ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。   作:ゆかなおっぱい

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忙しくて中々投稿出来ずすいません。

色々ヒロイン数を数えていたら32人になりました。これからも増えるかもしれないです()。
多分このハーメルンの単一原作の二次創作としては最多のヒロイン数になるのではないでしょうか。知らんけど。(確実に多い方ではありそうですね)


決着

ドロドロと変形していった装甲はやがて形を成していき、かつてモンドグロッソで優勝した織斑先生の専用機、暮桜を纏った時の姿とそっくりになった。鈍く輝く黒鉄の禍々しい顔が俺の方を向く。

 

(ヴァルキリー・トレース・システムはその名の通り過去にモンド・グロッソでヴァルキリーになったことのあるIS操縦者の動きを強制的にその使用者に課すシステム。ラウラちゃんの場合は織斑先生ね。ただ、ISでもトップクラスの実力者の動きを自分の意思とは関係なくさせられるものだから身体にかかる影響は計り知れない。現に死亡者も出ていたから禁忌のIS技術の一つね)

 

そんな物騒な……よくドイツもこんなのを搭載したもんだ。

ただ、今の話を聞く限り出来るだけ早く助けてやらないといけなさそうだな。

 

俺が偽織斑先生と対峙し、グッとライフルを構え直した時だった。

 

「アイツ!!俺がぶっ飛ばしてやる!!」

 

視界の隅に血相を変えて生身のまま偽織斑先生に突っ込む織斑君。もう他のことは何も頭に無いのだろう。

 

『ちょっと、待ちなさい!!』

 

気を利かせてくれたティナが纏っているラファールの腕部を上手く使って織斑君を羽交い締めにして食い止める。

 

「離してくれハミルトンさん!!千冬姉の真似しやがって……一発ぶん殴らなきゃ気がすまねぇ!!」

 

「落ち着いて織斑君!!今の君じゃ怪我するだけよ!!」

 

ティナが暴れる織斑君を抑えながらアイコンタクトで俺に早く倒してくれと伝えてくる。

 

これ以上はボーデヴィッヒさんの命に関わるかもしれないし、早くしなきゃな。

 

(これ以上はラウラちゃんの命も危険域に入ってくるわ。おそらく弱点は心臓部、暮桜は第一世代機だから基本的に装甲は硬めだけど、胸部に少し薄くなってる部分があるの)

 

オーケー、マリーダ。じゃあ……はじめよう!!

 

俺は勢い良く偽暮桜に斬りかかり、鍔迫り合いの衝撃波で少し砂嵐が舞う。

 

『おい星川!!今のラウラは危険すぎる!離れてくれ!お前まで…お前まで失いたくはない!』

 

「織斑先生……俺は貴女にラウラを任された身です。……大丈夫ですよ、俺もボーデヴィッヒさんも無事に貴女の元へ帰ってきますから」

 

そう返答したが、これ以上は他のことに意識を割けなくなる。偽織斑先生の攻撃が激しさを増してきた。

 

暮桜の主武装、雪片の斬撃が俺のブレードにのしかかり、後ろに少しよろける。その隙を逃してくれるはずも無く、燕返しで右下から斬り上げられて大きくシールドエネルギーを失う。

 

しかしそこでやられる俺ではない。バックステップで次の横斬りを寸でのところで回避してスラスターを活かし距離を取る。

そこで大型ライフルを取り出して3発連射。肩に1発、胸に2発当てたが相手は倒れない。寧ろそのまま突撃されてライフルを斬られてしまう。

 

「クッソ……随分と硬いな」

 

(大口径でこの程度……流石織斑先生のレプリカってところかしら……織斑君の雪片弍型が羨ましいわね)

 

そうも言ってられんよ……ないモノねだりは出来ないさ。

しょうがない、苦手だけど格闘戦で勝負をつけよう。

 

俺は少しでも身軽にするため肩部ユニットをパージ、ブレードを構える。

 

そこからは高速での立ち回り、鍔迫り合いの応酬だった。

偽織斑先生が斬りかかって俺が受け、俺が斬っては相手に阻まれ……

次第に周囲の観客も逃げるのを忘れて見入っていく。それはテレビでも同じだった。実況者も解説者も言葉を失い、只々俺と偽織斑先生の対決だけが全世界に流されていた。

 

そんな均衡を破ったのは俺だった。

偽織斑先生、いやボーデヴィッヒさんの癖を思い出した。

 

ボーデヴィッヒさんはそういえばAICに頼って防御では立ち止まる癖があったっけか。

 

(そうね。……ならそこを?)

