【外伝】となりの黒騎士くん   作:クロカタ

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前話のカレンダー内の“あ”という文字は空白をつくるための工夫のようなものなので特別な意味はありませんのでご安心をー。

二日目、二話目の更新となります。

今回はアカネ視点でお送りします。


始動! ジャスティスクルセイダー!! 2

 最初にポーズをとることは反対だった。

 普通に恥ずかしいし、いかにメディアにアピールするためとはいえやりすぎ感がいなめない。

 

『なにあれ、コスプレ……?』

『撮影かなんかか?』

『黒騎士に影響されたんかな……』

 

 そして周りの視線が痛い。

 傍目で見れば三人のコスプレ女が怪人と向かい合っているという異質な見た目なのでそう思われても仕方ないけど……相手は人間を襲う怪人。

 このまま避難させないとここにいる人たちの命が危険に晒されてしまう。

 

「皆さん! 早く逃げてください!! これは撮影ではありません!!」

 

 逃げるように促しても誰も逃げようとはしない。

 それどころかこちらにスマホやカメラを向けて撮影する始末だ。

 

「ニク!! ヒト、エサ!!」

「ッ」

 

 カマキリに骨ばった骨格が覆ったような異形の怪物がその両腕の鎌を大きく広げ、近くで呑気に動画を撮影している男性に襲い掛かる。

 

「———え?」

 

 撮影だと思い込んでいた男性に怪人の腕が襲い掛かろうとした瞬間———怪人の足に葵が放ったエネルギー弾が直撃し、バランスを崩す。

 

「硬い。外骨格にはダメージは通らないみたい」

「足止めできただけで十分!!」

 

 飛び出した私が怪人と男性の間に入り、その鎌を剣で受け止める。

 ズンッ!! というとてつもない衝撃がスーツ全体に走り、足元に罅が入る。

 

「おっも……!?」

「ナニモノ、ダァ……!!」

 

 完全にパワー負けしてる!?

 間近でキリキリと歯ぎしりするような不快音を鳴らす怪人に恐怖を押さえ込みながら、今一度自分を奮い立たせる。

 

「さ、撮影じゃ……ない?」

「早く、逃げてください!! 急いで!!」

「あ、ああ!!」

 

 ここまできてようやく周りがこれが撮影ではないと理解したのか、皆が一斉にその場から駆け出していく。

 よし! 一般人が離れてくれた!!

 

「でも私もピンチ!」

「ジャマ、スルナ!!」

 

 増殖怪人の脇腹が肋骨のように開き———もう一対の鎌が増殖(・・)するように増える。

 ッ、個体の増殖だけじゃなくて自分の身体でもできるの!?

 まずい、そう思った瞬間、こちらに近づいたきららが増殖怪人の脇腹に電撃を纏わせた斧を叩き込んだ。

 

「ッ、らぁ!!」

「ガァ!?」

 

 バキン!! と骨格の砕ける音と共に増殖怪人が横に吹っ飛ばされる。

 九死に一生を得た私は隣に並び立ったきららにお礼を言う。

 

「イエロー、助かったよ……」

「油断しない! さあ、力を合わせるよ!!」

「うん!!」

 

 怪人との初めての戦闘。

 実際に相対してみて分かる。———あの時と同じだ。

 スーツを纏っていても伝わる純然とした殺意。

 私達を絶対に滅ぼすという意思がその虫を思わせる双眸から強く伝わってくる。

 

「ガァァァ!! ジャマヲスルナ!! ジャマヲスルナ!!」

 

 増殖怪人が悲鳴に似た叫び声をあげると同時に奴の身体が盛り上がり、背からいくつもの鎌が生えてくる。

 それと同時に眼球も増え、もう控え目に言ってホラーも真っ青な化物へと変貌してしまった。

 

「手数と視界を増やしたってことかな……?」

「厄介だけど……どうする?」

「片っ端から切り落として本体を狙うしかないと思う」

 

 奥の手を使うとしても追いつめないと避けられてしまう。

 なら、私達がやるべきことはこいつを一般人に襲わせないようにしながら倒すということ。

 つまりやることは最初から変わっていない。

 

『———こちらの避難指示を終えたのでお前たちのモニターをする!!』

「社長。今からあれに攻撃を仕掛けます」

『映像はこちらで確認している!! 恐らくいくら攻撃を加えても増殖能力で再生してしまうだろう!!』

 

 なら攻撃しても意味がないってこと?

