【トトリス対決】神屋トゥーリVS乾家つるぎ【負けたら罰ゲーム】
「負けたら激辛焼きそばで罰ゲーム!」
「トトリス対決、はじまるぜー!」
プリズム二期生、神屋トゥーリより持ち込まれたコラボ企画は告知段階でプリズムリスナーたちに反響を生んだ。
まず対決に使用するゲームが世界的に有名な落ちものパズルのトトリスである。これを100人まで同時対戦できるプラットフォームで行うことで、我々Vtuber2人とリスナー98人でトトリス勝負するリスナー参加型企画にしたのだ。
そして罰ゲームに使用するのが最凶激辛ジ・エンドなる商品だ。何かの冗談かと思うが実際にその名前で販売されている商品で、正体は有名カップ焼きそばメーカーが製造した激辛焼きそばである。一部の界隈で話題になってる代物であり、Vtuberが罰ゲームやリアクション芸のため配信上で食べた例がいくつもある。
さてこれでどういう勝負をするのかというと、まず私とトゥーリがふたつの陣営に分かれてそこへ98人のリスナーたちが所属先を選ぶのだ。これによって推しを守りたいリスナーは味方陣営を選ぶし、逆に推しを地獄に落としたいリスナーは敵対を選ぶことになる。
「さ、それじゃ概要欄に書いてあるけど軽くルール説明するよー」
ゲーム開始時、ゲームルームに100人集まった時点で私とトゥーリが青組赤組と宣言する。98人の参加者たちは各々自由な組へ所属して戦う。勝負は6回行い、最終的に勝利数がもっとも少ないほうが負けとなる。なぜ試合回数が奇数ではないのかというと、偶数にすれば同点の可能性が生まれるからだ。同点の場合は両者敗北扱い。基本的にリスナーが得しかしないルールである。
「はい、それじゃ私からアピールいきます!」
まず勝負開始前に私とトゥーリでそれぞれリスナーにアピールをする。自陣営にたくさん付いて罰ゲームを回避できるようお願いするわけで、つまり実質的な命乞いだ。
「私を勝たせてくれれば、歌ってみた動画を出せるように練習を始めます!」
コメント欄の勢いが目で追えないほどに加速する。これまでよく私の声を褒めてきたリスナーたちだ。歌うとなればそれはそれは盛り上がることだろう。転生してからマンション住みということで一度も歌ったことがないし、前世でも打ち上げなどでしかマイクを握ったことはない。だが日頃から期待されてることはエゴサでよく知ってるのだ。応えてあげたい気持ちはある。
これを援軍募集アピールに使うのはずるいだろうが、それだけ激辛焼きそばの回避に必死なんだと思ってほしい。
「ずるい、ずるいぞつるぎちゃん! 魔性の美声属性のつるぎちゃんに歌を持ってこられたら何を出しても勝てる気がしないぜ……!」
そんなにすごいんだろうか、私の声。自分ではわからないのだが。
「でも激辛ジエンドはマジで嫌だからお願いぼくを応援して! 何でもするから!!」
「それじゃ勝つ意味ねーだろ!!」
互いのアピールタイムが終わるといよいよ戦いの幕が切って落とされた。
ゲームのロードが終わると同時に公開される赤と青の陣営。私の青組には60人を超える戦力が集まっていた。
「みんなありがとう!」
「なんでそっちそんな多いの!?」
そしてタイムカウントに合わせて100人が一斉にブロックを組み立ててゆく。転生してからトトリスを遊んだことはないが前世ではそれなりに触れたことがある。行列に並んでるときとか暇な時間にスマホで遊んでいた。
しかしそれだけでは厳しいのか、徐々に灰色の邪魔なブロックが下から積み上げられてくる。ただノーミスで進めても相手側のブロックを消すペースに追いつけない。中盤に差し掛かりブロックの落ちてくる速度が上がる頃には差が顕著になって、巻き返せないまま画面をブロックで埋め尽くされてゲームオーバー。順位は100人中78位という微妙な結果になった。
「ううん、むねん……」
さて青組の大将が落ちたわけだが試合はまだまだ続く。見れば赤組の残りはわずか5人になっていて、それを三倍近い数の青組が削りきろうとしている。
だが。
「赤組ぜんぜん減らない……?」
なんとまあ少数精鋭を絵に描いたような立ち回りで一歩も譲らない。それどころか十数人いた青組が続々と落ち、ついに一桁まで減らされてしまった。驚くべきことにトゥーリはまだ生き残っている。
「トゥーリ先輩うまかったんですね!?」
「そうだよじゃなきゃトトリスで勝負しないぜ!」
やがてトゥーリが落ちる。その後もしばらく試合が続き、二対二になった熾烈な争いは赤組が制することとなった。
「ああー!?」
「よっしゃー!!」
現在は青組が0点で赤組1点。実はこのゲーム、人数差がついてもゲームバランスをとるため補正が働いて極端な有利不利がついたりしない。今回の敗因は赤組にトトリス強者が数人混ざっていたことだろうか。
続く第二戦。トゥーリの実力を知ったリスナーたちが今度こそトゥーリを負かそうと思ったようで、青組の戦力は70近くなった。