 

まぁ、そうなるね。VTS作動中にその癖が出るかは分からないけど……やってみる価値はあるだろ。

 

俺は左手にグレネードを出して、右旋回中の偽織斑先生の軌道を読んで投げる。

それに反応した偽暮桜は一度立ち止まって腕をクロスし爆発に対処してしまう。

 

爆風がなくなる前に、俺は正面から突撃する。

 

(やっておしまい!!)

 

おうよ!

 

俺は砂塵の中から袈裟斬りをし、一気に偽暮桜の胸部を真っ二つにして中で昏睡状態にあったボーデヴィッヒさんを引っ張り出す。

俺の腕の中で、ボーデヴィッヒさんが目を覚ました。

 

「……星川、裕太……」

 

「起きたかい、ボーデヴィッヒさん」

 

砂埃が晴れ、全世界にお姫様抱っこで抱えられるボーデヴィッヒさんと抱えてる俺、鉄屑と化した偽暮桜が生中継される。

 

 

アメリカの基地では、試合を見終わった金髪美女2人が感心したように話し合っている。

 

「すごい……レプリカとはいえあのチフユを倒すなんて……」

 

「スゲェな……そういや織斑一夏と星川裕太は夏休みにこっちに来るんだよな?」

 

「えぇ、世界を周るらしいわね。目的は織斑君の勧誘でしょうけど……」

 

「こんなの見せられたら星川裕太の方が気になるよなぁ……上を説得したらアタイも戦えるかな」

 

「さぁ?やってみたら?」

 

 

そんなアメリカでの2人の会話とは対照的に、オランダで観戦していた2人、いや銀髪美女に抱かれている少女の方がヒスを起こしていて、その銀髪美女は少し困惑していた。

 

「なんで……なんで男に女が負けるわけ!?今の時代に男が女に楯突くなんて……!!」

 

「お、落ち着けよ……ハァ」

 

少女の男嫌いに辟易としながら、自身の目はずっとテレビに映る男に釘付けだった。もしかしたら今の女に囲まれた自分を変えるかもしれないと、テレビに映る男と9月から同じ学校に入ることに心を躍らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方になり、VTS事件によってほぼ全生徒、教員が自室に戻りIS学園が珍しく静かになっていた。

そんな時に1人で俺は病棟に続く道を歩いていた。そんな俺に後ろから金色のポニーテールを揺らして1人の女生徒が近づいてくる。

 

「裕太!!」

 

「ん、ティナか」

 

少し膝に手を置いて息を整えた後、若干潤んだ目で俺を見上げる。

 

「どこ行くの?」

 

「ボーデヴィッヒさんのお見舞い。さっき織斑先生から連絡があって、治療も終わったらしいからさ」

 

「そう」

 

そう言ってまた彼女は黙ってしまう。珍しくモジモジと言いづらそうにして目を泳がせている。

 

「何か言いたいことがあるのか?」

 

「うっ……あの、私とタッグを組んでくれてありがとう、って言いにきたの」

 

「俺からも、ありがとうな」

 

「いや、私……何もしなかったわよ?」

 

「いやいや、俺の奇策に付き合ってくれただけでも嬉しかったし、そもそもあのボーデヴィッヒさんの足止めを任せたのはティナの腕を信頼してのことだしさ。それにこの学園に来て最初の友人はティナだったから、ずっと感謝してるんだ、悲観しないでくれ」

 

