ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。   作:ゆかなおっぱい

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しゃっくりが止まらない。


家族

転校生の入ってきた1日目、2人の立ち位置は正反対だ。

デュノア君は持ち前のルックス(女)で女子に大人気、いきなり織斑君と人気を二分するまでに至った。更にはお昼に誘ってきた女生徒を甘い言葉で丁寧にお断りしていた。実は結構ノリノリなのではなかろうか。

逆にボーデヴィッヒさんはあの最初の自己紹介以降誰とも口を聞かない。織斑先生のことを頑なに教官と呼び、何度も注意を受けていた。軍人であるのも相まってかなり接しづらいのか、誰にも話しかけられるどころか近づかれさえしない。

 

 

放課後。今日は訓練がある日だ。今日は箒ちゃんは剣道部の練習ということでいない。毎回毎回同じメンバーではなく、こうやって部活のある日は抜ける人が少なからずいるのだ。

セシリアはテニス部、箒ちゃんは剣道部、グリはサッカー部、ダリルとフォルテはソフトボール部、ベルは料理部といった感じだ。更識姉妹と布仏姉妹は生徒会といった風に生徒会だけは部活をしなくて良く、それ以外の生徒は原則何かしらの部活に入らねばならない。俺と織斑君は特例で無所属なだけで、全員部活動も併せて行っているのだ。

 

という訳で今日はデュノア君と織斑君を混じえての10人。

デュノア君はメンバーの豪華さに感心している。

 

「うわぁ…皆んな国家代表候補生なんだ…楯無さんはロシアの国家代表だし…いつもこんなメンバーでやってるんですか?」

 

「毎回少しの変更はあるけどね。大体こんな感じかな」

 

「へぇ〜。それでこれから何の練習をするんですか?」

 

「俺達は専ら試合形式って感じだな。最初に少しストレッチをして、その後すぐに5対5の試合、少し反省会してから個人練習って流れだ」

 

ダリルの言葉に従い、デュノア君も開脚して前に倒れるなどして準備運動をする。こういう準備運動には出身国の差は無い。

各々体が温まりはじめたところで、ベルがクジを持ってくる。

 

「じゃあ、今日のチーム分けをしましょうか」

 

「今日は勝つっスよ〜」

 

「でもフォルテちゃん5連敗中だよね」

 

「うっ…グリの連勝は私が止めるっス!」

 

いつもこのチーム分けが盛り上がる。フォルテやグリの言った通り、運が悪いと連敗繰り返してしまうことも。しかしいつもそんな喧騒を収めるのはベルの役割だ。

 

「ハイハイ煩い。じゃあデュノア君から引いていって」

 

近くにいた人から順番に割り箸で出来たクジを引いていく。先っぽが赤くなっているかいないかで判別する古典的で簡単なやつだ。俺も順番になったので引く。

 

(アナタ今日も赤ね。何回目?)

 

何回目か忘れた…今まで全部赤だぜ?信じられるか?

 

(シャア総帥の呪いかしら)

 

やめてくれ、ちょっと気味悪い。

 

そうこうしてるうちに分かれてそれぞれ展開し、飛び上がる。そんな時だった。

突如、俺の真横に弾丸、それもISにしては大きいものが飛んできて地面に突き刺さる。爆音と共に地面が抉れ、砂埃が舞う。

 

『星川!!私と勝負しろ!!』

 

アリーナのカタパルト上、黒い装甲に右肩のデカい砲が特徴的なISを纏ったボーデヴィッヒさんが立っていた。

 

「おいおい、アリーナの使用許可は取ったのか?」

 

『フンっ、そんなもの知らない。今は貴様を倒すだけだ!!』

 

そう言ってグラウンドに降り立つボーデヴィッヒさんに皆唖然としてしまう。非常識極まりない彼女に、何をしていいか分からないのだ。

 

(あの娘…私と同じ雰囲気があるわね…)

 

あぁ。なんだろう、何か物凄く嫌な気配がする。

 

