【外伝】となりの黒騎士くん   作:クロカタ

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なんとなくカレンダー方式作ってみましたが多分二度とやらないと思います(白目)

前半がアカネ視点
後半、少しだけ第三者視点が入ります。


始動! ジャスティスクルセイダー!! 1

 高校最初の夏休み。

 新しくできた友達と海に行ったり、家族で旅行したりと楽しい日々を過ごす長期休暇……のはずだった。

 

8月

訓練!

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「私の夏休みが終わった……!!?」

「終わっちゃったなぁ」

 

 まだまだ夏の暑さが残る九月。

 朝から焼け付くような太陽が輝く通学路を歩く私の呟きに同じく死んだような目をしていたきららが頷いた。

 

「ずっと訓練続きだったね……」

「グッバイ私達の青春……」

 

 高校最初の夏休みはほぼ全ての日程がジャスティススーツの訓練に終わった。

 別にそのことに関しては私達が選んだことなので別に文句自体はないのだけど、夏休みという一大イベントをそういう風に過ごしてしまったという罪深さがもう半端ない。

 

「きらら、旅行とか行った?」

「ううん。私の都合に合わせると弟と妹が可哀そうだから、私抜きで行かせた。でもたくさんお土産買ってきてくれたよ」

 

 いい家族だなぁ。

 私の姉共なんてそれぞれの友達同士で海に行ってきたことをこれ見よがしに煽ってきたんだけど。

 写真見せてもらったけど友達といっても女の子友達オンリーだったけれども。

 あんな姉共も大学内ではモテているというのが疑問でしかないが。

 

『お姉ちゃんたちがモテるとか嘘でしょ』

『(同性に)モテるわよ』

『ええ(同性に)モテるね』

 

 含みを持たせる言い方にどこか薄ら寒い気持ちになったのは気のせいであってほしい。

 そんなこんなで私の高校最初の夏休みは訓練だらけの毎日で終わりを迎えてしまったわけだけど……その代わりに私達はジャスティススーツを使いこなせるようになった。

 社長の見立てでは残るは実戦のみということだ。

 

「あ、おはよっ、きらら!!」

 

 そこまで考えていると不意に隣を歩くきららに誰かが声をかけてくる。

 あ、体育の合同授業でよく一緒になる子だ。

 たしかきららの友達で、此花ハイルちゃんだっけ?

 肩ほどまでの黒い髪とほんわかとした雰囲気が印象的な子でよく覚えてる。

 

「おはよう。ハイル、一か月ぶりだね」

「そだねー。もう夏休みは宿題とか宿題とかで大変だったよ」

「宿題しかしてないじゃん。他になにかなかったの?」

「他は……」

「……ハイル?」

 

 きららの声に彼女はハッとした顔になる。

 彼女は一瞬見せた思いつめるような表情を変えながら誤魔化すように手を横に振った。

 

「特にないかな! 冷房利かせた部屋にいた記憶しかないや!」

「夏休みの思い出ないの……?」

「えへへ」

 

 困ったように笑うハイルちゃん。

 すると後ろの方から彼女の名を呼ぶ声が聞こえる。

 

「ハイルー」

「お久しぶりー」

 

 ハイルちゃんの友達かな?

 後ろを見た彼女は申し訳なさそうに私達へと顔を向ける。

 

「あ! じゃ、そういうことで!」

「どういうことなんだよ。それじゃ、二学期もよろしくね」

「よろしく! ではではー」

 

 そう言ってシュビッ、と手を翻して後ろの友人たちと合流するハイルちゃん。

 明るい子だなぁ。

 訓練ばかりの荒んだ夏休みを送っていた私にとっては眩しすぎる存在ではあるけれども。

 

「おい」

 

 その時、私のすぐ傍で声が発せられる。

 夏休みの訓練が抜けていないからか咄嗟に後ずさりながら背後を振り向くと、そこには呆気にとられた男子生徒の姿があった。

 私に見せるように掌の上にのせてあるのは黒騎士くんに似た黒い仮面の戦士の二頭身キーホルダー。

 ただ似てるという理由でカバンにつけていたそれがなくなっているのを確認した私はサーっと顔から血の気が引いていく。

 

