変わらずハイル視点でお送りします。
反転させるのも手間かと思ったので、アルファの台詞は白ではなく別の薄い色で読めるようにしてみました。
当然、ハイルからは見えていません。
穂村君はいつも眠たげだ。
授業中、ふと隣の席を見るとものすっっっごい目を眠そうにさせながらノートを取っている。
それでも眠らないあたりはさすがと言いたいけれど、いったい普段どんな生活をしているのか心配という意味で気になってしまうのだ。
彼のどう考えても訳ありな家庭環境を考えてみると、迂闊に踏み込むべきじゃないのは分かっている。
けど、私はそれでも彼に何気ない形で聞いてみようと思った。
「ねえねえ穂村君」
「ん? どうした?」
「君ってちゃんと眠ってるの?」
授業合間の休み時間。
次の授業の教科書を取り出している穂村君にそんなことを聞いてみた。
「いや、6時間ちゃんと眠ってるぞ」
「じゃあなんでいつも眠そうなの?」
「そういう人相としか言えないんだけど……?」
……。
あれ? これもしかしてやらかした?
いやいや、確かに穂村君は目つきは悪く見えるけど、まさか眠そうなのは素なの?
「この子、ちょいちょいカツミのこと見てるよ?」
「心配してくれてんだろ。目くじら立てるほどでもない」
「え?」
「いや、なんでもない」
不意の呟きを聞きとれずに思わず聞き返すも誤魔化されてしまう。
「たまに碌に眠ってない時はあるのは本当だけどな」
「え、なんで?」
「ん? あー……秘密だ」
「ミステリアス系男子ッ!?」
今、斜め前の席で意味不明なシャウトを出した業の深い友人はスルーする。
穂村君も彼女を見て不思議そうにしているけど、すぐに私へと視線を戻す。
「なあ……此花」
「うん? なにかな?」
「家に猫とか犬とか転がり込んで来たらどうする?」
猫とか犬とかが家に転がり込む……?
「しゃー!! 誰が猫だー!! ふしゃー!!」
それは、あれかな? 犬猫どっちも好き派の私に対しての挑戦と受け取ってもいいのかな?
そんなの答えなんか決まってる。
「うちの子にする」
「うちの子にする……?」
「うん」
ちょっと困ったような反応をする穂村君。
いつもとちょっと違う様子の彼に新鮮な気持ちを抱く。
「……例えが間違ったな。謎の生物が転がり込んで来たらどうする?」
「謎の生物扱い!?」
謎の、生物?
例えが突飛になったのでよく分からなくなる。
「それはあれかな? 座敷童とかそういうタイプのアレでいいのかな?」
「……ざしきわらしってなんだ?」
「……」
今、私の隣の席で聞き耳を立てていた香織が椅子から転げ落ちたがスルーだ。
穂村君、今の年齢までいったい何を見てきて育ってきたの……?
あれ!? 座敷童って余程のことがない限り知ってるよね……?
意図しない形で彼のさらなる闇を垣間見てしまった気分になりながら、座敷童について説明する。
「え、えーと、座敷童ってのはね」
「うん」
「黒髪の女の子でね」
「……うん」
「普通の人には見えなくてね」
「! ……うん」
「住み着いた家に幸運をもたらす存在らしいよ」
「なら違うな」
「ちょっとどういうことっ!」
違うとは……?
質問の意図がよく分からない。
肩をぐいんぐいんと揺らしている穂村君に首を傾げる。
「あはは、まさか穂村君の家に人に見えない黒髪の女の子が住み着いてるとか?」
「……は、はは、そんなわけないだろ」
「だよねー、座敷童じゃなかったら多分、幽霊かなにかだと思うよ」
「……」
「いや、幽霊じゃないよ?」
まあ、座敷童なんてそうそういないと思うけど。
というより幽霊の存在さえあやふやだ。
「ねえ、怖がらないでね? カツミ? どうして目を合わせてくれないのさ? ねえ?」
そういうのは目の前で見ないと信じない派なんだ、私は。
「と、いうわけで穂村君が眠そうだったのは彼の素だったわけです」
他の学校では分からないけど、うちの学校では体育の時間は男女別で行われている。
男女別、そして二クラス合同でそれぞれ体育を行うわけだが、今回は男子が外のグラウンド、女子が体育館を使っていた。
内容はバスケットボールというシンプルなもので、私達は他のチームが試合をしている間、壁際に座りながら午前中のことについて話していた。
「まあ、眠そうだっただけで別に不健康そうな顔をしているわけじゃないしね」
「言われてみればそうだ……」
香織の言葉に頷く。
隈もないし、居眠りもしないので単純にそれが素だったわけだ。
……じゃあ、私、無用な心配をしてチラチラ穂村君のことを見ていたということになるのでは?
