ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。   作:ゆかなおっぱい

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お久しぶりです
お気に入り800名ありがとうございます…と書こうと思っていたらいつのまにか900目前!!
この作品も読者さんが増えてきて嬉しい…人気作とは程遠い当作品ですが、片手間にでも読んでいただけると嬉しいです。

それにしてもISの二次創作作品数多いですね…今も更新されてる作品がいくつもあって、ISの人気ぶりが良く分かりますね。というよりISというラノベは二次小説を描きたくなるような作品なのかもしれませんね。(褒めてない)


家族 其の三

デュノア君、もといデュノアさんが来て5日目。

今日も今日とて6限までの授業を終え、各々がこの後の予定に散らばる。部活に勉強、整備に訓練と余念がなく、非常に優秀な生徒達であることが伺える。そんな中で俺はデュノア君に話をしなければならない。

そうして重い腰を上げてデュノア君のもとに向かった時だった。

 

「あ、デュノア君、織斑君、星川君、残ってましたか」

 

違う教室の授業から帰ってきた山田先生が入ってきて、俺達を呼び止める。教室内に残っていた人とこの教室にやってきた生徒達の注目が一気に集まる。

 

「何ですか?」

 

「はい、今日から大浴場を男子も使えるようになりました!!夜の8時から9時までの1時間だけですが、お湯に浸かってしっかりと休んで下さいね!!」

 

その言葉に織斑君は大歓喜、デュノア君は憂鬱な顔をする。そりゃそうだ、デュノア君は女。男湯に入れるなんて言われてもそう簡単には入れないし、そもそも大浴場でお風呂に入るなど文化にない。そんなデュノア君とは対照的に織斑君はあからさまに機嫌を良くして飛び上がって喜ぶ。山田先生の手を両手で掴み、グイッと顔を近づけてお礼を言っていた。山田先生はドン引きだったが。

 

(アナタってそんなにお風呂好きでしたっけ?いつもシャワーで済ましてた気がするけど)

 

んー、基本はシャワーで充分なんだけどね。偶にはお風呂に入りたくなるもんなんだよ、それにアリスと入った思い出もあるしね。

 

(懐かしいですね、アリスが小さかった頃は良くアナタと2人で入ってましたね。アナタに髪を洗ってもらうのが好きだって良く言ってましたっけ)

 

そうだね。ホント、良い思い出だ。

 

そんな会話をしているウチに山田先生は教室を出て行ってしまい、織斑君は織斑君でアリーナにへ訓練に向かう。

デュノア君も続いて出て行ってしまいそうだったので慌てて引き止める。

 

「デュノア君、この後少し話があるんだけど、時間ある?」

 

「あ、ハイ。大丈夫ですよ」

 

しかしここは教室。俺とデュノア君という珍しい組み合わせに腐女子共が俺にまで聞こえるくらいの声で星シャルやらシャル星やらアホみたいなことを叫んでいる。俺とデュノア君は顔を見合わせ苦笑する。

 

「…場所、移そうか」

 

「…そうですね」

 

そもそも話が話なだけにここでするつもりは鼻から無かったが、かえってその言葉が彼女達の妄想を暴走させてしまう。姦しい声が教室中に響き、流石に鬱陶しくなってくる。

 

「ねぇねぇ、告白!?告白なの!?!?」

 

「違う」

 

悪ノリで突っ込んできた女生徒に無表情でそう言うとその生徒はつまらなさそうに女子集団に帰っていき、その娘からの伝言でそのグループの女生徒達が不満そうに声をあげる。…当たり前だ、アホ。

 

(この学校はそういう恋愛要素がないものね、こうやって野次馬も出るわよ)

 

そりゃそうだけどさ…それでも多過ぎだし、ちょっと度を越してるよ。

 

「アハハ…大変ですね、星川さん」

 

「ホントだよ、全く……」

 

道中でも同じような事態に見舞われながらも、もう面倒くさいのでお互い無視して俺の部屋までやってくる。

 