「えーっと、これ、落とした……ぞ?」

「……アッ」

 

 やらかした。

 めっちゃやらかした。

 音もなく背後に立つな、と言わんばかりの動きを見せるのは駄目すぎる。

 私が同じ立場に置かれたら間違いなくドン引きしていることだろう。

 てか自分の奇行に他ならない私が一番ドン引きしてる。

 

「あ、ああ、ありがとう!」

「お、おう。な、なんか悪かったな?」

 

 戸惑いながら彼は顔を背けるように前を向き、そのまま道を進んでいく。

 ただの男子生徒。

 物静かで、どこか惹かれるような雰囲気の彼の背中から目を離すことができなかった。

 

「……」

「アカネ? どしたの?」

「あ、いや、なんでもない」

 

 彼、どこかで会ったかな……。

 なんだか初めて会った気がしない男子生徒の後ろ姿を見送った私は再びきららと共に道を歩き始める。

 


 

 

「って感じでアカネは朝やらかしたというわけです」

「先輩はゴルゴかなにかなの?」

「もう言わないで……」

 

 午前中で学校も終わり、私ときららはジャスティスクルセイダー本部までの道中にある喫茶店で葵と合流することになった。

 その際に私の朝の奇行が暴露されてしまったわけだが、これに関してはなにも言えない。

 あの男性生徒にはきっと変な挙動をする女子生徒として認識されていくことになるのだろう。

 

「あとは怪人との実戦らしいけど、私個人の考えとしてはまだまだ足りないと思う」

「それはどうして?」

「練習場でエイム練習してもオンラインで生きた動きをする相手に同じように当てられるかって話」

 

 ゲームで例えられると途端に分かりにくくなるよ……。

 きららも苦笑しながら首を傾げる。

 

「ゲームなら慣れていけばいいだけ。でも私達のは現実。怪人は私たちが戦いに慣れるのを待ってくれるわけじゃないし、巻き込まれる人たちの命も一つだけ。つまり、失敗なんて絶対に許されないってこと」

「それは、その通りだね」

 

 もし私達が戦うことになるような状況になれば失敗なんて絶対に許されない。

 黒騎士君がくるかどうかの話じゃなく、私達の敗北で誰かの命が危険に晒されることになる。

 そんな事態は断じて許してはいけないんだ。

 

「そもそも怪人の活動時間が謎なのも不可解ではある」

「大抵夜に暴れたりするよね」

「でも時折、昼間に出たりするやつもいる」

 

 確かに、葵の言う通り怪人の出現時間は夜が多いが昼間に出ないこともない。

 

「そのうち学校の授業中の時とかに現れたりするようになったら、私達も色々と覚悟しなくちゃならない」

「覚悟、か」

 

 日常を手放し、人々の平和のために戦う。

 言葉だけでは美談にも見えるけど当人である私達からすれば悩むどころの話じゃないんだよなぁ。

 まだ戦っていないとはいえ、そういう状況にならないとは限らないのだ。

 

「どちらにせよ私たちが必要になる時が来たら全力で行くべき」

「……。ねぇ、本当に君葵? 普段と様子が違いすぎて本人かどうか疑っているんだけど」

「実は私も目の前の真面目系が葵かどうか疑ってた……」

「キレそう」

 

 いや、だって訓練中も映画のワンシーン再現しようとして悦に浸っていたり、これみよがしにジャンクフードもりもり食べていたり好き放題していたから。

 そこらの大学生よりも度胸あるよ、この中学三年生。

 

「実は私、葵の妹の晴です」

「え、嘘!?」

「ウ・ソ。」

「……」

「アカネ、フォーク片手に立ち上がるのはやめなさい」

 

 きららに肩に手を置かれ、落ち着きながら逆手に握りしめたフォークをお皿に戻す。

 そんな私に角砂糖を指で構えて応戦しようとしていた葵は何事もなかったかのようにコーヒーに角砂糖を投入する。

 