 

『だがそれでいい!! 奴の動きを止めればジャスティスクルセイダーのファイナルウェポンを食らわせてやればいい!!』

「つまりは?」

『チームワークでタコ殴りにして止めをさせ!!』

 

 私たちに戦隊ヒーローをやらせておいて全くヒーローらしくない作戦を提案されてしまった。

 だけれど、人命のためには手段を選んでなんかいられない。

 

「行くよ、イエロー、ブルー」

「合わせるよ、レッド」

「私は後方支援。しっかりと狙い撃ってあげる」

 

 私ときららが前に出た———瞬間、その片腕を大きく広げた増殖怪人が私ときららを薙ぎ払おうとする。

 ただの一振りで車すらも吹き飛ばすほどの威力のあるそれを避けながら、私は怪人へと近づこうとする。

 その最中に葵のエネルギー弾による援護が入り、怪人は苛立つような声を上げる。

 

「ぬ、グゥ!!」

「ふん!!」

 

 まずはきららが斧を叩きつける。

 骨格に罅をいれ、その罅の入った部分に私が剣を叩きつけ引きちぎるように切り裂く!!

 

「硬い! けど!!」

「斬れないほどじゃない!!」

「コシャクナァ!!」

 

 同時に振るわれる腕。

 カマキリの鎌のようなそれを咄嗟に剣を構えて防御するもその力と勢いのあまり大きく後方に退かれてしまう。

 

「やっぱり、力じゃ勝てない……!!」

 

 パワーと防御特化のきららはなんとか耐えられているけど、バランス重視の私じゃ簡単に飛ばされてしまう。

 それにきららの方もスピードで負けているから増殖怪人に押されてしまう。

 

「ッ、ブルー!!」

「これは効くか、どうか……!」

 

 チェンジャーから新たな武装を取り出したブルーが、その手に持ったライフル型のそれを放つ。

 エネルギー弾とは異なる実弾は、増殖怪人の胴体に直撃、ガィンッ! という金属音の直後に小規模の爆発を引き起こす。

 

「———ソレダケカ?」

「……うーん、効果なし。ちょっと硬すぎるからレッドとイエローに任せるしかない」

「それだけ知れればいい!」

 

 そもそもがこの怪人は堅い。

 生半可な攻撃じゃダメージどころか逆に返り討ちにあってしまうくらいには強い。

 

「くっ」

 

 増殖怪人が振るういくつにも増えた腕が嵐のように周囲を破壊し、その余波で後ろへ吹き飛ばされる。

 後方にあった自販機に背中から激突し、なんとか立ち上がりながら呼吸を整える。

 

「黒騎士くんは、こんな相手とずっと一人で戦ってきたんだ」

 

 今戦っていてもすごく怖い。

 負ければ周りの人たちの命だけじゃなく、自分まで死んでしまうかもしれない。

 そんな思考が頭によぎるだけで、私が前に踏み出そうとする足が止まりそうになる。

 ———でも。

 

 黒騎士くんは一度たりとも怪人を相手に引くことはなかった。

 

 それがどれだけすごいことか。

 どれだけ大変なことか。今、もう一度思い知らされた。

 

「この程度で、絶望していたらいつまでたっても私は……あの路地裏で震えていた“弱い私”のままだ!!」

 

 自分のような人を増やしたくないから戦おうと思った。

 黒騎士くんの背中に憧れて立ち上がった。

 だから、こんなところで挫けてなんていられない!!

 

「ハァァ!!」

 

 自ら突っこんで振り下ろされる鎌に剣を振り抜く。

 柔らかい関節を切り裂かれ両断されたことに増殖怪人が驚愕した隙を狙い、さらに剣を振るいまた別の腕を切り落とす。

 

「ッ、ナンダ、コイツ!!?」

 

 後ろに下がっちゃ駄目だ。

 一撃ごとに自分の命を懸ける覚悟でまだ色のついていない鈍色の剣を振るう。

 

「シニゾコナイガァ!!」

 

 さらに増やされた腕が私の剣の切っ先を叩き折ってしまう。

 折られた!?

