【外伝】となりの黒騎士くん   作:クロカタ

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今回は社長中心のお話となります。

前半がプロトゼロ実験記録

後半が社長視点となります。


レイマのスーツ実験記録(VS音響怪人)

実験記録1【20XX.01/21.XX:XX:XX:XX】

 

「ではこれより強化スーツプロトゼロの試作テストを行う」

 

「これを実験記録1とし、テストを重ねていく」

 

「プロトゼロは地球人に適応、強化するためにこの私が開発したものだがいかんせんエナジーコアには解明できていない部分が大きい」

 

「よってまずはプロトゼロと接続したシミュレーションでのテストから始めたいと思う」

 

「いつ時間に限りが来るかは分からない」

 

「最悪、この私がプロトゼロを着る事態になるかもしれない……が、まあ今は待ち望んだ試作テストだ」

 

「前みたいにラボを爆破させないように気を付けなければ」

 

 

 

 

「……実験記録1。シミュレーションの結果はプロトスーツが疑似装着者を爆散させるという計算結果が出た」

 

「つまりこのままでは、スーツを着たら文字通りボンッ、ということになるわけだ」

 

「私の腕が落ちたということではないと信じたいところだが……この結果には正直参っている」

 

「……このままシミュレーションを続けていく」

 

 

実験記録2【20XX.01/23.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録2。シミュレーションの結果は同じ」

 

「不備はない、はずだ。強化スーツは完全に機能するはずなのだが……どういうわけか装着すら発動しない」

 

「考えられる原因は強力すぎるエナジーコアにスーツそのものが適応していないということだ」

 

「もう一つがこのエナジーコアにはなにかある、という可能性」

 

「このどちらか、それかまた別の可能性があるかどうかだ」

 

「引き続き検証を続けていく」

 

 

実験記録3【20XX.01/27.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録3……ヴァァ……なぜスーツを着たら装着者が干からびるんだぁぁぁ」

 

 

実験記録4【20XX.01/30.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録4」

 

「ようやく判明したことだが、プロトゼロは装着者の生命力を吸い取る機能を備えていることが判明した」

 

「拒絶反応、というべきなのかは分からないが、ますます地球人が着用していいスーツではなくなってしまったということになる」

 

「……私がこれまで携わってきたコアとは何かが違う」

 

「少し不気味にさえ思えてきてしまう」

 

 

……

 

 

実験記録38【20XX.02/22.XX:XX:XX:XX】

 

「なあ、プロトゼロ」

 

「悩みとかない? こう、ほら、変身してくれない理由とかさ」

 

「ここには私一人しかいないので、存分に話してもいいぞ」

 

「土下座か? 土下座をすればいいのか? こう“お願いします、プロトゼロ様!!”と言えばお前は心を開いてくれるのか?」

 

「……ん?」

 

「っ!? な、なぜカメラが起動しているんだ!? お、大森くーん! ちょっとカメラつけっぱなしだよー!?」

 

実験記録39【20XX.02/23.XX:XX:XX:XX】

 

 

「お、おおお、お願いします!! プロトゼロ様ぁぁぁぁ!!」

 

 

……

 

実験記録45【20XX.03/01.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録45。プロトゼロの装備について記録に残すのはうっかり忘れていた」

 

「プロトゼロは、来るべき脅威に地球人が立ち向かうために用意した武器だ」

 

「驚異的なエネルギーを内包するエナジーコアを核として、人体の機能を拡張・進化させるものといってもいい」

 

「プロトゼロはあくまで試作品ということから武装はない」

 

「それについては次世代のスーツで追加するつもりなので、プロトゼロの役割は主に地球人に装着できるか否かの検証と、データ取りになる」

 

「耐久性、耐熱性が高く、自己再生機能こそが備わっているが戦闘には不向きといってもいいだろう」

 

「そもそもの問題、驚異的なエネルギー量を要するエナジーコアに耐えられず、推定の三分の一程度の出力しか発揮できない」

 

「……。そこで思いついたのは、エナジーコアの出力を三等分。つまり三つの強化スーツに分配し、エネルギーを安定させるという方法だ」

 

「理論上は可能なので、次のスーツにはこの機能を盛り込むことになるだろう」

 

「そのためには、三人の適合者を見つけなければならないが……これが大変だ」

 

 

……

 

実験記録54【20XX.03/24.XX:XX:XX:XX】

 

「……よし」

 

「スゥー……」

 

「オンカラキリソワカッ!!」

 

「ピンコロピンコロ!」

 

「ジャンボゥゲ―!!」

 

「アポピロピョーン!!」

 

「ブビデ・バビデ——」

 

「このクソ忙しい時になに遊んでんだあんたはぁぁ!!」

 

「ブゥゥゥ!?」

 

「プロトゼロに変な呪文囁いている暇があったら仕事してください!!」

 

「お、大森君!? 違うのだ!! これは呪術的な要素を込めたアレで……アッ」

 

 

……

 

 

 

