ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。 作:ゆかなおっぱい
戦闘描写…すくねぇ…すまねぇ…
昼休みの屋上。芝生があって景色も良く、梅雨にしては珍しい快晴も相まってピクニック気分で昼食を取れる場所として俺の中では結構評価を上げているこの場所。海風に吹かれながら1人で食べる飯はいつも美味しい。1人の時間は大事だ。
と言いたかったが……
「人数多くね」
「まぁまぁ、賑わいがあっていいじゃん」
パシパシとグリに背中を叩かれる。グリ以外にもベル、ティナ、たっちゃん、本音、虚、レイン、フォルテ、セシリア、シャル、箒、マドカといつものメンバーが勢揃いしている。あまり人気がなくいつも空いているこの屋上も随分と華やかになったものだ。
今日はそれぞれが弁当を持参している。俺が昨日偶には1人で飯を食おうと弁当を用意してここで食ったら、今ここにいる皆んなに怒られてしまった。大所帯になったため、食堂の1テーブルじゃ収まりきらなくなったので自分だけでもいなくなれば良いかなあなどと思ったが、そうは問屋が卸さない。全員の激しい抗議に謝罪するハメになってしまった。
(そう言いつつ、アナタだって昨日少し寂しいって言ってたじゃない)
…まぁ、いつもの賑わいがいきなり無くなると悲しいもんだよ。
「いやぁ、ベルの作ってくれたお弁当美味しい〜!今までこうすれば良かったなぁ」
「あのねぇ…今までも夕食は私が作ってあげてたでしょう。子供が出来ちゃったみたいだわ」
グリが食べているのはベルお手製のギリシャ料理弁当。茹でた野菜にレモンとオリーブをかけたサラダのホルタに、オリーブオイルで炒めたジャガイモを並べてその上にトマトソースとナスと挽肉を何層にも重ね、ホワイトソースをかけて焼き上げられたムサカが入っている。しかしグリはベルより2倍くらいはありそうな量を食べているのでビックリだ。
同じく郷土料理を作ってきたのはシャル。夏野菜をふんだんにつかった煮込み料理のラタトゥイユと何枚かにスライスされたフランスパンを弁当箱につめてきたようで、美味しそうに食べている。
箒ちゃんは自慢だという唐揚げ弁当。日本ではお馴染みのこの唐揚げ弁当は箒ちゃんの得意料理らしく、この前一回食べさせて貰った時は非常においしかった。
布仏姉妹とたっちゃんは基本的には箒ちゃんのと同じようにオーソドックスな日本の弁当で、サラダにだし巻き卵にご飯に筑前煮と定番料理が並んでいる。やはり種類の豊富さでいえば日本の弁当は流石だ。
一方、レインとフォルテとマドカは購買で買ったハンバーガーやらホットドックやらサンドイッチ。まぁ分かってはいたが、この3人は料理が出来ないらしい。
そしてあのご飯があまり美味しくない国の代表候補生のセシリアはというと……
「裕太さん!私頑張って裕太さんのためにサンドイッチを作って来ましたの!!お一つどうぞ」
「お、セシリアも作ってきたか」
そういって差し出されたバスケットからサンドイッチを一つ摘んで口に運ぼうとする。そのサンドイッチが鼻の手前まで来た時だった。
「ん?」
俺は開けていた口を閉じてサンドイッチの匂いを嗅ぐ。少し犬っぽくて行儀が悪くなってしまうが、そこは勘弁。
「裕太さん……?」
「どうしたんだよ…」
セシリアや皆んなの不安な目線を一身に集める。俺はサンドイッチを持っていた手を下ろしてセシリアに顔を向けた。
「セシリア、君このサンドイッチから君がいつもつけている香水の匂いがしたんだけど……まさか、振りかけてないよね?」
「えぇ、香りが不十分だったので少々かけましたが……それがどうかしたんですの?」
場が凍る。まさかセシリアがここまで非常識だったとは、皆んな思ってもいなかった。食べ物に香水を振りけるなど、誰も思いつきはしない。これを食べそうになったことに背筋が冷たくなる。
「セシリア、貴女正気?香水は食べ物じゃないのよ?」
「え、えぇ!?そうなんですの!?」
「アホだな」
ベルとマドカの鋭い一言がセシリアに突き刺さる。うぅ、と涙を少し目尻に溜めて俯くセシリアに、誰も声をかけられない。かける言葉が見つからないと言ったところか。
(アナタ、ご飯分けてあげたら?)
