東方龍帰章~Return of east Legendry~   作:朝霧=Uroboross

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どうも皆様、朝霧です。
今回をもちまして、前座が終わり、刻縁の異変の始まりを告げさせて頂きます。

今話はあくまで宣戦布告ですので、まだ前座部ではありますが、次回からは本格的な異変の話に突入していきます。









拾漆・宣戦布告

 

 山奥にある、小さな屋敷。縁側にて茶を啜る紫と、その後ろに静かに侍る二人の式神。ふと、紫の隣に"扉"な現れる。

 その中より現れたるは、鮮やかな色合いの狩衣を来た女性と、烏帽子をかぶり、片方は笹、もう片方は茗荷の葉を持つ二人の少女。

 

「やぁ、待たせたかね?紫よ」

「別に待ってないわよ、隠岐奈」

 

 尊大な台詞を放つ狩衣の女性──『摩多羅 隠岐奈』。それに対し、まるで辟易しているというべきか、はたまたいつも通りかと呆れているかと言わんばかりの反応を見せる紫。

 そんな紫の隣の縁側に座るや否や、控えていたはずの式神──『八雲 藍』がお茶と茶菓子を盆に乗せてきていた。

 

「おや、気が利くね。君みたいな従者が居て、紫が羨ましいもんだよ」

「恐縮です。隠岐奈様」

 

 ケラケラと笑う隠岐奈に、慇懃とした礼で返す藍。そのまま静かに下がり、待機する。

 貰ったお茶を一杯飲むと、ほぅ、と一息吐いて紫に顔を向ける。

 

「それで?君から私を呼ぶという珍事があるからには、何かあったのだろう?」

「──大結界が切り裂かれていた(・・・・・・・・)わ」

 

 空気が固まる。口元に運ぼうとしていた二口目を止めて、先程までの愉快そうな表情を一転させる。うって変わって真面目な表情となり、紫に問う。

 

「それは、真か?」

「えぇ。とは言っても、私も気付いたのはつい最近。痕跡も巧い具合に隠してあって、後手になってしまったわ」

 

 やれやれと言いたげな仕草を見せる紫。しかし、その仕草とは裏腹に、その顔は焦燥にまみれていた。

 それもそうだろう。気付かぬ内に大結界を切り裂かれ、あまつさえその痕跡を巧妙に隠す者など、相当の手練れに限られる。

 

「誰だ?」

「知らないわ。でも、候補はいるわ」

 

 自らが愛し、尊ぶこの幻想郷。それを害せんとするものならば容赦はしない。この二人はその気持ちに関しては嘘偽りなく、合致している。

 紫は、知らないと言いながらも、該当するであろう、過去の著名な存在達を思い出していく。

 

「現状、幻想郷に入れるのは限られているわ。相当名の在る妖怪(モノ)か、あるいは────私達の同類、かしらね」

「────"賢者"、か。しかし………ならばやはり誰だ?」

 

 顎を抱え、思い出せる限りの相手を思い出す。そして、該当するであろう、ただ一人の存在へと行き着く。それと同時に目を剥き、紫に振り返る。

 そんな隠岐奈の反応に、紫は静かに頷く。まるでそれを、肯定しているかのように。

 

「えぇ、その推論は当たりでしょうね。そんなことができる"賢者"は只一人。もし来ているならば、誇張無しに幻想郷最強とも言える存在。────────"神々由りの粛清者"、『青龍寺 刻縁』。彼だけよ」

 

 二人は幻視する。蒼い装束をたなびかせ、威風堂々と言うべき風格を持った彼の存在を。

 そして、それは現実のものとなる──────。

 

 

「流石は紫と言ったところか。時間は掛かれど、僅かなものから私を当てることになるとは」

 

「「っ!!」」

 

 陰からの声。どこに声の主がいるのかと探し見れば、屋敷の庭、森に通ずる林間より、此方へと歩み寄る者が一人。

 はためくは、さながら龍の髭を模しているかのように、二房伸びた蒼き髪。腰には刀を差し、その威風はまさしく恐れ多き者の威を持つ、やや男性寄りの、中性的な顔つきをした者────刻縁である。

