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【本戦5日目】 ─予備日─
朝の日課のように羽純を工房まで送り、認証小屋で夏ちゃんに認証してもらう。
昨日の『すべり丘』というダンジョンは滑り台のような傾斜のキツイ丘が通路となっているダンジョンだった為に、移動が面倒すぎたので出来れば普通のダンジョンがいいなと夏ちゃんにお願いしていた。
転移魔法陣に乗り、認証してもらったダンジョンへと入る前に、今日こそは、と思い『教会と貯水池』へとまずは向かった。
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この間と、感じが違う…?
何があったかは知らないが、辺りは泥まみれで、そこかしこにゾンビが沸いていた。
片っ端から切り捨てて、まずは墓地を見る。そこには千代さんはおらず、流石墓地なだけあって大量のゾンビたちがウロウロと徘徊していた。
『千代さん……旦那さんがいたら……ごめん』
心の中で千代さんと、見たことのない旦那さんに謝罪をしながらも全てのゾンビをコマ切れにすると、墓場の中央で何か毒々しいアンテナのような物が目についた。ご丁寧に札が貼られており、『毒電波アンテナ』と書かれている。
「これが、原因か?」
何が起こるかはわからないが、ひとまず斬りつけると簡単に切り裂けた。あたりのゾンビに変わりはないが、地面から這い上がってくるものはいなくなった。
墓地にいた最後のゾンビを斬り捨てたところで、遠くから、ゾンビの叫び声と女性の悲鳴が聞こえてきたのでそちらへと走る。この方向は……教会!!
道中のゾンビは共食いをしたりと狂っており、まさか先ほど壊した物のせいかと内心で己に毒突きながらも念のため首を斬り落としながら駆ける。
そして教会へと辿り着くと、中では……
「あぁ!神よ…そんな…私の中に…いやっ!!あぁ!!…ん、んむ、んん…」
数体のゾンビに襲われているポロロムさん。
修道着は破れ、形の良い胸と股間を剥き出しにしている。ポロロムさんのまったく濡れていない、乾いた秘所には一体のゾンビの異物が刺さっていた。悲鳴は、別のゾンビの異物に口を塞がれたため聞こえなくなったが変わりにむせる声が静かに木霊した。
その光景に、殺意が芽生え、すぐさま燃え上がった。
「ちゃんと死んでろっ!!」
ゾンビの背後から剣を疾らせ首を切断。そのまま手首を返し、腰をも両断する。
そのままゾンビの下半身をポロロムから抜き取ると、ポロロムさんの口へと挿入している異物を根本から切り裂き、その身体をバラバラにし、そのまま他のゾンビも合わせてその全てを斬り刻んだ。
「大丈…じゃないですよね、すみません…間に合わなくて…」
大丈夫な訳がない。俺は間に合わなかったのだから。
「ナクトさん…そんな顔、しないでください…助けてくださりありがとうございます」
どこか艶っぽい顔をしたポロロムさん。
「教会の周り、掃除してきます…」
ものの5分で数十体のゾンビを細切れにし、教会の中へと戻り、再度ポロロムさんへと謝罪をする。
「本当に、間に合わなくてすみません。俺、もっと強くなるんで、ポロロムさんに頂いたこの十字架なんですけど、俺の剣に付与させてもらえませんか?」
「…もちろんです。ナクトさんと力になるのなら…それに、今回の事も、責任を感じるようなことではありません。ナクトさんは私の恩人ですよ」
「ありがとう、ございます。まだ逃げ隠れてるゾンビも居るかもしれません。気をつけてくださいね…では、俺はこれで」
艶っぽいポロロムさんに笑顔でそう言われ、何故か緊張してしまうが了承は得た。帰ったら羽純に付与してもらおうと思い、その場を後にしようとしたのだが、
「はい…あ、ナクトさん…」
「はい?」
「いえ…なんでもありません。お止めしてすみませんでした……はぁ」
「いえ、大丈夫ですよ。何かあったら言ってくださいね。じゃあ、また」
なぜか呼び止められたが、なんとも無いとのことで、頬の赤いポロロムさんと別れた。
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帰り際、墓地の入口で中の様子を伺っている千代さんを見つけた。
「千代さん!無事で良かった」
「ナクトさん、来てくれたんですね…」
「たまたまだったんですけど、なぜかゾンビが徘徊してるので、気をつけてくださいね。墓地にいたのはほとんどやったので、大丈夫とは思いますけど」
もう一度墓地へと入り、周囲を見回すがどうやらあれからゾンビは湧いてきていないようだ。やはり、あの変なアイテムのせいだったんだろう。
千代さんは一つの墓石の前に行き、しゃがみこんだ。
「良かった……あなたは、ゆっくり眠れているのね……」
いくつかの墓石は地面から這い出てきたゾンビにより倒壊していたりするが、どうやら千代さんの旦那さんは、まだそこで、眠っているようだ。
「良かったですね。でも、全部を倒せたかはわかりませんから、気をつけてくださいね」
「えぇ、ありがとうございます。ナクトさん……」
綺麗な笑顔で微笑んだ千代さん。
そのまま去ろうと思ったのだが、
「あの……溜まっては、いませんか?」
なんだか顔を赤くしてモジモジしだした。
普通に、可愛い。
その姿に、俺のSな部分を刺激された。
しばらくして──
千代のくぐもった、耐えるような声が小さく聞こえ、それはだんだんと快楽の声に変わっていった。
夫の眠る墓石に手をつき、今でも亡き夫を思い続ける未亡人とは思えないセリフを口から吐き出しながら喘ぐ。そして最後に、ひときわ甲高い嬌声を上げた。
──少しして、衣服を整えた千代さん。
「…は、あ……私、またはしたないことを……」
