東方龍帰章~Return of east Legendry~   作:朝霧=Uroboross

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皆様どうも、朝霧でございます。

今回は息抜きがてらに妖夢と刻縁の修行風景的なものを書いてみました。
まだまだ先は長いので、どうぞ気長に、暇潰しにでもご覧下さい。



閑話・壱 庭師の稽古

 風を切る音だけが響く。次いで、砂利を踏む音がする。また風を切り、砂利を踏み、そして風を切る。

 遮二無二木刀を振る妖夢のそばで、縁側に座りその姿を見つめる。筋は良く、力みすぎてもいない。しかし何かが足りないとは思う。

 

「どうかしら、うちの妖夢は」

 

 背後からの声。近くにいくつかの亡霊を漂わせては離す冥界の主、幽ヶ子。視線を向かわせ、その後に未だ木刀を振るい続ける妖夢へと戻す

 

「筋は良い、振れもない。だが、迷いがある」

「迷い?」

 

 妖夢には聞こえない距離で、聞こえない声量で会話をする二人。不動で妖夢を見続け、思ったことを言い連ねる。

 

「このままで良いのかという迷いがある。迷いがあれば剣は鈍る。それだけではない────妖夢」

 

 声を少しばかり張り上げて妖夢を呼ぶ。呼ばれたことに気付き、素振りをやめて駆け寄る。

 かれこれ二時間近くも素振りをしていた妖夢の額には、いくつか汗が流れており、相当の鍛練をしていたものとうかがわせる。それでもなお、疲れを表に見せないかの如く振る舞う

 

「なんでしょうか」

「単刀直入に聞こう。──何を焦っている」

 

 刻縁の、鋭く心奥まで見澄まされかねない眼光を持った問いに、妖夢は驚き見開く。

 しかしすぐに俯き、気落ちしたかのように話し出す。

 

「私は……弱いです、とても。だから早く強くなって皆を守れるくらい──「阿呆」──きゃんっ!?」

 

 決意を固めたかのような妖夢の頭に、刻縁からの割と軽めの手刀が落とされる。

 突然のことに驚き、痛みも相増ってうずくまる妖夢。涙目ながら抗議の目線を送る。

 

「まだまだ未熟な上に、皆を守るなどとほざくな馬鹿者」

「っ………」

 

 刻縁の怒気を浴び、更には自覚していたことさえも改めて告げられ、徐々に眉を下げていく。

 

「だがな」

 

 二の言葉を聞き、ふと顔を上げる。そこには、毅然としていながらも自身を正面から見ている、遥か先の剣豪の姿があった。

 

「その覚悟は立派なものではある。その覚悟についていけるよう、私自ら指導するのだ。遠い未来よりも、近い今を見よ。さもなくば、守りたいものも護れぬぞ」

「っ!はいっ!!」

 

 妖夢の元気な返事を聞き、満足げに頷く。

 縁側から立ち上がり、側に置いてあった自前の木刀を携えて庭へと歩み行く。

 

「では、今度は私と打ち合うとしよう」

「お願いします!」

 

 

 ・

 

 

 ・

 

 

 ・

 

 

 乾いた音が鳴り響く。お互い真剣ではなく木刀ではあるものの、交わす剣擊は真剣そのもの。

 刻縁が妖夢のために調節した二振りの木刀。それを今日までな技量を持って容赦のない連擊を繰り出す。しかし、その全てを一刀で、更には受け身に専念した上で片手を背に回した状態という、端から見れば手加減されているようにも見える。

 

「どうした、筋がぶれているぞ。それでは斬れるものも斬れん」

「っ、はい…っ!」

 

 最早息も途切れ途切れ、体力も限界に近い。

 それでも、少しでも手を抜けば容赦のない反撃が襲いかかってくる。両手で数えるほどの日数ではあるが、それを痛いほどに知っていた。

 

「──ふむ。それまで」

「ぁっ──!……は、い…」

 

 一閃。それだけで二本同時に撥ね飛ばす。疲れ故に抵抗すらできず、落ちていく木刀をみるしかなかった。

 へたり込み、肩で息をして休みを取る。刻縁が水を差し出し、つかの間の休憩を取り始める。

 

