ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。   作:ゆかなおっぱい

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今回はラウラではなくダリルです。

あと今回原作のみに出てくる設定が登場します。読んでない方もいらっしゃると思うので(失礼)簡単にしか出してません。更に言えば原作の改変を行なっている(亡国機業が潰されている等)せいでかなり世界線が変わってくる部分でもあります。原作を極力壊さないで欲しいという方には申し訳ないのですが、そういう部分も出さないと二次小説としての意味が無くなるので、敢えて改変を行います。


家族 其のニ

水曜日。今日は訓練をお休みしてお出かけデー。と言えば聞こえは良いが、ダリルからの要望で外出するだけだ。居残って山田先生にISの座学を教えてもらった後、着替えて正門で待ち合わせることになっている。

このIS学園では外出の際には外出届を出すのが義務であり、今回はダリルに出してもらうことになっている。俺はやり方を知らないため、非常に助かる。

行き先は銀座の高級フレンチレストラン。何でも彼女の叔母に会って欲しいとのことだ。

 

(それなりに敷居の高いレストランらしいから、一応持ってきてたスーツを着て行くべきね)

 

そういやそんなのも持ってきてたな。思い出した。

 

俺はキチンと正装しなきゃなぁと思いつつ、山田先生の待つ相談室へ向かう。いつもいつも遅れをとってしまう座学を丁寧に教えて下さる山田先生には頭が上がらない。

 

(当の彼女は少し邪念が入っているけどね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

ダリル視点

 

俺は今、窮地に立たされている。

亡国機業のスパイとしてIS学園に入学して2年が経過した。今年も何も無いまま卒業しそうだなあなんて軽々しく思いながら、俺のことを好いてくれるガールフレンドのフォルテと隠れて淫行に及びながら、最後の一年を終えるものだと思っていた。

しかし蓋を開けてみれば初の男のIS操縦者が現れ、状況は激変した。勿論本国からも織斑一夏に接触して勧誘しろと命令されたし、叔母さんからも言われた。

だから俺は最初は織斑一夏に会いに行った。クラスの奴らが剣道場で同じ一年の女と試合をしているって言うから見に行った。

だが、アイツは俺の期待以下でしかなかった。確かにルックスは整っている方だと思ったし、他の生徒が夢中になるのも分からなくはない。それでも私はあまり惹かれなかった、それだけだ。

それで一応、もう1人の方も見に行こうと思ったんだ。フォルテと一緒に噂に従って射撃場に行った。正直、裕太に対する期待値は0同然だった。それはIS学園のほぼ全生徒が同じだったと思う。今考えれば俺含めて皆んな見る目が無かった。

実際射撃場には練習している数名以外いなく、ギャラリーは0人だった。

しかしそんな中で、裕太は一際異彩を放っていた。ここの女達には無い筋骨隆々とした体に鋭い目線。銃を構えるその姿に俺達は見惚れた。噂では新入生のイギリスの代表候補生に喧嘩を売った身の程知らずの男だと聞いていたが、それはすぐに嘘だと分かった。裕太の誠実な対応と言葉遣いに、俺はコイツを信用しても大丈夫そうだとすぐにわかった。

いざ一緒に訓練をしてみれば、最初こそ戸惑っていたもののすぐに慣れて戦闘出来るまでに至った。裕太の学習姿勢、真剣さに、次第にベルとグリも俺もフォルテも惹かれていった。そんな裕太はIS学園全体で見れば織斑より人気は無いが、俺の周りは皆んな裕太に惚れている。

その中には山田先生と織斑先生も含まれていて……

 

「貴様ら、今夜帰ってこなかったら…分かっているんだろうな?」

 

「まぁまぁ織斑先生、怒らないで…ケイシーさん、サファイアさん、“節度を持って”行動するんですよ?」

 

周りの先生たちまで怯えるほどのドスの効いた声で威嚇される。普段から釣り上がった目はいつも以上に鋭さを増し、俺を殺しにくるんじゃないかと思わせる。

一方隣に座る山田先生はこれまたいつも通り笑顔で対応してくれる。しかしその笑みに温かみはなく、寧ろドライアイスの様に触れたら低温火傷をしそうなまでに冷ややかだ。目は笑っておらず、声色も非常に冷たく彼女の心がどれだけ今回の外出に対して煮えくり返っているかがわかる。

しかしそんなことは知ったことではない。俺もフォルテも全く動じず自分でも気持ち悪いと思う笑顔をわざと作って返事する。それに…年増には負けねぇよ。

 

「ちゃんと時間までには帰って来ますよ、俺たちだってそんなに子供じゃありませんから」

 

そう、子供じゃない。なら、”大人“な関係になっても文句はねぇだろ?

