの前で待ってるな」

 

 そうして、すぐにドアの閉まる音。

 

「ナクト…?」

 

 ドアを開けると、そこにはもう誰もいなかった。

 

 もしかして、避けられてるのかな。

 嫌だよ。

 変わらないって言ったのに……

 言ってくれたのに……

 

 

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 闘神ボルト。

 なぜか、アイツは無理だ。生理的になんてもんじゃ無い。生物として細胞の一片から拒絶反応を示すほどに、殺したくて堪らなくなる。

 例え、羽純が惚れていようとも。それで恨まれようとも。

 

 今はナマニクというマヨイガにそっくりなダンジョンを探索中。昨日から寝ずのダンジョン攻略なので、機嫌も悪く、やたらめったらに魔物を殺しつつも最奥へと辿り着いた。

 

「…その闇の波動は……暗黒面に落ちてしまったか……」

 

 道中でナミールに出会う。どうやらポヤポヤの方、マジックフォームか。またも訳のわからないことを呟いているが、

 

「おにーさん、何があったので?」

「…いや、別に何もない」

 

 荒ぶる感情を抑える術は知らない。だから全てを発散すれば良いと思い、昨日から狩りに精を出しているだけ。今この会話すらも、鬱陶しいと感じていた。

 

「……随分と、荒れていますね」

「関係ないだろ?」

「まぁ、それもそうですね」

 

 ナミールとの会話を終えて、認証シールを取る。

 つまらないダンジョンだったが、マヨイガよりは魔物も強い。そのため、再度魔物を蹂躙しようと思い、開けた場所まで戻ったところで、なぜか追いかけてきたのであろうナミールに、面倒にも声をかけられた。

 

「あの──」

「なんだよ?」

 

 まだ何か用があるのか、と振り向いたところで聞こえたのは、予想だにしない言葉だった。

 

「そういえば、好きです」

「……は?何を?」

 

 時が止まったように感じた。

 一体、何を言ってるんだコイツは?

 

「あなたを」

 

 真っ直ぐな目で、無表情のままにこちらを見るナミール。

 その瞳の奥は、俺の何を見ているのか。

 そう言えば、この闘神都市で出会った女の子の中で、ナミールの夢は見ない。マニも桃花もアザミもレイチェルさんも、まだ見ぬ名前も知らない人たちも見る。でも、この子の持つ二つの顔は、そのどちらもが俺の悪夢に出てこない。

 

「えらく、急だな」

「急では恋とは言わないので?ビビッときた。それも恋だぜこのヤロウ……です」

 

 恋愛というのは、わからない。

 今までなんどか付き合ったこともあるし、それこそ肉体関係は幾度となく結んできた。

 ただ、そこに愛という感情があるかと言われれば、答えはNoだ。

 基礎学校の時も、応用学校の時も、付き合った子たちの事など、正直顔も覚えていない。あの頃は、やりたくて堪らなかった、というのが強かった。ただの思春期だと割り切っていたが、無性にそうなる時がある。自分の内側が黒く染まるような感覚が。

 そういえば、今も……

 

「ひとまず、そんなギラついた目で見られると……私と、したいんですか?」

「……そう、かも」

 

 寝ぼけ眼のような眼を見開いた。誘ってんのかと思ったが、そうじゃないのかなんなのか。全くわからん。

 

「ふふふ。流石はダークサイドの戦士。素直なのはいい事です。その秘めた二面性に、私は惹かれたのかもですです」

 

 秘めた二面性、ね。確かに、今の俺には二面性があるのかもしれない。この纏わり付く黒いモノを消したい。

 じゃないと俺は……

 

「鬼さん鬼さん、ではコチラへ〜」

 

 

──

 

 

 ナミールに腕を取られ、おかえり盆栽で街へと帰ってくると、そのまま知らない宿へと入る。

 

「随分と広い部屋とってるんだな」

 

 そこは俺の泊まっている部屋と同様に部屋が二つある部屋だったが、カテナイ亭よりも広く、小綺麗で素朴なカテナイ亭とは違い、置いてある家具や絵画、陶器などから高級感の滲み出ている部屋だった。

 やっぱり、この子は双子なのかとキョロキョロとしていると、ナミールの白く細い指が両側から頬を包むように触れる。

 そのまま、近すぎる距離にあるいつもの無表情な顔には、少しの不満と、少しの期待が篭っているような、なんとも言えない瞳があった。

 

