ジオン軍人がインフィニットストラトスの世界で生きる。   作:ゆかなおっぱい

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ちょっと文章変だと思います。すいません
次回からIS学園編です


1学期
幼き彼女たち


この世界に生まれて17年。それなりに平和な日々を過ごせていると言えるだろう。

ここは三浦半島、横須賀。生まれてこの方ずっとここに住んでいる。母は俺が生まれてすぐに亡くなってしまったそうだが、船乗りの父と2人で暮らしている。とは言っても父は船乗りなのでほとんど家にはいないが。

しかし決定的に前世と違うところがある。

 

IS。又の名をインフィニット・ストラトス。

5年前に白騎士事件が起こって以来、全世界を一気に変えてしまったパワードスーツ。篠ノ之束博士が若干14歳で作り上げたという“女性専用”のマシーンだ。従来の兵器を全て凌駕する程のオーバーテクノロジー兵器。元々は宇宙開発用だったらしいが、結局は機動兵器として普及した。

女性しか乗れないという性質、467機しかそのISの根幹であるコアを篠ノ之博士が配らなかったことが相まって今では女性優位社会の象徴かつ女性の憧れでもある。

 

各国は優秀なIS搭乗員候補として女性を優遇する政策を次々と施行、それによる男女間のパワーバランスは大きく崩れ、何事においても女性が有利な社会が形成された。

例えば痴漢や強姦。従来の時でも冤罪は少なくなかったが、それでも証拠が無ければ起訴は出来なかった。しかし今は男側の意見は参考程度しかなく、殆どが女性側の言い分が採用されてしまう。起訴されている時点でその女性に不快な思いをさせているから、だそうだ。

他にも女性だからという理由で昇進・昇格が早まったり、男税の存在だったりと社会制度事態が大きく傾いてしまった。

それだけでなく、その風潮に味をしめた女性達の増長も目立つ。街中でのカツアゲや小間使いのようなパシリ、学校での女子生徒達による気に入らない男子生徒への過激ないじめ。細々とした事例を挙げればキリがないくらいにまで、国民1人ひとりに差別意識が植え付けられてしまった。その程度はかつての男尊女卑社会よりも酷いものだ。男性が働いて女性が家庭を担当するという社会は確かに女性の社会進出という点で不利ではあったものの、互いに役割分担をして支え合うという思想が根底にあった。

しかしながら今の社会は違う。女様は最強兵器であるISに乗れる。だから偉い。ゆえにISに乗れない男は女の奴隷として働くしか価値がない。そんなとんでもない差別意識があるだけだ。勿論女性の中でも女尊男卑的な思想を持っていない人は結構いる。それでも男は女より劣るということが事実だと思い、当然だと考えている人間が一般的なマジョリティーなのだ。

 

そんな中で俺は私立の男子校の高校に通っている。成績はこれでもかなり優秀だと自負している。前世での知識が役立っているだけではあるが。

さりとて今日も授業を終えて帰宅中だ。

 

川縁の堤防の上を歩いている途中だった。堤防の下にある川沿いの公園のベンチに1人の女子生徒が座っているのが見えた。制服からして近くの中学だと分かる。その姿は孤独な一匹の犬のように悲しく、儚げであった。

いつもなら通りすがるだけで手を差し伸べなかっただろう。女性に声をかけただけで補導された友人のことを思い出すからだ。しかし今日は何故か帰ってはいけない気がしたのだ。そう、かつてマリーダを見つけた時のように。

 

俺は公園へと繋がるコンクリートの階段を降りて彼女のベンチの前に立つ。しかし彼女は気付いていないのだろう。何もアクションを起こさない。見兼ねた俺は無言でどかっと隣に座る。すると彼女は少し泣いていたのか、少々赤みのかかった潤う目で振り向く。まるで何かにすがるように。

その顔を見て俺は一瞬で彼女が誰であるか分かった。

最近巷で話題の篠田箒さん。毎日下校時に校門前まで黒服の女性達に囲われて黒塗りのセダンで送り迎えされていることで有名になっている人だ。

 

「どうかしたのか」

 

「…貴方には関係ありません」

 

彼女は見知らぬ俺に話すことは無いといった様子で顔を逸らして黙る。

 

「俺の推理を聞かないか」

 

俺の言葉にも何も反応を示さない彼女に少し肩を竦ませる。それでも言葉を続ける。

 

「君は噂のようなヤクザの娘じゃ無いだろう。ヤクザなら地元密着だから転校なんて早々無いからな。それなら誰か有名人の娘か何か。そしてその名前。連想してみたら1人の名前が出てきた。篠ノ之箒。それが君だろう?」

 

それを口にすると血相を変えたように俺の方を向く。

 

「何故その名前を知っている!」

 

「当たってたのか。箒ってのはやっぱり実名だったんだな。篠ノ之博士に顔がそっくりだからな。それに剣道部だとも聞いている。君の家の篠ノ之流剣術はニュースで知っていたからな。それで推測した」

 

そう言うと観念したのか、ポツポツと俺に口を開いて語る。

 

「そうです。私は篠田箒ではなく篠ノ之箒。昨年失踪した姉、篠ノ之束の妹です。政府の重要人物保護プログラムというもので家族と離れ離れになって、私だけここに引っ越してきました」

 

「君は姉を恨んでいるのか」

 

「当たり前です!私達家族を引き裂いて!自分はISを作って雲隠れして!!…私には何も残ってないのに…恨まないでいられますか!?」

 

彼女も相当フラストレーションが溜まっているのだろう。その後も泣き声とも、怒り声とも言えるような声で吐き出すように不満をぶちまけ続けた。俺は黙って彼女か目線を外さずに聞く。

 

10分くらい経っただろうか。他人に喋ったからか多少スッキリしたような雰囲気になってきた。

 