俺のその言葉に不安が取れたのか、フフっと微笑んでいつも通りの自信有り気なティナの笑顔に戻る。

 

「そっか、ありがとう。いつか戦う時があったら、その時は負けないわ」

 

「そりゃ楽しみだ」

 

2人でハイタッチして別れる。

ティナは一度振り向いて裕太の方を再度見た。広いIS学園の敷地でも存在感がある、逞しい広い背中。あんな人と肩を並べて戦ったと思うと、とても幸福感がある。

 

「……これからもずっと、貴方の側にいたいな」

 

IS学園に強制的に入れられても、めげずにずっと努力し続ける彼に惹かれていくのは自覚してはいたが、これは認めざるを得ない。

自分は、恋をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

自動ドア特有の空気が抜ける音がして、扉が戸袋に入る。

保健室には幾らか医療用ベッドがあって、その中の一つにカーテンがかけられ、その奥から織斑先生の入れ、という声がする。

カーテンを少し開けて中に入ると、柔らかい表情なボーデヴィッヒさんと織斑先生がお互いベッドと椅子で向かい合っていた。

 

(アラ、随分と良い雰囲気じゃない?)

 

あぁ、仲直りしたみたいだね。今入るのは野暮だったかな。

 

「どうも……ボーデヴィッヒさんは元気そうで何よりです」

 

「フッ……あの程度で死ぬ私じゃない」

 

「お前のおかげで学校にも誰にも被害が出なかった。学園を代表して礼を言う、ありがとう」

 

「いえいえ。これ、差し入れです。織斑先生もどうぞ」

 

そう言って俺は先程購買部で買ったプリンを二つ、彼女達にプラスチックのスプーンと共に手渡す。

するとボーデヴィッヒさんは目を爛々と輝かせて笑顔になる。まるで子供だ。

 

「おぉ!!プリンではないか!」

 

「相変わらず気の利く男だ……ありがとう」

 

「喜んでもらえて何よりです。……それで、この後ボーデヴィッヒさんはどうなるんですか?」

 

「心配はいらない。学園側から全世界に向けて今回の事件を糾弾し、此方側に非はなく、ラウラは当分学園で保護することを発表するつもりだ。あの中継を見ていた人も、IS関係者もドイツの一部の関係者が悪いのは分かっているからな。ラウラには実害はない」

 

「そうですか、そりゃ良かったです」

 

そういうとラウラは意を決してグッとプリンのカップを握って俺を見上げる。

 

「ほ、星川!!」

 

「なんだ?」

 

「わ、私のことはラウラと、呼んでくれ……」

 

(可愛い……)

 

可愛い女の子に目がないマリーダは置いといて、俺も微笑ましい彼女に笑顔になる。

 

「あぁ。じゃあ、俺のことも裕太って呼んでくれ」

 

「う、うむ……裕太……」

 

「よろしく、ラウラ」

 

ラウラは恥ずかしさが限界を迎えたか、後はプリンを縮こまってちまちま食べる。

同じく甘い空気に耐えかねた織斑先生がわざとらしく咳を一つする。

 

「あー、ゴホン。……さっき理事長が呼んでたぞ、理事長室に行くといい……あ、あと…私のことも、学校以外なら千冬と呼んでも……」

 

次第に声が小さくなっていったが、俺の耳はハッキリと彼女の言葉を捉えていた。

 

(アララ……また言うけど、何人目?)

 

……もう数えてない。

 

「分かりました。千冬さん」

 

そう言ってササっと退出する。なんかこれ以上いたら彼女達の精神がもたなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

「で、何のようだよ十蔵」

 

「ハッハッハ、これはこれは大尉殿。いやぁ、明後日の記者会見に出て欲しかったもので、ついつい呼んでしまいました」

 

「ハァ……」

 

(ふぁいと〜)

 

投げやりなマリーダと相変わらずウザい元部下にほとほと呆れる。

仕方ない、糾弾会見、何話すかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タッグマッチ戦は一回戦のみの開催となって二日。これまで志願者の試合はスムーズに進み、今もアリーナには多くの客、お偉いさん、報道陣、生徒達が大勢いる。今頃夕方だし、最終戦あたりだろう。