なんだか無性に恥ずかしくなってきたのですが……!?
「正直、アリね」
「アリかナシという前振りすらなくなったね」
「捗る」
「どうしよう、この度し難いクラスメートをこのまま世に放ってもいいのかな……?」
どこか達観した様子で宣言する英子に香織がドン引きしている。
「私の経験上、彼はまだ属性を隠しているようにも見えるわ」
「どういう経験からの憶測なの……?」
「常に時代の最先端を模索し続ける聖典。妄想を具現化し、ありえざる幻想を実現させる疑似恋愛仮想体験システム。その数多くのシミュレーションからの経験則よ」
「乙女ゲーからの知識をそんな無駄に格好よく言う人いる……?」
「穂村君、とんでもない化物ね……ッ!!」
きらーん、と眼鏡を輝かせた英子は不敵な笑みを浮かべる。
今更だけど、相当変わった子と友達になっちゃったなぁ。
「私のことは落とし神とでも呼んでちょうだい」
「
「キレそう」
キレッキレのツッコミをする香織。
私としてはよくそのノリについていけるのか驚きでしかない。
しかし、そのツッコミを受けてもなお、英子は続けて言葉を発する。
「彼は弟属性と見た」
「根拠が分からないよ……」
「弟にしたい。私の心がそう思ったから」
「英子、あんた一回穂村君に土下座してきて」
とんでもない発言をする英子に素直に引く。
いや、分からないでもないけど、それを口にするとかこの子どんだけ勇者なの……!?
「……いえ、さすがに土下座して弟になってって言うのは流石に……」
「いや違うから。逆にどうしてそういう意味で捉えちゃうの? やばくない? やばいよね?」
これ以上、英子の話を聞いていると私まで変な影響出そうなので聞き流そう、うん。
二人の会話から、目の前で行われているバスケットの試合に視線を移す。
『はいっ! アカネ! パスっ!』
『うぇっ、私ぃ!?』
まあ、授業なので本格的なものじゃない。
それでも帰宅部とか文化部員にとっては運動できる数少ない機会ともいえるのでそこそこ張り切っている人もいる。
その中の一人、明るい茶髪を三つ編みにさせた隣のクラスの友人に応援の声を投げかける。
「きらら、がんばー」
「あれ、知り合い?」
香織の言葉に頷く。
「ついこの前、友達になったきららって子。この後、紹介するね」
「へー」
なんともなしに、二人が試合をしているきららを見る。
「……でかいね」
「うん、おっきぃ」
「それ本人に言わないようにね?」
いや、どことは言わないけれども。
太っているわけではないのだ。
むしろこれからの成長を考えると理想的というか、言葉に出しちゃうとガチで同性でもセクハラになっちゃうので言えないけれど。
……あれはまさしく魔性という言葉が正しい。
『わっ、ちょ、わわっ……きゃん!?』
『あ、アカネー!?』
あ、転んだ……大丈夫かな?
きららの友達らしき赤みがかった髪をポニーテイルにさせた女生徒が、ボールを思い切り吹き飛ばしながら転んでしまう。
それほど勢いづいて転んでいないようだけど……。
「運動とかあまり得意じゃないのかな?」
「単純にこのスポーツに慣れてないだけじゃないの? ほら、スポーツって人によって得手不得手があるし」
「……そういうものなの?」
「うん」
運動が苦手じゃなくて、得意な運動を見つけられていないって感じなのかな?
頭ではよく分かるけど、感覚ではあまり理解できないかなぁ。
「もしかしたら、運動音痴だと思っていた人がとんでもない才能を持っていたりするって話もあるらしい」
香織の言葉にもう一度、転んだ女生徒を見る。
苦笑いしながら立ち上がる“アカネ”と呼ばれた彼女を見て、あの子もなにか得意な運動とかあるのかなぁと、なんとなく考えてしまうのであった。
友人枠の英子を突発的にブルーの姉にしてもいいかなと考えるくらいに濃いキャラになってしまいました。
どうして……?(白目)
次は、クイズ怪人戦あたりの話を出せたらいいなぁと思います。