東方龍帰章~Return of east Legendry~   作:朝霧=Uroboross

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結構長くなりました。
各所での彼らの動きを軽く出してみました。ある程度の強さはわかるかと。

各個人の情報はスペカ実装(本編)前に出す予定ではあります。気長にお待ち下されれば(要望ありましたら早めに出すつもりではあります)。

※残酷描写多めです。
苦手な方は流し読みorスルー推奨。



漆・吸血鬼異変 Act.2

「さて…………」

 

 ため息一つ。静かに佇む巫女の隣、妖怪の賢者たる紫は、周囲に溢れる下卑て不愉快な"雑草の群れ"を睥睨する。

 

「伯爵様は余興がお望みのようですけれど──」

 

 呆れた顔で館を見る。それはなんともつまらなそうで、なんとも下らないと言わんばかりに眉を下げていた。

 だが、それもまた、つかの間のことである。

 

「──付き合う義理はありませんわね」

 

 静かなる殺気が周囲に満ち充ちる。その顔には先程の如く、穏やかな笑みが浮かぶ。

 巫女は依然平然としており、そよ風のように流しているが、周囲の雑兵たる妖怪達にはそういうわけにもいかない。

 

 皆全て恐れを無し、辺りへ三々五々に逃げていく。脇目も振らず、ただ其処にいる強大なまでの存在から逃げきらんとする為に。

 

「あらあら、幻想郷の妖怪も惰弱になったものね。だからこそ、余所者にいいように使われるのでしょうけど」

 

 半ば侮蔑、半ば期待外れ、そして僅かばかりの憐憫を思わせる言葉を吐き、二人はがらんどうとなった門前に佇んでいた────。

 

 

 

 

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 妖怪達は逃げていた。──勝てるわけがない、あんなのと戦えるわけもない。スカーレット伯爵よりもなお強烈な存在感を放った紫に、心の底から恐怖していた。

 だからだろう。逃げることに手一杯で、目の前の存在に気づくこともなかったのは。

 

「──大盾構え!!踏ん張りなさい!!」

「「「「はっ!!」」」」

 

 鈍痛がした。まるで壁にぶつかったかのような痛み。この痛みで半ば我に返った妖怪の一体は、周囲を改めて見る。

 狂乱状態となって、反乱した川のように襲いかかる仲間達を、言葉通り壁のようなものが逃すまいと進路上に陣取っていた。

 

「弓射隊、構え!ここから逃すことは恥と思うのです!!──放てッ!」

 

 弧を描くように取り囲まれていた自分達の頭上から、幾千もの矢が降り注ぐ。なまじ密集していたが為に避けることすらできず、その妖怪は脳天に矢を受けて倒れ伏す。

 最後に見たのは、白く翻る、智将が矢を放った姿であった。

 

 

 ・

 

 

 妖怪達は逃げていた。否、逃げるしかなかった。スカーレット伯爵なんてどうでもいい。"アレ"から逃れるにはとにかくここから離れることだけ。

 走る、走る。深い、深い森の中。自身の近くにはまだ仲間がいる。だが、確実に数が減っている。

 

 視界を埋め尽くすほどにいた仲間達が、今では視界がある程度開けてしまうまでに減っていた。

 ──おかしい。この妖怪はそう思った。だが、その次は無かった。なぜならば、その首は気付かぬ間に切り落とされ、地を転がっていたから。

 

「……良。……次」

 

 ボソリと聞こえた死神の呟き。妖怪は、最後まで自身が何を相手取ったのか、何に殺されたのか、知ることなくその意識を沈めるのであった。

 ただ、細く煌めく、月光に反射した糸筋を脳裏に刻み付けて。

 

 

 ・

 

 

 屍が転がっていた。生き残った者は居らず、また、立ち上がった者すらも居なかった。

 ──ただ一人、屍の群れの上に佇む剣士を除いて。

 

「……夜九様、此方は粗方片付き申し上げます」

「……あい、判った。なれば、此の屍を燃やし候え。野に置けば、病の元とも成る」

「御意」

 

 軽鎧を着けた若武者の一人が去っていく。剣士はただ静かに歩みを進め────一閃。

 

「ごはァ……ッ!?」

「戯け、己が部下さえ判らざるわけも無し。死して出直せ」

 

 血を払い、鞘に納める。斬られた妖怪は、その倒れ伏す際に、その胴体を二分にし、破裂した水の如く血を撒き散らして転がる。

 屍が転がる。歩むはただ独り、剣の道を選び、修羅が如き修練にて極致に至った剣客。

 

「屍を焼却せよ。生者の是否は問わん」

「「「了解」」」

 