「女性の部屋にきて……部屋だけに興味津々ですか?」

「そう言うナミールも、男の身体の、下半身にだけ興味津々か?」

 

 瞳はわずかに下を向き、俺の下半身へと向いているのは見逃していない。

 表情は崩さないが、照れたのかなんなのか、少し蒸気した顔が、俺の性を刺激する。

 

「あなたのエロパワーに、興味は──ん…!」

 

 いまだに軽口を叩く口へと蓋をする。

 

「ん…はっ……ちゅる……ふぁっ…!」

 

 口を塞いだままに、両の手でその胸をまさぐり、突起を虐める。

 どうやら、普段の態度とは打って変わって随分と敏感なよう。

 逃げようとする口を舌を吸う事で阻む。

 

「ちゅる…じゅる…」

 

 そのままベッドへと押し倒し、後ろという退路を立つと股へと膝を入れ股間へと押し付けると、ビクリと体を震わせた。

 

「んんっ!ちょっと……タイムを要求…んあっ!?」

 

 本当に敏感だな。

 面白いように反応してくれるナミールの胸部から手を下へと向かわせる事にする。

 ナミールは右手でそれを阻もうとするも、その腕を押し除けて下着の上からその割れ目へと中指を這わせた。

 力は強くないらしく、左手も動員し、両手で右腕を掴まれるも俺の腕は微動だにしない。

 口内を舌で犯しながら、その割れ目を虐めていると、どんどんと瞳が潤んでいき、最後にキツく目蓋を閉じると、一際大きく、腰が波打った。

 

「ふぁ、ふぁっ!だ…め…ッ!!んんんんっ!!」

 

割れ目に触れていた指はナミールの体内から出た液体でびしょびしょになっていた。

 

──ガンッ!

 

「イテッ」

 

 ナミールが絶頂を迎えたことで力を緩めた瞬間、頭を殴られた。

 体を起こし、はだけた衣服のままにこちらを少し睨むように見ている。

 

「はぁはぁ………やりすぎ、です。はじめては、イチャコラしながら優しくと、相場が決まっているはず……です」

 

 その顔に、またも俺のSっ気が刺激されるも、必死で堪えた。

 

「悪かったよ。初めては、優しく、だな」

 

 優しく、優しくと自分に言い聞かし、再度口づけを交わす。

 今度は蹂躙の"じ"の字も無い、優しいキス。

 

「……やれば、できるじゃないですか……」

 

 ボソリと呟くその顔は見えないが、可愛すぎるだろ。

 優しく、丁寧に愛撫していると、どうやら俺のブツを握られたようだ。

 それも、恐る恐るなどではなく、いきなりガッチリと。

 

「なんて……凶悪な……」

「オイ。親の仇じゃあるまいし、そんな顔するな」

 

 おっとりした目を剥いているナミールに軽くチョップを入れると、ゴソゴソと布団へと潜り込んでいく。

 

「練習練習、お口の練習。下手でも……文句はノーですよ」

「無理しなくても……んぅ。もちょい、舌使うともっと気持ちいいぞ?」

「ん…じゅ……ふむ。こう……れふか?」

 

 チロチロと小刻みに舌を動かして先端の亀裂を執拗に舐め回す。

 なんというセンス。

 めっちゃ気持ちいい。

 手持ち無沙汰な両手でナミールの胸と股間を弄りながらもしばらくは口でしてもらい、その後、数度絶頂を迎えたナミールと、ひとつになった。

 

 

────

 

 

「ぽやぽや〜こんなに気持ちの良いことだったんですね。痛くも痒くも……んん、痒くはあったかも」

 

 俺の腕の中にくるまっているナミールは上目使いでこちらを見てそう言った。

 結局あのあと、二度ほど行為に及び、今は余韻に浸っている真っ最中。

 ナミールは初めてだったようだが、挿入前に何度もイカせたためか、痺れるような痒み?はあったらしいが痛くはなかったとのこと。

 

「ははは。痒いってのは、初めて聞いたな」

 

 ナミール独特の表現に思わず笑ってしまう。

 そんな俺の両頬に、またも手を当てて顔を近づけてきた。

 

「おや?暗黒面から帰還されたようですね」

 

 言い終えると、そっとキスをしてくれる。

 確かに、どうやらこの子に救われたようだ。

 その綺麗な顔を見ていると、すこしだけ、照れたように頬を染め呟く。

 