そうだねぇ。多めに作ってきたし、そうしよう。
「セシリア、まぁ落ち込むなよ。最初は誰だって間違いはあるさ。ホラ、もうこれは食べられないから、代わりに俺の焼きそばをお食べ」
そう言って俺はまだ未開封だった大きなタッパーとお箸を渡す。セシリアに見えないように彼女のバスケットもこっちに寄せる。
「いえ、裕太さんのご飯を貰うわけにはいきませんわ。それに今日はお昼ご飯を抜けば良いので」
「いいから。昼飯はキチンと食べないと午後の活動に支障をきたすよ」
そういって俺は少し強引にセシリアの手に俺のタッパーを持たせる。
持たせる時に少し耳打ちをして、コソッと放課後に俺の部屋に来るように伝える。
するとハッと顔を硬直した後、柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!裕太さん!」
そう言ってパクパクと食べ始める。最初は箸を使うのに苦労していたセシリアだが、本人の努力によって今はかなり綺麗に動かすことが出来ている。焼きそばは俺はズルズルと汚い食べ方をしがちなのだが、セシリアは流石お嬢様というべきかレストランでスパゲッティを食べているかのような静かさと丁寧さで食べ進めている。
(でもアナタ、このゲテモノどうするの?一応アナタにセシリアちゃんが作ってきてくれたものでしょ?)
……現実逃避させてよ。そうだなぁ……
そうやって悩んでいる俺に救世主が現れる。メガネをかけた短めのサイドテールの女生徒で、リボンの色は黄色。そして腕には「新聞部」と書かれた腕章をつけている。
「お、情報通り!はじめましてー、新聞部部長の黛薫子でーす!2人目の男性IS操縦者の星川裕太さんにインタビューにきました!!」
彼女に向かってたっちゃんが笑顔で手を振る。知り合いだろうか。
「ヤッホー、薫子ちゃん」
「やっほーたっちゃん。星川さん、取材受けてくれますか?」
唐突にやってきた記者。普段ならアポを取ってくれと言うだろうが、今日は事情が違う。仕方ないので受けることにする。
「ん、構わないよ」
(アナタも当初に比べて柔らかくなったわね)
まぁ、IS学園の雰囲気に慣れてきたからね。
「じゃあ、一つ目!!IS学園に来てもう二ヶ月が経ちますが、慣れましたか?」
「あー。一応慣れたと言えるかな。まだ神経を尖らせなきゃいけないときもあるけど、良い友人にも恵まれて最近は楽しめてるよ」
「おぉ、それは良かったです!!」
笑みを浮かべながらせっせと手帳にメモをとっていく黛さん。それと真逆に周りのみんなは友達か、などと神妙な面持ちで呟いている。恨めしそうな視線を貰いつつ、取材を受け続ける。
「じゃあ次の質問です。最近メキメキと頭角を表している星川さんですが、織斑君との間で何かライバル意識とかはありますか?」
これは中々難しい質問だ。正直ないと言っても過言ではないが、織斑君が俺に対して負けないぞ、といった気持ちを持っているのは知っている。そして俺自身も彼には負けたくはないという気持ちがあるのはあるのだ。しかし意味合いが違う。ライバル意識というより格下に負けるわけにはいかない的な感じだ。
それでも取材、それも校内でも屈指の情報拡散力を誇る新聞部の『IS タイムズ』にそれなりの記事を提供してあげたいなとも思うのだが……
(「心に従え。」アナタが私に言った言葉よ。変な気遣いじゃなくてありのままの自分でいなさいな)
それもそうだね。ありがとう。
「んー。正直織斑君とはあまりそういうのは無いかな。練習を一緒にしないからか、そういったライバル意識は持たないね」
今度はふーん、といった感じに微妙な反応をされる。黛さん的には織斑君と俺とでライバル関係!!みたいな記事で見出しにしたかったのだろうが、少し態度が露骨だな。
その後も学校生活やら日常、スポーツやらと当たり障りのない会話を続ける。
そして唐突に彼女の目が光った。ギュッと手帳とペンを強く握る。
「では次の質問…ズバリ、好きな女性、彼女にしたい人のタイプは!?」
