タイトルが全てです
「お兄さん、今キャンペーン中なんで、くじ引けるよ、引いてかない?」
ニコニコ笑いながら、良くある三角くじの入った箱を差し出す天使。
天使なんだけど、生前良く見た感じの青と白のストライプの入った服を着ている。
どう見ても□ーソンです……。
羽根生やした金髪美形が□ーソンの制服アレンジした様な天使の衣装着て浮いてます。
歩いてたら上から落ちて来たなんか(死角だったんで何だったのかは知らない)が頭に当たって(ヘルメットをかぶって無かったんで)即死。
でもって、ここは死後の世界っぽい。
最近じゃ死後は、ほぼ全員がすぐに次の転生ってことで、天国に来る人間なんて滅多にいないため、暇してる天国担当の天使が転生作業に手を貸してるんだとか。
くじかぁ……生前、最後に引いたくじは鬼滅のだったなぁ……。
あんま、欲しくない飲料しか当たらなかった。
まあ、この手のくじは必ず引いてた俺なんで、当然、引くんですけどね。
「1枚だけ取ってくださいね……どれどれ? さっき引いた人はマック◯コーヒー(1本)だったんですけどね……お兄さんは何かな? お? おおおお! おめでとうございます! ジャ◯プ作品世界転生(特典付き)ですね! フ□ム作品とかクトゥルー系じゃなくて良かったですね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、こっちのスクラッチをどうぞ!」
これまた良くあるスクラッチくじ。
10円玉では無く5円玉を貸してくれた。
三択×項目3つ。
どの作品に、どういう立場で、何の力を持って、転生するのかがこれで決まるのか。
「作品は(ワクワク)……ヒロアカですね! 立場は…モブ、ある意味ラッキー? 峰田くんとかに憑依転生とか罰ゲームですもんね!? 力はミノ粉? なんです、これ? 唐揚げ粉の親戚ですか? からあげくん、無限に出せるとかの方がいいじゃないですかねぇ。じゃあ、早速、転生行ってみましょうか?」
「あ、その前に一個質問いいっすか?」
「はい?」
「なんで□ーソンっぽい服なんです?」
「ウチの上司が立川詣でのついでに立ち寄った下界の□ーソン気に入っちゃったからですねぇ……ホント、あのクソ上級天使が! あ、いけないいけない、ついつい堕天しちゃうとこでした! それでは、良い来世を~!」
こうして転生した俺だったが、速攻、母親に転生者であることがバレた。
母ちゃんの個性「鑑定」。
見るだけで、それがどういうものなのか分かるという優れものの個性である。
「まあ、余分な個性が一個ついてるようなもんさね、私がお腹を痛めて産んだ子に間違いない。ガキの内はせいぜい甘えな!」
こんな母ちゃんだから、前世享年加算の年齢なんて気にせず育つことが出来た。
わが母ながら実に男前である。
サバサバとした性格の母ちゃんの職業はヒーロー兼検事。
悪人、ヴィラン、弁護士そろって涙目である。
個性、鑑定ってことになってるのに嘘は簡単に判別するからな。
無意味なんで俺も素直になった。
嘘、誤魔化し、照れ隠し、全部無駄。
個性の性格上、自分が現場に出ることは無いが、警察、プロ・ヒーローには頼りにされてる。
個性で何が出来るのか良く分からないヴィランへの対応なんかでも協力を求められたりしてる。
現状、身の回りに原作登場人物は居ない。
主人公のクラスメイトと幼馴染とかいう二次創作定番の設定は無かった。
さすがモブ転生。
両親は濃いけどな……。
うん、父親も濃い個性持ち。
「
俺の今世での名前は
でもって目の前で騒いでるのが俺の父ちゃん。
個性は「マッドサイエンティスト」原理もそれを作るための技術も無しに、トンデモアイテムを作り出すことが出来る。
なまじ良く知っているものは逆に作れないから「絶対に転倒せず、坂道でも動力源無しに平地と同じ力で漕げる自転車(今の俺の愛車)」は作れても、普通の自転車や電動アシスト自転車は作れない。
ボイスチェンジャー付き蝶ネクタイとか、腕時計型麻酔銃なら作れるかもな?
父ちゃんはヒーローのサポートアイテム開発では知る人ぞ知る有名人で、原作有名どころで言えばエンデヴァーに強制排熱ベストを提供したりしてる(地味にエンデヴァーが強化されてるってことだよな?)
理論も技術も裏付けが無いんで量産は出来ず、思い付き(閃き)が無いと作れないことから、同じ様なアイテムを頼んでも全く別のものしか作れないため、常に一品ものしか作れない(前述のエンデヴァーの強制排熱ベストも定期的に新作作っては送ってるが、毎回、構造、素材、形状が全く異なる)が、父ちゃんのアイテムを求める者が後を絶たない。
あまりに要望が多いので会社を設立し、受注、受渡しなどは総てその会社経由のみで行い、本人は研究と開発のみに時間を費やしている。
……ということになってるが、マッドサイエンティストであると同時に家族大好き人間なんで、俺や母ちゃんにまとわりついて過ごしたり、注文されてもいないのに勝手に作った発明品を自慢げに見せて来たりするので、ウザいと思うことはあっても寂しいとか感じる暇が無い。
うん、学校で使うには全く役に立たないけど、このリコーダー優れものなのは確か。
指とか動かさなくても曲のイメージしっかり持って息を吹き込めば綺麗な音楽を奏でることが出来る。
ギターバージョンとか欲しいな。
エアギターしか出来ない俺でもスーパーギタリスト気分を味わえるじゃん?
