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【本戦2日目】
第一試合
タイガージョーvs恐怖の大王(ラスボス)
第二試合
瑞原葉月vsランス
第三試合
アジマフ・ラキvs松本大和
第四試合
十六夜幻一郎vsアッシュ根性
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「ナクト、おはよ」
「あぁ、おはよ」
この街に来てからだが、いつものように二人で朝食を終え、羽純を工房まで送り、俺は新たなダンジョンへ探索へと向かうために認証小屋へと向かう。
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夏ちゃんに『結界迷宮』という、ダンジョンを認証してもらったのだが、ここが凄く面倒なダンジョン。
ここに入る前に『教会と貯水池』に向かったのだが、生憎ポロロムさんは留守だった。
この結界迷宮は出てくる魔物は強くは無いのだが、ダンジョン内の通路にところどころゲートのような魔法の扉が有り、その扉のお題に沿った物を、持っていたり、お題の示す事をしなければ先へは進めなくなっている。
たった今、『大きな力を示した者のみが通れるものなり』というゲートを押し込みこじ開けて進んでいくと、次のゲートの前で立ち尽くす可愛い女の子と出会った。
「あ!ねーねーキミキミ!魔法って使えたりしないかな?」
「いや、俺は使えないな。ここのお題がそうなのか?」
「そうなんだよー。魔法で扉を開けるみたいなんだけど、僕も魔法は使えないから困っちゃって〜」
「そっか。じゃあ、使える魔物をおびき寄せて使わせるしかないか」
「おぉ!あったまいいねキミ!じゃあ僕が魔物をおびき寄せるねっ!」
「で、倒すのは俺?」
「うんうん。勘もいいね!じゃあよろしく〜」
「はいはい」
調子の良いことを言いながら魔物寄せのアイテムを女の子が使い、魔物が群がってくる。
どれも雑魚ばかりでなかなか魔法を放つような魔物は現れないが、
──ボォォォッ!!
突然、火炎が辺りに生まれ、咄嗟に女の子の前へと出る。
「うわわっ!」
「もー少し下がれ……扉まで、引きつける」
一匹、普通の『アカメ』と少し違う凶暴なヤツが炎を辺りに吐き出している。
通常のアカメは名前の通り、赤い体を持つスライムのような見た目の一つ目の魔物なのだが、今回のコイツは、目は血走り、身体はギンギンという表現があっているような、スライムとは違い硬い表皮に覆われている。
女の子を下がらせると、アカメをゲート近くまで引きつけて攻撃を喰らうと、扉は反応して開いたようだ。
「あ!開いたよ!チャンスチャンス!」
「ん、ちょっと待って───フッ!!」
突然変異種なだけあってなかなかだったけど、まだまだ敵じゃない。
アカメを斬り捨てると俺も扉をくぐり抜けた。
「大丈夫?」
「あぁ。この程度なら、慣れてるから平気」
「それにしても、キミって強いんだねー」
「ありがと。でも、上には上がいるし……まぁ、強くありたいとは思うけどね」
焼け焦げた俺を心配してくれるが、夢を見始めて、鍛え始めた時の怪我に比べると全然耐えられるのでそのまま二人で先へと進む。
「よっ」
「ヤァッ!」
出てくる魔物を斬り伏せ、隣では女の子が魔物を倒している。
使っている武器は、刀身の幅が広い剣を使っている。幅が広い分攻撃速度は落ちるが、この女の子は二刀流。落ちる速度を手数でカバーし、幅が広く丈夫な剣は防御にも使える。バランスの良い、彼女にあった闘い方をしていた。
「へへ。僕もやるもんでしょ?」
「そーだな。身体に合った、良い闘い方だと思うぞ」
褒められたのが嬉しいのか照れたのか、えへへ。と嬉しそうに笑う。
無邪気なようで、どことなく品を感じる女の子。紫と白を基調とした服を着ており、明るめの金髪と相まってその明るい表情がやけに似合っていた。
すると、先程から自分も思っていた疑問をぶつけてきた。
「そういえば、今更かもしれないけど、僕はナミール。キミはなんて言うの?」
「俺もそういえばって思ってたよ。俺はナクト。よろしくナミール」