実験記録65【20XX.04/12.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録65。プロトゼロを装着すれば高確率で変身者に害をもたらす」

 

「あらゆる方法を模索してみたが、そのどれもが意味をなさず、シミュレーションの全てが失敗に終わった」

 

「……理由は依然として判明していない」

 

「利用されたくはない、というコアの強い意志によるものなのか、はたまたスーツそのものが間違っているのか、現状の私の科学力ではそれを解明する手段を持ち得てない」

 

「正直、手詰まりだ」

 

「……我々に、いつまで時間が残っているのか。それが分からないのが不安でしかない」

 

 

 

……

 

 

実験記録102【20XX.06/14.XX:XX:XX:XX】

 

「実験記録102。数々の検証をしてきたが、どうやってもプロトゼロを地球人に装着させることが不可能という答えが出てしまった」

 

「悔いが残るが、プロトゼロのスーツはエナジーコアを抜き出しこのまま破棄、ということになる」

 

「プロトゼロのデータを生かし、次のスーツを作り直すことになるが……これまでの検証を無駄にしないために、より一層に開発に努めたい所存だ」

 

「……残しておけば、悪用される危険もある」

 

「すまないな、プロトゼロ。お前を完璧にすることができなかった」

 

 

実験記録XXX【20XX.XX/XX.XX:XX:XX:XX】

 

「……地球に現れた謎の怪物に対して、打つ手がない」

 

「いったい、地球になにが起きているのか」

 

「しかし、あの怪物は間違いなく地球という人類への明確な脅威ともいえる」

 

「もしかすると、あれが地球のオメガと呼べる存在の可能性もある」

 

「……次にクモ怪人が出現した時、私はプロトゼロを着用し戦闘に出る」

 

「恐らく、この記録が最後のものになるだろう」

 

「スタッフ諸君。君たちのこれまでの頑張りに感謝する」

 

「では、さらばだ」

 

 


 

 

 遺言も残して覚悟を決めてたのに、プロトゼロスーツが盗まれちゃった……。

 

 

 軽くは言ってみたものの大事件である。

 この私の技術を用いたスーツを保管したラボは、地球で最も警備が厳重な場所と断言できる保管場所のはずだった。

 なのに何者かに侵入された。

 監視カメラにも、センサーの一切にも反応せずに、煙のようにスーツは持ち去られてしまったのだ。

 

 研究スタッフの誰かが手引きした?

 ———ありえない。

 もし、したとしてもすぐに分かるはずだ。

 

 スーツの技術を狙う何者かの仕業か?

 ———可能性はわずかにある。

 だが、現状の地球の技術で私が構築したセキュリティを突破できるものは存在しない。

 

 だからこそ、私は後者の考えでプロトゼロの捜索を行うことにした。

 どちらにせよプロトゼロは異星の技術を用いて作られたスーツ、そう簡単に分解も解析も行うことはできない。

 唯一の懸念は、あの危険なスーツを不用意に着用するものが現れないか、という点だ。

 

 間違いなくプロトゼロを着用すれば死ぬ。

 

 あれは適正値が高いものでさえも食らう悪魔のスーツだ。

 だからこそ、無駄な人死にが増える前に回収しなくてはならない。

 

 

 しかし、それ以上の問題が地球に現れた“怪人”と呼ばれる異様な怪物だ。

 

 

 星将序列の異星人でもなく、アルファでもオメガでもない化物。

 クモ怪人とふざけた名前で呼ばれたそいつの戦闘力は、この私から見たとしても異常すぎた。

 星将序列二桁レベルの化物が、どこからともなく地球に現れたという事実は、私を焦燥させる事実としては十分すぎるものだったのだ。

 この私自身、クモ怪人を打倒するために決死の覚悟でプロトゼロを着用し事態の解決に乗り出そうとしたわけだが……そんな矢先に、プロトゼロが盗まれちゃって本当の本当に大変なことになってしまったわけだ。

 

「だが、事態は私の予想を遥かに超えた」

 

 クモ怪人は、プロトゼロを着用した何者かが倒した。

 それも想定していた数値の数倍……否、数十倍の出力を以てしてクモ怪人を撲殺したのだ。

 

「……なんでぇ?」

 

 そもそもあれは本当に私の作ったスーツなのだろうか。

 見た目は同じでも出力もなにもかもが規格外なものになっているのだが。

 

「分からん。……分からなすぎて興味がそそられる」

 

 プロトゼロの着用者は人間。

 そして、人命を優先させる理性を持っているということだ。

 間近で彼の戦いを目撃した此花灰瑠と、他数人の証言を直に聞いたので間違いはないだろう。

 

「急いで探し出さなければ……」

 

 プロトゼロを着用して無事で済んでいるはずがない。

 あれから一週間以上経っているが、なにか身体に異常が起こってもおかしくはない。

 いや、もう既に……。

 

「主任! また怪人が現れました!!」

「なんだとぉ!?」

 

 慌てた様子のスタッフの声に驚愕する。

 ッ、可能性の一つとは考えていたがもう次の怪人が出てくるのか!