行為が終わり、今回も最終的に失禁し、一時失神までした千代さんは今は恥ずかしさからか小さくなっている。
行為中は完全にMとなる千代さんはソフトSな俺との相性は抜群だった。行為後は前回同様にシュンとしてしまうので寄り添い気にすることは無いと声をかけているとだんだんと調子を取り戻してくれた。
「あの、ナクトさんも、どうかお気をつけて…また、きてくださいね…」
そう言う千代さんに笑顔で答えて、ダンジョンを上機嫌で後にした。
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その後、ようやく『マポ畑』というダンジョンで探索を始めていると、目の前に畑が広がっているのが見えた。確かに、なっているのは育った『マポ』。
マポと言うのは付与素材の一つで、付与すると、魔法の才能が無いものも魔法を放つことができる。マポそれぞれに属性が有り、付与したマポの属性にあった魔法を、例えば剣士であっても使うことができる。
これだけ聴くとすごく有用な付与素材だが、これには落とし穴が有り、付与スロットを大量に使い、かつマポによる魔法には使用回数に制限がある。これを使い切ると、大量に消費した付与スロットは破壊され使うことができなくなる欠点がある。
使用回数に制限があっても、魔法という攻撃手段がある事は悪くないとは思うが、今現時点では使う気は無い。が、
「まぁ、一応取っておくか…」
育っているマポを念のため回収して、そのまま奥へと進んでいると、声が聞こえてきた。
「お兄様ったら、どこに行ったのかしら…」
ダンジョン内でピンク色の髪をした女の子が一人でウロウロとしている。しかも背後からモンスターが襲いかかる一歩前。声をかけようか迷ったが、どうやら意識の端にモンスターの気配はちゃんと入っているようだ。
「もー、邪魔よっ!!」
近づくモンスターへと、小刀を素早く抜き取るとかなりの早技で切り裂いた。鼻を鳴らし小刀を納める女の子だが、勝利を確信するには早く、そして今回は相手が悪い。
「下がれ!」
ひとまず叫び伝える。女の子が切りつけたモンスター、そいつの名は『のーてんフラワー』。頭に大きな花の咲いた大したことないモンスターだが、強力な一撃で絶命させない限り、辺りを巻き込み自爆する性質を持っていた。
「は?あんたなにを──」
──ボムッ!!
「キャァァー!!」
辺りは閃光と爆炎に包まれる。中々の威力であり、俺も昔コイツを知らなかった時に一度痛い目を見ている。
「──無事か?」
「……え?」
腕の中でまるまる女の子。小さな身体故に自身の体で覆うことが出来たので問題ないとは思う。女の子は閉じていた目をゆっくりと開けると、間抜けな声を出した。
「……え、あれ?なんで…」
まだ意識が追いついていないのか、状況を理解していないようだが、だんだんと覚醒してきたようだ。
「……いつまで触ってんのよ!!」
「……見るからに無事なようでなにより。余計な事して悪かったな」
怒鳴りながらも掌底を突き出してくるので紙一重で躱す。
千代さんとの行為でのせっかくの上機嫌と、その後の昂ぶる感情が故に、目の前にいるこの子の言葉が助けた娘の発言とは思えず、ほんのちょっとカチンときた俺は抱え込んでいた腕を離した。そのために地面にお尻から落ちる。
「…わっ!きゅ、急に離さないでよ!バカッ!!」
「上の空でダンジョンに入るな。自信があるようだが、相手にしてる魔物の特性くらいは気にした方がいいぞ」
「そ、そんな事、あんたに言われなくても…」
「……じゃあな。気をつけて帰れよ」
この子とも初対面のはず。実際名前も知らない。
だけど、なぜか知っているような気がして思わず前に出てしまった。
その後の一瞬の怒りは、一回置いておこう。
とはいえ無事な事はわかったし、今日はなんだかんだ疲れているのでそのままダンジョンの奥へと向かった。
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閃光と爆炎に視界が覆われ、しまったと心で呟き思わず目を瞑ると、何かに包まれる。
それなのに、忍術修行で爆弾や起爆札で感じる痛みも熱さも感じない。今感じるのは、心地よい温もりだけ。
もしかして、お兄様が……
「──無事か?」
聞こえる声は、お兄様じゃない。
目を開けても、前にいたのはお兄様じゃなく、同い年くらいの男の子だった。爆発による煙も晴れているが私の意識は晴れていない。
それなのに、私は爆発の影響を受けていないし、と言う事はこの人が…?私を守るように回された腕に気づきだんだんと恥ずかしくなる。顔も近いので少し押してやろうと思い、その顔に手を伸ばした。
が、伸ばした手を避けられて、嫌味を言われると同時に、急に重力を感じると地面に尻餅をついた。痛むお尻を撫でながら文句を言うも、もっともな事を言ってくる。
「上の空でダンジョンに入るな。自信があるようだが、相手にしてる魔物の特性くらいは気にした方がいいぞ」
そう言うと、言い返す私を置き去りに、じゃあな。ですって。
えらっそーに!!やっぱりお兄様以外の男なんて、碌なのがいない。と、イライラしながら離れていく男の背を見ると、爆発で吹き飛んだ瓦礫が幾つも突き刺さり、藍色の服は所々赤黒い模様を描いていた。
顔色一つ変えずに……なによ、カッコつけちゃって……
名前も知らないアイツのことが、お兄様以外の男の顔が、初めて私の頭に残った。
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「オイ、ボウズ」
「ん?俺の事か、なに?」
女の子と別れ歩いていると、やたらとデカい歴戦の戦士といった風体の男に声をかけられた。
……純粋に、強い。
今この人と当たれば、正直厳しいか?