 

その後もしばし笑顔で睨み合い、教員室を出る。これ以上いると他の教員が怯えさせてしまうからな。

 

「ダリル、いや”レイン“。ちゃんとワンピースは用意できてるっスか?」

 

「あぁ、化粧品とアクセサリーもな。準備万端だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

IS学園正門。片側二車線の車専用レーンが接続され、その近くにはモノレールのIS学園駅がある。このモノレールは学生証で乗ることができ、IS学園駅は招待券か学生証、職員証がなければ通れない。こうやって一般のICカードでは入れないようにすることで安全を確保しているのだ。

そして俺は今そんな駅の改札前のベンチに座っている。

 

これで変装は大丈夫だよな?

 

(えぇ。ニュースとかで出たのはアナタの前の高校の学生証の顔写真でしょ?ならバレないわ)

 

そう、IS学園を出るということで一応俺だと分からないように変装をする必要がある。とは言っても今までの世間に出た俺の写真と正装をした俺とではかなり見た目も違うので大丈夫だろう。

黒いスポーツサングラスをして、短く切った髪は久しぶりにワックスでツーブロックでまとめ、赤いシャツに黒いジャケットとパンツ。かつて部下に総帥と白黒のペアルックみたいだと言われたこの服装だが、今はもうシャア先輩はいないので揶揄われることはない。

 

マリーダと雑談をしながら待っていると、10分ほどでダリルとフォルテがやってきた。

 

「待たせたな」

 

「いや、待ってないよ。それにしても…いつもと随分印象が変わるなぁ。なんだかお嬢様みたいだ。凄い綺麗だよ、2人とも」

 

そう言うと2人は赤面する。

2人はいつもの制服姿とは打って変わって色違いの同じフォーマルワンピースを着ている。ダリルが赤で、フォルテが水色とお互いのISを意識した色だ。袖や胸元にはレースがあしらわれていて、首にかけられたお揃いの真珠ネックレスとともに色っぽさを演出している。靴もいつものローファーではなく少し高くなったヒールで、お化粧と共に大人っぽさが出ている。随分とまぁ、イメージが変わるものだ。

 

「あ、ありがとうっス…」

 

少し恥ずかしそうにフォルテは頭をかく。そんな彼女の髪型はいつもの三つ編みのおさげではなく、三つ編みを両サイドから纏めてお団子にしている。

 

「お、おう…じゃ、じゃあ行くか!!案内するぜ」

 

話もそこそこに、俺達はモノレールに乗り込む。IS学園の完成と共にお台場から延伸されたそうだ。休日にはレゾナンスへ向かうIS学園生が多いそう。

モノレールの終点では地下鉄に乗り換え銀座へ向こうと思っていたが

 

「ここで待ち合わせなんだ」

 

ロータリーで待ち合わせとのことで、数分待つと車がやって来た。黒くて長い車体。

…長い?

 

「お待たせ、“レイン”」

 

その“長い”車のドアから迎えに出て来たのは、それはそれは綺麗な金髪の女性。豊かな胸がドレスで強調され、蠱惑的な色気に満ち溢れている。ダリルが大人になったらこうなるのかなぁと思うくらいに似ているその女性は、ダリルのことをレインと呼んだ。

 

「レイン?」

 

「あぁ…そのことは車の中で話す」

 

 

ーーー

 

 

 

車内に入ると、その金髪の女性の他に橙色の髪のスレンダーな女性と…織斑先生によく似た少女が座っていた。その橙色の髪の女性がダリルに手を振る。

 

「久しぶりだな、レイン!!」

 

「久しぶりですね、オータム」

 

「挨拶もほどほどにね。…星川裕太君、私はスコール・ミューゼル。スコールで良いわ」

 