しかし、試合をしていないアリーナの整備室は、殺伐とした空気が充満していた。

俺はたっちゃんに呼び出され来てみたら、見慣れない白衣の中年から成人したてくらいの女性達が数人いて、本音や虚といった整備科の生徒達、整備科の担当教員、簪さんと向き合っている。お互いに剣呑な雰囲気だ。

 

俺は側にいたたっちゃんに小声で話しかける。

 

「どうした?」

 

「来てくれたのね。あそこに立ってる人達は倉持技研の研究者達よ。打鉄弍式が完成したのをどこからか聞きつけて、これは倉持技研の管轄だって主張しにきたの!」

 

(……とんでもない連中ね)

 

あぁ……ロクでなし集団だな。

 

そんな小声で話していた俺を目敏く見つけた倉持技研の、恐らく所長かそれなりの役職もちであろう女性が挑発してきた。

 

「おやおやこれは、織斑一夏君のスペア君じゃない。ここは貴方のような下賤な男が入って良い場所じゃないわ。即刻この整備室から、いやIS学園から出ていきなさい!!」

 

(アラアラマァマァ、口のお悪いおばさんだこと)

 

酷いなぁ。下賤な、か。

 

「ちょっと、何か言いなさいよ」

 

不機嫌なのを全く隠さず、元からあった小皺が更に深まっている。俺は努めて笑顔を崩さずに話す。

 

「すいません。倉持技研の技術者様とお聞きしていましたので、よもやここまで口が汚いとは思いもしませんで、驚き呆れて声も出ませんでした」

 

俺の言葉にIS学園側の皆んなはププ、と小馬鹿にしたような笑い声をあげている。たっちゃんに至っては声は出さずとも壁をパシパシと叩いて腹を抱えている。

そんな俺たちを見て倉持技研の人達は大体が怒り心頭、という様子だが何人かは逆にリーダー格らしき女性に俺が口答えしたことに対してよくやった、と感心している者もいる。特に端っこに立っているグラマーな緑髪ツインテールの若い女性は他の人に見られていないのを自覚しているからかたっちゃんと同じような反応をしている。

 

「このっ!偶々適性があっただけの男風情が!!」

 

ズカズカと俺に歩み寄ってくる。俺の真前にくると襟を掴まれ引っ張られる。身長差を縮めるためか、と思うと少し可愛く思える。

 

「調子に乗るなよ、代替品。少し勝ってるからってな、お前が偉いわけじゃないんだ。身分の差を弁えろ」

 

「……だとしても、放置していた打鉄弍式が完成したら所有権を主張して回収だなんて、随分と汚いと思いますが?」

 

「ハン、それが大人の世界よ。良く覚えときなさい。それに実際権利上は倉持技研の所有よ」

 

(……なんでこのオバさんイキってるのかしら)

 

……さぁ?まぁでも、俺らは俺らでとっくに切り札は切ってるんだけどね。

 

「……そうですか。でも、それを世間は許してくれるとお思いですか?」

 

「は?」

 

「本音、テレビつけてみて」

 

「うん」

 

俺はさっきまで記者会見に出ていた。さて、これが意味することは?

そう、先制攻撃の暴露だ。

本音は整備室のドックにある薄型のパネルを操作して、地上波を映す。するとそこでやっていたのは、記者会見を纏めたニュース番組だった。

 

『倉持技研は男のIS操縦者である織斑一夏君の専用機、白式を優先して日本代表候補生の更識簪さんの専用機である打鉄弍式の開発を中断し、更識さんは一人で開発をせざるを得ない状況に追い込まれました。つまり、先程のラウラ・ボーデヴィッヒさんのVTSのような研究者のエゴイズムによって操縦者が被害を被ることは、世界中で起こりうる、それもこの日本でも実際にあることなのです。私は確かにIS業界に入ったのは今年になってからですが、これが非常に由々しきことであるということは分かります。それは皆さんも同じことでしょう。