「あの……」

「……前にも言ったが、先生でも師範でも良い」

「で、では師範と」

 

 おずおずと会話を切り出す。言い辛そうにしていたところ、刻縁から許しを得て一呼吸置く。

 以前の、初めての稽古時、彼女は刻縁の力量を視るために試合を申し込み──── 一撃で伸されたのである。

 目にも見えない神速の一撃に、辛うじて居合剣であると察せれたのみであった。無策にも飛び込んだ自分も自分だが、たった一瞬のアレを避けろというのも土台無理な話である。

 

 そんなこんなで師事することになったのだが、その際どう呼べば良いのかで『師匠』では座りが悪いとのこと故に、今ではこうして呼び方を改めたのである。

 

「そ、それで、その……今日は、どこが悪かったのでしょうか……」

「ふむ…?悪いものなどなかったぞ」

 

 訝しげにするも、なんでもないかのごとく告げた刻縁に、妖夢は目を見開く。

 

「で、でも今日はあんなにも──」

「あれは疲労していたからであろ。当然の摂理だ、そう気負うな」

 

 少し考え、共に縁側に座りながらで、刻縁は講義をし始める。

 

「ふむ……では妖夢よ。二刀流と双剣の相似点と相違点については話したな?」

「は、はい、確か"相似点は、力まず流れに任せること"。"相違点は、刀は一定方向で西洋剣は跳ね返りがある"。です」

 

 初日に近い時に教えてもらった話を、思い出しながら挙げていく。

 刻縁は何も言わずそれを聞いていた。

 

「そうだ。そしてそれらの模範となるのが──?」

「"舞う"こと、ですね。ですが師範、なぜ"舞う"ことが模範となるのですか?いくら考えても繋がりがあるようには見えないのですが……」

 

 抱いて然るべき疑問をぶつける。舞踏と剣術、そこになんの共通点があるというのか。

 出されたお茶をすすり、呼吸を置いて答える。

 

「端的な答えとしては、"体幹"だ」

「体幹……?」

 

 そう言うと、妖夢の二つの木刀を持って庭に立つ。次いで構え、そのままに説明していく。

 

「体幹は、いかなるものにも通ずる要素だ。体幹を持つことによって千変万化の動きを為すことができる。特に妖夢、君のような連続剣を持つ者には特にだ」

 

 そう言うや否や、木刀を舞い踊るかの如く振るい、その柔軟な動きを披露する。

 ただ立っているだけでも絵になる程であったが、そこにさらに洗練された舞踏が合わさることで、永遠に見続けられるほどの演舞となっていた。

 流れるように、ただ一筋の、決して途切れることのない線を描いていくその太刀筋は、まさしく神業にも等しい程である。

 

「──と、このように。体幹を持つだけでも劇的に違うというわけだ」

「すごい……」

 

 唖然として刻縁を見つめる妖夢。その経験による技量もさることながら、今見せられた美しいまでの演舞に見とれるほかなかった。

 そして、自分もいつかあのように動ける──という夢を持たずにはいられなかった。

 

「す、すごいです師範!!私にも是非すぐに「慌てるな馬鹿者」あうっ」

 

「まずは休んでからだ。無理は身体を壊す一因にしかならん。よく休み、よく励む。それが近道だ、良いな?」

「は、はい!」

 

 自身の新たなる道に夢を抱き、新たなる師に導かれ、未熟な剣士は更なる強さを得らんとしていた────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそれとして、庭師としての役目は忘れておらんだろうな?」

「あっ………」

 

 刻縁の口から盛大な溜息が漏れ出たのは、言わずもがななことであった。

 





どうでしたかね?
ちょっと急ぎ足かなぁとも思ったのですが、修行風景を書いてみました。

補足というか、刻縁の剣術は2000年近く磨かれたものですから、そりゃ相当の強さだろうなとは思うのですよ、えぇ。
え?刻縁の年齢?神代(紀元前)から生きてるで察して下さい。相当の長生きですよ。

お次は刻縁の過去ですが、そちらは0時きっかりに更新となるため、それまでお待ち下さい。
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