その質問を聞いて、今までも熱心に傍聴していたヒロインズはより聞き耳を立て、目をギラつかせる。いつも目を細めている本音が大きく開いて星川を見つめていると言えば、その程度が分かるだろう。もう隠す気など無いのではないかと思える行動だが、これでも彼女達はさりげなく恋心をアピールしているつもりなのだ。
(私も気になるわね〜)
オイオイ、そんな大層なことは言わないよ。期待すんな。
「そうだなぁ……ある程度一般常識を持ち合わせてて、人のことを思いやることのできる人かな」
(面白くない)
えぇ……マリーダに言われたくは無かったなぁ……
「へぇ、これまた随分とあっさりしてますね。中学の時に同級生の男子に質問した時は髪型はこうだとか、胸やら顔やらがとか色々条件を言ってたんですけど」
「これじゃなきゃダメ!って要素を作ったら勿体ないじゃないか。色んな人がいて、それぞれに魅力があって。人ってそういうものだし、恋愛ってその魅力に惹かれてするものだろ?初めからそんな条件付けて絞ってたらそんな魅力も見えてこないさ」
(………)
「「………」」
マリーダ含めたその場にいた女性陣が全員黙る。何か変なことを言ってしまったかと少し焦る。
「え、俺なんか変なこと言ったか?」
「いえ…その、思ってた以上に大人な回答がきたので……」
「そそそその、裕太は実は結構、その…」
「…恋愛経験、豊富なのかしら?」
シャルとベルが恐る恐る聞いてくる。その場にいる全員がゴクリと喉を鳴らし、前屈みになって注目する。何せこの場の少女達全員の恋愛経験は合計で0、なんならIS学園内の全員を合わせても大した数はいかない。まだまだ若い生徒達は女子しかいない寮での高校生活、教師達はそれぞれ華々しい経歴を持っているがそのハイスペックさとIS関係者という肩書に加えて立場の高さゆえに殆どが男とは無縁な生活をしてきている。IS関係の女性というのは総じて同性愛が多く未婚ばっかりなのは必然的だったりするのだ。
それ故恋バナには人一倍興味がある。
「さぁ、どうだろうね」
皆飄々と肩をすくめて話そうとしない俺に心をやきもきさせる。全員想い人の恋愛事情は気になって仕方ない。
(で、ホントの所は?)
マリーダに会う前か。片想いは中学生の時に一回。彼女は一年戦争末期にちょっとだけのが1人、ハマーン様で2人目。でも経験人数はこれにプラスで1人。
(大したことないじゃないの。あとそのプラス1人って何よ)
……0093の時に、何回か。その人には彼氏…というかまぁ、男がいたんだけど、その人の愚痴を聞いた時に誘われてその勢いで……
(フーン…私がいた時はしてないでしょうねぇ?)
一切してないよ。君を心の底から愛していたからね。
そんなやり取りが聞こえないIS学園女性陣には俺は恋愛経験豊富な男と受け止められてしまい、黛さんはこれは話題になるわよ〜などと呟きながらペンを走らせる。
「あ、そうそう。これも聞いとかなきゃいけないんだった。これは1年生のみんなに聞きたいんだけど、来週の学年別タッグマッチトーナメントは誰と出るの?」
先日公示され、1年は辞退者以外基本全員参加のタッグマッチ、2年と3年は操縦課のみで個人戦が行われるIS学園恒例の6月の学内大会。すっかり忘れていた。
皆んなの期待の眼差しが向けられ、少し萎縮しながらも冷静になって考える。
「そうだなぁ…ティナ、俺と組まないか?」
「えっ、私!?」
正直選ばれないかもしれないなと考えていたティナはビックリし、嬉しさと恥ずかしさで赤面する。いつも堂々としている彼女の態度からは少し違った、少女な可愛さに少し魅入ってしまう。
「んなっ!?」
「裕太さん!!私と組めば優勝は確実ですわ!!なぜ選んでくれないのですか!!」
「私と組めば学園最強になれたのに……」
「うーん、私は出ないから関係ないけど、てぃーちゃんを選んだ理由は知りたいな〜」
「そ、そうだよ!!理由は!?」
「それは気になりますね」
1年以外も含めた全員から接近され、浮気を咎められるかのような体制になりつつ弁解する。