我々は一度、この業界に蔓延る膿を出さなければならない時期にあるのではないでしょうか』

 

これが何を意味するかが分からない人間はここにはいない。倉持技研の人達は顔を青ざめ、明らかに動揺している。

 

「……何を、何をしてくれたの!?」

 

「別に、私は正論を話しただけですよ」

 

リーダー格の女性は鼻息を荒くし、鋭く俺を睨みつける。しかし何か隣の女性に耳打ちされてニヤリと顔を気持ち悪く歪ませた。

 

「残念ね、代替品。この倉持技研が打鉄弍式の開発をしていなかったという事実は正式なデータから消したわ。貴方が言ったのは事実無根の戯言よ、名誉毀損で訴えるわ!!」

 

取り巻きも含めて俺を軽蔑する彼女達に、内心俺も軽蔑する。その程度で事実が消せるとでも?

そう言おうとしたところ、意外なところから援護が入る。

 

「あ、それ消してないっすよ〜」

 

「……は?」

 

声の主は先程腹を抱えて笑っていた緑髪美女。口角を上げて笑う彼女はどこか織斑先生に似たような雰囲気を感じる。同い年くらいだろうし、もしかしたら面識もあるのではないだろうか。

 

「だから、公式のやつにもバッチリと打鉄弍式の開発は人員不足と所長のどうでも良いから白式のデータを解析しろっていう命令によって打ち切られ、管理権をIS学園に譲渡するって書いてまーす」

 

「こ〜の〜!!何やってるの!!」

 

今度は俺ではなく彼女の襟を掴む。

 

(動きが忙しいわね)

 

しかしそんなリーダー格のオバさんを無視して顔をズラして俺たちの方を見て手を振る。

 

「そういうわけだから、後はIS学園の皆んなで頑張れ〜〜」

 

その言葉に俺たちは歓喜し、また倉持技研の研究者達を教員が追い出そうとする。理由がなければ、IS学園にはいられないからね。

 

そんな中皆んなダッシュでアリーナに出て行き、簪さんと打鉄弍式も押し出して初飛行に行く。本音と虚も少し赤い貌で俺に微笑み、皆んなについていった。

 

「この、私達は倉持技研よ!?いくらIS学園の教員といってもこんな無礼は許せないわ!」

 

「ハイハイ、出ていってくださいね〜」

 

ジリ貧になる倉持技研の研究者達。しかしそこで気が狂ったか、先程のリーダー格のオバさんが整備室のドックの一つに置かれていたバールを掴み、緑髪美女に詰めよる。

 

「貴女のせいよ……貴女がいなければ……!!」

 

いきなりの展開について行けず、この場にいる殆どの人が動きを止めてしまう。たっちゃんも暗部ではあっても経験が少ないのだろう、口に手を当てて驚くだけだ。

 

(危ないわよ、彼女)

 

分かってる。展開してくれ。

 

(分かったわ)

 

大きくバールを振りかぶるオバさんに、皆んな目を覆ってしまう。人殺しの恐怖は、この場にいる女性達には刺激が強すぎるのだ。

俺は部分展開されたブースターで一気に加速、左手の装甲だけを展開してバールに当て、右腕で緑髪美女を抱え込む。

 

(……抱きしめる必要、ある?)

 

怒らないでマリーダ……一応だよ、一応。

 

鉄と鉄のぶつかる甲高い音が部屋中に響き、皆んな恐る恐る目を開ける。

 

「へ?」

 

「大丈夫ですか」

 

「う、うん……」

 

さっきまでの怖いもの知らずな態度から一転、彼女は頬を赤らめて俺に熱い視線を送る。逞しい腕で抱え込まれる構図に、幼い時に読んだお姫様の物語を思い出し、頭が沸騰したのだ。

 

「……ハッ、私は何を……」

 

自分が人を殺そうとした事実に、オバさんは自分の震える手を見つめたまま床に座り込む。あまりのショックに力が入らなさそうだ。

 

