東方龍帰章~Return of east Legendry~   作:朝霧=Uroboross

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皆様どうも、朝霧でございます。

今回は尺的な都合上、二話合体バージョンにさせて頂きました。そのため、少しばかり長いお話となっております。

あと、今話で取り残されたあの問題児がやってきます。地霊殿?そんなには待てなかったんだ……orz



拾参・鬼の大宴会/花の異変

 

 蝉も鳴き始める初夏の頃、幻想郷は活気に包まれていた。あちらこちらで宴会が盛り、賑やかな祭りとなっていた。

 だが、それ以前に、この異常なほどに高まる妖気を覚った者達が、つい先程まであちらこちらへと動いていた。

 

「──でなんですが、ようやく"彼"もこちらに来れると今になって連絡が」

「随分と、遅かったな…」

 

 相変わらずの微笑を携えつつも、器用に苦笑する水京と、幾らかげんなりした様子の刻縁。

 彼らの言う"彼"とは、外の世界で野暮用があると言い残った、最も猛くありながら豪放磊落なる大鬼──『金熊童子』こと、『金熊 東堂』のことである。

 

 外の世界では酒屋を営み、それを継弟子に任せるためのあれやこれやで、刻縁らとは別ルートで幻想郷へと向かうことになっていた。

 

「えぇ、さらには正体を隠して向こうと同じく酒屋を営むそうで……」

「バレるだろうな」「バレるわね」「バレるな」「……白日」

「ですよねぇ」

 

 皆一同に答え、深い溜め息を吐く。刻縁に至っては頭を押さえる始末である。

 元より細かいことだとか、ましてや先々のことなど考えず直進する思考の持ち主である金熊は、兎にも角にも隠し事に向かなかった。

 それが今、時が来るまで潜む刻縁らにとっては呆れるしかなかった。

 

「はぁ……仕方あるまい。計画は前倒しだ」

「よろしいので?」

「逆に聞くが、今やらねばどうなると思うてよ」

 

 金熊の呵呵大笑する姿を思い込み浮かべ、今度は皆苦笑をこぼす。

 

 そんな彼らの頭上のたんこぶな扱いを受ける金熊は今、どうしているのか────

 

 

 

 

 

「おっちゃーん!酒くれー!」「こっちにもちょうだーい」

「うぃおおきに!毎度ォ!!」

 

 無造作に乱れた山吹色の髪に、ねじりはちまきをして、紅葉の色をした羽織を方脱ぎし、筋骨粒々なその肉体を見せつける男──言わずもがな、金熊東堂である。

 長年の人里暮らし故に、妖気は人並みに抑えられ、鬼の象徴たる角も巧妙に隠されている。

 

「うぃ~酔った酔ったぁ。おぅい!あたいにも酒くれよ~!」

「おーぅ!………おう?」

「ん~?……げげっ!?」

 

 片や酒樽を抱えて訝しげに、片や苦虫を噛み潰したかのように顔をしかめる。

 

「な、なんで居るのさ、"金熊"!」

「ほう!久しいの、"伊吹"の!何、酒在るところにワシ在りよ!ガハハハッ!!」

 

 腕から垂らす鎖に、様々な形の重りをつけた双角の鬼──伊吹童子こと、『伊吹 萃香』が、金熊を信じられないものを見るかの如く指差す。

 対する金熊はさしたる不快感どころか、旧知の友を見つけたことにより、むしろ呵呵大笑している様である。

 

「し、信じらんない……。流石にあんたが来るのは誤算だよ!?」

「ワシが来んと思うたか!見通しが甘いのぅ!そら飲まんかい、ワシが作った酒は絶品よ!」

「しかもこっちに居座るのかい!?勘弁しておくれよ……」

 

 すっかり酔いが覚めた萃香と、大樽を割って酒を飲み始める金熊。傍目からは異変を起こしていたはずの萃香の方が不憫に見えたとかなんとか。

 後日、ひょっこり人里へ降りてきた萃香が、金熊に捕まりげんなりする姿が見受けられるようになったとか。

 

 

 

 

 

 

 ~さらに時は流れて~

 

 

 

 

 夏も涼しくなってきた頃、刻縁は霖之介と共にとある地へと赴いていた。

 

「──些か、長いな。それにしても大きくなったものだな、霖之介」

「老いた人の感想になっていますよ、刻縁さん。それより、無縁塚はこの先です」

 

 長い修行を経て自らの店を持つこととなった霖之介だが、その経営は度々訪れる刻縁から見ても、お世辞にも良いとは言えなかった。

 加えて外から落ちてくる"用途のわからないもの"*1ばかりなので、霖之介の収集癖がこれでもかと邪魔をしていた。

 