そんなことを考えていると、ボーデヴィッヒさんは2本の蔦のような武器を繰り出してくる。

これを難なくブレードでいなし、会話を試みる。

 

「いきなり攻撃するな…何が目的だ?」

 

『貴様が…貴様が教官と同じレベルであるなど!!あってはならないんだ!!』

 

織斑先生を狂信する彼女にとっていつも織斑先生と渡り合っている俺の存在は疎ましいのだろう。私怨だけで俺を勝手に敵認定している。

しかし攻撃されて黙っている訳にもいかない。マシンガンを取り出して連射する。

しかし放った弾丸はボーデヴィッヒさんの突き出した右手の前で停止し、下に落ちた。

 

(今のは…彼女のIS、シュバルツェア・レーゲンの特殊武装ね)

 

流石はあのドイツの第三世代機、相当厄介な武器を開発してくれたな。

 

『今のはAIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーよ。文字通り慣性を制御してあらゆる動きを止めることが出来るの』

 

「ありがとうたっちゃん」

 

たっちゃんからの情報によれば、あの手から出てるIフィールドみたいなのにかかればどんな攻撃も通用しないってことだな。実弾兵器しかない今のラファールだと厳しいか。

 

(あら、アナタならそれくらい何とかして欲しいわね。ア・バオア・クーからもアクシズ落としの失敗からもラプラス戦争の時も、戦況を打開して生き延びてきたでしょう?それよりかは遥かに楽な筈よ)

 

…簡単に言ってくれるねぇ。それじゃ、そんな妻の期待に応えてやりますか。

 

俺は全速力で動き回り、ボーデヴィッヒさんの上空半球をランダムに飛び回りつつ機関銃で銃撃を加える。

これにはAICの展開は間に合わない。回転したり、上を向いたり横を向いたりして一々AICを展開するのは非常に困難なのだろう。防御に精一杯でありながら、俺の銃弾を喰らい、それでいて反撃の隙がない。

 

しかしその戦法にも終わりはある。実弾兵器の欠点、弾数制限だ。装填しなおすタイミングで、やっとボーデヴィッヒさんは飛び上がる。

 

『良くもやってくれたな!!』

 

彼女は今度はお返しとばかりに右肩にある、恐らくレールガンを乱発する。しかしそれは半分以上シールドエネルギーを削られた焦りでかなり単調かつバラけたお粗末なものだった。

 

(まだまだ甘ちゃんね〜。調べたところ彼女、少佐みたいよ)

 

そりゃ部下が可哀想だな。これしきの窮地で正常に頭が回らなくなる上官なんて。じゃあ、もうちょっとその端正な鼻を折ってやろうかな。一回くらいはこういう失敗体験も必要だしね。

 

(アナタの方がよっぽど教官してるわね)

 

それ織斑先生には言うなよ?あれで意外と繊細なんだから。

 

そんな雑談をしつつも余裕を持って全弾かわし切る。そのカウンターとして俺はブレードで突撃する。

 

『ハッ、とち狂ったか!!』

 

ボーデヴィッヒさんは引っかかったとばかりに得意顔でAICを展開する。これこそが俺の狙いだとの知らず。

 

俺は剣先がAICに触れるタイミングでそのブレードを投げる。

 

『『えぇ!?』』

 

遠くで観戦していた皆んなが感嘆の声をもらす。そりゃそうだ、武器を捨てるなんて戦法はIS界だと少ないもんな。

 

『しまった!!』

 

俺はそのまま急速にボーデヴィッヒさんの周りを180度回転、真後ろを至近距離で捉える。これだけ近いとどんな機体も大ダメージを与えられる。あの白い悪魔擬きもこうやって対策したんだよね。確か名前は…陸戦型ガンダムだったかな?