「ティナは俺との相性が良いからな。ホラ、俺って結構近・中・遠距離を自由に飛び回るタイプだろ?その時に同じタイプのティナはやりやすいんだよ。セシリアやマドカは遠距離タイプだし、箒ちゃんは完全近距離型。本音はそもそも出ないし、シャルはまだ俺との連携練習はしたことないから厳しいだろ?それでこの中で1番一緒にやってきた期間も長くてタイプ相性も良いティナが良いなって思ったんだ」
その説明を聞いて年上組はほぉ、と感心。セシリアとマドカと箒ちゃんはクッ、と唸るが理由が理由なため引き下がる。シャルはもっと早く入学してたらなぁ、などとボソッと呟いていた。
「それでどうだ、ティナ。俺と組んでくれるか?」
ティナは一旦頬に当てていた両手を胸に置いて、まだ赤い顔に満面の笑みを浮かべて頷く。普段大人っぽい彼女の恋する少女らしい笑顔に皆見惚れる。
「えぇ!!」
ーーーーー
1年生タッグマッチ当日。第一アリーナを使って一週間にわたり行われるこのビッグイベントは世界中の注目を集める大イベント。それも今年は各国代表候補生が多く、その他にも粒揃いと評判の代である今の1年生は例年に無い盛り上がりを見せている。その中でなんと言っても最注目は男性IS操縦者、初代ブリュンヒルデの弟の織斑一夏君だ。生き別れの妹マドカとの再会は瞬く間に世界中に拡散され、御涙頂戴の感動エピソードとしてさらに織斑一家を神格化している。その脇を固める代表候補生達に加え優秀な学年、盛り上がらない訳も無くアリーナにはVIP席に世界中の有力政治家やIS産業のスポンサー等が勢揃いし、一般席にはカメラが所狭しと構えられメディア含め無数のレンズがフィールドを囲んでいる。
そんな中でも注目対戦カードはまさかまさかの初戦、俺&ティナ、ボーデヴィッヒさん&織斑君の直接対決。ドイツ代表候補生にブリュンヒルデの弟にアメリカのトッププロスペクト、ついでに2人目の男のIS乗り。事前予想では俺が足を引っ張ってティナが活躍できず、天才IS操縦者と同じ血を引く織斑君とドイツ軍の第三世代機を駆る代表候補生が圧勝するとの見立てがテレビでは報道されている。
そしてそれは、遠く離れた異国の地でも報道されている。太平洋を挟んだ向こう側、アメリカの軍の基地の中にあるテレビを食い入る様に見る2人の金髪美女。1人は長く少しウェーブのかかった緩い金髪に穏やかな性格が滲み出ている可愛らしさと綺麗さが融合したような美顔の女性、もう1人はボブカットの金髪に勝気でカッコいいと表現されるようなこれまた美人。
『いやぁ、我がアメリカのハミルトンさんは可哀想ですね〜。何せ2人目の男などと組まされて。8月の世界共通新規代表候補生任命式に向けた絶好のアピール機会を奪われるなんて、なんと悲劇的なことでしょうか。無理だとは思いますが、ポッと出の男風情には足手纏いにならないことだけを期待したいですね』
テレビの女の実況者の発言など耳に入っていない彼女達は、夢中で話をしている。
「へぇ、アタイが注目してるあのティナは2人目と組んだのか。相変わらず変わってんなぁ」
「2年前私が卒業した時と変わらないアリーナねぇ。でも、今年は面白くなりそう。今まで見てきた男なんかとは違うところを星川裕太君には期待したいわねぇ」
「オイオイ、お前まだ男に拘ってんのか?今の時代強いのは女なんだ、アタイは男なんか眼中に無いね」
「そう?…まぁ私もそう言いつつ私のメガネにかなうような男を見つけられて無いから未だに処女なんだけど。…でも、レインちゃんからは星川裕太君は凄い絶賛してたし気になるなぁ」
また、さらに離れたオランダの大きな軍の施設では、大型のテレビの前にあるソファに銀髪ショートヘアの中性的な顔立ちの美人が、腕に可愛らしい少女を腕に抱いて座っていた。
「ねぇ〜ロラン様、本当に9月にはIS学園に行かれるのですか?」
「あぁ、まだ見ぬ100人目の薔薇が私を待っているからね。迎えに行ってあげなくちゃ」
銀髪の美人は自身の発言を聞いて少女がギリっと歯軋りをするのを見て、少女から見えないように少しため息を吐き、もう一度画面に注目し直す。