「今度こそ! 今度こそお願いします!」
「なんでそっちそんな人望あるんだよ!!」
三期生より二期生のほうがデビューは半年以上早い。その半年の差はチャンネル登録者数やアクティブ視聴者数を比べるとはっきりわかる。二期生と言えば一期生とともにVtuber業界の黎明期を駆け抜けてきた人たちで、それはもうリスナーからの人望はあるはずなのだが、神屋トゥーリという人物に限っては人望がマイナス方面に働く。
要するにトゥーリが好きで応援してるからこそ、激辛焼きそばを食べさせようとする人が多いということだ。
現在70人近い青組にどれほど彼女のリスナーがいるかわからないが、決して少なくないはずだ。
「みなさん。実は、私が勝つと……」
言葉を区切る。深呼吸を挟み、充分に溜めてから次の言葉を放つ。
「トゥーリ先輩がジエンド配信してくれるんですよ!」
「最初からそういうルールだけど!?」
さて勝負の行方だが数の暴力によって赤組は陥落した。人数差補正にも限界があるらしい。
三回戦もまた似たような展開で進んで青組が勝利を得た。これで青組2点で赤組が1点。コメントの流れる速さからリスナーたちの盛り上がりが伝わってくる。
だが同じ展開が続くことを面白く思わなかったか、四戦目になると目に見えて青組が減った。戦力58対42である。
「なんで!?」
「ヘイヘイヘーイ、いいぞこの調子だ!」
四戦目終了時点のスコアは2:2だ。ここからひとつでも黒星がつくと激辛焼きそばが確定するので私は必死である。
五戦目になると青組が少し増えて61人。しかし運悪く相手側にトトリスの上手い人が多かったようで中盤に人数が逆転。私は早々に落ちて86位という結果になった。
大した戦力になれていない事実を突きつけてくる順位に歯噛みしながら、青組の生き残りのプレイ画面を巡回し応援していく。
やはりトトリスの上手い人はひと目でわかる。積み方に明確なコンセプトを感じるのだ。画面の片側に3列か4列のスペースを開けて積み上げ、頃合いを見て崩していくらしい。
さてそんなことをしていると気になるユーザー名を見つけるわけだ。
「あれ、この『rijia_n』って……」
「え、もしかして本物なの!?」
巷で人外三人組と呼ばれるプリズム三期生。ゲームの長時間配信を基本スタイルとする彼女はそれはもうトトリスが上手かった。
このゲームは自分が消したブロックから発生する妨害で誰かをゲームオーバーに追い込めばバッジが手に入る。繰り返せばその分バッジは増えていき、バッジが多いほど妨害効果が強力になっていくのだ。
そしてリジアのバッジ数は青組トップである。
「ありがとうリジアちゃん……」
青組と赤組の人数は逆転していたが、リジアはむしろ相手が多いほどバッジを毟り取れるとばかりに暴れまわる。しまいには青組最後の一人となりそのまま一位の座までもぎとった。
だれが呼んだか三期生ゲーマー担当。圧倒的パワーによりスコアボードに3:2の数字が書き込まれた。
今回の勝負、私とトゥーリ以外は一回しか試合に参加できないルールなのが惜しい。もし彼女が六戦とも参加してくれたら全勝だってあり得ただろう。
「ぐわああああなんでええどうしてえええ!!」
「激辛焼きそば、頑張ってくださいね!」
ゲームは六回勝負。敗北数の多い人が罰ゲームを受ける。引き分けの場合はふたりとも罰ゲーム。三敗したことで彼女の罰ゲームは避けられないものとなった。
あとはもう消化試合である。私はこのままもう一勝し、4:2のスコアを叩きつけ、トゥーリの罰ゲーム配信見ながら歌の練習をするのだ。
そのはずだった。
「ねえねえねえ、ルールやっぱり変えない?? もし引き分けになっても、自分が勝ったらって言った内容もやるってのはどう??」
「え、それってつまり引き分けで私が罰ゲーム受けても歌の練習しなきゃいけないってことですか? やらないですよ」
とんでもない話である。青組についてくれたリスナーの大半は私の歌を聞きたいから協力してくれた人たちだ。引き分けになっても歌うとなれば喜々として離反するに違いない。
「いやーでもなー! つるぎちゃん真面目だからなー!」
断ってもトゥーリは食い下がってくる。必死に私を道連れにしようとしてる。
「つるぎちゃんなら配信でアピールした以上は結果がどうなっても歌の練習するつもりだったと思うんだよね!」
「それはまあ、最初からそのつもりでしたけど……」
「あっ」
まずい。失言だった。
「みんなー!!! 引き分けてもつるぎちゃん歌ってくれるって!!」
「あっあっ、ちょっと待」
果たして六戦目。
青組12人で赤組88人となり、私もジ・エンドが確定してしまった。
いつも感想ありがとうございます。
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また、ついこの前知ったんですが誤字報告機能というものがあったんですね。なかなか自分では気づけないのでとても助かります。