「うん!よろしくね、ナクトくん」
元気に答えてくれるナミール。
元気いっぱいと言う感じなのだが、俺と同時にキョトンとした。
「ん?ナミール?」
「ん?ナクト?」
「「もしかして、」」
お互いの声が揃い、思わず目を見開くと二人で笑い合う。
「あははっ。あらためて、僕はナミール・ハムサンドだよ」
「はは。ナクト・ラグナードだ。闘神大会の出場者だよな?」
「どこかで聞いた名前だと思ったよ〜」
「こっちのセリフだ。俺はまだ一回戦も終わってないからな。明日が初戦だし」
昨日の闘神ダイジェストとで言っていた凄腕の二刀流美少女剣士、ナミール・ハムサンドがこの子だったのか。確かになかなかの身のこなしだし、どこかお綺麗なその闘い方からは育ちの良さが垣間見えた。
「ふふふ。僕は一回戦はもー勝ったからねー!ナクトくんにも負けないよ?」
「俺もだよ。決勝までは負けないと誓ったからな」
「決勝までは?絶対負けないっ!じゃないの?」
「まぁ、な。ずっと憧れてた人が勝ち上がってくるんだ。できれば勝ちたいが、勝負に絶対は無いし、その人にだけは、負けても悔いはない」
歳も近く、話しやすい子だったので戦うことになると……とはいえ羽純とレメディアと約束したし、俺自身、負けたくもない。
「勝負に絶対は無い、かぁ。このままお互いに勝っていけば、ナクトくんとは三回戦で当たるもんね……僕は二回戦もナクトくんにも、絶対負けないからねっ!」
「ん。楽しみにしとくよ」
「なにその上から目線〜。じゃあ、僕と当たるまでに負けないでよ?」
「もちろん。最初からそのつもりだしな」
なんだかまた変な約束をしてしまったが、お互いに表情は明るかった。
「またゲートか…」
「えぇー、またぁー?」
また魔法の扉。ここまでにあったいくつかの変なお題のゲートを思い浮かべているのかナミールは苦笑いを浮かべている。その文字を目で追っていると、ナミールが前に出てゲートに触れると、すんなりと手はゲートをすり抜ける。
「え?」
「あ……イヤ!!見なくていいっ!!」
普通に頭を殴られるが、俺はなんとなく、甘んじてそれを受け入れている。なぜなら考えている事があるから。
ゲートには、『我はエロ扉。ここを通りたくば、エロい黒パンティを履け』と書かれていた。そのゲートを通れたと言うことはつまり、ナミールが今履いている下着は、エロい黒の……
「ばっ!ばかばか!読まないでっ!!」
俺にとっては厄介なゲートも、ナミールのおかげで何もせずに通れた。ナミールはずっと恥ずかしがっており、先程よりも強くボカボカと殴ってくる。
「そろそろ痛いって…俺はなんとも思ってないから」
「うぅぅぅ。なんとも思ってないってのも、なんかムカつく……」
「言い方悪かったな。そう言うことじゃ無くて、ナミールがエロい黒の下着を恥ずかしがってるから、俺は忘れるって。もー殴られすぎて忘れてきたし」
「言わなくていいっ!!……んんー、もぉ、本当かなぁ…」
「じゃあ、さっきの魔法で開けた扉での戦闘を俺にぶん投げてきたろ?これでチャラな」
渋々と言ったようにナミールはうなずきようやく殴るのをやめてくれた。
その後、機嫌の治らないナミールと二人奥へと向かうと直ぐに目的の場所へと着いた。
「あ、認証シール台だ」
「本当だーっ!」
ナミールは台の前へと走って行き、無事に『結界迷宮』の認証シールをゲットすると、振り向いて俺の顔を見る。
「んー、最後に変な思いしたけど……ありがとね!ナクトくん。またねーっ!」
「ん、またな、ナミール。あと、ナクトでいいぞ?」
歳も、たぶん同い年くらいだし、俺も呼び捨てにしてるので取り敢えず言っておく。
「え?うん…じゃあ、ね。ナクト」
ナミールは『おかえり盆栽』と呼ばれるダンジョンからの脱出アイテムを使い街へと戻っていった。
俺は時間がまだあるので歩いて戻りながらも魔物を狩り続けた。
──
「──大丈夫?痛くない?」
「大丈夫。ちっと染みるけど」
工房に羽純を、迎えに行き宿に戻ると手当てを受けていた。
結界迷宮で受けた火傷の跡に傷薬を塗りたくられるのが染みてズキズキと痛むが耐えるしかない。
羽純は今朝の付与してくれた時とは打って変わって、俺の姿を見て暗い表情を浮かべていた。