その画面にはラファールの改修機に乗る精悍な顔つきの大柄な男が写っていた。
『初戦から貴様と当たるとはな。私も運が良い。相方がコレなのは非常に腹立たしいが、まずは貴様から倒させてもらうぞ』
『コレって言うなよ!…星川さん、前の俺とは違いますよ』
俺の目の前には犬猿の仲であることが容易にわかるような男女が1ペア。それぞれ専用機を纏って空中に浮いている。
(随分と意識されてるわねぇ。それに観客席の方には2年生3年生のご友人が期待の眼差しを向けてますよ)
嬉しいことだね。モビルスーツじゃ殺気しか向けられないんだから、こういう感覚もまた新鮮で楽しいよ。尤も、VIP席やら大部分の観客席からは冷めた目線しかないけどね。まぁ殺気もそれほどじゃないし、なんなら命を取り合う戦いじゃないからなぁ。その点ではちょっと面白くないかもね。
(もう…ちゃんと集中してよ?)
ハイハイ。分かってますよ。
ボーデヴィッヒさんにも織斑君にも返事はせず、ティナと個人回線で少し作戦の確認をした後、俺は斜め上に顔を向けて空中を見上げる。
あの時と同じ、視界いっぱいの澄み切った空色とそこに水滴が飛び散ったように点在する白い雲。この光景はどの世界でも、地球上ならどこでも変わらない、日常の風景。そんな風景すらも100万ドルもの価値があるようにさえ思えるほど、俺の心は晴れやかだ。
そんな俺を他所に、アリーナ中のスピーカーとラファールの音声装置から山田先生の真剣な声が聞こえてくる。
『3、2、1、試合開始!!』
その声と共に、4人同時にスラスター全開でそれぞれの方向に飛びかかった。織斑君、ボーデヴィッヒさんは俺に向けて。そしてティナはボーデヴィッヒさんに向けて。そして俺は、上空へ。
『へ?』
そんなポカンと半開きになった口から発した織斑君の間抜けな声は、コレを見ている全世界の人々を代表している。
(やっておしまい!!)
「ハイよ。ソラっ!!」
空中でPICを切り、重力とスラスターの推力で一気に加速、それに一回転を加えた上で、踵を織斑君の肩に落とす。顔を狙うと後で非難されそうだったので、それだけはやめとく。
『ウワァァァァァァァ!!!!』
織斑君の断末魔と共に、アリーナの地面から大きな砂埃が舞う。金属が土に衝突する音が響き、この場にいた全員、いや放送を見ていたテレビの前の人達の目が一瞬閉じる。目を開いた後も、所詮2人目と高をくくっていた男のあまりにも痛々しい一撃に、皆動揺する。
そんな中、ティナとボーデヴィッヒさんはというと
『クッ、離れろ!!』
『嫌よ』
ティナがボーデヴィッヒさんに突撃し続けているせいで、ボーデヴィッヒさんはAICを切るにも切れず、ずっとボーデヴィッヒさんが右手を前にかざし、その前でティナが止まっているというとてもシュールな光景だ。
俺達は2人とも自由に動き回りながら銃で攻撃を加えていくタイプということで、お互いカバーし合いながら縦横無尽な銃撃で敵を翻弄していく作戦を取るだろうと予想されていたのだが、実際はティナでボーデヴィッヒさんを妨害し、その隙に直接織斑君を俺が落とす作戦だったのだ。
メディアはブリュンヒルデの弟ということで、織斑君は接近戦で姉譲りの無敵さを見せるだろうと予想していただけに、今の状況に実況は言葉が出ない。それは視聴者も同じだ。
しかしそんな世間を置いて戦況は一気に動く。俺が斧を取り出し、織斑君に近づく。虚によって黒く塗装されたラファールに乗り、本音に入れてもらった巨大なヒートホークに似た斧を振りかざす俺はまさに悪党。白い騎士のような見た目の白式に乗って、あのブリュンヒルデの武器である雪片弍型で必死の抵抗を見せる織斑君と俺との構図は見ている者に正義の味方が悪の権化に圧倒されるという鬱アニメの如き不快さを与える。実際アリーナは静まりかえっている。
『クゥ…クッソォ!』
(鬼畜ね。まあその扱きがあったから私は生き延びれたのだけれど…織斑君には少し刺激が強すぎるんじゃない?)