「え、星川さんってこんなところで生活してるんですか!?」

 

「あぁ、学園も俺には冷たいからな。って、そんな話は良いんだ」

 

「そういえば話って何なんですか?」

 

「あぁ、それなんだけどね……」

 

俺は今までデュノア君に向けていた背中をクルッと回転させ、正面を向く。小柄で華奢なデュノア君、いやデュノアさんにこんなことをするのは気が引けるが、これも俺の役目だ。

先程までの笑顔を崩して鋭く彼女を睨みつける。

 

「君、女だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロット視点

 

「君、女だろ」

 

それまで平常だった心臓がバクバクと脈打ち、少し肌に浮かんでいる汗が急激に冷めるのを感じる。今の僕、ちゃんと表情を保ててるかな?

 

「そ、そんなことないよ。何てこと言うのさ、星川さん」

 

しかし頑張って捻り出した声は震えに震え、さっきまで使っていたはずの敬語も取れてしまう。僕を覆い隠す何かに、亀裂が入る。

 

「…随分と嘘がへただな」

 

勿論隠し切れる訳もなく、僕は何も言い返せずに俯いてしまった。これでは僕は女ですと自白しているようなものだが、それ以外に何も出来なかった。

これで僕の人生は終わりなのかな…せめて最期は、故郷が良かったな……

 

そんなことを考えている僕に、星川さんはフゥと息を一つ吐いてから、もう一度僕に向き合う。先程とは違って僕を憂いている目だ。

 

「…何があったのか、教えてくれないか?」

 

……もう、良いよね。話したって。

僕の中にあったダムが決壊し、今まで溜め込んでいたものが勢いよく溢れ出す。

 

「最初は幸せな毎日だった。お父さんはいなくても、お母さんと2人で家の事を分担して楽しく日々を過ごしてた。でも、それも数ヶ月前には途絶えた。お母さんが死んだんだ。元からそこまで体が丈夫じゃなかったのに、僕のために無理してお仕事をして。それが祟ったんだろうね、病気になっちゃったんだ。膵臓癌、今でも発見するのが難しくて、発覚した時には既に手遅れ。徐々に弱っていくお母さんを見るのは本当に辛かったよ。でもそれだけじゃ無かった。身寄りが無くなった僕は近くの教会に住み込みで働こうと思ってたんだけど、突然僕の実の父親を名乗る人が現れたんだ。そこからは早かった。僕はその実のお父さんに引き取られてデュノア社の本社に連れてかれて、そこでお父さんの奥さんに頬を引っ叩かれて。『この泥棒猫!!』だってさ。僕は何も知らないのに…しかもIS適性が高いのが分かったらみんな掌を返したように接して来て、代表候補生にもされて。しかも男装だなんて…もう嫌だ!!」

 

最後は涙ながらに、顔もしわくちゃになりながら叫ぶ。外には誰もいない、校舎から離れた小さな小屋の中だと分かってはいるが声が大きすぎた。それでも自制できないくらい、僕の心は荒れている。何一つ僕を包んでくれる優しさはない。自分の周りが棘で囲われているかのように錯覚するほど、孤独で、辛い。

でもそんな僕を、星川さんは包んでくれた。その大きな体で、僕を包み込む。

 

「星川さん……?」

 

「大丈夫、俺は君の味方だ。怖がらないで。……落ち着いたら、俺の話を聞いてくれ」

 

そう言われて僕は星川さんの体の中で深呼吸する。制服の柔軟剤の匂いに混ざって、星川さんの匂いがする。男の人の匂いをこんな近くで嗅ぐなんてみっともない気もするけど、僕は続けて2回、3回と深呼吸をしてしまった。

良い匂い。言葉では形容しづらい、優しさが滲み出たような香り。三つ深呼吸をした後、僕は自分の涙が自然と止まり、頬が少し赤くなっていることを自覚した。

ふと思い出す、この前寮の部屋で見たテレビ番組。男の人で、良い匂いだなと思ったらそれは相性がいい証拠だって言っていた。

それを考えてしまった僕はまた心臓の脈が速くなるのを感じる。

ももももも、もしかして星川さんが僕の!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

一旦落ち着いたと思ったら、またデュノアさんが腕の中で震え始めた。何かまた辛いことを思い出したのでは無いだろうか、なぁマリーダ。

 

(……さぁね。自分で考えたら?)