「よろしくお願いします、スコールさん…あの、レインっていうのは…」

 

「それは俺から話すぜ」

 

ダリル、いやレインが話始めたのは2人の関係性と、ダリル・ケイシーという偽名を使っていたことについて。

2人は叔母と姪の関係で、早くに母を亡くし、失踪したレインの親代わりになっていたらしい。そんなスコールさんは元アメリカ軍人で、先ほどの橙髪の女性、オータムさんとは恋人らしい。そんな彼女は事故で一度死にかけたが、亡国機業の技術で体を再生して貰い、その亡国機業で実働IS部隊として裏の世界で暗躍していたそうだ。そんな経歴の彼女と同じ苗字では後々面倒になるかもしれないと、レインにはダリルという偽名を与えたそうだ。

 

「そんなことがあったのか…」

 

「あぁ…黙っててすまなかったな」

 

「いや、良いさ。家庭の事情ならしょうがないよ。あと、亡国機業とは一体何ですか?」

 

「それは遥か昔に相続税対策でどこかのお金持ちが作った裏社会の組織なの。最初はただのボディーガード業とかだけをやっていたらしいけど、武器を手に入れていくに連れて暴力組織に変わっていったの。でも…」

 

「つい最近、ジオンを名乗る奴に壊滅させられたんだ」

 

オータムさんの放ったジオン、という言葉に一瞬思考が停止する。背筋が凍るのを感じる。

 

「壊滅…」

 

「あぁ…それで俺が今日叔母さんに会って欲しいと言ったのはさ、この前の戦闘で裕太がそのジオンのISと戦ったからなんだ」

 

「なるほどね。その説明みたいなものか」

 

「まぁそれだけじゃないけどね」

 

その話をしたところで目的地に到着する。俺達はリムジンを降り、銀座でも一際人気のあるというそのレストランに入る。何でもここは亡国機業の息がかかったレストランとのことで、様子見も兼ねて訪れたらしい。中に入ると白い厚めのテーブルクロスが綺麗にかけられた円いテーブルが並び、椅子も装飾の施された高級なものが等間隔に並べられている。天井にはシャンデリア、壁には絵画と中々の雰囲気だ。レインやスコールさん、オータムさん、織斑先生に似た少女は慣れているようでなんの戸惑いもなく入っていく。対照的に俺とフォルテは慣れていないため少しぎこちない。2人で顔を合わせて苦笑いした。

スコールさんが胸の谷間から一枚の紙を取り出し、それをウエイターに見せると奥の個室に案内された。その部屋にある唯一のテーブルを囲うように座り、スコールさんがそのままコース料理を人数分注文。そのメニューはなんと1人25000円。価格表を見てしまった俺とフォルテはまたも顔を合わせる。お互い何故みんな驚かないのかに逆に驚きを隠せない。

 

「さて、もう一つ大事なことがあるの。それは…」

 

「私のことだ」

 

そう言ったのは織斑先生を中学生くらいまで若返らせた様な容姿の少女。ずっと気になっていた。

 

「私は織斑マドカ、織斑千冬の妹だ」

 

本日2度目の衝撃。織斑先生はそんな素振りを全く見せていなかったし、織斑君も妹がいるなど一言も言っていなかったから、全く予想だにしなかった展開だ。せいぜい親戚とかかと思っていた。

 

「織斑先生の妹…どういうことですか?」

 

元亡国機業の3人によれば、織斑姉弟は本当は人間の子供ではないらしい。織斑計画(プロジェクト・モザイカ)という究極の人類を創造する計画の成功体で、織斑君はそうして作られた織斑先生と子供を作るための種馬としての存在だそうだ。

 

(そう、私やラウラちゃんと同じ人造人間なのね…)

 

「……」

 

俺は彼女にかける言葉を見つけられず、モヤモヤした気持ちだけが心の中に充満する。

 

「それで、マドカはどうするつもりっスか?亡国機業が無くなった今、この後の人生はマドカが決められるっスよ」

 

フォルテがそう言うと、少し難しい顔をして俯く。

 