「これは凄いね、父ちゃん! でも俺の音楽の授業では無意味だけど」
縦笛ということでお分かりの様に、今の俺は小学生だ。
父ちゃんはエンデヴァーが直接の知り合いだが、同じ町内に住んでるのは最近知った。
焦凍くんとニアミスしないかな? などと思ってるが、少なくともウチの小学校には居なかった。
エンデヴァーも仕事人間だから、家にはほとんど寄り付いていないため、御近所さんでもニアミスどころかテレビ以外で目にすることは無い。
「なんだってぇ~! これは天才の私としたことが、根本的なミスをぅ! ティンと来た! グローブ形状で装着し眼鏡型のスキャナーで読み込んだ楽譜を強制的に運指させるスーパー縦笛プレイヤー養成ギブスを作るしかない!」
「やめてぇ~!」
「待ってろよ、冨生! 学校どころか世界で一番の縦笛奏者にしてやるぞ!」
「やめてぇ~(半ギレ)!」
「ワハハハハハ……」」
高笑いを浮かべながら自宅裏の研究室に走り出す父ちゃん。
こうなると母ちゃん以外、誰にも止められない。
まあ、俺のことが好きだからやってくれてるのは分かるんで文句は言えない。
あ、父ちゃんも俺が転生者だってこと知ってるよ。
それ聞いて「冨生という実例があるんだ、前世は存在する! 皆、忘れてしまっているだけなんだ!」とか言い出して「前世思い出しヘルメット」ってのを一晩で作ったってのを母ちゃんから聞いた(物置の掃除させられた時に見つけて「これなに?」って聞いたら「懐かしいわねぇ」って母ちゃんが教えてくれた)。
そうして思い出した父ちゃんの前世はウルト◯マンAに倒された超獣、母ちゃんの前世はプリ◯ュアの中の一人だったそうだ。
詳しいことは聞いて無いけど、現在の濃さが納得出来る前世だ。
くじ引き転生の俺なんて大したことないな!
さて、俺の「個性」だが、公にはミノフスキー粒子を扱う能力とは知られていない。
父ちゃんや母ちゃんとも話し合った結果だ。
この世界において、ミノフスキー粒子は俺の個性でしか存在し得ない。
核融合から物体の浮遊までこなすトンデモ有能粒子なのにもかかわらずだ。
父ちゃんの発明でも発生器が作れなかったのだから、この世界で自然に存在することは無いのだろう。
この世界におけるミノフスキー粒子は、ある意味ていとくんの未元物質みたいなもん。
素直に個性の全貌を表明するのは危険過ぎる。
いや、絶対AFOが狙ってくるよね?
良くて個性強奪、悪けりゃ脳無その他のための万能素材扱い。
バラバラに切り刻まれた上に、そのパーツの争奪戦が起きる。
個性の制御は脳だろうが、ミノ粉は細胞が発生させてるのかもしれないからなぁ……。
ヒロアカってダークな部分は、とことんダークだからな?
友情、才能、勝利のジャ◯プマンガの王道だけど、設定的には闇深だし……。
原作で語られて無いけど、無個性起因のいじめとかで自殺する子供とか後を絶たなそうだし、将来を悲観した親による無理心中とかもあるんじゃね?
ま、そうした事はともあれ、俺の個性は「電波阻害」ってことになってる。
小学校でもスマホ持ち込んでる子は結構居るんで「美延須、授業中は電波阻害頼むな、個性を伸ばす練習だ、練習」と担任の福本先生に毎日頼まれてる。
おかげで誰も俺の個性を疑うことは無い。
強化されりゃ、軍事行動やテロなんかで有用な力とも言えるけど、今は最大でもせいぜい小学校の体育館程度の閉鎖空間でしか出来ないということになってるんで、そういう目で有望視する人間も居ない。
二度目の小学生生活も慣れたもんだが、小学校の授業にしても国語や算数はともかく、社会なんかは結構違うし(そもそもが小学校の社会はローカルネタ多いし)、理科も個性の研究の過程で発見された新事実なんてのもあって、微妙に教科書の内容が違うから前世の知識頼りは危険だ。真面目に授業を受けている。
元・成人男子にしてはクラスメイトとは割と上手くやってるんじゃないかな?
父ちゃん作った非売品のテレビゲーム(裸眼で3D表示、ヒロアカ原作の合格案内のオールマイト映像より凄いぞ?)とかで一緒に遊んだりしてるし。
原作への関与?
関わるのも危険だけど、モブゆえに下手に避けようとしてナレ死とかありそうなんだよね。
光学兵器ならミノ粉で対処出来るけど、個性が溢れてる社会だから、対応出来ない脅威の方が多すぎてね?
番外編のヴィジランテの方が脅威度は少ないけど、たぶん現時点がヴィジランテの時間軸か、その少し前なんだよねぇ。
焦凍くんがタメらしいことからの推測。
ヴィジランテの時間軸でデクくん小学生だって言うし、今の俺も小学生。
あっ! エンデヴァー強化されちゃってるから、苦労マン、ヤバくね?
そんなことを自分の勉強部屋で個性訓練(ミノ粉によるミノフスキー・クラフトでフヨフヨ浮いてる)しながら考える俺であった。
サブタイトルは、ここでも余所でも苦労してるんで、内容の一部を含んだ、他の作品タイトルで行くことにしました
これならそうそうネタに詰まることもあるまい(慢心)