「ただの火傷だし、大丈夫だって」
「でも、明日は…試合だよ。万全にして置かないと」
「そうだな。ありがと羽純」
その後、闘神ダイジェストを二人で見ると、しばらくしてベッドへと入る。
そう、明日は試合。
相手の事もわかっているという好条件。
そもそもこんなところで負けるようならこの先話にならない。
勝った気でいるわけでは無いが、闘神ダイジェストの試合結果から、俺の第二試合の相手は、『十六夜 幻一郎』という『忍者』。すばやい身のこなしでこちらの攻撃は当たらないと言うが、あちらの武器が当たるのであれば、こちらの攻撃が当たらない道理は無い。さて、どうやって攻略するか……
気づけば二回戦の事ばかり考えていたので、頭を振り一回戦へと意識を集中しようとしていると、扉が開いた。
「……ナクト、起きてる?」
「起きてるよ」
「眠れないの?」
「いや…そんなことはないと思う。羽純は?」
「わからないの…なんだかドキドキしてて」
「そっか。じゃあ、二人で話してたら、落ち着いて眠くなるかもな」
羽純を部屋に招き入れ、ベッドに二人で座る。
「……なんだか、昔を思い出すね」
「基礎学校の時の事?」
「うん」
羽純のお父さんが落盤事故に遭った後、俺たちはお互いの家を泊まりっこしていた。
羽純のお父さんは亡くなりはしなかったがその怪我が原因で付与師は引退となり、羽純の落ち込み用が凄かったので行っていたのだが、あの時羽純のお母さんから涙ながらにお礼を言われた事は、今でも覚えている。
「そか……じゃあ久々に一緒に寝るか?」
「え、えぇ!?」
「いや、話の流れ的にそーなのかと…わりぃ」
「う、うんん…あの、ナクトが…嫌じゃなければ…お願いしようかな…」
「嫌じゃないよ」
「うん…じゃあ、お邪魔します」
羽純が恐る恐る俺のベッドに入ってくる。
背中に感じる温もりが暖かい。風呂上がりのためかわからないが、女性特有のいい匂いもする。
少しばかりの緊張と照れくさい気持ちを隠しながらも、会話をしている内に安心したのか羽純は眠ってしまった。
俺が負けると羽純は……
気持ちを引き締めながらも、俺もいつしか微睡の中へと落ちていった。
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「や…いやぁ…見ないでください…ナクトさん…」
男に背を向けた状態で跨っているマニ。
その男はマニとの結合部を見せつけるように、マニが必死に恥部を隠そうとしている腕を掴んでいた。
「やめろっ!!」
『やめろ?マニはこうされるのが好きなんだ、喜んでいるんだよ。そうだろう?マニ』
モヤがかかったかのような影の男は、話しながらも腰を動かし、マニへと突き立てる。
微かに聞こえていた水音がはっきりと聞こえてきた気がするが、頭が働いておらず、それを否定した。
「そんなわけがないだろッ!!」
『そんなわけが、あるだろう?マニ』
「あ、いや、嫌です…言わせ、ないでください…あぁ!」
『いつもより興奮しているのか?まさか、彼の事が好きなのかい?』
「……ッ!!」
「あぁ!!そ…それは!!」
今度ははっきりと、水音が大きくなったのがわかった。
マニが喜んでいるのかは、俺にはわからない……だけど…だけどマニは泣いている。コイツは、許せない…コイツは俺がっ!!
──ガバッ!!
またいつもの夢……
勢いよく起き上がってしまったが、横では羽純がスヤスヤと寝息を立てていた。起こさなくて良かったと思いつつ、顔にかかる前髪を指でどけると幸せそうに少し微笑んだ。
良い夢、見れてるのかな。
でも、俺は……
チラリと見る窓の外は、薄らと明るくなっていた。
【試合結果】
○タイガージョーvs恐怖の大王(ラスボス)×
×瑞原葉月vsランス○
○アジマフ・ラキvs松本大和×
○十六夜幻一郎vsアッシュ根性×
現在のナクトステータス
Lv.32
活力:960
攻撃:256
防御:96
・スキル
①身体操作術
②威圧
③逃走術
④剣術 Lv.4
⑤テクニシャン
・付与剣性能
重撃…全ての斬撃が重くなり硬い、メタルな物にもダメージを与えられる。剣の重さは変わらない