 

俺は再度マシンガンを取り出して銃口をバックパックのスラスターに押し付ける。間髪入れずに連射すると、まだ半分残っていたシュバルツェア・レーゲンのシールドエネルギーは一気に0になる。

ボーデヴィッヒさんは自身のシールドエネルギーが尽きたことを認識すると、膝から崩れ落ちた。

 

『そんな…バカな…!!』

 

「機体を生かすも殺すも搭乗者次第、ってな。もうこんな暴動は起こすなよ」

 

するとボーデヴィッヒさんはキッと涙で潤んだ目で俺を睨みつけた後、一目散にカタパルトの奥へと逃げていった。

 

彼女の姿が見えなくなった時点で俺は振り返って皆んなの方を向く。

 

「さぁ、俺たちの練習を再開しようか」

 

『『嫌です!!』』

 

……何で?

 

(ちょっと刺激が強すぎたみたいね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

何とか説得して再開させた練習を終え、皆んなと別れて自室へと向かう途中。トイレの裏から織斑先生とボーデヴィッヒさんの声が聞こえたためつい反射的に隠れてしまった。

 

(なんか物々しい雰囲気ね)

 

マリーダの言う通り、ボーデヴィッヒさんが織斑先生に何かを訴えているようだった。

俺は隠れながらも聞き耳をたてる。

 

「教官!!何故こんなところで教師などやっておられるのですか!!ここの生徒は皆ISをアクセサリーか何かと勘違いしている輩ばかりです!私と一緒にドイツ軍に戻ってきて下さい!!」

 

「ハァ…お前は何も変わっていないな。あと織斑先生と呼べ。…ここには色んな人がいる。お前の知らない世界や価値観がある。それを学べ、ラウラ」

 

「クッ…どうしても、戻っては頂けないのですね…では、失礼します」

 

そのままボーデヴィッヒさんは寮へと戻っていってしまった。その背中には哀愁が漂っている。

これには少し同情する。何か彼女にも彼女なりの理由があるのだろう。

 

「星川、出てきてもいいぞ」

 

バレてたか、と思いながらも表に出る。織斑先生はそんな俺に怒るでも無く、ずっとラウラの走っていった方向を見続けている。その目には悲哀が篭っている。

 

「やっぱり分かってたんですね」

 

「あぁ。勿論だ……ラウラはな、遺伝子を操作されて作られた、人造人間なんだ」

 

(あぁ、私と何か似ていると思ったら…そういうことね)

 

「…そうですか」

 

「あぁ…驚かないのか?」

 

「いえ、何かしらプライベートに問題を抱えてそうだったので。予想の斜め上ではありましたが、織斑先生が言うならそうなのでしょう」

 

「フッ、私を信じてくれるか。…私はな、ここに赴任する前、2年前にドイツで軍の教官をやっていたんだ」

 

織斑先生はポツポツと昔話をしてくれた。第二回モンド・グロッソで織斑君を何者かに誘拐され、助けに行ったから決勝戦を辞退したこと。その時にドイツ軍に手伝って貰った恩を返すために半年間ドイツ軍の教官を務めたこと。その時の教え子がラウラだったこと。彼女は軍の使い捨ての戦闘人形のように扱われていたこと。それを織斑先生が指導したこと。

これらを全て淡々と、それでいて懺悔するように話し切った。

 

「ーーこれが事の顛末だ。私は結局ラウラに戦闘を教えただけ、本当に救ってやることが出来なかった。私は道を間違えて、ラウラを間違った方向に導いてしまったのかもしれない」

 

彼女もまた、悩み続ける。俺も抱いた悩みだ、痛いほどよく分かる。かつてマリーダを拾ってきてからはマリーダを戦闘に出していた。ネオジオンの兵士をするしか生きる術を知らなかった俺は、マリーダを上手く育ててやれるか心配だった。UC.0089年の終戦以降、マリーダをどうするかに延々と悩まされ続けたのだ。パイロットしか出来ない自分が、果たしてこの娘の親代わりになれるのか。学校は?もし病気になったら?心配事は次々と出てきた。自分が若くして軍人になったからこそ、マリーダを戦士に育ててしまいたくは無かった。一時は養子に出そうかとも考えたくらいだ。

 