「二人の……愛の勝利。──ぶい」

 

 小さくブイサインをこちらへと向けている。

 確かに、ナミールと繋がってから、あの纏わり付くモノは消えたように感じる。

 徹夜明けだと言うのに、眠気やら疲労も消えている気がした。

 

「愛の力…ね。でも、ありがとう。俺、なんか切羽詰ってたみたいだ」

 

 俺が微笑むと、頭をよしよしと、まるで小さな子をあやすように撫でられる。

 

「あなたの心の奥にいる人はわかりませんが、私はあなたのこと好きですよ。時間とかは関係ないのです」

 

 心の奥にいる、か。

 確かに、そう言われて俺の心に浮かんだのは……

 

「あと、気にせずとも私は別に何番目でも良いです。好きな人ができたら乗り換えるし」

 

 告白されたかと思えば、そのままぽやぽやと天井を見上げて、愛人的発言からの、乗り換えします発言とはどういうこっちゃ。

 でも、今はこの少し変わった美少女に救われた。

 ボルトを見てから、どうしようもなく溢れ出ていた殺意も、消えたわけではないが随分と薄れたように感じる。

 

「捨てられないように、頑張りたいかも」

 

 今は顔も見えないが、照れているのか、うれしがっている。ような気がする。

 ギュッと抱きつき、俺の胸に顔を埋めているので確認ができないが、耳が赤い。

 

「ふふふのふ。じゃあ、明日の試合は私が勝ったら、パートナーではなくあなたをもらいます」

 

 顔を見せないままに宣言された。

 すっかり忘れていたが、そういえば明日はこの子と対戦するんだった。

 でも、俺も負けるわけにはいかない。

 

「じゃあ、俺が勝ったら二人の秘密、教えてくれよ?」

 

 ようやく顔を上げたナミールは、ニコリと微笑んでいた。

 

「えぇ。勝つのは、私たちですから」

 

 その顔に、ドキリとさせられた。

 今までも、行為中ですらも見せなかった、可愛らしくも綺麗な笑み。

 夢にも出てこないこの子は、俺の悪夢を、この時折現れる黒いモヤを完全に晴らしてくれる存在ではないだろうか?

 そんなことを思いつつも、この部屋に入ってから既に数時間経過している。ナミールにもそろそろと言われ、俺も羽純を迎えにいくことにした。

 

「では、また明日」

「あぁ、またな」

 

 別れの挨拶をして、振り向いたのだが裾を掴まれた。

 

「そのまま帰るのはナンセンス、ですよ?」

 

 そう言うと、唇をとんとんと人差し指で叩いてアピールしてきた。

──可愛い奴め。

 お望みどおり、口づけを交わし、ゆっくりと離れた。

 ナミールは無表情のまま、胸元で小さくふりふりと手を振る。その姿に癒されながら、この部屋を後にした。

 

 

────

 

 

──コンコン

 

 ムッ!!

 

 工房に入ってくる時に、わざわざノックをするお客様は少ない。というか、今まででいうとフィオリちゃんと、ボルトさんだけ。

 そして、この力強いノックは、フィオリちゃんではありえない事からおそらくボルトさんだと、思わず身構えた。

 今は、会いたくないなぁ…。

 闘神様とはいえ、居留守を使ってしまおうかと迷っていると、扉の向こうで声が聞こえた。

 

「ん?もう行ってんのかな……」

 

 あれ?この声は、ナクト?

 でもなんで?コロシアムで待ってるって、言ってたのに。

 それも、一方的に告げてきたのに。

 

「待って、いるから」

 

 扉を開けると、そこにいたのはやっぱりナクト。

 

「あ、いないかと思った。羽純、あのさ──」

「なに?付与の用事?」

 

 思わず冷たい態度をとってしまった。

 ナクトと喧嘩するのなんて久しぶりすぎて、どうしたらいいか自分でもわからない。だけど、後悔してももう遅い。一度口に出してしまったものは、もう戻らない。

 でも、思っていたナクトの返事とは違った。

 しかも、昨日とは変わって、ちょっとバツの悪そうな苦笑いを浮かべている。

 

「いや、違うよ。羽純に謝りにと、お迎えに参りまして」

 

 そう言うと、私に向けて、頭を下げた。

 

「ごめん!なんか、イライラしててさ。ただ、ボルトは信用しないで欲しい。もし、好きだったら、その……諦めてくんない?」

 