「正直分からない…姉さんと兄さんに会いたいという気持ちもある。でも会っても姉さんと兄さんにとって良いこととは限らない。2人がこんな事を知ってしまったら、今の幸せを壊してしまう。私はどうしたら良いか、分からない」

 

彼女は、心優しい少女だった。家族でただ1人だけその辛く悲しい事実を知った上で、それでもなお家族を思いやる気持ちは中々持てない。確かに今の織斑先生と織斑君はそれなりに幸せな日々を送っていると言えるだろう。しかしそれがまた彼女を苦しめているのも事実だ。彼女だけが、仲間外れにされている。

 

(私は2人にも真実を伝えるべきだと思うわ。あの2人なら、ちゃんとマドカちゃんを受け入れてくれるはずよ。家族のいない苦しみは私にも痛いほどわかる。幸い私にはアナタがいたけれど、それでも血の繋がった家族の存在はまた違った特別な意味を持ってる。マドカちゃんはこのままだったら一生そのことで苦しみ続けるわ)

 

そうだな。よし、俺が話そう。

 

「優しいんだな、マドカは。…ただ、1人で苦しみ続けるのはやめろ」

 

全員の目線が俺に集中する。マドカはハッと顔を上げ、俺に注目する。

 

「正直、今の話を全部受け入れるのは今の織斑先生と織斑君には厳しいかもしれない。ただ、家族なんだろ?会いたいんだろ?なら会えばいい。ずっと1人で抱え込んでも君が苦しみ続けるだけだ。大丈夫、あの2人ならマドカちゃんをちゃんと受け止めてくれるよ」

 

「だ、だが…IS学園には私達は入れないんじゃ…」

 

「そうね、それにそもそも私達の今後も未確定だし…」

 

「オレ達は無職になっちまったからなぁ…」

 

悲壮感漂う彼女達を救いたいと思っていた矢先、あることを思い出した。十蔵が色々俺に愚痴った話の一つを思い出したのだ。あの時はただの不可能な夢物語として話していたことだった。

 

「あの、3人ともISは持ってますか?」

 

「えぇ、私とオータムは専用機、マドカはラファールの改造機を持ってるわ」

 

「なら、IS学園で警備員の仕事をやりませんか?」

 

3人は一旦顔を見合わせた後、キャラが崩壊したように食いついた。ついでにレインとフォルテも。

 

「ど、どういうことだ?」

 

「IS学園って警備員募集してたっけ…」

 

「あぁ、これは理事長が言ってたんだがな、俺に織斑君と男のIS操縦者を抱えた上に襲撃事件があったろ?それでやっぱり教員以外にも緊急出動できるISを持った警備員が欲しいなぁなんて話をしてたんだよ」

 

「それ、オレらに丁度良いじゃねぇか!!」

 

「それにマドカはマドカで2人に再会できて、そのままIS学園に通えるかもしれないぞ!」

 

「凄いっス!!ナイスっス裕太!!」

 

「てことで少し理事長に電話してきますね」

 

食事中に席を立って電話するなどマナー違反ではあるのだが、今の雰囲気やまだ皿が来ていないことを鑑みて電話をかけることにする。

俺は部屋を出て多目的トイレに一人で入り、そこで電話をかける。数コールののちに十蔵は電話に出た。

 

『大尉、何かごようですか?今は外出中では?』

 

「あぁ。実はな、前にISを使える警備員が欲しいって話したろ?」

 

『えぇ、でもあれは流石に現実味が無いですけどね』

 

「それが見つかったんだよ、そんな人が」

 

『何ですと!?』

 

「元亡国機業の実働部隊でな、3人いるんだが全員専用機持ちだ。どうだ?」

 

『それはそれは…随分とグレーなところから引っ張ってきましたな。ですがこれ以上ない逸材ですね。今日連れてこられますか?』

 

「多分OKだ。じゃあ一旦切るぞ」

 

『ハッ、お待ちしております』

 

通話を終えて部屋に戻ると、皆から期待の眼差しで見られる。俺はそれに応える様に微笑む。

 

「是非雇いたいから詳細を聞きたいってさ。今日この後にIS学園に行けますか?」

 

「えぇ!勿論よ」

 

「フゥ…これで叔母さん達が路頭に迷うことは無くなりそうだな」

 