(でも、アナタは最高の父であり、夫だったわ。確かに戦士にはなっても、それでも幸せになることが出来た。貴方に教わった護身術やMSの操縦は、確かに普通の生き方じゃなかった。でも、それでもアナタという夫が、アリスという娘がいた。私なりの幸せを手に入れることが出来たわ)

 

ありがとう、マリーダ。

 

そう、家族にとって、親にとって一番大事なことは子供を何にさせるかじゃない。お互いに心の拠り所に出来る関係を築くことだ。俺はマリーダとアリスがいたから必死で生にしがみついたし、最期まで頑張って生きれた。

 

ならボーデヴィッヒさんと織斑先生も同じだろう。過程がどうあれ、彼女は孤独な人生の中で最も信頼できる人間に巡り合うことが出来たのだ。

だからこそ、俺は織斑先生にそのことを気付かせる義務がある。

 

「それは違いますよ、織斑先生。ボーデヴィッヒさんは、彼女は貴女がいたからここまでこれたんだ。人造人間があそこまで織斑先生に本心をぶつけますか?貴女は紛れもなく彼女の教官、いや母親だ。確かに今の彼女は少し危なっかしい。しかしそれは貴女だけの問題じゃない。世の親子が大体経験する、反抗期みたいなものです。

彼女は兵器なんかじゃ無い。歴とした人間だ、1人の女の子だ。そしてそんな女の子の一番の心の拠り所は何か?貴女でしょう。

貴女はあの娘に生き方を教えたんだ。それは軍人という、一般とは少し違った道かもしれない。でもそれを彼女は受け入れた。その上で貴女を信頼し、貴女を追ってここまで来たんだ。

彼女をドン底から救い出したのは、彼女の人生に光を当てたのは紛れもない、織斑千冬、貴女です。

だから、胸を張って教師をして下さい。彼女の、ラウラ・ボーデヴィッヒの母親として、自信を持って下さい」

 

そう言うと、織斑先生は息を飲み、いきなり俺に抱きついてくる。

織斑先生は160cm後半あるのだが、俺の背丈が185cm程なせいで俺の胸にすっぽりと入る。

 

「織斑先生?」

 

「…煩い、少し黙っていろ」

 

夕暮れのIS学園に2人の影が落ちる。ブリュンヒルデの、世界最強の女の、弱々しい姿。彼女もまた人間で、多くの悩みを抱えて生きていることを実感させる。例えどんなに気丈に振る舞っている人間でも、一つくらいは悩みや心配事を抱えている。そしてそれは立場が上であればあるほど、誰にも打ち明けられず、自分の中でストレスとして溜め込んでしまいやすい。彼女の場合はブリュンヒルデという肩書きが、性格が自身のストレスを増幅させていたのだろう。頼られるばかりで、自分には誰にも頼れる人がいない。その点でボーデヴィッヒさんと織斑先生は似た者同士だった。

 

(アナタも良く一人で溜め込んじゃうタイプなんだから、私を頼ってよ?)

 

俺はいつもマリーダは頼りにしてるさ。

 

落ち着きを取り戻した織斑先生はゆっくりと顔を上げる。その目は充血し涙で潤い、頬も赤くなっている。

 

「す、すまなかったな…いきなり抱きついたりなどして…」

 

「いえ、構いませんよ。…これからも、何か悩みとかがあったら俺に話して下さい。晩酌の相手くらいはしますよ」

 

「フッ…お前はまだ未成年だろうが。…ラウラのこと、お前も気にかけてやってくれないか?私だけでは手に負えない」

 

「えぇ。分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

次の日。突然ダリルから呼び出された。

 

「あのさ…明日、少し俺と出掛けないか?…会って欲しい人がいるんだ」




感想、評価お願いします

IS学園の部活ってどんな感じなんですかね。あとアーキタイプ勢の部活って決まってましたっけ?

追記
この作品は最終話までの構想は組んであるんですけど、エピローグを二つ書きたいなと思っているのですが、それでも良いいですか?(いつになるかはわかりませんが…)
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