奴隷騎士は再び魔剣を握る   作:青い灰

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投稿遅くなりました。
ゼルダ無双やるために買いに行ったんですが
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1章 雨上がりの蒼天
止まぬ雨の村


 

 

 

馬車で町を出て数時間。

俺がやると馬が暴れたのでルシアに御者を任せ、

荷台の上で魔物が来ないか観察していた俺は

そこだけ局所的に雨が降っている場所を見つける。

 

 

「気付いた?

 あの地域だけ雨が止まないらしいわよ」

 

「へぇ、確かあの辺は………小さな村があったな」

 

 

確か、ウォーレ村という名だったはずだ。

しかし5年前は雨が止まない、など

聞いたことがなかったが………

実際に昔、あの地域に魔物退治に行った時は

晴れていたと思うが。

 

 

「行ってみる?

 5年間の情報収集も必要でしょうし、

 あの町以外じゃ貴方の顔は

 あまり知られていないわよ?」

 

「そうなのか」

 

「えぇ、貴方って無愛想だもの。

 外の村の人たちが覚えるのは大抵が白騎士。

 話せば普通に喋れるのにね」

 

 

その言葉が正しいならば俺は都合が良い。

それに彼女の言う通り、情報が少しでも必要だ。

ルシアも魔族故に分からないこともあるだろう。

それに、魔物退治も5年以上前だ。

 

 

「今となっては都合が良いな。

 ────では、頼めるか?」

 

「良いわよ、別に急いでるワケでもないし。

 のんびり寄り道でもしながら行きましょう」

 

 

奴隷であることを考えて一応は主である彼女に

聞いておく。

そういえば奴隷は敬語を使うべきなのだろうか。

 

 

「ルシア」

 

「どしたの?」

 

「奴隷として俺は敬語を使うべきだろうか。

 やはり主従の関係は斯くあるべきだ」

 

「別にいらないわ。

 しっくり来ないだろうし、

 貴方って敬語は苦手でしょ?」

 

「あぁ、ならばこのままで良いか」

 

 

こうして、俺たちはウォーレの村へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────小さな影が、それを追って動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「激しくはないけど………

 これがずっと続くのは気が滅入るわね」

 

 

数時間後。

俺たちは村の酒場のカウンターにいた。

横で椅子に座って果実水を呷っているルシアは

しんどそうに言う。

外の雨は彼女の言葉通り激しくはないが

小雨というほど弱くもない。

 

 

「この雨が3年、か」

 

「そうだなぁ、オレたちも

 森の奥地が怪しくて調べようとするんだが、

 魔物が現れ始めて難儀してたんだよ」

 

 

マスターがグラスを磨きながら言う。

だが、この村には冒険者ギルドという

何でも屋がある筈だ。

ルシアも同じことを思ったようで、

首を傾げる。

 

 

「ここって冒険者ギルドもあるんでしょ、

 冒険者なら魔物相手に戦えるんじゃないの?」

 

「…………我々もそう思ったのです。

 そして依頼を出しました。

 報酬は村全員が出す、そう依頼書に記載して」

 

「特に貧しい村ではないようだし

 そこまで報酬を弾んだならば依頼を受ける者も

 多かったんじゃないか?」

 

 

俺の言葉にマスターは目を伏せる。

そして、数秒の沈黙の後、

再び口を開いた。

 

 

「えぇ、その全員の死体が、

 その森の入口で見つかりました」

 

「…………そうか」

 

「森の入口って………魔物が運んで来たってこと?

 そんな知性がある魔物なら

 緊急依頼としてギルドに出されるんじゃない?

 そうしたら高位の冒険者も来るのに………」

 

 

ルシアの言葉は最もだ。

5年前と変わらなければ、

冒険者ギルドは知性を持つ魔物に対して

〝緊急依頼〟として高位冒険者のみが受けられる

最優先依頼が出される。

緊急依頼ならば手練れの冒険者が来るだろう。

だがマスターはグラスを置き、言う。

 

 

「ギルドの緊急討伐依頼の条件を、

 お二方は覚えていますでしょうか?」

 

「……………セト」

 

「そこまでは俺も分からない。

 俺は冒険者じゃないからな」

 

 

マスターが置いたグラスに水を注ぐ。

外では止まない雨の音が響いている。

まだ昼故に誰もいない酒場は静かだ。

 

 

「知性を持った魔物の出現。

 そして〝広域での被害の確認〟です」

 

「………雨で作物が育たなくなるじゃない」

 

 

だが、マスターは首を横に振った。

 

 

「育つのですよ、作物が」

 

「え、なんで?」

 

「分かりません。

 土が泥のようになることも、ないのです」

 

「………水捌けが良い土地、で済むことではないな。

 それは明らかに異常事態だろう」

 

「えぇ、ですが実害がないのも事実なのです。

 不気味ではありますが、

 森に入らなければ問題はないのですから」

 

 

マスターは水を注いたグラスの水を、

土になっている床に流す。

 

 

 

だがその地面は濡れるどころか、

まるで荒野の土ように即座に乾ききったのだった。

 

 

 

 

 

 


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