JTF・黄緑色の兵士たち   作:北極鳥ユキ

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≪folder/tips≫
 ディビジョン 正式名称はStrategic Homeland Division 略称 SHD
 大統領令51号(Directive 51)によって強大な権限を与えられた組織であり、通常の武装に加えて、ISAC(アイザック)と呼ばれるAIやSHDテックと呼ばれる高度な装備を身に着けている。
 活動の目的は秩序の再興であるらしいがそれ以外の詳細は不明。


第ニ話 白と赤の世界

―― 201X/12/XX :a.m.10.14――

―― ペンシルベニア・プラザ近くの路地裏 ――

 

 雪が降り始め、薄っすらと積もる路地裏。そんな雪を赤く染める血を流す死体たちと、座り込んだ僕を囲むように三人のJTF隊員と一人のエージェントが立っていた。

 

 二人が周囲を警戒し、隊長であるカイルと、ディビジョン・エージェントは僕の手当てをしていた。

 

≪ザザッ――こちらJTF監理官――准尉(オフィサー)、お――答―よ。繰り返――応答―せよ≫

 

 すると、カイルの肩にかかった無線機から雑音交じりの声がする。

 

「こちら第2部隊(スパローⅡ)、カイル准尉。本部、聞こえるか? 無線の状態が悪い」

 

≪こちらは感度――良好、聞こ―――いる。状況を――報告せよ≫

 

「捕まっていたジョン訓練兵の救出には成功した。だがルーカス巡査の方はすでに……」

 

≪――そうか――――了解し――。そちら――兵力――は―ど―残って――いる?≫

 

「無線の状態がさらに悪くなったぞ。兵力だって?」

 

≪そう――だ。第6検問所が攻撃――受けた。――クリーナーズ――だ。増援に向かっ――ほしい≫

 

「無理だ」

 

 カイルは強い声音で反応し、捲し立てるように続ける。

 

「そこら中に銃を持った暴徒が群れを成し、我が物顔で闊歩してるんだ。エージェントと合流するまで、三人だけじゃここにたどり着くのだって命がけだったんだ。それで居て、まだ戦えって言うのか?」

 

「私が行く」

 

 エージェントがカイルと監理官の無線に割り込んだ。

 

≪――エージェ――ント? ――分か――ったわ――今――位置情報――送った。すぐ――向かって。お願い――検問所の状況――悪い――できるだけ――急いで――≫

 

 雑音交じりながらも監理官の声からは、検問所が一刻の猶予も無いことを伺わせる。

 

「了解」

 

 それだけの言葉で応じると通信が終わった。

 エージェントはふぅと大きく息を吐く。口から出た白い息がゆっくりと空へ消えた。

 

「エージェント、本当に感謝する。拾われた命だ無事に基地まで帰るよ」

 

 そんなカイルの言葉に対してエージェントは少し不安そうな表情を見せたが、感情を振り払うように首を軽く左右に振ると、踵を返して大通りの方へと走り去っていった。

 

 隊員はそんな彼女の背中に対してそれぞれ敬礼をする。エージェントの走る速度はかなりの物で、すぐに白い雪で作られたカーテンの裏に消えていった。

 

 

「立てそうか?」

 

 軽い治療を施してから数分が経って、カイルが僕の方に手を伸ばす。

 

「大丈夫、このぐらい。うっ」

 

 僕はその手を掴んで立ち上がろうとしたが、すぐに左足に強烈な痛みを覚えてバランスを崩してしまう。そんな姿を見かねてカイルともう一人の隊員の二人がかりで肩を貸して、なんとか立ち上がった。

 

「准尉! 通りから暴徒らしき集団が向かってきてます!」

 

 警戒に当たっていた迷彩服の隊員が、ショットガンを構えながら通りを覗き込んでいる。

 

「アラン伍長、何人だ?」

 

「見える限りでは四、五人、ですが何分視界が悪いので……」

 

 優しく降っていた雪は吹雪へと変わりつつあった。アラン伍長は目を凝らしてみるが、雪で作られたカーテンの向こう側にいる人数を測れずにいた。

 

「不利だな、この路地を通って撤退しよう。サイモン巡査、こいつは俺が一人で引っ張っていくから伍長と一緒に警戒に当たってくれ」

 

「了解しました」

 

 サイモン巡査は灰色の迷彩服を着ているほかの僕たちと違って、ルーカスと同じように紺色の警察制服を着ている。僕たちは寄せ集めの統合任務部隊。制服は統一されていなかった。

 

 巡査は僕の右肩から離れて、腰から拳銃を抜いて路地の入口へと移動する。

 

「ジョン、右手は空いてるだろ? 拳銃ぐらい握っておけ。敵と正面からバッタリ、なんてこともあり得る」

 

「分かった……じゃなかった。了解しました、准尉」

 

 僕は言われた通りに渡された拳銃をしっかりと握りしめる。

 

「よし、移動するぞ、できるだけ早く基地を目指す、二人も警戒しながら後退だ」

 

 カイルは数歩進んでから、

 

「ルーカス、すまない……」

 

 小さく呟いて、そのまま脚を止めず地面の上に横たわる彼の横を通り過ぎていく。監視をする隊員も暴徒との距離を確認してから、それに続くように移動し始めた。

 

 痛みに耐えながら歩いていると、不意にとあるビルが目に留まった。

 なんてことはない平凡なレンガ積みの壁。裏口を繋ぐ階段には灯っていない電飾が巻き付けられていて、萎んだ風船が引っかかっている。そんなビルを通り過ぎる時、剥がれ掛けているチラシが視界の隅に見えた。

 ”今年のクリスマスはサンタと祝おう!”

 

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