 剣客の目前にある森から、いくつもの火柱が放たれる。屍を燃やし、この幻想郷に牙を剥かんとした不届き者達が一掃される。

 その炎は、深海をも思わせる夜を照らしながらも、決して人にみられることのない"狐火"。

 

 屍が燃える。幻想郷に仇なす者、許すまじ。そう言わんばかりに。

 

 

 ・

 

 

 混沌の世界が広がっていた。確かに目の前で"コイツ"は死んでいった。そのはずなのに、なぜ起き上がり、ましてや自分に牙を剥くのか。

 困惑したままその妖怪は喉元を食いちぎられ、哀れ絶命する。しかしそれのみに収まらず、その屍もまた起き上がり、また仲間に喰らいつく。

 

「うぅん……"びぃきゅうえいが"、なんてシロモノにあった、"ゾンビ戦法"とか言うの?凄くえげつないけれど、私には合わないわねぇ……」

 

 そんな混沌とした陣地の奥、巨大なガイコツの頭上で、頬の手の上に置き、ため息をつく遊女。

 空いた片手には大きめの扇が下げられ、背には薙刀が背負われている。

 

「姉さんは容赦無さすぎですよぅ。そんなんじゃ、奴さんの立つ瀬すら無いですよー」

「そうかしらねぇ……」

 

 眼下には混沌とした世界が平がるにも関わらず、ほのぼのとした会話が成される。

 そんな中、ある一匹の妖怪が放った妖力弾が、丁度話していた、遊女を姉さんと慕う女性にかする。

 

「…………いい度胸ね?」

 

 妖力弾は難なく避けていたが、その行動が頭にきたのか、凄惨な笑みを浮かべる遊女。

 慌てて女性がなだめるも、時すでに遅し。

 

「"皇骸(おうがい)"?ヤって」

 

 本能から刺激されるかのような、おぞましい雄叫びと共に動きだす巨大ガイコツ──大妖怪たる"餓者髑髏(がしゃどくろ)"。

 その巨体に見合わぬ俊敏な動きで、まずは女性を狙った妖怪を。次にその周辺にいた悲運なる妖怪や、同じくして、自らの主たる者達を狙わんとした者達に鉄槌を下していく。

 

「ね、姉さぁぁぁんっ!!」

「フフフフ……私の妹を狙うなんて……許さないわぁ?」

 

 遊女の逆鱗に触れた憐れな妖怪達は、次から次へと骸に変わり、死して尚赦されぬ地獄を味わうこととなっていく。

 

 

 ・

 

 

 吸血鬼達は焦っていた。何人かは館に残ってはいるものの、自らが屈服させ、集めに集めた妖怪共が戦わずして逃げる始末。

 ──このままではマズイ。そう思った彼らは至急妖怪達を集め直そうと飛び立っていた。だが────

 

「──ほう、格式高き吸血鬼ともあろう者共らが、他者に下るか」

 

 頭上より注がれる一声。仰ぎ見れば、紅いはずの月は青くなり、それを背にして浮かぶ一人の和装の男。

 勝てない。そう思わせるには充分な存在感であった。スカーレット伯爵は、それこそ言葉に出来ぬほど凄惨で、あの女共も強者であったろう。

 

 だが、この男はそれらよりも格が違う。そこにいるだけで畏怖せざるを得ず、プライドの高い吸血鬼達ですら跪きかねないオーラ。

 

「さて……まぁ、答えんとも善い。我が故郷を侵さんとした不届き者故、な?」

 

 鍔に指を付ける。──来るッ!。そう思った吸血鬼達は思い思いの構えを取る。しかし、

 

「遅い」

 

 背後から聞こえる声、次いで刀を仕舞う金属音。鳴った、と思えば視界は縦にズレていき、そのまま体が焼ける感覚と共に墜ちていく。

 何故、何故だ。何故何故なぜナゼナゼ────。疑問を浮かべながら、吸血鬼達は無残にも散っていく。

 

「ふむん……?あの紫をしても苦した手合であったと聞くものであるから、もう少しやると思ったのだが……」

 

 吸血鬼達は決して弱くはなかった。それこそ、スカーレット伯が身辺警護を任せる程には。

 だがそれさえも通じない彼こそが────(あずま)

 、(かみ)にして(カミ)。龍神の長たる『青龍』の名を受け賜ることを許された、八百万に属する者。

 

「さて……あと少しばかり露を払おうか。幕閉めにはまだ早い」

 

 そう言って、男は翔ぶ。そこには先程まで吸血鬼だった、焼けた灰のみが落ちていた。

 

 





吸血鬼異変編は次で終わらせます。
その後は旧作編で、ちょびっと魅魔サマーとかと絡ませてから本編いきます。

こちらいつでも感想、評価等待ってます。
時間更新は3/16の23:30となります。
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