東方龍帰章~Return of east Legendry~   作:朝霧=Uroboross

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割りとギリギリに書き上げたので薄いかもしれない……そんな不安と闘っております。朝霧です。

今回は永夜異変、つまり永夜抄でのお話ですが、刻縁達が本格的に動くのは天空璋、つまるところあの"秘神"が出てからになります。
まだまだ長いので、今しばらくはまったりとした思い出話をお楽しみ下さい。



拾弐・永夜異変にて

 その日も夜が来た。いつもと変わらぬ平凡にして静寂なる夜が──それが、いつもならば。

 だが、その日だけは違った。

 

「──動いた、か」

「ですねぇ。──懐かしいものですか?」

 

 屋敷の渡り廊下より月を仰ぎ視て、夜が訪れると共に感じた違和感を覚る刻縁と、いつものごとくにこやかに問いかける水京。

 

「ふむ…──まぁ、遠い昔のことであるから、な」

 

 静寂なままの廷内と、微かにざわめきを見せる辺りの森中。今なお、龍は月を仰ぎ見る────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薬師の格好をして渡り歩く一人の旅人。あちらこちらより見え沸く都を練り歩き、笠を深くにかぶって行く宛もなく進んでいく。

 ふと、どこぞの屋敷にか仕えているのだろう女中が、彼の目前にてよろける。それを支えたところ、見えた足元を見るやこう言う。

 

「失敬、足を捻られてはおられないか?」

「え?えぇ……ですが、すぐそこですし…急がねばなりませんので…」

 

 そう言って去ろうとする女中を呼び止め、背負いし箱を大通りから外れた脇道に降ろしては座らせる。

 

「それはいかん。斯様に易きものであっても、無理をすれば今後に響く。よう効く薬を塗る故失礼する」

 

 と宣うや否やテキパキと箱から軟膏に似た薬を取り出して女中の足元──的確に言えば足首辺り──にそっと塗る。

 本来であれば不躾な行動だが、あまりの迅速さと的確さに呆然としたまま、なされるがままに処置を施される。

 

「さて、塗った手前説いた手前無理をさせるわけにもいかず。手前がおぶって送る故、行き先を尋ねたい」

「え、えぇ。ではあちらの────」

 

 女中をおぶり、箱をかかえて旅人は歩きだす。些か笠が邪魔に感じるも、隠れ見える蒼髪に、変わった人だと思いを抱く。

 

 それからしばらく進み、とある一つの屋敷の前で止まるよう伝えられる。その言葉通りに旅人は止まると、女中は瞬巡するも、賓客用としても使われる大門の方へと向かわせる。

 やがて大門の前にて女中が門を叩き、出てきた者にそれまでのことを伝えると、旅人は揃って中へと招かれる。

 

「我が家の者を手当てした上送り届けて頂き、有難うございます、薬師殿」

「いきなりの訪問、さぞ不躾であると容赦願います。しかし随分と立派ですな。大変名を挙げた御方であると存じますが」

 

 屋敷の主と面会し、笠を取って服して申し述べる旅人────刻縁。そんな刻縁の世辞に気を良くした主が鼻高々に語りだす。

 

「大した者でありませぬよ。我が娘の為に尽くした結果がこの通り」

「大層ご息女殿を想っておられるようで善きことと存じます」

 

 大切な娘を思う親の顔を、座ることを許され身体を起こして身で言う。

 しかし、そんな貴族というには些か凡な初老な主は、ふとして眉をさげて憂いの顔を見せる。

 

「ですがな……娘のため、幾人かのやんごとなき方々と見合わせるも、娘は難題を出して追い払う次第。情けないやら恥ずかしいやら……」

「一介の薬師ではありまするが、その心中、さぞ苦心なさるものと思い致ります」

 

 その後、中々に数少なく、ましてや腕の良い薬師ということで、離れにて一夜二夜ほど泊まることを許す宗を伝えられ、感謝の念を伝えて下がる。

 

 その夜、薬の調合を終え夜風に当たる為外に出て、渡り廊下にて月を見上げる刻縁。

 その最中、背後より角の先より声を掛けられる

 

「もし、そこの方。貴女が御父様からお聞きした薬師様ですか?」

「如何にも。斯く言う貴女様は、ここのご息女殿でございますね?」

 

 雰囲気のみであったが、頷く気配がし、互いに顔を見せぬままに会話を続ける。

 

「よろしければ、旅のお話をお聞かせ下さいな」

「つまらないものでよろしければ──」

 

 方々を旅し、練り歩き、その伝え見たことを、互いに見えぬまま夜が明けるまで語り続ける。

 陽の光が差し掛かった頃、「では、また」と互いに別れ去っていく。角から見る彼女からは、まるで川の流れのように揺れる蒼い髪が、ひどく印象に残っていた────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──それからあの人といくつか旅のお話を聞いているうちに、もうあんなつまらな過ぎる"(アッチ)"には帰りたくなーいって思ったのよ」

「そうだったのですね」

 

 だらしない様で横になり、素足をバタつかせて自身の共──正確には逃げてきたのを丁度良いから拐ってきた(タスケタ)のだが──をする兎こと"鈴仙"に語る。

 

「それで、その"蒼髪の薬師様"とは会えたのですか?」

「…………くよ」

「え?」

 

 静かに俯き、小さく幽むような声量で主──輝夜は何事かを喋る。

 上手く聞き取れずに聞き返す鈴仙に、輝夜は肩を掴んで鬼気迫ったかのように口を開く。

 

「全──っくよ!!ビックリよ!影も形も無かったかのようにどこを探しても居ないのよ!?会えるわけないでしょう!?」

「そ、そんな叫ばれても困りますぅ~っ」

 

 輝夜の勢いに目を回す鈴仙。そんな折、丁度隣の部屋から永琳が入ってくる。

 さらにその奥では、今回の異変で迷惑(?)をかけた妖怪や人間達が集まって宴会をしていた。

 

「またこんなところに居たんですか姫様。それに、その薬師を探したのは姫様ではなく私達ですよ」

「だぁってぇ……」

 

 鈴仙の肩から力を抜かして、溶けたように畳の上に潰れる輝夜。

 そんな主の姿を見て、ため息を吐きながら永琳は続けていく。

 

「ですが、そんなな薬師が本当に居るのだとすれば、私としても一度会ってみたかったものですね」

「というより姫様、その御方のこと気になってるんですか?」

 

 そんな何気ない鈴仙の問いに、永琳は固まり、輝夜はしばらく黙考して、こう言う。

 

「……あっ、そうかもしんない」

 

 その発言に、永遠亭の者達は驚き、頭を悩ませることになるのだが、それからかなりの月日が経ってからまた頭を項垂らせることとなるのだった。

 ──なお、当の本人は、

 

「ふぇっくしゅんっ」

「おや、当代が風邪とは珍しいですねぇ」

 

 未来にて矢面に立たされることなぞ全くもって考えていなかったのであった。

 





当作品にハーレム、恋愛要素なんて一切出しません。
……と言いたいのですが、絡み上どうしてもそうなってしまうのです……。

本編では恋愛はしませんが、ご要望の声が多くありましたら検討はします。絶対やるとは言いません。

次回、『閑話・庭師、修行するの巻』、『昔話・刻縁の過去その壱』の二本立てです。
更新は5/22、23:30の予定です。頑張ります。
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