 

ど、どうしたんだよ……

 

何故かさっきから不機嫌で反応も少ないマリーダに怯えつつ、デュノアさんを抱きしめる。本当に辛かったんだろう、震えて泣きながら話す彼女を放ってはおけなかった。

自分自身、あまり良いとは言えない家庭環境で育ったため、彼女が今どんな孤独感を味わっているかは非常に共感できる。だからこそ、せめてこうやって自分が彼女の味方になってあげたいのだ。

 

「大丈夫か?」

 

「えっ、う、うん!大丈夫だよ!?」

 

呼びかけたら何故か彼女の頬は真っ赤になっており、アタフタと手を振られて目を逸らされる。

 

「本当に大丈夫か、顔赤いけど…」

 

そう聞くと彼女はサッと後ろへ振り向きブンブンと横に顔を振る。

 

「ううん、大丈夫、ほんとに大丈夫だから……」

 

そうして3回ほど深呼吸を挟んで一回大きく頷くと、また俺の方に向き直す。まだ顔は赤みがかかっているが、先程よりかはマシだ。

 

「なら聞いてほしい。実は元々IS学園は君が女であると分かっていた」

 

「!!……アハハ。なら最初から取り越し苦労だったわけだね。ハァ……」

 

そう聞いて随分と彼女のテンションは駄々下がりするが、話を進めたいので敢えて無視して続けることにする。

 

「それでな、これからのことを学園側と話し合おうってことで、俺が今日君を呼んだんだ」

 

それを聞いて再度表情を青くする。こんな状況になって、感情の起伏が大変なことになっている。さぞかし今日はグッスリ寝るのだろう。

 

「えっ…それってつまり、僕の処分が…」

 

「処分とは限らないさ。大丈夫だって」

 

「本当…ですか?」

 

「まぁね。なるようになるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

デュノアさんを連れてやって来たのは学園長室。学園長室は教員寮の1番手前にあり、十蔵の妻である那月さんがいる部屋だ。寮長室が生徒寮にあるのに対してその他の教員は教員寮に住んでいる。とは言っても教員寮は生徒寮の下の階にあって、一部屋あたりの広さや設備は基本的に生徒寮とは変わらないそうだが、教員は1人部屋なのでかなり広々としているとのことだった。また教員には教員用の大浴場があったりマッサージ師が食堂があったりとかなり好待遇を受けているらしく、実家より暮らしやすいとまで言う人も多いらしい。山田先生がそう言っていた。

IS学園自体多くの施設を抱えており、美容院やら病院さながらの保健室、射撃場、幾つかの広大なグラウンド、体育館、剣道等の武道場、品揃えが豊富すぎる購買、食堂と大浴場付きの寮、校舎、ISドック、弾薬庫、5つのアリーナ。もはや一国家が出来るレベルで揃っている。が、それでも大抵の人が入ることがない数少ない部屋の一つが、この学園長室だ。

 

俺とデュノアさんはそんな部屋の前に立っている。一度も入ったことがないであろう彼女は相当緊張しており、これから起こることにかなりの不安を抱えている様子だ。俺はこの後の展開もこの中にいる人も知っているし、そもそも十蔵や那月さんによくお茶と菓子を貰っているためかなり出入りしているから全く緊張感は無い。あまりよろしいことではないが、今は彼女からすれば頼もしいと感じてくれていることだろう。

 

(そんなこと考えてないと思うけど)

 

…今日のマリーダは随分とご機嫌斜めじゃないか。どうしたんだよ……

 

(私のことはいいの。ホラ、ちゃっちゃと仕事を済ませる!!)