「因みに妹は本当にいる。私に似て可愛い妹」

「「……」」

「おい、なにその“こいつの妹とかかわいそうだな”と言いたげな目は。キレそう」

 

 いや、どうみても苦労していそうなのが……。

 面倒な姉を持つ身としては妹ちゃんの苦労がものすごく分かってしまう。

 

「……そろそろ本部に行こうか」

「そうだね」

 

 ちょうどいい時間だしKANEZAKIコーポレーション、ジャスティスクルセイダー本部へと向かうべく席を立った瞬間———腕につけた時計『ジャスティスチェンジャー』が振動する。

 

「これは、緊急呼び出し、だよね?」

「説明に間違いがなければ、多分そう」

「まさか……」

 

 音もなくそれぞれ振動するチェンジャーを見た私達は顔を見合わせる。

 緊急招集がかかる理由は大抵決まっている。

 それは、怪人の出現だ。

 


 

“怪人はどこからやってくる?”

 

 

 世間で数多く議論されている怪人という存在は未だに解明されていない謎に包まれている存在だ。

 能力、容姿もバラバラ。

 肉体を構成する組織すらも類似する点も確認できない。

 まさに謎に包まれた存在である怪人だが、ただ一つ確かに言えることがあった。

 それは怪人が“地下”からやってくるということだ

 

 

 

「14時23分。———区、地下道にて怪人が出現した!!」

 

 緊急招集に応じ、本部へと向かった私達はすぐさまKANEZAKIコーポレーションが所有する移動用のヘリに乗りこむことになった。

 よほどの緊急時なのか社長はヘリを操縦しながら私達に今の状況を、渡された端末の映像と合わせて説明してくれているが正直、全然内容が頭に入らないくらいには映し出されている映像は壮絶なものだった。

 

『キュルルルル!!!』

『きゃああああ!?』

『う、うわあああ!?』

 

 そこには横転した電車から逃げ惑う人々と外骨格のような骨を纏った昆虫然とした怪人が襲い掛かろうとする姿。

 ただそれだけの怪人……ではない。

 その怪人はゆらめくと、まるで分身するようにその姿が増え、それぞれが固有の意思を持って電車内にいる人々を集団で襲い掛かっていたんだ。

 

「対象の名を『増殖怪人』とする!! 現在断定できる能力は増殖による戦力の増加!! 軽々と電車を横転させたことからそれによる弱体化も確認できん!!」

「社長! このカメラに写ってる人たちは!?」

 

 間違いなくこの映像は電車内にいる誰かが撮影したもの。

 映し出されている映像からしてたくさんの人が怪人に襲われそうになっているのは分かる。

 怪人に襲われたらどんな目に遭うかは私が一番よく分かっている。

 焦燥とあの日の恐怖を思い出しながら、震える手で持っているスマホを見ていると、増殖怪人の振るう爪によりスマホが地面に落とされ一瞬だけ画面が暗転する。

 

「社長!」

「心配ない!!」

 

 地面に落ち亀裂が入った映像に、地下内の怪人たちと捕らえられた人々が映り込んだ次の瞬間———地下鉄内の天井が突如として爆発する。

 

「———彼が来ているからな!!」

 

 砂煙と共に入り込んだ黒い影———黒騎士くんが今まさに一般人に牙をむこうとしていた増殖怪人を蹴り砕いた。

 一瞬にして増殖怪人の一体を片付けた彼はそのまま次の標的へと狙いを定めるようにその姿をかき消した。

 

「現在、黒騎士は地下内に大量に現れた増殖怪人を片っ端から倒している!!」

「……なら、私達はなにをすればいいんですか?」

 

 葵の質問に社長は短い沈黙の後に答える。

 

「なにも起こらなければそれでいい。だがもし、もしも増殖怪人が地上に出るようなことがあれば……地下の怪人を掃討している黒騎士が対応することは難しい」

「そのための私達ってことですか」

「……あくまでこれは用心のためだ。余程のことがなければ黒騎士を相手にしている怪人が地上に出るなど———ッ!!」

『主任!! 対象が地上に出現!!』

「えぇい!! フラグ回収早すぎだろう!!」

 