5人の美女、美少女が安心したように笑い合う光景に、あんな与太話を覚えといて本当に良かったなぁと思う。

 

(お手柄ね、アナタ)

 

 

そんな歓喜の中、アントレ(前菜)が届いた。

 

「お、お待たせしました。『クルスティアン・オ・ソモン・フュメ』でございます」

 

わざわざシェアが自ら持ってきたこの料理はフランス料理の前菜の一種。サラダを生のサーモンで巻き、その上にブリックをオーブンで焼き飾りつけたものだ。周りにはバジルソースがかけられている。

しかしそんなアントレを運んできたシェフの動きは不審なものだ。目線も何かに怯えるかのようなもので、その料理をずっと見ている。

 

(裕太、このバジルソースが怪しいわ。毒物が入ってるかも)

 

そう、さっきスコールさんは大事なことを言ったのだ。ここは“亡国機業の息のかかった”店だと。そして今は亡国機業は、無い。

 

しかしテンションの上がった皆んなはそんなシェフの様子に全く気づかず、各々フォークを持って食べ始めようとしていた。

 

「みんな少し待ってくれ!!」

 

全員俺の大声にびっくりしてしまう。

 

「な、何!?」

 

「待ってくれ。……シェフ、このバジルソースに毒物を入れてないですか?」

 

みんな驚き各自の皿にのっているバジルソースを凝視し、疑いの目線をシェフに向ける。

そんなシェフは息をさらに乱し、慌てて両手を横に振って否定する。

 

「そ、そんなまさか!ど、毒物だなんて…!」

 

「へぇ…なら、今ここで一口食べてみせて下さい。ほら」

 

俺はそう言ってスプーンでバジルソースを少し掬ってシェフの口に近づける。

するとシェフはヒッと小さく悲鳴を上げ、部屋から逃げ出す。

 

「コラ!!待て!!」

 

俺達は急いで彼を追いかける。個室から飛び出た俺達に他の客やウエイター達が驚愕する。

そんな中シェフは厨房に駆け込み、俺達もそれに続いて厨房に押し入る。

 

「ヒィィィ!!」

 

「白状しろ、俺達の食事に毒物を混ぜただろ!」

 

彼は他のコックからも疑いの目線を集める。客室まで料理を届けた後すぐにこんなことになっているのだ。何か不祥事があったのは簡単に想像がつく。

彼は諦めた様に俯いた後、気味悪いくらいに笑い出した。

 

「ハハッ、ハハハハハハ!!!!もういいや、亡国機業なんて信じたのが間違いだったんだ!!」

 

そんなどう見ても気が狂ったシェフに他のコック達も後退りする。誰がどう見ても今の彼は錯乱状態にあると答えるだろう。

 

「ハハハ、亡国機業からの借金を追い立てられるンダ!そしたらこの店はもうお終いダ!燃やしてやる!!全てを!!この店を、お前らごと!!」

 

そう言って彼は油を辺り一帯に撒き、コック帽にコンロの火を移してその火を油に近づける。

 

「な!?」

 

その結果一瞬にして火が彼の周りを取り囲む様に燃え盛る。

 

「不味い、火事だ!!逃げるぞ!!」

 

俺達とコック達は慌てて厨房を飛び出す。そんな事態に只事じゃないと気づいた客の1人が扉の奥で燃える炎に気付き、火事だ!!と叫ぶ。その言葉に呼応するようにダーッと全員の客とスタッフが出て行く。一番先頭のスタッフさんがビルの避難用シューターを下ろして、そこに客を誘導している。

 

「オレ達も急ぐぞ!!」

 

オータムに続いてマドカ、レイン、フォルテ、スコールの順で出て行く。しかし俺はまだ出て行く訳にはいかなかった。

 

マリーダ、どこにあると思う?

 

(さっきスタッフルームがあったわ。その奥じゃないかしら)

 

了解

 

俺はシューターから離れ、もう一度店内に入って行く。ISを部分展開してシールドエネルギーを使って炎から体を守りつつ、奥へと進む。まだ火の手が来ていないスタッフルームを駆け抜け、奥のオーナー室へと入る。

 

(その金庫じゃないかしら?)

