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【本戦4日目】
第一試合
カリギュラvsワートナー
第二試合
邪悪大帝Σvsハリケーン斉藤
第三試合
レメディア・カラーvsナチス・パンサー
第四試合
白井カタナvsゲラーミン
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時刻は早朝。
まだ登りはじめたばかりの朝日に照らされた、人気の無い通りを一人歩き、コロシアムへと向かう。
「シュリさん、おはようございます」
「あらーナクトさん、お早いですね。昨日はお楽しみでしたのに」
「おじさんみたいな事言わないでくださいよ。それより聞きたいことがあるんですけど」
「はいはい、なんですかー?あ、夜の闘神グッズでしたらこちらにリストが──」
なんだ、夜の闘神って。
バイブやらの色々な道具の書かれたリストを笑顔で持っているシュリさんは、ただただ仕事熱心な人なんだと思っておこう。
興味が無いわけではないが、今知りたい事は別に合ったので聞いてみる。
「それじゃなくて。ドギって、どうしてます?」
「ドギさん、ですか……どうしたんでしょうね…」
「え?」
「えーとですね、実は───」
話を聞くと、ドギはそのまま治療を受けはしたのだが、この街でも散々好き勝手していたようなので無駄に恨みを買い、病院から出てきたところを囲まれそのままどこかへ連れて行かれたとの事。
昨日、俺があれだけ打ちのめしたので碌に抗うこともできず、されるがままの様子だったらしい。
「あまり、気にされない方がいいですよ。試合で惨殺される方も珍しくはありませんから…」
「えぇ。大丈夫ですよ。ありがとうございました」
そうしてシュリさんとは別れる。
ハッキリ言ってドギの末路などどうでも良く、むしろ自業自得だと思っているので気になどしていなかったが、マニの安全がわかったので来てよかったと思いながらコロシアムを後にした。
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「あ、ナクト。おかえりなさい。どこいってたの?」
「おかえりなさい、ナクトさん」
流石に既に起きてきていたようで、二人は既に着替えており朝食の準備をしていた。
「ただいま。まぁ、ちょっと」
「「?」」
二人はキョトンとしているが特に追求することもなく、朝食を食べる。
「マニさんは、これからどうするんですか?」
「わたしは、国に帰ろうと思います。ようやく、安心して父と母に会えますから…」
「じゃあナクト、駅まで送ろっか」
「ん、そーだな」
「ありがとうございます……」
宿を出て、うしバスの駅が近づくにつれ、だんだんと寂しさが増してきたのか、羽純もマニも口数が少ない。
「でも、このままマニさんが帰っちゃうと…あの乱暴していた人は、大丈夫なのかな…?」
試合を見ていない羽純が、もっともなことを気にする。
昨晩の闘神ダイジェストでは、第一試合はマダラガ・クリケットの惨殺ショーが行われたとのことで、そちらの内容が濃く、俺の試合は乱暴者を相手に、田舎の若い剣士が普通に勝ったと評された。ギリギリで躱していたのを接戦にでも見られたんだろうか。第三試合はラフレシア頭巾という選手が悪臭で勝利したとの事だが、これはもはや異臭で勝つとかわけがわからないので、もし戦うとなると、なんとかして瞬殺するしかない。
クリちゃんからドギと比較して、と言うのが癪だが顔は圧勝と言われたのに少し喜んだのは二人には内緒だ。
俺がそんな事を思っているとマニが羽純の疑問に答える。どうやらマニは、俺が朝一人で出て行っていた理由に気付いている様子だった。
「心配してくれて、ありがとう羽純さん。でも大丈夫ですよ。ね、ナクトさん?」
「あぁ。大丈夫だよ。もう二度と、君の前にドギが現れることはないから」
そう、おそらくドギはもう……
「そうなんだ。あっ!ナクトもしかして──」
「いや。そう確信してるだけだよ。マニはもう大丈夫。大会が終わったら、いつか会いに行くよ」
「……はい、ありがとうございます」
最後は、時折見せてくれた自然な、柔らかい笑みを浮かべたマニはうしバスへと乗り込……まずにこちらに振り向きお辞儀をした。
「本当に…本当にありがとうございました。────ナクトさん、羽純さん。お二人の結婚式には、是非呼んでくださいね!」
「え、ええぇ!!?ナクトとは──」
「ふふふっ!それでは、また」
「うん。また」
「あ!マニさんってば!!──元気でねっ!またおしゃべりしようね!」
不意打ちを喰らったように羽純は慌てふためくが、俺はマニの意思を汲みとり、さよならとは言わなかった。そして羽純も、最後には大きな声でマニへと別れと再会に向けた言葉を伝える。
マニは笑顔で手を振り、うしバスは街の外へと向けて進み出した。
羽純と俺は、うしバスが見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。
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「いっちゃったね…」