 まずい、我々にはまだ怪人を相手どれるほどの戦力はない。

 

「映像に映し出せ!!」

「はい!!」

 

 都市内のカメラからラボへと映像を転送させる。

 画面に映り込んだのは、赤い触角を震わせる人型のスズムシのような翅をもつ怪人。

 そいつは背中の羽根を高速で震わせ、周囲に音波のようなものを発して建物を破壊し続けている。

 

『ニンゲン、ッ、ニンゲンニンゲン!! ヨワイ!! モロイィ!!』

 

「言語を用いるのか……?」

 

 クモ怪人は言葉を話せなかったが、こいつは言葉を口にできるだけの知能がある。

 そして、奴の声はその背中の翅により拡声し、周囲へと存在を知らしめるように声を広めている。

 

『オメガサマァ、オオセノママニ、ニンゲン、キョウフ!! コロス!! コロス!!』

 

「ひっ……」

「ち、地球は、どうなってしまうんだ……」

「勝てるのか、俺たちは……」

 

 悍ましいほどの悪意を見せつけるスズムシ怪人は、さらに翅を振動させ遠く離れた建物から地面のアスファルトまでに亀裂を刻み込む。

 異形に対する恐怖にスタッフたちが怯えた声を零しているが、私は奴の放った言葉に驚いていた。

 ……オメガ、だと?

 奴の親玉がオメガだとすれば、アルファも存在しているはずだ。

 

「もう、始まっているのか……?」

 

 無意識に上を見上げる。

 天井に遮られた頭上———宇宙で虎視眈々と狩り時を狙っている奴ら(・・)のことを考え、焦燥に苛まれる。

 

「……ッ。すぐさま警察と連携し避難を急がせるんだ!!」

「は、はい!!」

 

 いや、まずはあのスズムシ怪人から人命を守ることを優先しなくては。

 しかしかといっても我々は準備ができていない。

 もし、あちらがその気になれば———、

 

「あっ!!」

「どうした!!」

 

 突然驚きの声を上げる女性スタッフ。

 なにかあったのか……?

 

「き、来ました……」

「……なにがだ?」

「プロトゼロ、が」

 

 なんだと!?

 すぐに怪人の映る映像に目を向けたその時———、

 

『ギャハ、ハハハハ!! ジュウリン!! タノシッ——』

さっきからリンリンうっせぇんだよ! 近所迷惑かッ!!

『ピギャッ』

 

 高らかに笑うスズムシ怪人の頭上から現れた黒い戦士がその拳を叩きつけた。

 まるでハエを潰すように縦に地面に押しつぶされたスズムシ怪人は、ぴくりとも動くことなくそのまま絶命してしまった。

 

「……」

「……」

「……」

 

 絶句。

 スズムシ怪人死んじゃった。

 え、プロトゼロ普通に着て平気そう。

 えっ、しかもワンパン?

 え、えええ? ど、どういうこと?

 このてんっさい科学者の頭脳でも状況を理解しきれないのだが!?

 

『……まったく、なんだよこいつら。……帰って寝よ』

「寝るの!?」

 

 画面越しで思わずツッコんでしまったが、怪人のことをよく理解していないのか!?

 自分がどれだけのことをしたのか分かっていない……?

 一切の躊躇もなくその場から消えてしまう黒い戦士。

 その様子を見ていた私は、驚愕と安堵に疲れ果てながらその場に座り込む。

 

「は、はは……まだ希望はあるようだ」

 

 まだ油断していい状況ではない。

 プロトゼロの危険性は軽視していいものでもない。

 しかし、あの黒い戦士は我々にとっての希望に他ならない。

 

「ヴェ、ヴァーハハァ!! よく分からない!! それがこれほどまでに面白いこととは!! 久しく忘れていたぞぉ!! ああ、そうさ!! 常に進歩とは未知なるもの!!」

 

 諦めるにはまだ早い。

 予期せず現れた成功例。

 ならば、次に私がするべきことは次なるスーツを作成し、怪人の脅威に備えることに他ならない。

 

「やってやる!! ああ、やってやるとも!! 見ているがいい怪人共、今からこの私がお前らを蹂躙するパァフェクトなスーツを作り出してやる!! ヴァーハッハッハ!!」

「「「主任うるさい!!」」」

「はい、ごめんなさい……」

 

 希望はある。

 ならば、我々はできることをやっていくしかない。

 現状と、これからの脅威に備えるために。

 




実験記録中は割と壊れていた社長でした。
プロトスーツが一番やさぐれて尖っていた時期でもあります。

【音響怪人スズーニャ】
初めて言語を話せるだけの知能が与えられた怪人。
背中の翅を高速で振動させ、周囲のものを破壊したり、不可視の衝撃波を放つこともできる。

怪人の存在を知らしめるために音を広げていたせいで、騒音でイライラしていた黒騎士くんを呼び出してしまった不幸な怪人でもある。

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