「見てたぜ。やるじゃあねぇか」
バシバシと背中を叩かれる。
しかも、先程の爆発をモロに受けた背中を。
「イテーよおっさん。背中は瓦礫が刺さってんだっての」
「ガハハハ!そうだったなぁ。だが、その歳でのーてんフラワーの自爆で顔色ひとつ変えないのは大したもんだ。お前も大会出場者か?」
普通に痛いし文句を言うが笑い飛ばされた。
豪快と言うか何というか。ただ、不思議と嫌な気はしない。
「歳はカンケーないだろ。俺はナクト・ラグナード。大会出場者だよ。おっさんは?」
「俺はボーダーだ。なるほどな、お前が勝ち続けたとしても、当たるのは決勝だな」
聞いたことあるな。
ボーダー・ガロア。確か、去年の準優勝者だったか。纏う空気といい、準優勝と言えど、間違いなく本物だ。たしかにトーナメント表の名前は俺の反対側だったな。だけど、そっちのブロックには、レメディアがいる。
「そっか。でも、俺と決勝で当たるのはボーダーさんじゃないよ」
「ガハハハハハハ!お前が勝つのは前提なのにか!おもしれぇボウズだ。お前とやりあうのは楽しそうだなぁ。期待しておくぜ」
「そうだな。まぁ、俺が勝つけどね」
「生意気なガキめ。お互い勝ち上がればいつかは当たるんだ。じゃあなボウズ」
「ナクトだっつの。おっさん」
ニヤリと笑みを浮かべたまま、最後まで俺の名前を呼ぶことなく去っていく。
こんな人ばかりだと、やりやすいんだがな。
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「羽純、ただいま」
「おかえりナクト。この付与だけ終わらせちゃうから少し待ってて」
「ん、大丈夫。明日でいいんだけど、俺も付与をお願いしたい素材が溜まってきてさ」
「あ、それなら一緒にやっちゃうよ。ナクトの剣のスロット図で付与したい場所を決めててね」
そう言うと羽純は次々と付与を施していく。
農作業用の鍬に硬質化のアイテムを、作業着のようなものに耐熱化のアイテムを。テンポよく、ピコンピコンとハンマーで叩き、あふれ出る光を俺はずっと眺めていた。
「はい、これで全部終わったよ。──夕飯はどうしよっか?」
「久々に酒場にでもいくか?いつも羽純に作ってもらってるし」
羽純から剣を取り、夕食は食べに行く事を提案する。いつも悪いと思っているそれは、紛れもなく本心からだった。仕事をこなし、買い物をしてくれて料理を作ってくれる。羽純に甘えすぎな事は十分過ぎるほどに感じていた。
「いいよ、私料理好きだし…でも、ありがとう。じゃあ今日は食べにいこっか」
「ん。今日は割と魔物がゴールド落としたから」
二人でそのまま酒場へと向かい、アリサちゃんと伊集院さんにも久々に出会う。今日は予備日のため闘神ダイジェストもあるにはあるが試合結果を伝えるわけでは無いので食事を楽しんで宿へと帰ると眠りについた。
現在のナクトステータス
Lv.35
活力:1260(1050+210)
攻撃:369 (280+89)
防御:126 (105+21)
・スキル
①身体操作術
②威圧
③逃走術
④剣術 Lv.4
⑤テクニシャン
・付与剣性能
活力+20%
攻撃+32%
防御+20%
命中+4%
回避+4%
重撃…全ての斬撃が重くなり、硬いメタルな敵にもダメージを与えられる。剣の重さは変わらない
耐呪抵抗+…呪い効果を持つ魔物の呪いを無効化でき、呪い攻撃に耐える率も上昇