 

…へいへい。

 

俺は一回ポンとデュノアさんの肩を叩いて目配せしてから、ドアを3回ノックする。

 

「星川です。シャルル・デュノアを連れて来ました」

 

「入って来てください」

 

十蔵の声を聞いて俺はガチャリと内側へドアを開く。俺は堂々と、デュノアさんはおずおずと俺に続いて入る。

 

「失礼します」

 

「し、失礼します…」

 

そんな俺達を待ち構えていたのは、奥の学園長用の机の向こうに座る那月さんとその横で立っている十蔵、手前の応接用テーブルの片側に座るたっちゃんと織斑先生だった。それらを見てデュノアさんの緊張はさらに高まる。俺は彼女を促して座らせ、その左横に腰掛ける。

 

「来たか」

 

「待ってたわよ」

 

「すいません、少し遅れました」

 

「…では全員集まったことですし、今後のことを話しましょうか」

 

那月さんの透き通った声が響き、部屋の空気がピンと張り詰める。それによってデュノアさんが更に萎縮してしまう。俺は彼女の緊張を解すためにも左手を右手で握る。瞬間前方から冷気が漂って来たが、無視。

 

(私に言うことは?)

 

…すいません、不可抗力なんです。

 

「今後のシャルル、もといシャルロット・デュノアさんの処遇についてですが、これは前から話していた通り学園側は保護の方向で話を進めたいと思います」

 

そう聞いてデュノアさんは顔を上げる。まさか学園側がこう思っていたとは考えていなかったのだろう。

 

「そのためにも、デュノアさん。私達にこのような事態になった経緯を説明して頂けますか?」

 

「はい」

 

そう言って彼女は先程俺にしたのと同じく、彼女の出自や母の死、その後の代表候補生になるまでの流れと男装の理由について話した。

 

「…そんなことがあったのね……」

 

たっちゃんは目尻に若干の涙を溜めて、言う。隣の織斑先生も何も言わないが、眉をハの字に寄せてデュノアさんを見つめる。那月さんも同様だ。

俺と十蔵だけが真顔のまま。ドライな反応と言えばそれまでだが、やはり地獄をお互いに見てきた以上、何も驚けないのだ。俺は2回目の話というのは勿論あるが、それでも十蔵も俺もそういう話は嫌というほど聞いてきたし見てもきた。だからこそ、驚かないし、驚“けない”のだ。

 

「これが今回の事の顛末ということですね。…更識さん、説明をお願いします」

 

「はい。…シャルロットちゃん、君のお父さんはね、君を守るためにIS学園に入れたんだよ」

 

「えっ…?」

 

「デュノア社の経営状況は芳しくないことは知ってるでしょ?それに不満を持った一部の社員が社内クーデターを起こそうとしてるらしいの。そしてその連中が目をつけたのが貴女よ。元愛人の娘、スキャンダルにはぴったりね。それで危機感を覚えたデュノア社長は一度君を外に逃そうとした。でも大企業のデュノア社は世界各地に支社がある。それで見つけたのがここよ。IS学園はいかなる国家からの干渉も受けない。だからこうして君が入学することになったの」

 

それを聞いてデュノアさんは俯いて少し黙った後、たっちゃんともう一度目を合わせる。

 

「でも、なんで男として入らなければならなかったんですか?それなら女として入っても問題無さそうですが……」

 

この問いには織斑先生が返す。

 

「それはフランス政府の代表候補生を管理する官僚が勝手に決めたらしい。織斑のデータを欲したその官僚は男として入れれば簡単に織斑に接触出来ると考えたらしくてな。お前が入学してくる際も織斑と同部屋にしろと煩かった」

 