 最後の方は苦笑いではなく真剣な顔。

 それだけにおかしかった。

 

「……ぷっ」

「な、なんだよ。笑う事ないだろ?俺だって、嫌いな奴の一人や二人いるし、羽純には危ない目にあって欲しくないし……」

 

 良かった。

 いつものナクトだ。

 それに、どもったりするのも、久しぶり見た。

 一人で大人になっちゃったのかと、置いてけぼりになったのかと思ったけど、ナクトも中身は、ナクトのままだ。

 

「あはははは。だって、好きにならないって、言ったよぉ」

「お前、そんな事あんま口に出して言わないじゃん。わざわざ言うから、裏をかいてそうなのかと思うじゃん」

「本当に、ボルトさんの事はなんとも思ってないよ」

 

 少し頬を赤くして、少しだけ小さくなるナクトを愛しく思う。

 バカだなぁ。私が好きなのは、ボルトさんじゃないのに。

 

「許してあげるから、目、瞑って」

 

 自分の心臓がいつも以上に働いている。

 ドキドキしている私にナクトは訝しげな顔をしつつも、目を瞑ってくれていた。

 

「……?」

 

 今のナクトの事が、ようやくわかったみたいで、あたたかい気持ちになっていた私は、この気持ちを無くしたくないせいか、強く、強くナクトを求めていた。

 ナクトの首に抱きつくように腕をまわして、唇を近づける。

 自分でも驚く程大胆な事をしていると気づいた時には、既に二つの唇はまるで一つだったかのように、ピッタリとくっついた後だった。私の心臓はドクドクと脈打っているのがわかるけど、微かに、ナクトへと押し付けている右の胸にも鼓動を感じる。

 

 家族として、弟として、兄として、そのどれもが違う。

 異性として、男として、誰よりも、ナクトが好きなんだ。

 

「羽純……」

 

 その驚いた顔も、たまらなく愛しい。

 もう、気づいてくれたと思う。

 私が本当に好きなのは、ナクトだと言う事が。

 

「これで許してあげるねっ!レメディアのところにいこー」

 

 火照った顔を隠すように、私はナクトに背を向けて準備を始めた。

 

 

────

 

 

「……あ…」

 

 あの子達、また来てくれたんだ。

 私といると、余計なことに巻き込まれる可能性もある。

 本来なら遠ざければいいのだろうけど、嬉しく思っている自分も、たしかにいた。

 

「今日も応援にきたよっ!がんばってね」

「こんなとこで負けないと思うけど、一応」

 

 ニコニコと笑う羽純と、ぶっきらぼうながらも真っ直ぐな瞳を向けているナクト。

 ん?

 そういえば、あの時と比べて羽純の雰囲気が……

 

「良かった……」

「「え?」」

 

 思わず漏れた言葉に、同時に反応する二人が少しおかしくも、暖かい気持ちになる。

 

「羽純の様子が…おかしかったから……元に戻ったようで、良かった」

 

 なぜか頬を赤くする羽純と、苦笑するナクト。

 この二人を見ていると、この二人といると、少しだけ、ほんの少しだけ、本来の目的も忘れてこのまま三人でいたいという思いが頭に浮かぶが、その想像を頭から消す。

 私には、やるべきことがある。

 

「ほら、レメディアにも言われてるぞ?」

「ん〜……でも、ナクトのせいでもあるんだよ」

 

 なんで俺がと呟きながらも、ナクトは真っ直ぐに私を見据えていった。

 

「お互いあと二つ勝てば、いよいよ決勝」

 

 待っていると言わんばかりの目。三回戦も、準決勝も眼中にないらしい。

 その自信にそぐわぬ強さを、今のナクトからは確かに感じた。

 

「うん……勝ってくる」

 

 普段あまり使わない強い言葉に、力強くうなづく二人に見送られながらもコロシアムに入る。

 

 控え室で思うことは、これから始まる自分をかけた試合のことではなく、二人のこと。

 少しだけ浮かんだ、ありえない未来。

 あの二人と、お母さんと、幸せそうに笑っている自分。

 そんなこと、ありもしないのに。

 

 今の自分には過ぎた光景ではあるものの、無意識に頭に刻み込まれたその光を胸に、鬼のコーナーへと向かった。

 

 




【試合結果】
×ぶるま大使vsレメディア・カラー○
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