 

「いや、まだ!!」

 

 眼前をよぎる折れた剣の切っ先を掴み取り、そのまま増殖怪人の喉に突き刺し———飛び膝蹴りの要領で繰り出した膝でさらに奥に無理やりねじ込む。

 

「ガ、ハッ!?」

「イエロー!!」

「うん!!」

 

 電撃を貯めたイエローがその手で握りしめた斧を、力任せに放り投げる。

 風切り音と共に向かっていった斧は増殖怪人の胴体に斜めに突き刺さりそのまま壁へと磔にされるようにめり込む。

 同時にモニターをしている司令が指示を下す。

 

『今だ!! ファイナルウェポンを使え!!』

「「「はい!!」」」

 

 必殺技を放つジャスティスクルセイダーファイナルウェポン。

 それを所有するブルーがチェンジャーからそれを転送させると同時に私達は、映画やアニメで見るような未来的なデザインの大砲を三人で持つ。

 

『お前達のコアは三人で一つ!! つまりはこの武装は三人でなければ最大の威力を発揮できない!! だが!!! 逆を言えば三人揃えばお前たちは強い!!』

 

 三人で私たちはようやく一人前だ。

 だけど、それでいい。

 私たちは一人一人は黒騎士くんのように強くはないけど、三人で協力し合えばどんな敵とだって戦えるはずだ!!

 

「コア安定!! 充填完了!!」

「目標を中心に捕捉、いけるよレッド」

「了解!! ファイナルウェポン———」

 

 真ん中でファイナルウェポンのトリガー握る私が、発射の合図を口にする。

 

「発射!!」

 

 トリガーを引くと同時に放たれたのは赤、青、黄の三色で構成されたエネルギーの奔流。

 ビーム、と呼称されるそれはまっすぐ増殖怪人へと向かい———その胴体へと直撃した。

 

「ギ、ガ、ガァァァァ!!?」

 

 ビームは貫通せず増殖怪人の肉体を侵食するように蝕む。

 ついには口、眼、身体の至る場所から三色の光を放出した後に、増殖怪人は破裂するように爆発を引き起こした。

 

「え、いや、思っていた十倍えぐい……」

「威力が凶悪すぎない……?」

「ジャネンバみたいな消滅の仕方……」

 

 まさしく必殺技ということだ。

 ……とにかく怪人は倒せた。

 地下で戦っている黒騎士くんも掃討し終わるだろうし、ここで私たちの仕事は終わ———、

 

『いや待て!! まだ反応があるぞ!!』

「「「!!」」」

 

 まだ生きている!? 咄嗟に折れた剣を構えようとした瞬間、私達の間を犬くらいの大きさの何かが高速で横切った。

 

「ヒト、ヒトサエ、ニク……ァァァ!!」

 

 気持ち悪!?

 カブトガニみたいななにかがカサカサ地面を張ってる!?

 

「あれが本体!?」

『いかん!! 地下の増殖体がデコイだとすれば奴を逃がせば大変なことになる!! すぐに始末しろ!!』

 

 すぐさま葵がエネルギー弾で止めを刺そうとしても異様な速さで避けてしまう。

 このまま剣を投げつけて地面に縫い付けてやろうか。

 そう思い剣を逆手に持ち狙いを定めようとした瞬間———突如として地面が割れる。

 

「ギィッ!?」

「本体はテメェか」

 

 割れた地面から跳躍と共に出てきたのは黒騎士くんであった。

 ずっと戦っていたのだろうか、全身を怪人の青い血で染めた彼は着地と同時に増殖怪人を目にする。

 彼の視線にさらされた増殖怪人はそのまま翅を生やして逃げようとするが———それよりも先に黒騎士くんの手に捕まり、握り潰されてしまった。

 

「チッ、手間かけさせやがって。……ん?」

 

 苛立つように手を払った彼の視線がこちらへ向けられる。

 彼の登場に呆気にとられた私は、咄嗟に投げようとしていた剣を地面に落とす。

 

「私たちは敵じゃない! 君と同じように怪人と戦っているんだ!!」

「……お前らがさっきのを相手にしてたのか?」

 

 む、無視……?

 スルーされてちょっとへこむ。

 

「そ、そうだよ」

「……そうか」

 

 そう言うなり彼はその場を飛びあがりどこかへ行ってしまう。

 一瞬で消えてしまった彼に私ときららは緊張を解きながら地面に座り込む。

 

「怪人相手にしている時よりも緊張した……」

「目の前にしてみるとどれだけ強いかよく分かるね……あれは桁違いだよ……」

「あれが、私達の日常を守っていた黒騎士、なんだね」

 

 すぐに肩を並べて戦えるだなんて思っていない。

 だけど私達は今日、怪人と戦えるだけの力を示した。

 

 私たちに敗北は許されない。

 

 だからこそ、私達はもっと強くなっていかなくちゃならない。

 今日はその第一歩だ。




黒騎士「(え、なんだこいつら。せ、戦隊? 喧嘩売られる前に帰ろ……)」

最後の黒騎士くんの内面は大体こんな感じでした。
ファイナルウェポンは周囲への被害を出さないために怪人の身体を内側から消滅させるという地味にえぐい武装です。
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