 

「久しいな、紫。そして隠岐奈。やや理由(わけ)在って暫し隠頓していた。だが──この青龍寺刻縁、ここに帰郷し仕った」

「おぉ、まさかお主まで来ていたとはな、刻縁。しかし……何時から居たのだ?」

 

 目を丸くして驚く隠岐奈と紫。従者のうち、確りと面識のある藍も驚きはしていたが、残りの三人は初めて見る人であった。

 それはさておきと、隠岐奈が親しみを以て刻縁に問いかける。その答えに、苦笑するかのような反応を見せつつ刻縁は言う。

 

今の先代の頃から(・・・・・・・・)だ。来たばかりでな、歪になっていた我が力を戻すのに、些か時を掛け過ぎた」

「────そう、そんな前から居たのね」

 

 何か思うことがあるのか、紫は静かにそう溢す。それを気にした風もなく、隠岐奈と刻縁は語らう。

 その光景を余所目に、紫は懐から扇子を取り出しては広げ、刻縁を睨むように見る。

 

「それで────なぜ今更出てきたのかしら?」

「知れた事を。何、私も異変の一つ、起こして見せようかとな」

 

 紫の問に、刻縁の笑みが深まる。紫は直感で、今までの異変とは比にならない、壮大なことが起こるという予感がした。

 そう感じつつ、そのまま視線で続きを促す。

 

「今は随分と前になるが、紅き霧のときより、つい最近の隠岐奈の異変、そして、幾ばくか前の地獄霊の暴走。なかなかに興味深いものであった」

「そうか?まぁ、そうであろうな。それで、お前はどの様な異変を興すつもりなのだ?」

 

 前のめりの視線になる隠岐奈。それとは対照的に、ますます鋭い目つきになる紫。隠岐奈は興味とその真意を探り、紫は不信感を持つ。

 刻縁が一つ、策師の如き笑みと共に、その異変を語る。

 

「私が狙うは────『幻想郷の生命の永遠化』。そして、『幻想郷という世界の独立』である」

「「────」」

 

 にわかに殺気立つ。隠岐奈は壮絶な笑みを浮かべ、紫は冷ややかな空気を放つ。対する刻縁は、それを受け流すかのように、涼しげな顔で佇む。

 しばしその空気が続き、やがて、今まで沈黙していた紫が、その口を開く。

 

「それは、そうね。いわゆる────"宣戦布告"、なのかしら?」

「答えねば判らん、とでも言うつもりか?」

 

 刻縁から、友と相対する笑みが消え失せ、それはまさしく、『神』と言わんばかりの無の顔となって紫に答える。

 その答えと共に、二人から常人ならば即座に卒倒するであろう殺気が無差別に放たれる──────が、刻縁が放った、自らを示すかのような圧倒的な存在感によって消し飛ばされる。

 

「戯け、手緩いのだ貴様らは。闘争無くしてヒトは生きず、渇望無くしてヒトは活きぬ。その腑抜けた牙を、無慈悲に抜かれたく無くば、死に物狂いで私を止めてみせるがいい」

 

 そう言うや否や、刻縁の身体はたちまち水の塊となって潰れる。転移か、あるいは分身か。何はともあれ、後手に回ってしまったのは確実。

 そうして紫達から幻想郷の有力者達へ、刻縁の存在が語られることによって知れ渡り、それと同時に、突如として巨大な屋敷が現れる。

 

 

 

 

 その夜、美しいほどの青さを持った満月が現れ────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷の、時が止まる。

 

 





ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

次回、というよりも、次章から本編、『蒼き月の異変』を開始致します。

それにあたり、余裕ができましたら、次週の金曜更新と変更し、加えて、同じく余裕がありましたら今まで同様土曜更新という形も考えております。

最低限、二週目の土曜更新という形はとりますので、何卒よろしくお願いします。
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