東方龍帰章~Return of east Legendry~ 作:朝霧=Uroboross
ま、まさかネット小説で修羅場りかけることになってしまうとは………話作りに少し手間取ってしまいました。
最新話です。どうぞごゆるりと。
霖之助に連れられて里の外側にある空き家へと向かう二人。さしたる会話も無かったが、特段気持ちが不味い沈黙ではなかった。
しばらくして、件の空き家に辿り着き、しばし見分する。その後に霖之助は去り、残るは刻縁と水京の二人のみとなる。
空き家は寂れており、老朽がしばしば見られるものの、拠点として一時的に住むならば問題のない程度であった。
そこからは、刻縁の肩に留まる一羽の鴉に何事かを伝え、空へと放つ。それから暫く、鴉が帰ってくると、刻縁と共に来た侍従らが遠くより歩み来る。
「あら旦那様、もう仮住まいが決まったのね」
「……些か荒んでおりますが、多少の手入れで問題はありますまい」
空き家を見て侍従らはそう語る。実際、いくつかの荒れは見えるものの、人里にあった家々よりかは一回り大きく、それこそ彼らが住むには充分であった。
寂れた空き家に、祟羅が糸を紡いで補強し、刻縁と水京が最も酷い部分を、その能力によって再生させていく。それまでガタが来ていた襤褸屋は、人が住めるまでに様変わりしていった。
「現状、これで良かろう」
「ですねぇ。一先ずは、ですが」
そう言いながら建て直した空き家に入っていく。居間に皆が集い、水京が霧雨店にて買い漁った座布団を敷き、それらに座っていく。
一息吐き、刻縁が口火を切る。
「さて、ではここからの話だ」
「「「はっ」」」
先程までののんびりとした空気を改め、談話から会議へと切り替える。それはさながら合戦前の古強者の如き様であった。
「まず、前提から改めていく。水京」
「はい、さしあって我々の第一目標は、『幻想郷への帰郷』でした。これは現在、無事達成しています」
水京がとうとうと語る内容に、皆一様に頷く。それを見回して、全員が確認したと解する。
「では次に今後ですが、一つは『八雲紫、ないしは博麗の巫女等主要陣に見つからぬこと』です。これは、我々が発見されては、最終目標の達成難易度が飛躍的に跳ね上がることに起因しています」
沈黙。だがしかし、この幻想郷における主要人物に見つかってはいけないということを理解した上での沈黙。即ち、話の続きを催促させるための沈黙である。
「もう一つは『我々の屋敷をどこに配置するか』ですね。今は当代が天と地の狭間に隠して頂いてはおりますが、早急に決めなければならないことの一つです」
「天と地の狭間……って、あの不思議世界のことかしら?」
今まで黙っていたものから、一人質疑を行う狂骨太夫。それに対し水京は鷹揚に頷く。
「えぇ、そうですよ。四神に仕える補佐官に与えられる、一種の領地的意味合いを持つあの空間です。とは言え、ここは幻想郷。何が起こるか判りませんし、早々に立地を決めておくのがよろしいでしょう」
水京がそう答えると、納得したのか太夫は下がる。それを見た水京は、話を元に戻して続けていく。
「諸問題は数多く残っていますが、我々の最終目標を忘れてはいけません。何の為に外の世界に居たのか、何の為に外の世界でこの幻想郷の未来を見たのか。それを忘れることになるのですから」
瞑目して語る水京。それに連れて黙して自身らの動機を思い出す一同。
「我々の最終目標を再確認しましょう。忘れてはいけないのです。──────『幻想郷永劫生化』つまるところ、来る未来の者達を不老化するのです」
「……さて当代。実際『永劫生化』、『住人達の不老化』などと仰られる覚悟を疑うわけではないのですが、本当にそうなさるおつもりで?」
会議が終わり、水京と刻縁のみが居間に残る。他の者達は皆自室だと割り振った部屋へと戻っていく。
狂骨が会議前に淹れ、まだ残っていた茶を飲み、一息吐いた刻縁は口を開く。
「────なわけがなかろう。その様なことをすれば幻想郷が崩壊してしまうわ」
「ですよねぇ。とは言え、皆そこは理解できるところなのですが」
同じく茶を啜り、朗らかに宣う水京。旧来の友のように会話する彼らは、端からみれば阿吽の呼吸であっただろう。
「では、如何様になさるおつもりなのです?」
「あぁ、それはだな──────」
刻縁は水京にのみ、己の行き着く本来の目的を語っていく。それを聞いた水京は、驚いたように自身の細目を見開き、やがて納得したかのように頷く。
まだ夜は訪れたばかりだが、明けるのは時間の問題だろう。なぜならば、彼らは古くより共に有り、古くより共に歩み、そして侍従らの中でも、水京こそが最も古株にして友たる者であるから。
夜は更けていく。しかし、それと共に明けていく。これより訪れる幻想郷の新たなる夜明け。何が起こるかは神さえも知らず────
〈欧州 某所〉
「──御当主様、遂に発見いたしました」
その身の内に溢れる恐怖を、無感情を取り繕って隠す侍女。目の前の玉座に座る人物は、それにニヤリと口元を吊り上げる。
深紅の空間には、玉座の前に跪く侍女と同じ格好をした侍女衆が、これまた彼女と同じくして無感情を装っていた。
「ククク……遂に見つけたか。でかしたぞ」
「……ありがたき幸せ」
震えそうになる声を必死に隠し、その侍女は至って平淡に幸悦の言葉を伝える。
彼女らの首には首輪が付けられており、それは決して逆らえぬ枷。玉座に座る男はただ、その口元の犬歯を見せて獰猛に笑む。
「光栄ついでに、今宵は余の共をせよ。良いな?」
「!?……は、はっ」
絶望に打ちひしかれた顔に歪め、侍女は顔を伏せる。
男は立ち上がり、解散を命じると、自室に向かいながらなお笑みを浮かべる。
空には赤い月。照らされるは深紅の邸宅。深夜0時の鐘音が鳴り、躍動の時を示す。
刻縁達が内々に進める目的とは、刻縁と水京のみが知る真の結末とは。
そして最後に出てきた深夜の屋敷と男とは!?
次回、〈吸血鬼異変.Act1〉
次回更新は2/13です。お楽しみに。皆様からのご感想や評価等お待ちしております。