「……今のは俺のラファールの録画機能でバッチリと録画しています。然るべきところに提出するので、罪を償って下さい」

 

空気が一気に悪くなり、教員からの退出指示に今度は大人しく従って大人組は全員出て行ったことで整備室には俺とたっちゃんの二人きりになる。

 

「ありがとうね、いつもいつも」

 

「いや、やれることをやっただけだよ」

 

そう言うと彼女は顔を翳らせ、目線を床に向ける。

 

(あーあ、落ち込ませちゃった。ちゃんと励ましてあげなさい。)

 

はいよ。

 

「何落ち込んでるんだ。あの時、自分が動くべきだったなって、後悔してるのか?」

 

図星だろう、ビクッと大きく肩を震わせた。

 

「……良く分かったわね…そうよ、あの場面、暗部の長としては恐怖に打ち勝って救うべきだった。……でも、反応すら出来なかった……」

 

失格だわ、と今にも崩れそうなまでに目を強く瞑り、涙が一雫頬をつたう。

俺は彼女の本来の性格と同じように明るい水色の髪を撫でる。

そして同時に、こんなまだか弱い少女が暗部の長をやってることに同情する。

 

(ホント、なんで彼女なのかしら……)

 

さぁな……

 

撫で続けていると、涙を拭った彼女が俺の顔を見上げる。まだまだ可愛い、庇護欲の湧く顔。あまりの美しさにドキッとしたしまう。

 

「ねぇ、裕太……私ね、本当の名前があるの。……刀奈、更識刀奈。それが、私の本当の名前。日本刀の刀に、奈良の奈。どう?私にピッタリの武骨な名前でしょ?」

 

「そうか、刀奈か……お前にピッタリな、“可愛い”名前だ」

 

また刀奈は顔をさらに赤くして俯き、俺の胸に顔を埋める。

 

「ズルいよ……そんなこと言われたら私……」

 

ボソッと呟いたその言葉に、俺も自分が罪作りな男だなぁと自覚する。前世はこんなことなかったのになぁ。

 

(これじゃあシャア総帥のこと言えないわね)

 

あぁ、そうだね……

 

一度深呼吸して、刀奈は俺の顔を見上げる。

 

「本当の名前は家族にだけしか教えない名前なの、だから人前では今まで通りたっちゃんでお願いね」

 

「分かったよ」

 

そうは言いつつ、この言葉に込められた意味は大きい。刀奈の細めた目から感じる恋愛感情。それに、家族にしか教えない名前を教わった意味。

 

(大変ね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、非通知のメールが届いた。

開くとそこには

 

『今日は助けてくれてありがとう!!お陰様で生き延びれたし、今の所長達もいなくなって倉持技研も大きく変われそう!!次会った時はヒカルノって呼び捨てにしてね!君とは対等なタメ口で話せる関係を築きたいな!!

大好きだぜ!!      篝火ヒカルノ』

 

とあった。

 

(あの人、篝火ヒカルノって名前だったのね)

 

あぁ、珍しい名前だね。

 

返信をしようとしたら、もう一通届いた。

それを開くと、鏡に上半身を裸で写り、乳首の部分だけを人差し指で隠した篝火ヒカルノさんがあった。

 

(…………)

 

……デケェ。

 

 

 




前回色んな方からご意見を頂きまして、蘭ちゃんは一夏側、乱ちゃんは主人公側にそれぞれヒロインとすることにしました。ただもしかしたら蘭ちゃんはそもそも出さないかもしれないです。ご了承下さい。

最近ハンドレッドのクレア・ハーヴェイちゃんを久しぶりに見まして。良いですね、あのキャラ。なんかISに混ぜても同じような設定のメカなので良さそうな気がして来ました。もうヒロイン数バカ多いんで1人増えても良いのでは?…でも勝手に他作品キャラ入れるのもなぁ…って悩んでます。可愛い金髪(爆乳)キャラに目がない私です。
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