「それで理事長が取り敢えず同部屋にして様子を見て、シャルロットちゃんに危険性があるかどうかを君達の部屋に取り付けた監視カメラで数日様子見してたのよ。それで君は全く一夏君の白式に触れなかった。それで嫌々スパイをやっていることが確認出来たから、学園としても保護すべきだと結論付けたの」

 

デュノアさんは自分が数日そんな綱渡りな状況で生活していたことを知り少し身震いをする。もし今までに白式のデータを盗んでいたらと思うと、恐ろしくてしょうがないのだろう。

ただ、自分を全く愛していないと思っていた父親がそこまで考えて行動していたと知って、少し複雑な気持ちでもある。

 

「……ではデュノアさん、後のことはご両親と話して下さい」

 

「両親と?」

 

那月さんは机の上で開いていたウィンドウを俺達の座っているところにある応接机に表示させた。そこにはデュノアさんに似たどこか優しげな金髪の男性と、黒髪の男性と似たような年齢のショートカットの女性が映っていた。

 

「お父さん、お母さん…」

 

俺とたっちゃん、織斑先生、十蔵はこのタイミングで退出する。那月さんはデュノアさんと一緒に話があるそうで中に残った。

俺達は学園長室前の廊下に出る。

 

「それにしてもたっちゃん、あれだけの情報よく調べたね」

 

「フフフ、更識家の力は凄いのよ。…それにしてもフランスも大胆なことするわねぇ」

 

「ホントにな。私もさっき話した官僚と話していた時から胡散臭いとは思っていたが、国家ぐるみの偽装だからな…」

 

「良くやるよ、本当に」

 

その後は静かに話し合いが終わるのを待った。中からちょくちょく聞こえて来る話し声を聞いている内では、中々順調に進んでいるようだ。俺は廊下の壁に寄りかかって腕を組み、目を閉じる。

 

実はデュノアさんを引っ叩いた義理の母親も悪い人ではないらしく、自身が不妊であり、愛する夫の自分が結婚する前の子供ということで距離感が掴めず、色んな感情が混じってあのような行動に出てしまったのだそうだ。盗み聞きした範囲ではこれからは家族3人として、一緒に生きていこうといった内容らしい。

 

(良かったわね、彼女)

 

マリーダ!!機嫌がなおってなにより…そうだね、やっぱり家族は仲がいいに越したことはないよ。今思い返せば、マリーダとアリスとの日々が1番幸せだったからね。

 

(フフッ、そうね。……でもアナタ、幼少期はあまり家庭環境が良くなかったっていうのは聞いてたけど、どうだったの?)

 

あぁ…あまり詳細は話してなかったっけなぁ。

ウチは元からサイド3に住んでたのは話したよね?でも親父は連邦の駐留軍の士官だったから開戦前は住民の抵抗も激しいからって一人で地球の日本に帰ったんだ。その際サイド3にどうしても残りたかった母親と訣別してね。離婚したんだよ。

 

(そう…でも何でそこまでお義母様はサイド3に留まりたがってたの?)

 

それはな、あの時母さんは料理人でね。自分の店を開いたばっかりだったんだ。丁度軌道に乗ってこれからって時でさ。それに日本の実家とも仲が悪かったらしくて、それで日本には帰りたがらなかったのさ。でも離婚後、俺と母さんの生活は長続きしなかった。

 

(……殺されたんだっけ)

 

そう。連邦政府へのデモに参加してた母さんは射殺されたんだ。あれは中学3年生の時だっけか。目の前でバタリ、とね。その時は目の前が真っ暗になったよ。そのあと俺も連邦兵から暴行されて。あの時決意したんだ。ジオン国防軍に入って連邦を倒すんだってね。当時から戦争の足音は大きくなっていたから、丁度良いと思ったんだ。

 