「君はやはりお姉さんを好いているようだね」

 

そう言うと篠ノ之さんは顔を赤らめる。

 

「そう、でしょうか」

 

「あぁ。ただ一つだけ訂正するとしたら、彼女は別に完璧な人間でも神様でもないってことだ」

 

篠ノ之さんをチラッと見ると、少し驚きながらも俺の話に耳を傾けてくれている。

 

「そもそもISは失敗だ。発表の仕方がまずかった。

宇宙開発というのは最近は無人機が世界的に主流なんだ。宇宙というのは危険だ。酸素も無ければ地球上とは比べ物にならないほど寒く、スペースデブリに当たれば即死。そんな人間が生きていけないような厳しい環境で、ISは活動しなきゃいけない。そんな宇宙産業で大事なのは安全の確保だ。

ISのコンセプトは、IS単体で宇宙に行くこと。でも宇宙服と同じ役割を持つISで宇宙に行って帰ってきてっていうのは、少し性能に頼りすぎている。確かにISはそれ単体で地球外へ行き、そこで活動して大気圏再突入まで全部出来るかもしれない。でもそこで万が一何か事故が起きたら?誰も助けることのできない宇宙空間で事故が起きれば生き延びられる可能性は限りなく0だ。そんなリスクを潰すためにも付属する宇宙船だったり緊急装置を付けるべきだった。

結果、ISは彼女の思う通りには成らなかった。彼女は結局世界各国にコアを作らされただけだった。ISは宇宙には行かず、皮肉にも名前通り成層圏にとどまってしまった。成層圏を宇宙まで、永遠に延ばすという願いは叶わなかったわけだ。

ほら、彼女だって失敗してるだろ?」

 

俺の話を聞いて篠ノ之さんは感心したように息を吐き、ウンウンと頷く。少し動きを止めて頭の中を整理した後、彼女は晴れやかな顔になって俺の方を向き直す。

 

「確かにそう言われるとそうですね。姉さんのこと、私こそ逃げてたのかもしれません。姉さんは何でもできるって、思い込んでたのかもしれません」

 

「あぁ。君のお姉さんも君と同じ人間だ。もしかしたら、今頃家族が恋しくなって泣いてるかもしれないぜ?」

 

ふざけた口調の俺の言葉に彼女は大きな笑い声で反応する。

 

「アハハハハ!!姉さんのことをそういう風に言う人は初めてです」

 

そう言うと彼女はサッと立ち上がり、ピシッと腰を折り曲げて俺にお辞儀をする。剣道をしているだけあって彼女の姿勢は定規かと思うくらいに真っ直ぐだった。

 

「ありがとうございました。やっと姉さんへの気持ちも整理がつきそうです。これでこれからも頑張って生活することが出来そうです」

 

「そうかい」

 

「えぇ。それでは私はこれで失礼します。SPの人達も必死に探してると思いますし。じゃあ、またいつか」

 

「あぁ、またいつか会おう」

 

「ハイ!さようなら!!」

 

そう言って階段を駆け上がり土手を走る彼女の姿は、今この街に咲いているどんな椿よりも綺麗で、美しいと感じた。

 

さて…

 

「そろそろ出てきたらどうです?ストーカーさん?」

 

俺が篠ノ之さんを見たままで声をかける。すると程なくして俺の斜め後ろに生えている木の後ろ側から、人が出てきた。

隠れていた人が出てきたのを感じ取った俺は立ち上がりそっちを向く。

出てきたのは少し年上くらいの女性。フリルがふんだんにつけられた、青と白のエプロンドレスを着て、頭に機械のうさ耳のようなカチューシャを付けた紫髪の彼女。

そう、篠ノ之束その人だ。

 

彼女の表情に敵意はない。ただ俺を知らないからこその恐怖というのだろうか、野良猫が人間と目が合った時と同じように距離感を取りかねている。

そんな彼女が重そうに口を開く。

 

「箒ちゃんを励ましてくれてありがとう」

 

この発言に俺はしばしフリーズしてしまった。人間不信で殆どの人間とはまともに話すらしないと聞いていたから、彼女が感謝をするとは思ってもいなかったのだ。

それでも何とか頭を動かして返答する。

 

「いえいえ。彼女を放っておけなかった、それだけです」

 

「そう…ねぇ、私はダメな人間かな…」

 

あぁ、彼女もそうか。彼女もまた、悩み、苦しんでいるのか。

藁にもすがると形容すべきか、彼女の質問には必死にもがく彼女の苦しみが乗っている。

だが、彼女もまたまだ若い。取り返しの効く段階にいる。

俺みたいに、失ってから気づくような鈍感でも無い。

そんな彼女が、羨ましくさえ思った。

 

「その判断はまだ早い。貴女にはまだ家族がいる。たとえ今は離れ離れでも、なんとかしてまた一緒に暮らす方法はあるはずだ。それを探していけばいい。家族を想う気持ちが、妹さんを想う気持ちがあるなら、その歩みを止めないことだ。諦めた時が、貴女の家族としての死だ」

 

俺の曖昧に濁した言葉を読み取ってくれたのか、納得がいったように笑顔で強く肯く彼女の表情には決意が満ちている。

 

「ありがとう。君の言葉に助けられたよ。気に入った!!名前を教えてよ」

 

「星川裕太です」

 

「ウンウン、なら君はゆーくんだ!!よーし、これから頑張るよ、私!!じゃあね!」

 

瞬間、風が吹き荒れる。突風が吹いたかと思えば彼女の姿は無くなった。

まるで嵐みたいだな、と思いながら苦笑する。彼女の最後に見せた笑顔が側に咲いていた山茶花に重なる。良い意味で箒さんと対照的でそれでいて似た者同士な若い彼女達が、楽しみだ。

 

 

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