 本部にいる大森さんからの報告に社長が荒ぶる。

 

『地下個体との違いから見てこちらが本体の可能性が高いです!!』

「しかも私達が本命か!? くっ、怪人どもめぇ!! レッド! イエロー! ブルー!」

「「「はい!!」」」

 

 社長に声を揃えて返事をする。

 戦う心構えは既にできている。

 後は———、

 

「ジャスティススーツの着用を許可する!!」

 

 戦支度を整えるだけだ……!!

 ヘリの中で私達はチェンジャーを操作し、変身を行う。

 

 


 

 

 増殖怪人———本来、複製怪人ギクーロと名付けられた怪人。

 肉を食らい、増える。

 単純なただそれだけの力を持って生まれた怪人は自らの主、オメガの命により日本壊滅の使命を行うべく地上へと這い出た。

 まずは地下鉄に蟻のように集まる人間を食らい力を蓄えてから地上への侵略を行うはずだった。

 そうなれば複製を作り、その本体(・・・・)すらも自由に定められる彼は無敵になるはずだったのだ。

 

 だが、彼にとっての死神は驚くほど理不尽な速さでその命を摘み取りにやってきた。

 

『さっさとくたばれ』

 

 警告され、事前に教えられた情報よりも遥かな殺意をたぎらせた黒い戦士の拳が自身へと向けられたからだ。

 話が違う。

 容赦の欠片すらない、破壊の権化と化した黒騎士に複製怪人は恐怖した。

 ひたすらに複製を行い自らの囮を作り続けながら彼は、自らの本体を地上に逃がそうとする。

 自らの半身ともいえる複製たちがただの拳で弾けていく。

 自身の不死身ともいえる能力すらも意味をなさないものに変えていく黒騎士という存在に彼は恐怖し、這いずるように逃げるが———、

 

『チジョウ、デラレナイ!!?』

 

 地上への上がり方が分からない。

 複製怪人が無知なわけではない。

 彼は目の前に地上へと続く階段があったとしてもそれを地上へ上がるものだと認識(・・)することができなくなっていたからだ。

 

『アアアアアア!!!』

 

 頭がおかしくなりそうだった。

 次々と自身の肉体を屠っていく戦士に追い詰められ、死にものぐるいで自身を複製していく複製怪人。

 しかし、彼は運よく自身が増やしすぎた複製により無理やり地上に押し上げられることで———ようやく地上へと脱出することに成功したのだ。

 

「コノママ、ヒト、クエバ!!」

 

 食い続ければ複製は増やせる。

 増えれば誰にも本体を見破ることはできない。

 黒騎士でさえ、どうにもすることはできない。

 獰猛な殺意に身を任せ、ヒトを襲おうとしたその時———頭上から三つのなにかが落ちてきた。

 それらは軽い音と共に着地すると、剣、斧、銃、といったそれぞれの武装を複製怪人へと向けながら声を上げた。

 

「燃える炎は勇気の証! ジャスティスレッド!」

「流れる水は奇跡の印! ジャスティスブルー!」

「轟く稲妻は希望の光! ジャスティスイエロー!」

 

「「「三人合わせて! 三色戦隊ジャスティスクルセイダー!!!」」」

 

 なんだこいつら。

 複製怪人は素直にそう思った。




【複製怪人】
・エネルギーが尽きない限り自身の複製を作れる。
・身体そのものだけじゃなく、腕や足などの部分も複製可能
・本体は存在するが、コアを移動させることで本体そのものを入れ替えることも可能。
・本体が最も戦闘力が高い。

今回の黒騎士くんはハイルが怪人に襲われた件で怪人に対しての殺意がMAXとなっています。
本編73話「触れてはならない記憶 2」 で中途半端に戻った記憶の時期がこのあたりとなります。

次回の更新は明日の18時を予定しております。
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