 今回は用のついでとして、刻縁が霖之介の手伝い代わりを請け負ったのであった。

 そうして他愛のない話をしながら歩くことしばらく。遠くで騒ぐ声が、刻縁の耳に届いてきた。

 

「──れは──で──」「ですが──でして──」「──りません!──!」「そ──ぁ──」

「ふむん?どうやら、私の用が先らしいな」

「そうですか?でしたら、僕は先に行っていますよ」

 

 霖之介は道なりに、刻縁は道から少し外れた声の鳴る場所へと別れていく。

 刻縁が向かう先では、華奢ではあるが厳格な雰囲気を持つ少女と、正座して少女からの説教を受ける背の高い少女の二人がいた。

 

「────大体あなたはいつもそうやって「その辺にしてやれ、ヤマザナドゥ」なっ!だれ──えっ!?」

 

 苦笑いを浮かべる刻縁を見て、厳格そうな少女──『四季 映姫』は絶句し、思わず固まる。

 口元を魚のように空回すままの映姫に、正座していた少女が顔色を伺う。

 

「ふむ、そこの──あぁ…小野塚小町、だったかな?」

「は、はひ!」

 

 刻縁に名を呼ばれ、即座に再び背筋をしっかりと伸ばした正座をする少女こと『小野塚 小町』。

 何を言われるのかとドギマギしつつ、次の言葉を待つ。

 

「あまりヤマザナドゥに世話をかけさせ過ぎぬよう、休息は程々にな」

「は、はい!「では、持ち場へ戻るように」はい………え、それだけ?」

 

 小町の気の抜けた返事慌てた映姫が叱責しかけるも、刻縁がそれを手で制止させる。

 状況がわからず小町が口を開けたまま呆けていると、それにあきれた映姫が溜め息をこぼす。

 

「小町。この御方は高天原の方神が一柱、『東神(あずまのかみ)』こと今代の"青龍"様です。つまるところ、私の上司となる御方ですよ」

「うえぇ!?し、失礼しましたぁ!!」

「構わぬよ、楽にせい」

 

 上司の更に上司に失礼な物言いをしていたことに、大慌てで土下座する小町。

 それもそのはず。高天原において刻縁は、地獄を含めた輪廻機構の統括者であり、四季映姫の実質的な上役。現代社会で言うところの、平社員と課長と専務のような立場関係なのだ。

 

「何はともあれ、壮健そうでなによりよな、"ヤマザナドゥ"?」

「……はい、青り「んんっ」…刻縁様においては、なおご壮健のことと存じます」

 

 小町は、今度は驚き目を見開くしかなかった。小柄ながらもどんな相手にも堂々と説教をするあの映姫が、刻縁の前では借りてきた猫のように大人しくなっているのだから。

 これは映姫含めた、主に是非曲直庁の者達がよく知ることなのだが、彼が役職を強調する際は何かしらの苦言があるとか。

 加えて刻縁は預り知らぬ話だが、彼の立場も立場であるが為に、割と言葉が他人よりも重くみられることが多いのである。

 

「お主は何時ものことだがな、説教が長く、くどいぞ。死後を憂い想うが為に説くのは良いが、過度となると億劫になるものだ。それ故、時には待つことも大事なのだ。人はそう直ぐには変われんのだからな」

「は、はい……面目次第もありません…」

 

 刻縁にしおれてうなだれる映姫。ふと、真面目な顔からほんの少しの微笑みを浮かべて、映姫の頭を撫でる。

 

「お主の尽力はよく知っている。だがな、たまには気を抜く日を置いても良いのだぞ。無理をしても、お主の代わりはおらんのだからな」

「は、はい…ありがとうございます…」

 

 なされるがままに、静かに頭を撫でられる映姫。

 そんな光景に、目が飛び出すかとばかりに驚き目を見開く小町。それを感じとったのか、すぐさま振り返った映姫に睨まれ、即座に持ち場である三途の川へと逃げ戻っていく。

 呆れてまた溜め息が出てしまう映姫であったが、立ち上がり、刻縁に一礼して自身も戻っていく。それを見届けた刻縁は、自身も霖之介の手伝いのために無縁塚へと向かう。

 

 静かな風の吹く再思の道にて、一人歩み行く蒼き龍。その面に何を想うのか。彼岸花の咲き誇るその道は、ただ静かに導くのみであった。

 

 

*1
刻縁は外にいたので解るのだが黙っている





最後までお読み頂き、ありがとうございました。
皆様からのご感想・評価お待ちしております。

なお、無縁塚事後談

刻「なにかいいものはあったか?」
霖「えぇ、これなんていいかと」
刻「ふむ…(配線の切れたコントローラーだな……)」
霖「あとこれm」
刻「これは止めろ(なぜこんなところにTE○G○があるのだ……ッ)」

掘り出し物はあんまりなかったようで……。

次回更新は6/19、23:30を予定しております。
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