「そうだな。でもきっと、これからはさっきみたいな自然な笑顔でいられるよ」
「そうだね。…でも、最後にあんなこと言うなんて……」
「ははっ。彼女なりの、再会への言葉だろ?」
「だとしてもだよー。ビックリしちゃった」
ナクトと、結婚…と言うか、私はナクトの事…でも、マニさんと帰ってきたときに思ったあの感情って…
「ほら、工房まで送るよ。朝に認証は済ましてるから、俺は探索に行ってくるな」
「あ、待ってよ!ナクト!」
テクテクと歩き始めるナクトの背を追う。
一昨日気づいた、大きな背中を。
「今日、レメディアの試合なんだけどさ」
「そうだよね。見に、行く?」
やっぱり、ナクトも見たいよね。
私は、ドキドキしちゃうから、見たい気持ちと、見たくない気持ちがせめぎ合っていた。
「いや、聞いてみたんだけど、チケットは完売だってさ。レメディア・カラーで登録しちゃってるから。森から出ているカラーで無事ってことは強いに違いないって、優勝候補として大人気なんだってさ」
「そっかぁ。じゃあ、試合の前にコロシアムの前で応援しようか?」
「そうだな。第三試合だったから、時間前に工房に迎えに行くよ」
「うんっ!」
ナクトへの、私の気持ちは、まだわからないけど……このままナクトとレメディアと、3人で一緒にいれたらいいな。
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「羽純、ごめん遅くなった」
「うんん、大丈夫だよ。準備できてるから、行こっか」
無事に探索を終えて認証シールをゲットした後、街に戻ってはいたのだが、泥だらけになってしまった為にシャワーを浴びに戻ってきていたので、当初の待ち合わせ時間からは少し遅くなってしまった。
羽純と二人でコロシアムへと向かい、受付のシュリさんに聞いてみた。
「あら、羽純さんと、ナクトさんも。どーされました?」
「あの、レメディアは、もう会場に入ってますか?」
「レメディアさんでしたらこちらにはまだいらっしゃっていませんよー」
「ナクト、まだだって。間に合って良かったね」
「そーだな。少し待つか」
羽純とシュリさんの会話は聞こえていたのだが、笑顔で俺に伝えてくれる羽純。
なんだか嬉しそうだな。
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ナクトと二人でコロシアムの受付前で待っていると、しばらくしてマント姿の見知った人が現れる。私は思わず声をかけた。
「レメディアっ!」
名前を呼ばれた事に少し驚いた様子のレメディアは私たちに気付いて口を開いた。
「あなたたち、どうして?」
「応援に来たんだよ。試合は見れないみたいだけど、私たちレメディアを応援してるから」
「ん…ありがとう」
「ライバルの応援しに来た。俺は先に一回戦勝ってるからな。レメディアも、頑張って」
ナクトが悪戯っぽく言うと、レメディアは微笑んだ。
「…えぇ。ナクトにも、負けられないから」
「うん。昔の約束は、決勝で」
「うん…行ってくる」
「頑張ってね、レメディア。私たちは、今でもレメディアの味方だから」
微笑みを浮かべたまま、堂々とコロシアムへと入っていくレメディアを見送ると、ナクトはニヤリと笑みを浮かべていた。
「どーしたの?」
「レメディアも覚えててくれたんだ」
ナクト凄く嬉しそう。
「羽純とレメディアと俺。三人で旅しようって話もしたもんな。俺たちは味方だって言ってさ」
ナクトも、やっぱり覚えてたんだ。
それを私も嬉しく思い、きっとナクトみたいな顔しちゃってるかも。
『旅のカラーに、私に味方はいない』
そう言うレメディアのために二人で盗賊と闘って、私たちはレメディアの味方だと話をした。
『一緒に旅をするには子供では危なすぎる』
そう言われたけど、私たちは大人になった。
『それに、強くなくてはダメ』
と言われたナクトは、大人になったら合格かどうか手合わせしてくれって頼んでたっけ。
昔の事を思い出すと、やっぱり私たちは大人になったんだと実感する。
その後、二人で宿へと帰り、夕食を食べて闘神ダイジェストを見る。
『ぱうぱう、こんばんわ、闘神ダイジェストのお時間でーす』
司会のクリちゃんのいつもの挨拶に始まり、一試合目、二試合目と解説の切り裂きくんの会話が続く。
そして、三試合目の試合結果は、レメディアはやっぱり勝利していた。
「レメディア勝ったよ!ナクト!」
「一緒に聞いてたんだから知ってるって。しかも、優勝候補か。俺は若い剣士だとしか言われてないのに。でも、簡単には負けてやらねー」
「ふふふ。ナクトは成長期だから、まだまだチャンスはあるよっ!でもひとまずは、二回戦だね」
レメディアの勝利を二人で喜ぶも、ナクトの次の相手は忍者の人。攻撃が当たらないくらい早いって言うけど、ナクトには何か作戦があるのかな?そう思いながらも、今日は眠りについた。
【試合結果】
×カリギュラvsワートナー○
×邪悪大帝Σvsハリケーン斉藤○
○レメディア・カラーvsナチス・パンサー×
○白井カタナvsゲラーミン×