 

俺は机の横に置いてあった簡易タイプの金庫をブレードでこじ開け、中を見る。

ビンゴだ。

 

流石マリーダ。ナイスアシストだ。

 

(そんなこと言ってる暇はないわ。段々炎が強くなってきてる。このままじゃシールドエネルギーもジリ貧よ)

 

そうか、じゃあ出るか。

 

そうしてとある書類を手に入れた俺はすぐさまその場から撤退する。途中焼け焦げたシェフの遺体を見つけたが、遺体は回収せずに外へ出る。

ラファールを展開したのはバレる訳にはいかないため、シューターの中で部分展開を解除、そのまま滑って地面に降り立った。

 

シューターから出てきた俺を見た5人は一斉に飛び出し、俺に飛びつく。

 

「何やってたんだよ裕太〜!!俺心配したんだからな!!」

 

「そうっス!!ほんと…生きてて良かったっス…!!」

 

「もう…私達の恩人が目の前で死ぬかと…心配だったわ!」

 

「オレ…オレ…ウワァァァン!!」

 

「…良かった、裕太が生きてて」

 

5人5様に俺を心配してくれていたようだ。少し申し訳ないことをしたな。

俺は皆んなを優しく離してスコールさんにその書類を渡す。

 

「これ、店のオーナー室にあった亡国機業からの借金の借用書です。金庫に入ってたら後々回収されて俺達が疑われる可能性があったので取ってきてたんです」

 

そう、俺が取ってきたのは借用書。後々何故シェフがあんなに錯乱したのかを問われた時に、この借用書が出てきて亡国機業が関わっていると疑われ、警察にスコールさん達がマークされる事態を防ぐためにもわざわざ取ってきたのだ。

 

そしてその意図を読み取ったスコールは感極まって…

 

俺の唇にキスをした。それも濃厚なやつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

クラスに転校生、もとい体験生的な扱いでマドカがやってきた。最初その容姿からクラスメイト達を驚かせたが、俺と織斑先生が用意した生き別れの妹という設定(強ち間違いでは無い)を話したところ皆んな涙を流した。これには真実を知っている織斑君、織斑先生、マドカ、俺は苦笑い。

 

そして織斑君と織斑先生だが、昨夜にマドカと会って家族での話し合いをした。俺達は部屋から出ていき、数十分経ったところで再度部屋に戻ると、一緒に笑い合う3人がいた。どうやら同じ家族同士、これからは一緒に過ごそうと決めたらしい。3人の心の底からの笑顔を見て、マドカを連れてきてよかったと実感できた。スコールとオータムも無事雇用が決定し、今日から仕事についている。用務員兼警備員として十蔵にこき使われることだろう。

 

「随分と暗躍したみたいね」

 

「たっちゃん、暗躍はやめてくれよ。別に大したことはしてないさ」

 

そんな俺は今たっちゃんと共に自室で夕ご飯を食べている。何故たっちゃんがいるのかというと、簪さんの一件以降一週間に2、3回ほど夕ご飯を勝手に作りにくるようになったからだ。たっちゃんは押しかけ妻をやってみたかったの、なんて言ってるが。

 

(そのままアナタの妻になりにきてるわよ。既成事実というべきかしら)

 

マリーダの声に怒気がこもる。

 

まぁ落ち着けよマリーダ。ただ晩御飯を作ってもらう家政婦がいると考えればなんとか…ならないかなぁ…

 

たっちゃんという美少女に晩御飯を作ってもらって一緒に食べることに幸福と有り難みを感じるものの、それと同時にマリーダのご機嫌も取らねばならない。中々大変だ。

 

「あ、そうそう。シャルロットちゃんのことだけどね………IS学園に彼女を送ってきた理由がほぼほぼわかったわ」




裕太は思わせぶりな言動で女を釣っている様に感じる方がいらっしゃると思うのでここらで弁解。
ヒロイン勢を助けたり甘い言葉を言ったりするのは只々彼の優しさの表現みたいなものです。天然みたいな?

女の争いは怖い。(ガチ)

あとオータムの髪色、黒髪じゃないっすね。前回出てきたのを訂正しときます。あと一人称をオータムはオレ、レインは俺で使い分けてます。

今回時間進みが遅いですね
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