親父のことはその後忘れもしない。七夕の日の夜中のことだった。当時一年戦争で1番の激戦地だったドーバー海峡の戦線に配属されてた俺達はノルマンディーの基地に駐屯してたんだ。そしたら海の向こうからいきなり強襲揚陸艦が大勢押し寄せてね。あの時には既にイギリス側からの絨毯爆撃が日常的にあったんだけど、まさか強行上陸するとは思わなくて。宇宙世紀のノルマンディー上陸作戦って後々命名されたそれは本当に悲惨な戦闘だった。MSはパイロットが搭乗する前に破壊されたりMSドックが占領されたりして使えなかったから白兵戦になった。連邦の61式戦車とマゼラアタックとかのジオン戦闘車両で激しい攻防が基地中で繰り広げられた。それら戦車が消耗し始めると空挺団が降下してきて。そこからは血みどろの銃撃戦。見渡す限りの炎と死体、血。空は戦闘機部隊のミサイルと機関銃が光ってた。地獄なんてもんじゃない。結果的には俺たちがなんとか基地を死守したんだけど、多数の犠牲者が出た。

そこで俺は親父に会ったんだ。空挺部隊だったらしいけど、再会した時の親父は既に血まみれだった。腹から出血してて助かりそうになかった。その時親父は言ったんだ

「すまねぇな裕太、お前とお母さんを…支えてやることが出来なくて…なぁ裕太、最後に伝えたいことがあるんだ。俺が死んで、お前が今の俺と同じ歳になったら…奥さんと子供を連れて、墓参りに来てくれ。お母さんと一緒に、お前を待ってるからな…もう、長くはないな…裕太、お前がトドメをさしてくれ…どうせ死ぬなら、お前にやられるのが良い…愛してるよ、裕太……」

ってね。その後俺は拳銃で親父の眉間を撃ち抜いた。いや、本当はどこを撃ったかは分からない。涙で良くは見えなかったからな。でも、最期の親父の安らかな寝顔だけは、今でも良く覚えてるよ。

 

(…………)

 

黙らないでくれよ。今じゃ懐かしい思い出話さ。

さぁ、デュノアさんの話が終わったみたいだし、入ろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

大浴場。織斑君とすれ違いで入っているため、人はいない。

さっき辛気臭い話をしたせいであまり気分が上向かなかったが、やはり温泉は人の心を溶かしてくれる。底冷えしていた心の暖炉に火が灯り、こびりついていた氷も解けていく。

本来若くピチピチなJK、それもIS学園の美少女達が入っているこのお風呂に浸かれるというのは男にとってこれ以上ない幸福だ。

俺は思わず口を湯船に沈める。

 

(……アナタ?)

 

いやいやマリーダさん、お湯を飲もうなんて思ってないよ?だってさっき織斑君が入ったんだからね。

 

(……女子の入った直後なら?)

 

……やってたかも、しれないっす……

 

そんなやりとりをしつつゆっくりと体を温める。ずっとアリーナのシャワーばかりだと身体を温めることが出来ないため、調整してくれた山田先生には感謝感激雨霰だ。

因みにマリーダの宿るラファールの待機状態は腕時計なのだが、ISの待機状態は完全防水らしいので一緒に風呂に入っても大丈夫らしい。流石に体を洗う時は外したが。

そして何故マリーダの待機状態が腕時計なのかは、俺が寝坊したり遅刻しないようにするためらしい。実際ずっと寝ているとマリーダが頭の中に直接大声でモーニングコールをしてくれる。前世でもあった光景を再現するために腕時計にしたそうだ。

 

しかしそんな孤独な空間にガラガラという音が鳴る。今は男onlyで、さっき織斑君は出ていったから十蔵だろうか?

 

(いいえ…違うみたいよ)

 

俺はマリーダにそう言われてクルッと振り返る。

アメジスト色の瞳に長く下ろされた金髪。豊かで美しい形の乳房とキュッと引き締まったウエスト、それでいて男を誘うように出っ張ったヒップ。

 

「お邪魔しまーす…」

 

「デュノア…さん?」

 

(…痴女め)

 

何か恐ろしい声が腕時計から聞こえた気がするが、今はそんな余裕はない。まさかの男装美少女の男風呂特攻。

 

(股間のビームライフルが装填されているのは何故かしら)

 

いや、これはその…ね?