そうかなぁ。シャア先輩の方がキツかったよ、マジで。俺これでも手を抜いてあげてるんだから。ホラ、蹴りもタックルも混ぜてないでしょ?
(……管制室の織斑先生も山田先生も苦笑いしてるけどね。)
そんなマリーダとアリーナに少しモチベーションを下げられ、そこに少し隙が出来てしまった。
『そこだっ!』
白式のワンオフアビリティである零落白夜の一撃が、肩を掠る。その一撃に1000あったシールドエネルギーは一気に120も減る。そのゲージの減りにもう一度気を引き締めて俺は少し本気を出すことにする。
一撃を入れて調子に乗った織斑君は続けてもう一振り大きな一撃をお見舞いしてくるがそれを斧で受けて鍔迫り合い、それを持ち前の筋力で押し返して直後にスラスターを吹かして強烈な蹴りを腹部に放つ。
吹き飛ばした織斑君に間髪いれず、グレネードを三個同時に投げて大爆発、ここで織斑君のシールドエネルギーを全て削り切った。
『な、ななななんと!!2人目の方が織斑一夏君の、あのブリュンヒルデの弟のシールドエネルギーを0にしました!!圧巻、圧巻です!!』
そんな実況に、乾いた笑いしか出ない金髪美女ペアと、銀髪の宝塚風美人。
「ハハハハ…何者だよ、星川ってのは……」
「凄い…レインから聞いた話は誇張じゃなかったのね……」
「男…フフフ、まさかこの私が男に惹かれるなんて……」
「さぁ、ボーデヴィッヒさん。今度は君を甚振る番だぜ?」
『クッソ…』
俺はボーデヴィッヒさんの後ろに回り今度こそアサルトライフルで銃撃。それを受けてAICを解除して俺の方に向き、右肩のレールカノンを連発する。
『コッチも忘れないでよ!!』
『グゥ…』
するとティナが今度は背後を取る形となり、ブレードで背中に大きな一撃を加える。そしてそれに対応するためプラズマ手刀で鍔迫るものの、今度は俺からの銃弾を斜め後ろから大量に浴びてしまう。本来こうすると流れ弾がティナの方にも当たってしまうものだが、そこは何度も一緒に訓練してきた間柄。ティナは俺を信頼しているからこそ俺が発砲している中鍔迫り合いでボーデヴィッヒさんの至近距離にいられる。
そのあとはこれの繰り返し。俺が接近してティナがその斜め後ろから砲撃、ティナと俺とで反対方向から撃ち続けたりと全く反撃をさせない。
しかし、そんな状況がボーデヴィッヒさんの専用機のシュバルツェア・レーゲンの中に眠っていたものを呼び覚ましてしまった。
『グアアアアアアアアアアアアア!!!』
ボーデヴィッヒさんの断末魔と共に、シュバルツェア・レーゲンが鈍く発光、ドロドロとした何かがボーデヴィッヒさんごと機体を飲み込む。
(……ヴァルキリー・トレース・システム。通称VTSとも言われる禁忌の技術よ。…まさかあの娘の機体に搭載されてたなんて…)
ドロドロとしたその何かはやがて形をつくっていく。
「あれは…ヴァルキリー時代の織斑先生?」
結構大事な話なのですが、蘭ちゃんと乱音ちゃんは一夏のヒロインにしようかなと思い始めたんですけどどうですか?割とマジで蘭と主人公の接点ないし乱音は鈴と一緒のが良いなぁって思いが少なからずあるので。
セシリアの料理は料理ではない。あれは兵器だ。
セシリアとの料理教室編はどこかで、番外編にでも書きます。とりあえず本編を急ぎたいので。
皆さんの好きな女性なタイプは何でしょうか。私は書いた通りです。