 

(ハァ…)

 

滾ってしまった我がムスコを右足で上手く隠してデュノアさんから見えなくする。ただ、自慢ではないがそれなりに大きいほうであるため全部隠せているかは微妙だ。

そんな下半身事情を勘づかせないようにいつも通りの真顔で風呂の壁に寄りかかって座る。

 

「シャルロットで良いよ。僕のこと」

 

「そうか…でも長いな…シャルロット…シャル、シャルでどうだ」

 

「シャル、シャルかぁ…良い!!ね、僕も星川さんのこと裕太って呼んで良い?」

 

「あぁ、構わんよ」

 

「エヘヘ、ありがとう」

 

その後暫し沈黙が流れる。しかしシャルが俺に体を横にくっつけているせいで俺のビームライフルが発射させろと、隣に良い射撃場があるではないかと訴えかけて来る。正直それなりに大きい乳房にかなり男好きのするような身体付きのシャルに襲い掛かりたい気持ちはある。隠していないピンク色の突起にむしゃぶりつきたい衝動をなんとか抑えて遠くにある桶を頑張って見続ける。そうでなければ彼女の体を視姦してしまいそうだからだ。

 

(溜まってるわねぇ…でもダメよ)

 

う〜〜〜〜〜…マリーダ、何とかISから出てこれないかなぁ…

 

「裕太」

 

「なんだ?」

 

そんなピンク一色な心とは真逆にポーカーフェイスを保ったままの俺を褒めて欲しい。

しかしそんな俺を更に虐めるように、シャルはその発展途上でありながら豊満な体で俺に抱きつく。

 

「僕ね、このままフランスの代表候補生のままで、女として、デュノア家の家族としてIS学園に通えるようになったよ」

 

「…知ってるぞ。さっき学園長室で話してたじゃないか」

 

「うん…でもね、そのキッカケをくれたのは裕太だよ。本当にありがとうね」

 

「俺は何もやってないさ」

 

「ううん、楯無さんから聞いたよ。色々どんな情報を仕入れば良いかとか、社内が怪しいんじゃないかとか言ったのは全部裕太だったって。僕は犯罪者じゃないって1番擁護してくれたのは裕太だったって。それ聞いて凄く嬉しかった。ホント、本当にありがとう…」

 

「どういたしまして…」

 

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!

暴発しそう!!

 

「ありがとう、僕のナイト様……」

 

(…アナタこれでIS学園に来て何人目?)

 

分からない、分からないし…今はマジでヤバい。野獣化寸前だわ。

 

「そ、そうか…じゃ、じゃあ俺は出るからな。ゆっくり浸かるんだぞ!」

 

一目散に逃げるように更衣室に戻る俺。情けないとは思うが、これ以上シャルの横にいたら理性が保たなかった。仕方ない、仕方ないのだ。

 

 

逆に逃げられてしまったシャルだが、シャルはシャルでバッチリと見てしまった。

 

「さっきのって、そ、その…p○nisだよね…大きかったな…って、何考えてるのさ僕!!…でも、お礼って言って僕が処理してあげても……えへへ、えへへへへへへ……」

 

星川裕太、シャルロット・デュノア。この夜は中々寝付けなかったのは間違いない。のちに2人はこう語る。あれほど悶々とした夜は後にも先にも無い、と。




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IS関係者はチョロい(フラグ)
お気づきでしょうか、ヒロインまだ全員は出ていません。つまりこれからも怒涛の勢いでヒロインが増えるってことですね。大変だね、主人公君。
そして私も一人ひとりどうやって攻略させるかに悩み中。同じような内容になりがちなISヒロインの攻略をどうするか……ホント、悩みます。
女性はどういう風に恋に落ちるのか。わからねぇ……

それにしても豪華な寮に皆んな住んでるのに主人公だけ豚小屋みたいなところ……可哀想。
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